Q.4 お互い以外で最も親しい生徒は誰ですか?
有栖「真澄さんです」
桐葉「茜さん、は卒業したから除外。桐花ちゃん、は妹だから除外……うーん、仲のいい子は多いけど突出して仲いい子はあまりいないなあ。だいたいみんな同じくらいの親密度かな」
有栖「貴方の交友関係、広く浅いですもんね」
桐葉「有栖は交友関係めっちゃ狭いよね。大半に嫌われてるか怖がられてるし」
有栖「なんというか、敵対している方が誰もいない環境は落ち着かないんですよね」
桐葉(難儀な性分だなあ……)
【side:桐葉】
7月19日、月曜日。無人島試験前日。
高度育成高等学校に所属する全生徒は朝早くからグラウンドに集合し、バスを経由して客船が停泊する港に移動。
全12層からなる豪華客船サン・ヴィーナス号は、特別試験の舞台である無人島目指して出航した。
現在時刻は12時半ば。今頃1年坊主達は客船内の映画館で教師達から特別試験の具体的なルールの説明を受けている。2年、3年の生徒は自分達の説明タイムが回ってくるまで、各々が束の間のバカンスを楽しんでいるだろうね。
それで、有栖ちゃんを中心とする俺達2-A幹部グループはというと……
「マサ、から、はじ、まる、リズ、ムに、合わ、せて!
ッ、ッ、ハヤ、3!」
「ッ、ハヤ、ハヤ、ハヤ。ッ、ッ、マサ、4」
「マサ、マサ、マサ、マサ! ッ、ッ、アリ、2!」
「ッ、ッ、アリ、アリ。ッ、ッ、マサ、チェケ」
「マサ、チェケラッチョ! ッ、ッ、ムロ、1!」
「ッ、ッ」
「「「「「うー、ムロ!」」」」」
「ッ、ッ、マサ、4」
「マサ、マサ、マサ、マサ! ッ、ッ、キリ、チェケ!」
「キリ、チェケラッチョ♪ ッ、ッ、ボンバイ、エ♪」
「「「「「1、2、3、ダー!」」」」」
「マサ、7♪」
「ッ、マサ、マサ、マサ、マサ、マサ、マシャミャシ─あぁああ!?」
「「「「はい、アウト」」」」
「ちくしょう噛んじまった! つーかお前ら全部俺にパス投げ返してくんなよ!」
「戦術だよ戦術」
あーあ橋本、この程度の集中砲火でボロが出るなんて情けないなあ。そんなだから戦力外扱いされて有栖の本命グループに交ぜてもらえないんだよ?
「……つーか、俺達もう高校生だよな? いくら試験説明まで暇だからって、時間の潰し方がみのりかリズム4ってどうなんだよ……?」
「30回もやったあとにそんなこと言われてもねえ」
やることになった経緯はまず俺が久方ぶりにやりたくなったことが発端。有栖にやろうと提案したら二つ返事で了承してくれ、意外と好戦的なファルコンは俺がお得意の口八丁で挑発して参加させ、有栖が健康になったことで以前ほど働かされることがなくなったことを実はちょっと寂しがってる(本人に自覚無し)マスミンは、有栖が上目遣いでおねだりしたらぶつくさ文句言いながらも了承し、残る橋本は同調圧力に屈した。
ちなみに戦績は俺がノーミス、有栖が2ミス、ファルコンが5ミス、マスミンが8ミス、橋本が15ミス。
「……やはり頭と体、どちらも扱うゲームでは桐葉には敵いませんね」
「ミスをしそうな気配が微塵も無かったな」
「俺に死角は無いのさ☆有栖は拍子は絶対間違えなかったけど、手の動きでちょくちょくミスっちゃったね」
「まあアンタ達二人が強いのは薄々予想できたけど、鬼頭にも負けたのはちょっと悔しいわね。そして橋本弱過ぎ」
「だからお前ら俺ばっか狙い過ぎなんだよ」
「そりゃあ、ねえ?」
「頻繁にミスをする奴に狙いが集まるのはごく自然なことだ」
「そりゃそうだけどよ……」
「橋本リズム感悲しいくらい無かったねー」
「うるせぇほっとけ!」
いやしかし君達さ、あんな渋ってたのに随分とマジになってるじゃないか。最初ら辺は俺以外初めてだからシンプルなルールでやってたのに、結局追加ルール全乗せだよ。
と、ここで1年生の説明会が終わったので、俺達2年生は速やかに映画館に集まる旨の連絡が船内に流れた。
「それでは参りましょうか」
「そだね」
「グループメンバーと一緒に説明受けた方が効率良いだろうし、俺は先行くわ」
