女王の女王─2年生編─   作:アスランLS

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今回、少々ご都合主義で賛否が分かれると思いますが、今後の展開上どうしても必要なのでどうか見逃してください。


羽化

 

【side:桐葉】

 

 光陰矢の如しとは言ったもので暦はもう6月に入り、梅雨前線は湿気と気温と不快指数を同時に高めるコンボ技で日本列島を好き放題蹂躙していた。

 今日はおよそ4日ぶりの快晴だが、生憎と愛しの有栖はとある重大な理由で少し遅れての登校となるので、俺は一人寂しく学校へ向かうべく寮を出た。そんな俺をお天道様が憐れに思ったのかは知らないけど、前方─具体的には800メートルほど先に最愛の妹がのこのこ歩いているではあーりませんか。

 鍛え上げた肉体をフル活用し全速力で距離を詰め、およそ200メートルまで近づいた辺りで足音や衣擦れを極力消し、50メートル辺りでミキティの気配を消す技能を用いる。俺より目立てる人間が近くに誰一人いないので大して効果が無いけど、それでも察知するまでワンテンポの遅れを生むだろう。その隙を逃さずバックを取り茜さんにやったように高い高いサプライズを仕掛け─

 

「不埒な気配っ!」 

 

 長年の経験から背後を取る直前で俺の接近を察知したのか、桐花ちゃんは左足を軸に勢い良く背後を振り返りながら俺目掛けて崩拳を繰り出してきた。

 マミー直伝、八天極神流(やてんきょくしんりゅう)・螺旋拳。

 全身の捻りにより生じる遠心力を拳に上乗せすることで、熟練者なら女性の細腕でもコンクリに罅を入れられるおっかない技だ。

 

「おっとあぶねっ。いきなりご挨拶だね」

 

 避けようと思えば避けられるけど、可愛い妹の全力から逃げるなんて兄貴失格だから真っ向から受け止めることにした。とはいえ流石にコンクリはまだ無理だろうけど、まともに直撃すれば俺でも痛いじゃ済まないくらい危険な威力なので、両手で拳を包み込むように受け止め、インパクトの瞬間に足を前後に開いて衝撃を分散させ、ダメージを限りなくゼロにする。

 

「……あのさ、人の渾身の一撃を簡単に受け止めるんじゃないよ。虚しくなるだろ」

「いやいや、良い拳だったよ。俺と違って八天極神流の鍛錬を欠かしていないようで感心感心。マミーも草葉の陰で感涙してるよ間違いなく」

「勝手に母さんを殺すな」

 

 いやー、この分だと桐花ちゃんが継承してくれそうで一安心だね。八神家に代々伝わる一子相伝の流派を俺達の途絶えさせるのはやっぱ忍びないからさ……1日で飽きて投げ出した俺が言っても説得力無いか。

 桐花ちゃんは何かを探すようにキョロキョロと辺りを見回してから、訝しむような目を俺に向けてきた。

 

「……それで? わざわざ有栖さんを置き去りにしてまで、私の背後を取ろうとしたのは何が目的?」

「あー? 見かけたからちょっかいかけに来ただけで別に目的なんて無いし、俺が有栖を置き去りになんかするわけないでしょ。あの子は今日外せない用事があってちょっと遅れて登校してくる予定だよ」

「ああ、そうなんだ。まあ確かに兄貴なら抱えて来れるもんね。……ならめでたく目論見も失敗したようだし私はもう行くね、し─」

「しーゆーねくすとたいむなんてつれないこと言わないで、一緒に登校しようよー兄妹なんだし」

「……と─」

「友達と待ち合わせなんてしてないでしょ。ここら一帯見回したけど同じクラスの子はいないようだし」

「…………ほ─」

「え? 他のクラスの子? つい先日下剋上を果たしたクラスのリーダーに近づいてくる子なんて、十中八九情報目的のスパイだからオススメしないなー」

「だあああああーっ! いちいち私の台詞先回りすんなよ腹立つなあもう!」

 

 頭を掻きむしりながら地団駄を踏む桐花ちゃん。このお可愛らしい女の子が、高いカリスマ性でクラスを統制し1年Aクラスの座を見事掴み取ったスーパーリーダーだと誰が思うだろうね。

 

