【ドーレ港】
船長にお礼をいい船から降りると、観光客や特にハンター試験希望者の人達がたくさん敷き詰めるように歩いていた。
その様子に後ろからレオリオさん、
「すげぇ人だな…えーと会場はザバン市だったな。」
クラピカさんが
「おそらく彼等のほとんどが我々と同じ目的なのだな。」
と僕と似た感想を言いながら降りてきた。
ややあってゴンくんも降りてきて、ひとまず遠くからでも分かる大きな案内パネルに向かった。
「ザバン市は…あっちの方角だな。」
とレオリオさんが指を指すとゴンくんは遮るように
「いいや、あそこの一本杉に行こう。」と言う。
僕は「一本杉?」と聞き返すと、どうやら先程ゴンくんは船長に
「最後にワシからアドバイスだ。あの山の一本杉を目指せ。それが試験会場にたどりつく近道だ。」
と教えて貰っていたらしい。それを聞いたレオリオさんは
「そりゃあおかしいぜ。見ろよ、会場があるザバン地区は地図にもちゃんと載ってるでかい都市だぜ。わざわざ反対方向の山に行かなくてもザバン直通便のバスが出てる。近道どころかヘタすりゃ無駄足だぜ。」
とその言葉に同調するようにクラピカさんも「彼の勘違いではないか?」とゴンくんに聞く。ゴンくんは首を横に振った。それを見た僕は、
「僕はゴンくんの言う一本杉を目指します。いいですか?僕が前に言いましたが、すでにハンター試験は始まっていて会場に向かう前から振るいに落とさなきゃならない。ですのでそのザバン直通便のバスとやらは罠だと思いますよ。仮に船長の言葉が嘘だとしても振るいに落としたいなら全員に言うはず、でもゴンくんだけに言った。船長からみてその行為のメリットはそこまでありません。ので船長の言う通りだと思いますよ。」
と思っていた事を口にした。ゴンくんも頷く。
僕の言葉を聞いたクラピカさんはそうだなと頷き、レオリオさんは嘘だったら許さねーからなとぶつぶついいつつ渋々頷いた。
***
しばらく一本杉を目指し歩いていると人の姿が見えない寂れた町についた。
レオリオさんは辺りを見渡しながら
「うすっ気味悪いところだな。
人っ子一人見当たらないぜ。」とこぼす。がゴンくんは
「でも…人いっぱいいるよね。」と言い、僕も
「えぇ、人の匂いがあちこちからしますよ。」
と賛同する。レオリオさんは
「な、何で分かるんだよそんなこと」
と慌てながら周りを見る。クラピカさんは冷静に
「息づかいが辺りから聞こえてくるじゃないか。」と話し
「うん、衣擦れの音もするし…隠れてるつもりかな。」
とゴンくんは付け加える。レオリオさんは俺だけなのか?と独りごちそれから
「ふ、ふん!あいにく俺は普通の人間なんでな。」
といじけた。宥める前にゾロゾロと人が現れ、僕、ゴンくん、クラピカさん、レオリオさんが警戒する。
中から1人の老婆が出てきた。そして…
「「ドキドキ……………
ドキドキ2択クイ〜〜〜〜〜〜〜ズ!!!」」
ドンドンパフパフ
……4人が固まっているのを他所に老婆は話を続ける。
「お前達、あの一本杉を目指しているんだろ?あそこにはこの町を抜けないと絶対に行けないよ。他からの山道は迷路みたいになってる上に凶暴な魔獣のナワバリだからね。」とスっと人差し指をあげ、
「これから一問だけクイズを出す。考える時間は5秒間だけ。もし間違えたら即失格。今年のハンター試験は諦めな。」と言われ僕は理解した。
「なるほど、次の道中試験ですね。」
「①か②で答える事!!それ以外の曖昧な返事は全て間違いとみなす。」
その言葉にレオリオさんは声を上げる。
「おい!ちょっと待てよ。この4人で1問って事か?」
そしてクラピカさんを指さしながら
「もしこいつが間違ったら俺まで失格ってことだろ!?」
指を指されたクラピカさんが
「あり得ないね。むしろ逆の可能性の方があまりに高くて泣きたくなるよ。」と挑発する。僕は、船の出来事が嘘みたいだ。喧嘩するほど仲がいいってやつなのかな…と思いつつ
「まぁまぁ落ち着いてください。逆に考えれば自分じゃ分からない答えも四人なら答えを知っている他の誰かが答えたら自分も合格になるんですから、ね?」
と二人を宥める。と"ずっと僕達をつけていた"他の希望者が姿を現し、
「おいおい早くしてくれよ。」と声をかけてきた。
「なんならオレが先に答えてやるよ。おっと悪いなボウズ、"たまたま"港で話をしてるとこ聞いちまってよ。」とニヤニヤと喋る。
「どうする?」と老婆に聞かれ
「…先を譲りましょう。急ぐ理由もありませんし問題の傾向も分かりますし。」と僕が言うと3人とも頷いた。
希望者は「お先に」と言い老婆の前にでる。
「それでは問題。お前の母親と恋人が悪党に捕まり一人しか助けられない。
①母親②恋人どちらを助ける?」
*
!!!問題を聞いた途端に
カネキの脳内はあの拷問がフラッシュバックする。
ヤモリが舌なめずりしながらケイさんとコウトくんを掴み僕に向かって『母親と子供。どっちを殺すか、えらべぇ?』 と。
カネキは左目と胸を抑え蹲る。
隣にいたゴンは直ぐにカネキの異変に気づき、「カネキさん大丈夫!?」とカネキの背を擦る。クラピカ、レオリオも気づき
お、おい大丈夫か!?