「うんお疲れ。余計なお世話かもしれないけど、司城や森重とケンカしちゃダメだよ?」
「お前は俺のかーちゃんか」
心外だね、俺と有栖から橋本みたいなのが生まれる訳ないでしょ。
「ではこれより無人島における特別試験のルールを説明したいと思う」
映画館にて今年の無人島試験も説明を担当するのは我等が真嶋先生。マイク片手に厳格な表情で粛々と説明し始めたので、俺も有栖を膝に乗せた状態で傾聴に努める。周囲の子達はは何か怪訝な表情していたがお構いなし。
「期間は明日からの二週間。昨年の無人島と同様自由活動が基本となる。試験期間中に続行不能な怪我や体調不良に陥る、もしくは重大なルール違反を犯した場合は容赦なく強制リタイアという形をとる。諸君らにはこの2ヶ月間で最大3人までの小グループを組んで貰ったが、ある条件のもと小グループ同士が集まり、最大6人までの大グループを作ることが解禁される。グループ内のメンバーが全員脱落すれば失格となり順位が確定する」
で、その順位が下位5組になればグループ内全員に退学のペナルティが課されるが、単独なら600万、3人グループなら1人200万のプライベートポイントを支払えば免除される。この説明を受け、全員救済用のポイントを工面できるうちのクラスや俺から融資を受けたBクラスの面々は比較的リラックスした表情だが、金欠まっしぐらなC、Dクラスの面々には緊張感が高まっていた。
「そして肝心の順位の決め方の説明に入る。これから2週間、各グループには得点を集める戦いを行ってもらう」
映画館のスクリーンに今回の試験内容の説明と、10×10の正方形で等間隔に区切られた無人島の地図が映し出される。ふむふむ、真嶋先生の説明を要約すると─
得点の集め方は2通りあり、一つは基本移動のルールから得る方法。100のエリアに区切られた無人島を動き回り、一定時間ごとに学校側から1日4回(初日と最終日のみ3回)指定されるエリアに辿り着くことで得られる。グループ内の全員が揃って辿り着く必要があり、一番最初に着いたグループには10点、二番目で5点、三番目で3点、そしてグループも到着しただけで到達ボーナスとして一人につき1点貰える。
これだけ聞くと足の速い子の揃ったグループが有利に思うが、競うフィールドは舗装された道路ではなくジャングル。無茶な移動で大怪我してグループ全員が脱落すれば、せっかく集めた特典も没収されるという本末転倒な結果で幕を閉じることになる。
かと言ってリスクを恐れてスタート地点から動かない訳にはいかない。エリアの告知は午前7〜9時、9〜11時、午後1〜3時、3〜5時の間で、指定エリアの移動を3回連続でスルーしてしまうとペナルティとしてグループごとに1点マイナスされ、4回、5回と回数を重ねれば比例してマイナスも1ずつ増えていくからだ。グループ内の1人でもエリアに到達すればペナルティは免れ、スルーを留めれば累積した減少値はリセットされる。しかし着順報酬はリタイアした生徒を除くグループ内の全員がエリアに到達しなければならない。
人数が多ければペナルティを負うリスクはグッと減るが、着順報酬を狙うなら俺のような単独グループの方が明らかに有利だね。
そしてもう一つの得点の集め方は午前7時から午後5時までの間に無人島の至る所に設置される、様々な課題を攻略することで貰えるらしい。用意された課題の内容は学力4割、身体能力3割、その他が3割で構成され、その他の課題には専門的な技術が必要なものから運否天賦まで多岐に渡り、また同じ内容の課題が複数回行われることもあるらしい。さらに課題をクリアすれば点数の他に、水や食料やグループ人数の上限解放といった様々な報酬が付属するそうだ。まあ流石に未成年の学生達に半月もガチサバイバルを強要するのは文科省が許さないよね。そして課題を受けられる定員はそれぞれ決まっているため、ときには指定エリアよりも参加できそうな課題が設置されているエリアを目指したりと、臨機応変な対応力が求められそうだ。
と、真嶋先生は一通りの説明を終えると星之宮先生から何かを受け取る。なんだあれ? 時計型麻酔銃?