「まあからかうのはこの辺にして……Aクラス昇格おめでとー。ガーミンに聞いたけど5月末に行われた特別試験で大活躍したそうじゃないか」

「ガーミン?」

「石上京君」

「ああ、Aクラ─じゃなくてBクラスのリーダーさんか。あの気難しそうなのとも仲良くなれたとか、相変わらずコミュ力ぶっ飛んでるね兄貴。……にしてもクラスがコロコロ代わるとややこしいな」

「そういうときは俺達2年みたくリーダーの名前+クラス名で読めばいいのさ。坂柳クラス、一之瀬クラス、龍園クラス、堀北クラスってね」

「なるほど、それはわかりやすいね。となると1年は本条クラス、石上クラス、宇都宮クラス、宝泉クラスか」

「だね」

 

 俺の見立てじゃあCクラスのリーダーはたぶんカンちゃんだろうけど、表向きはどう見てもチャオズだから間違っちゃいない。

 

「……まあそれはそれとして、別に私だけの力で勝ち上がったわけじゃないよ。クラスの皆の頑張りもそうだし、何より八神君の策が上手くいったことが決め手だよ」

「へえ、拓也君が。まああの子がやる気出したらそうそう負けはしないか」

 

 彼は少々詰めが甘いが能力面は清隆君にも引けを取らない。そして桐花ちゃんは搦手こそ苦手だが全体的に高水準なスペックで人徳もあり、何より「この人についていこう」と思わせるリーダーとして資質を持ち合わせている。この子達のクラスは、分かりやすく例えるなら清隆君とホリリンが加わった一之瀬クラスだ。

 

「……ちょい待ち、なんで八神君を下の名前呼びしてんの? たしか兄貴が下の名前呼びする条件って……」

「俺に勝てそうな奴、それも将来性だのポテンシャルだのといったふわふわしたものじゃなく目に見える形で勝ちの目がある奴、だね」

 

 より正確に言うなら、俺の思い通りにならない人間だ。

 少し先の未来さえ見通せるほど優れ過ぎた目とそれを十全に活かすだけの頭脳により、この世のほとんどのことは自分の想定した通りになってしまう。それはネタバレが大嫌いな俺からしたらこの上無く忌避することであり、何度いっそのこと自分の目を潰してしまおうかと思ったことか。痛そうだからやらないけど。

 だからこそ俺は自分の想像を超えてくる人間が大好きだ。いや、人間に限らず思惑が外れたり推測が見当違いだったり思いつきもしなかった荒唐無稽な出来事が起こると愉快で仕方がない。ただし負けるのは大嫌いだけどね。

 

「それってつまり八神君、兄貴に勝ったの?」

「いや、僅差で俺の勝ち。どっちが勝ってもおかしくない死闘だったぜ」

「……まさか八神君がそんな凄い人だったなんてね。ならなんで私なんかにリーダーを任せてるんだろうか?」

「こらこら桐花ちゃんあまり自分を卑下しないの。リーダーとしての資質なら桐花ちゃんも負けちゃいないし、上に立つ役割はお前に任せて八神君は悪巧みに専念するつもりなんじゃないの?」

「は? リーダーとしての資質? なんだいそれ、初耳なんだが?」

「桐花ちゃんの持つ資質とはズバリ、『この人についていこう、この人のために頑張ろう』と周りに思わせることさ」

 

 リーダーを務めるにあたって個人の能力はさほど重要ではない。そりゃあ低いよりは高い方がいいけど少なくとも必要不可欠ではない。

 リーダーの役割とはやはり集団の力を引き出すことだろう。俺が言っても説得力に欠けるかもしれないけど、凡庸な人間でも束になれば天才を蹂躙することさえ可能にする。数の力は決して侮ってはいけないし、同様にそれを上手く引き出せる人間も侮ってはいけない。

 故に桐花ちゃんの人柄はリーダーに適任も適任だ。卍解ちゃんが最も優しい人間だとしたら、桐花ちゃんは最も真面目な人間だからね。

 

「何事にも妥協せずひたむきに努力し、友達が困っていたら進んで手を差し伸べ、Aクラスの特権なんて興味も無いくせにクラスが優位になる為だけに生徒会に入り、会長の意地悪で激務を投げかけられてもぶつくさ言いながらもやり遂げる……そりゃあ周りも何かしら力になってあげたくもなるよね」