どうした!カネキさん
と近くに来る。
***
カネキは早まる鼓動と冷や汗が止まらない中、
フラッシュバックした映像を振り払うため別の思考と深呼吸を繰り返した。
(大丈夫だ。これはただの問題。深い意味は無い。それに僕は強くなったんだ。何も問題は"ない"そうだ。僕は大丈夫。僕は大丈夫。僕は大丈夫。僕は大丈夫。僕は大丈夫。僕は大丈夫。僕は、大丈夫。)
と落ち着かせていると、さっきの希望者は答えていたらしい。老婆の「通りな」という声が遠くから聞こえた。僕は再度深呼吸をし、3人に
「すみません…もう、大丈夫です。」
と顎に手をおきながら微笑んだ。
レオリオさんはそ、そうか…?と言ったあと老婆の方を向き、
「ふざけんじゃねぇ!こんなクイズ!!こんな問題人によって答えは違うし『正解』なんていう言葉で"くくれる"もんじゃねー!ここの審査員も合格者も全部クソの山だぜ!!俺は認めねぇぞ!」
「!?わかっ『まちな!』(黄色い猫目のボウヤは気づいたようだね)」
「これ以上のおしゃべりは許さないよ。ここから余計な発言をしたら即失格!さぁ答えな
①クイズを受ける②受けない」
「①だ!!」
(気づけレオリオ!簡単なトリックだ。)
「それじゃあ問題だ。息子と娘が誘拐された。1人しか取り戻せない。
①娘②息子どちらを取り戻す?」
「「「..........」」」
ゴンくん、僕も無言。レオリオさんはイライラしながらもクラピカさんが先程分かったと言いかけたためクラピカを睨みつけるように見る。
「5〜4〜3〜2〜1〜」
クラピカさんは答えない。
「ぶーー終〜〜了〜〜」
その瞬間レオリオさんはクラピカさんの胸ぐらを掴む。
殴ろうと拳を振り上げた時、「合格じゃ」と老婆の声が響き渡る。
その言葉にレオリオさんは動きを止めた。そしてクラピカさんは口を開けた。
「沈黙。それが正しい答えなんだ。いみじくもキミが言っただろう『正解なんて言葉ではくくれない』その通り、このクイズに正解なんてない!しかし解答は①か②でしか言えないルールだ。つまり答えられない。沈黙しかないんだ。」
レオリオさんは掴んでいた手を離し
「しかしさっきのやろうは…!」と言うと
「"合格"とは言っていない。"通れ"といっていた。先程悲鳴も聞こえた。つまり通れと言われた道は正しくない」
老婆は続けるように「その通り。本物の道はこっちだよ。一本道だ。2時間もあれば頂上につく。」
その言葉を聞いたレオリオさんはクラピカさんと老婆に向かい
「クラピカ…バアサンも……すまなかった。」
「何を謝ることがある。お前みたいなやつにあいたくてやってる仕事さ。頑張っていいハンターになりな。そして、一本杉の下の一軒家に住んでいる夫婦は
「…ああ。ありがとうバアサン。」
とずっと黙っていたゴンくんが
「ダメだ。どうしても答えがでないや!」とぷはーと息を吐く。
「……ふふ」
「なんだよゴン。もういいんだぜ。」
「?何で?」
「もうクイズは終わってんだ。」
「それはわかってるよ。__でももし本当に大切な二人の内1人しか助けられない場合に出会ったらどうする?」
ゴンくんの言葉にまた胸がズキンと痛む。(……。)
「どちらを選んでも本当の正解じゃないけれど、どちらか必ず選ばなくちゃならない時いつか来るかもしれないんだ。」
「ゴンくん…そう…だね。でもこの話はこの辺でやめて…先に、進まない…?」
ゴンくんは僕の雰囲気に気づいたのか
「う、うん…クラピカ、レオリオ先に進もう。」と歩き出した。
(…なんじゃあの白い青年の顔は…。まるでその場面に何度も出会ったかのような……)静かになったその場で1人カネキの独特な雰囲気に冷や汗を垂らす者がいた。
***
辺りはすっかり暗くなり、仄暗い不気味な山道を4人はまだ歩いていた。後ろから全然つかねぇじゃねぇからとぶつぶつ悪態つくレオリオさんに苦笑していると先頭を歩いていたクラピカさんが