「そしてこれから重大なルールの説明をする。試験開始から終了時まで、君達にはこの腕時計を身に着けてもらう。この腕時計は単純な時刻の確認だけでなく、得点を得る為に必須の道具でもある。基本移動の得点などはこの腕時計を元に集計されるからだ。また時間内に指定エリアに入るとその通達が来るなど便利な機能も備わっている。まあ多少のラグはどうしても出る以上あまりにギリギリのタイミングだと無効になることもあるので注意するように」
……ふむ、GPSの内蔵された時計か。つまりこれを着けている限り、教師陣には俺達生徒がどこにいるのか全て筒抜けというわけだ。曲がりなりにも教育機関である以上生徒の安全を保つためこういった物を用意するのは特に不自然じゃあないが、なんというか悪用しようと思えばいくらでもできるシステムだね。
ちらりと月城理事長代理の方に視線を移すと、それに気づいたのかニコリと微笑んできた。……やれやれ、随分とおっかない大人だこと。
「さらに身に付けた生徒の体温、心拍数、血圧、血中酸素、睡眠時間やストレスレベル等が学校側に常時モニタリングされる。そして……」
真嶋先生は一度言葉を切り星之宮先生にマイクを預けると、作業員の協力のもと手に持った腕時計を身に着け始めた。どうやら特定の工具が必要な上に1人では付け外しもできない仕様らしい。
腕時計を付け終わるとスクリーンに先ほど述べられた項目が表情され、星之宮先生がパソコンを操作して体温の数値を38度以上に改竄すると、けたましい音が5秒ほど映画館に響き渡った。
「何れかの項目が規定ラインを超えれば、この様に警告アラートが鳴る仕組みだ。この時点ではあくまで警告だが、規定値を超えたまま10分経つと再びアラートが鳴る。そしてさらに5分が経てば警告アラートではなく緊急アラートに変化する。この状態になった場合24時間以内にスタート地点でメディカルチェックを受けなければ、続行不可能とみなしリタイヤとなる。だがこの緊急アラートは手動で切らない限り鳴り続ける仕組みで、5分間停止されなかった場合は教職員と医療班がその場に駆けつけるので安心しろ」
きっと両足が骨折して身動きできなかったり、失神してしまった場合とかを想定した救済措置なんだろうね。どちらにせよ緊急アラートを鳴らした時点で続行はほぼ絶望的だろうけど、まあそんな状態でサバイバルなんて無謀過ぎるから仕方ないね。しかし睡眠時間もか……俺は普段規則正しい生活を送っているが、実を言うと1週間程度なら不眠不休でも特に何の支障も無く、流石に2週間はきついけどやれなくもない。今回の試験で大きなアドバンテージになると思っていたけど、残念ながらそうもいかないらしいね。
「先ほど見ていた通り、不正防止のためこの腕時計は1人では付け外しができない。よしんば正規の手順以外の方法で強引に外せば、得点を得る機能が停止される仕組みになっている」
誰かに腕時計を渡して得点を稼いでもらうような、替え玉受験ならぬ替え玉得点ができないってことね。
「また物理的に破損した場合や機器の一部に異常が出た場合も得点機能がオフになる。その際はスタート地点に戻り交換対応を行ってもらうことになる」
え? ぶっ壊しても何もペナルティ無いの? スタート地点に戻るまでのタイムロスだけ? ……うわあ、絶対悪用されるじゃん。月城さん達ホワイトルーム一味や、清隆君にかけられた二千万という賞金を狙う一部の1年生達、そして色んな人から狙われてる清隆君本人の腕時計がガシャンガシャンぶっ壊される未来が視える視える。
「さて、腕時計の説明を終えたところで、基本移動についての補足がある。この腕時計内部には『テーブル』と呼ばれるものが全12通り存在し、テーブルごとに指定エリアが異なっている。例えば私がAテーブルならスタート地点がD9エリアだとして、D8、D7、C6の順に指定エリアが変化するとする。一方星之宮先生がBテーブルならスタート地点こそ同じD9だが指定エリアはD10、E9、F8……と言った風に初日から最終日までにどの指定エリアが選ばれるか既に決まっている。当然同グループの生徒は同じテーブルに設定されており、試験中に大グループを組んだ場合は同じテーブルに書き換わるため支障は無い」
なるほど、それはいいシステムだ。全グループが同じ目的地を目指し続けるゲームなら俺に追いつける奴は誰もいないから人数オーバーで参加できないといったケースが無くなるし、着順報酬を淡々と積み重ねていくだけで簡単に勝ててしまう。しかしルートが12もあれば3日も経てば無人島全体に生徒達が散らばるため、俺もちゃんと考えて動かないと足をすくわれることになる。それに同じテーブルで無ければ他のグループとの協力は相当困難になる。同じクラスならば特定のグループの入賞を後押したりペナルティ圏内から引き上げたりするためなら可能性はあるが、他クラスとなると絶望的だ。……まあもっとも、勝ち負けを度外視してまで協力を要請できるくらい、他クラスひいては学年全体を支配できているなら話は別だけどね。
「それでは次に月城理事長代理より、ご挨拶を賜りたいと思います」