「なんかこそばゆいな……私は自分にできることは手を抜かずやると心がけてるだけだよ」

「誠実な人じゃなきゃ出てこない考え方だねー」

 

 ちなみに俺と有栖はからっきしだ。有栖は普通にしてれば力になってあげようって人も出てくるんだろうけど、独裁主義のあの子は支配して使役する方を好むので、他人の厚意は自分から切り捨てちゃう。そして俺は……うん、『もう全部あいつ1人でいいじゃないかな』って思われるんだ。以前派閥メンバー達と似たような話題になったとき、「アンタほどわざわざ手を貸してやろうって気がちっとも湧いてこない人もそうそういない」ってマスミンから言われたし、これはもうどうしようもない。

 

「まあそれはそれとして、Aクラスになったからといって気を緩めちゃあ駄目だよ? 卒業までその王座をキープしなきゃならないんだから」

「言われるまでもないよ。狙われる側は狙う側よりもずっと不利を強いられるだろうしね」

「それにライバルは同じ1年だけとは限らないよ。同学年に張り合いのある相手のいないみやびん会長は不満に思ってるだろうし、そろそろ学年の枠に囚われない特別試験が出てくるかもね」

「……良い読みしてるね兄貴。ちょうど今日あたりに先生達から告知されると思うよ。会長曰く、高育始まって以来最大規模の特別試験なんだって」

「……へーえ、最大規模。そいつは何ともときめく響きだね」

 

 その後は他愛も無い雑談や桐花ちゃんの会長への愚痴(比率1:9)を聞きながら仲良く登校したとさ。というかみやびん会長……あんだけ女性関係にだらしないイメージなのに、気の引き方が好きな子にちょっかいかける小学生かよ。そんなんじゃ想いは届かないぜ。ただでさえ桐花ちゃん恋愛偏差値ZEROなんだからさー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この学校に来てもう1年ともなれば、生徒達も段々と察しが良くなってきている。それを裏付けるように朝のホームルームの時間に教室に入ってきた真嶋先生の真剣な顔つきを見て、クラス中の生徒が姿勢を正した。

 

「坂柳は本日所用で遅れると連絡を受けている。その為このホームルームで話したことはお前達の方から必ず伝えるように。もうある程度察しているだろうが、夏休みに特別試験が行われることになっている。だがまあそれは一度置いておき、まずは夏休みに関して重大な話がある」

 

 そう言って真嶋先生はタブレットを操作してモニターに映像を映し出す。表示されたのはなんというか、氷山にぶつけて沈めたくなるくらい豪華な客船の写真。

 

「八月四日から八月十一日までの七泊八日間、お前たちはこの豪華客船でバカンスを満喫することが出来る。もちろん船上では特別試験を行うことも一切しない」

 

 それを聞いてわーいやったー、などと手放しで喜べるようなおめでたい子はこのクラスにもう1人もいない。なんなら他の3クラスにもたぶんいないだろう。高育の意地の悪いカリキュラムは若者から純粋さを奪い去ってしまった。

 

「まぁお前達もこの学校のやり口には慣れてきているから、ある程度推測できるだろうな。……推測通り、船旅を満喫できるのは夏休みに行われる特別試験を乗り越えた者のみだ」

 

 夏休みの特別試験かあ……去年派無人島で思う存分大自然を満喫したっけ。貴重な夏休みを削って行われるんだから、せめてあれくらい有意義な試験だといいんだが。まあこの学校に期待してもろくなことにはならないと経験でわかっちゃいるが─

 

 

 

 

「……特別試験の期間は7月19日から8月3日までの2週間。お前たちには再び、無人島サバイバルに参加し競い合って貰う」

 

 前言撤回、愛してるぜ高育☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後真嶋先生により試験内容が説明されたが、試験まで一ヶ月以上あるので全容は明かされなかった。今回はやけにもったいぶるなあ……。

 説明されたのはグループの決め方、報酬やペナルティ、配布されるアイテム、そして試験内容が学力、体力、その他諸々の総合力を問われ、なおかつ全学年で競い合う最大規模の特別試験だということ。

 まずグループに関してだけど、同学年であればクラスを問わず最大3人までの小グループを組むことが可能で、特別開始後は最大6人までの大グループを組める。

 ただし不純異性交遊対策なのか、男女混合の場合男女の割合は小グループで2/3以上、大グループで1/2以上を女子が占める必要がある。そして一度グループを確定させると他所のグループに移ることはできない。