「見えてきたぞ!……だが明かりがないな。それに静かだ。我々以外に受験者は来ていないのか?」
と言いログハウスに近づく。
扉につきレオリオさんがノックしようとした所を僕は腕を掴み、口元に人差し指を当てながら
「中から血の匂いがします。気をつけてください。」
とレオリオさんの腕を離し囁く。レオリオさんからゴクリと飲む音が聞こえ、
コンコンとノックをした。返事は無い。バッと勢い良くレオリオさんが扉を開けると、手足が細長く狐のような顔立ちをした見た事ない生き物が女性を抱き抱え、後ろには夫と見られる男性が血を流して倒れていた。
人質がいる為、全員が手を出せない隙に僕達真正面からすり抜け森に逃げていく。僕とゴンくんがすぐに動き、ゴンくんは
「クラピカ!レオリオ!けが人を頼む!!」と叫んだ。
「ああ!」
「任せとけ!」
僕は走り出して遠くから聞こえてくる返事を聞きつつ、前に集中する。ゴンくんは人間とは思えない身のこなしで木の中をスイスイと進む。僕が関心していると、謎の獣が顔だけこちらにむき
「腕ずくで取り返しな!!クケケ」
と人の言葉で話してきた。
ゴンくんははしゃぎながら
「すごいや!アイツ喋ったよ!」と目を輝かせていた。
「そ、そうだね…。」
(やっぱり僕のいた世界じゃないなぁ…)と思っていると
ゴンくんは「言葉が通じるなら話が早いや!」と言うや否やな
「やーい!コラ!へっぽこぉ!」と相手を挑発した。(獣がそんな挑発に乗るのか?)と驚いていると獣が一瞬動きが鈍くなった。
ゴンくんはその一瞬で間合いを詰め、釣竿で獣の頭を叩いた。獣は両手で頭を抱えたため女性が落ちてくる。
「カネキさん!女の人を!」
とゴンくんが叫び、僕もゴンくんの下まできて女性をキャッチする。涙目で頭を抱えていた獣は、
「ギィ!このガキ覚えてろよ!」
と捨て台詞を残し逃げる。
すかさずゴンくんは待て!と後を追って行った。ゴンくんの姿が消え辺りには誰もいなくなる。
僕は女性をゆっくり地面におろしたあと
「さて、貴女もさっきと同じ獣ですよね?正体現したらどうですか?」
と言うと、ビクビクと震えていた女性はピタリと止まり口元を歪め「なぜ分かった」と問う。
「貴女から……人の匂いがしない。先程の獣と同じ匂いがします。それと、後ろに隠れているのも…わかっていますよ?」
と後ろへジロリと殺気を放つ。ガサガサと茂みから獣が手をあげながら姿を現し、
「ま、待て。お前達を試していたんだ。俺たちは
「…それを信じろと?」
とピンと空気が張りつめる中、遠くからお〜〜いとゴンくんの声が聞こえ
だんだん月明かりに照らされ、ニコニコしながらゴンくんが手を振っていて、隣にも追っていた獣が歩い来るのが見えた。一先ず僕は殺気を解くと、手を挙げていた獣はふぅと息を吐いた。近くまできたゴンくんに
「ゴンくん大丈夫?」と聞くと
「うん、大丈夫だよ!話たいことがあるし小屋に戻ろう」
と言われ獣達と共にログハウスに戻った。
ゴンくんが男性と女性から出てる獣の長い耳を指さし「わ!すごい!」と楽しそうな声を出すと、合流したクラピカさんが
「彼等は人語を操れる
と説明してくれた。その変幻していないキリコが
「…ゴホン、さて我々が
ゴン殿はとてつもなく人間離れした運動能力、観察力。
合格だ。」と答え、女性キリコが
「カネキ殿はすぐに正体を見破った観察力、逃走中もしっかりついてきた運動能力。…合格です。」と続き男性キリコが
「クラピカ殿は的確な判断力が優れ、レオリオ殿は最後まで我等の正体には気づかなかったですが的確な応急処置、妻を案じる演技をしていた私にずっと励まし続けてくれました。よって合格です。」
「全員合格!よって今すぐ会場に案内しよう。」
とキリコ達は腕を翼に変幻させた。
(次話:2023/03/18 12:20)