真嶋先生からマイクを受け取った月城さんが話した内容はというと、男女間で性的なトラブルが発生した場合は容赦無く厳罰に処す(この説明を受けて有栖が舌打ちしをしたような気がするが多分気のせいだろうだろう。というか気のせいであってください)けど、生徒間の諍いや小競り合いは悪質なものでなければある程度容認するというもの。真嶋先生は露骨に難色を示していたが撤回するつもりは無いらしい。
「以上となります。どうか高度育成高等学校の生徒として相応しい行動を心がけてください」
一通り説明が終わると、俺達は無人島に持ち込める物資の買い物タイムに移った。軍資金は基本的に生徒一律5000ポイントだが、俺のように先行カードを持つ生徒はさらに2500ポイント上乗せされる。ポイントを使い切らず残しておき試験開始後にスタート地点で購入したりもできるが、その際の物価は2倍になるらしいので正直賢い選択とは言えない。そもそも食料よりも必須な水はその場で飲み切る条件付きだがスタート地点で無料で補給できるしね。また歯ブラシやシャツ下着などのアメニティ用品や簡易トイレ、虫よけスプレーや日焼け止め、生理用品等も無料で配布され、やはりスタート地点に戻れば必要な数だけ支給される。他にも去年のように遊ぶためのレジャー用品などもあるけど……まあそのあたりはどうでもいいか。
となると、俺にとって真っ先に必要になるものはっと……お、あったあった釣り竿。ええと、1000ポイントか……ちょっと高いけど仕方ないね。
「ねえねえ真嶋先生、質問いっすか?」
「ん? 何だ本条」
「釣り竿を購入するんだけどさ、糸と釣り針以外の部分はいらないから返品していい?」
「……また突拍子も無いことを」
何か呆れたように溜息を吐かれたが仕方ないじゃないか。動物から好かれないことに定評のある俺が、釣りなんかしてもただただ時間と体力を無駄に消費するだけだろうし。それに糸使いである俺にとってワイヤー状のものが手元にあるかないかで、試験の勝率が大きく変わってくる。たぶん。
「で、どうなんすか? ダメなら試験始まった後で橋本にでも押しつけますけど」
「橋本に何の恨みがあるんだお前は。……まったく前例の無い頼みだが、公平性を損なわないなら生徒の要望は聞き入れても問題は無いだろう。許可する」
「やった。じゃあ釣り竿3個買います」
「3個!?」
両手に一つずつと、予備でもう一つ。水や食料ならいくらでも現地調達するできるんだから、そうでないものから優先して買っていくのは当然の戦略だ。
あと一応1人用のテントに有栖からの指示でトランシーバーを購入して、余ったポイントで適当に水や食料を適当に買って準備万端かな。
「それから、お前達全員にそれぞれタブレットも支給される」
「え? トラベルミンを?」
「酔い止めじゃなくて電子端末だ。余計な上に分かりづらい茶々を入れるな本条」
「すんませーん」
「まったく……試験に支障をきたすような問題が起こった際もこのタブレットに通知が来るようになっている。さらに無人島の地図を閲覧でき、指定エリアや自身の現在地、現在自身が獲得した得点、参加できる課題や報酬内容等もリアルタイムで確認できる。また試験4日目から12日終了まで上位と下位のグループの得点や内訳も閲覧可能だ。さらに6日目以降からは1点を消費して全生徒の現在地をサーチできる機能が解禁される。タブレットは必要不可欠なため、スタート地点や課題の設置された場で充電可能だ」
ふむふむ、試験を優位に進める上で戦術的価値を秘めたデバイスみたいだね。……せっかく大自然を満喫できるというのに電子機器なんて無粋極まりないなあ。得点チェックと課題の確認以外の機能は極力使わんとこ。
学校側の説明はこれで終了したのか、真嶋先生はマイクのスイッチを切る。
「桐葉」
他の生徒達が並べられた商品のサンプルを確認しようと群がる光景を他人事のように眺めていると、同じくグループで購入する物を一通り決めたらしい有栖が声をかけてきた。
「どしたの有栖?」
「今回の特別試験試験において、最も手強い相手はおそらく南雲生徒会長でしょう。正攻法で挑めば貴方でも少々手に余るかもしれません」
「だろうね」
特別試験試験のルール、GPSの内蔵された腕時計、そしてこのタブレットの機能……それら全てがみやびん先輩を圧倒的優位たらしめる要素となる。無人島試験ということで正直楽観してたけど、こりゃ相当死力を尽くす必要があるね。
「ですので桐葉、試験中に今から言うことを秘密裏に実行してください。おそらく南雲先輩が終盤に行うであろう必勝戦術を打ち崩すための仕込みです」
「ん、了解。流石は有栖、頼りになるぜ」
……有栖から聞かされた南雲先輩対策は、この俺をして開いた口が塞がらなくなるほどぶっ飛んだものだった。
最愛の彼女に言う事じゃないのはわかっちゃあいるが……こいつ頭おかしいんじゃねーの?
試験ルール説明会正直あまり好きじゃないです……原作読んでない人のためにも省くわけにはいかず、基本的に内容を弄れないのに原作丸写しは規約違反、何より書いてて楽しくありません。