 またグループを作らず単独でも構わないけど、人数が多いほど優位になるよう設定しているのでお勧めしないとのこと。例えば1人の場合リタイアすればその時点で脱落だが、複数の場合は残りのメンバーがクリアすれば脱落を免れる。現代っ子の俺達が2週間も無人島で生活するのだから、事故で大きな怪我をしたり体調を崩してリタイアすることも十分にあり得る。よほどの理由がない限りグループを作るべきだろうね。

 次に上位入賞者への報酬に関してだけど、プライベートポイントはどうでもいいから割愛するとして、3位のグループに100クラスポイント、2位のグループには200クラスポイント、1位のグループには300クラスポイントに加えプロテクトポイントと破格の額だ。グループはクラス別でも組めるが、そういったグループが入賞した場合所属するクラスに均等に分割される。

 ちなみに上位3グループに与えられるクラスポイントは下位3グループのクラスから徴収されるそうだ。……これって例えばうちのクラスがトップを独占したとして、下位も独占しちゃったらクラスポイントはプラマイゼロになっちゃうよね。

 そして下位5グループになった生徒は退学。最大で30人もの生徒がこの学校を去ることになるが、1グループで600万プライベートポイントを支払えば免除される。うちのクラスは余裕だけど他3クラスは資金繰りが大変だろうね。

 それから今回の試験には生徒それぞれに各1枚ずつ、特殊なアイテムのような物が与えられることになっている。

 

 基本カード一覧

 

 先行……試験開始時に使えるポイントが1.5倍される。

 

 追加……所有者の得るプライベートポイント報酬を2倍にする。

 

 半減……ペナルティ時に支払うプライベートポイントを半減させる。

 

 便乗……試験開始時に指定したグループのプライベートポイント報酬の半分を追加で得る。指定したグループと自身が合流した場合効果は消滅する。

 

 保険……試験中に体調不良で失格した際、所有者は一日だけ回復の猶予を得る。不正による失格などは無効とする。

 

 

 特殊カード一覧

 

 増員……このカードを所有する生徒は七人目としてグループに存在できる。本試験開始後から効力が発揮され、男女の割合にも左右されない。

 

 無効……ペナルティ時に支払うプライベートポイントを0にする。このカードを所持する生徒のみ反映される。

 

 試練……特別試験のクラスポイント報酬を1.5倍にする権利を得る。ただし上位30パーセントのグループに入れなかった場合グループはペナルティを受ける。また増加分の報酬は学校側が補填するものとする。

 

 

 配布のタイミングは明日の朝。カードの譲渡やトレード、売買は許可されていて、1人の生徒が複数のカードを持つことも可能。ただし同じカードの効果は重複しない。これはまた、リュンケル辺りが嬉々として暗躍しそうだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホームルームが終わり真嶋先生が教室から出ていったので、俺は席を立ち教壇の前へ移動する。

 

「それじゃあ今登校してきてない有栖に代わって、今回の特別試験の方針を説明するよ」

「え? そんな勝手なことしていいのかよ本条。姫さんが登校してきてからにした方がよくないか?」

「大丈夫大丈夫、有栖の考えそうなことはだいたい予想できるから。多少ズレても後で有栖が修整してくれるだろうし」

「流石2年No.1バカップル、以心伝心だな」

「失礼だね橋本、人聞きの悪いこと言わないでよ」

「胸に手を当ててここ一ヶ月の我が身を振り返ってみなさいよ。いい加減私達も缶コーヒー飲み過ぎでカフェイン過多になるわ」

「マスミンまで……というかクラス揃って頷くんじゃあないよ。なんだいその連帯感」

 

 せいぜい四六時中ずっと恋人繋ぎしてたり、休み時間やたらと有栖が俺の膝の上に乗りたがったり、弁当はだいたいお互い食べさえ合ってたくらいでしょ。寮に帰ってからのあの子のベッドヤクザっぷりを考慮すると可愛いもんでしょうが。

 

「まあいいや、とりあえず肝心要のグループ決めだけど……マスミンとファルコンは有栖と3人グループ組んで、あとは下位5グループに入らないようなグループを各々で好きに決めていいや。終わり」

「いや雑だな!? そんなんでいいのかよ」

「いいんだよ橋本。報酬を考えるとこのクラスの懐からして、3位以内に入賞しないと旨味が無いけど……まさかうちのクラスだけでトップ3独占できる、なんて甘いこと考えてないよね?」

「そ、そりゃそうだろ……」

「3枠のうち1つは俺がぶん取ってくるとして、他はどうにかもう1枠狙えるよう最高戦力を集中させるのが最適解でしょ」 

「待ってください本条桐葉。その口ぶりからして、あなたはグループを組まず単独で試験に臨むのですか?」

 

 紫がかった髪を2つ結びにした女子生徒、2-Aのおもしれー女枠こと森下藍……通称らんらんが口を挟んできた。

 

「そだよ? せっかく大自然を満喫できる数少ない機会なんだし、グループなんて所属してらんないよ」

「あれだけ真嶋先生がグループを作ることを勧められてなお突っぱねるとは、相変わらず破天荒ですね」

「君と六助と満足先輩だけには破天荒とか言われたくないんだけど」

「しかし大丈夫なんですか? この期に及んであなたの力は疑ってませんが、流石に少々過信が過ぎると思います。それで入賞を逃したら赤っ恥もいいところですよ?」  

「あっはっは」

 

 随分と的外れなことを言うんだねえ。先日有栖に負けちゃったから、俺の力を絶対視しなくなったのはいい傾向なんだけど、流石にちょっと心外だ。

 

 

 

 

「関係無いね。今回の試験舞台は完全に俺のテリトリーだ。誰が相手だろうとねじ伏せるだけだよ。……何か異論は?」

 

 少しだけ本気で威圧してやると、反対意見は全て封殺された。それでいい、ぶっちゃけ誰と組もうが足引っ張られるのは目に見えてるし。

 

「じゃあこれで終わり、後は有栖が来るのを待とうか。俺の読みではそろそろ登校してくる頃なんだけど……」

「待てよ本条。さっき鬼頭、神室、坂柳で組むっつってたけどよ、今回は無人島試験だぜ? 姫さんが参加できる訳無いだろ」

「うん、ちょうどいい質問だね。それがそうでも無いんだよ。何故なら─」

「遅れて申し訳ありません」

 

 俺の言葉を遮るように後ろのドアがガラガラと音を立てて開かれ、1人の女子生徒が教室に入ってきた。まあ当然ながら我等がリーダー、タイラント有栖ちゃんなんだが……事前に遅れてくると連絡を受けていたにもかかわらず、その姿を目の当たりにしたクラスメイト一同は我が目を疑った。

 

 

 

 何故ならもう見慣れてしまった、本来在るべきものがそこには無かったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ずっと彼女と共に在り続け、一種のトレードマーク……どころか肉体の一部とも言っても過言では無かった─

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩行杖が存在しなかったから。

 

 

「1年間皆さんにはお世話をおかけしました。何とも不思議なことに、17年目にして私は自分の足だけで歩けるようになりました」

 

 

 坂柳有栖は今日この日、先天性心疾患を克服した。

 

 

 

 

 





はい、有栖ちゃんが障がい者キャラを卒業しました。もちろんちゃんと明確な理由が存在しますが、これまで描写された中から正解を導き出せた人がいれば、その人マジで凄いです。

《桐葉君の不可解なあだ名の由来》
宇都宮陸→宇都宮市→餃子で有名→チャオズ
椿桜子→ツバキカンザクラ→カンちゃん

八天極神流……八神家に代々受け継がれてきた、八極拳をベースにした空手の流派。後の先を取り、一撃必殺で相手を仕留めるカウンター殺人拳。同じく八天極神流を修めた相手以外に対しては、命の危険がある場合の護身を除いて使用を固く禁じられている。



【6月度OAA評価】
本条桐花
学力……A(86)
運動能力……B+(79)
機転思考力……B+(76)
社会貢献性……A+(96)
総合……A-(83)


有栖「1年で副会長の座についたことと、リーダーとしてAクラスに導いた実績が評価され、機転思考力と社会貢献性が大幅に上昇していますね」
桐葉「総合評価も1年トップ。兄として鼻が高いねえ」
有栖「貴方が言っても嫌味にしかならないですよ」


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