ドンブラザーズ×ウマ娘 俊足の残夢   作:ホシボシ

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ドン四話 バイバイのマホウ-3

 

「おひさしぶりです雉野さんっ!」

 

ニシノフラワーがニコニコと笑っている。

それはきっと、横にいる美咲トレーナーが理由でもあるのだろう。

 

「再契約結べたんですね。いやぁ、安心しました」

 

「ありがとうございます! 本当に雉野さんたちのおかげですよ」

 

それになんといっても差出人不明の荷物だ。

そこにあるAI技術を発展させ、さらには玉野トレーナーのデウスをもとにして、美咲は新しい育成アプリ『グランドマスターズ』を作り上げた。

まだ試作の段階だが、それでもニシノフラワーはみるみる成長していき、見事に再契約テストを余裕で合格する活躍を見せたのだ。

チャンピンズミーティングでも見事に一位に輝いたらしく、今日は瀬戸内たちと同じチームでレースがあるらしい。

再契約云々は事前に知らされていたが、今日雉野が呼ばれたのはお礼だけではない。

新しいお願いがあったからだ。

 

「でも心配ですね」

 

「はい……いたずらだとは、思うんですけど」

 

客が入り始めてからのことだった。

インターネット掲示板で、この会場を『爆破してやる』とういう書き込みがあったのだ。

既に爆弾も用意されているらしいが、今のところ千里眼が怪しげな人物を捉えたとの報告はない。

 

「秋山理事長は中止を訴えているようですが、会場側や他のところは千里眼も導入したのでと、レースは続行するようです」

 

しかし美咲としても不安は不安だ。

万が一のことがあってはならないということで、雉野に警備を依頼したのである。

 

「すみません。久々でこんなことをお願いして……」

 

「いえいえ! 任せてください。ヒーローですから、僕!」

 

雉野は考えた。もしも犯人が本気で事件を起こすつもりならば、さすがに警備情報くらいは入手しているだろう。

千里眼は相当に優秀だと聞くが、その監視範囲はあくまでも会場の中だけ。

高性能の爆弾であれば外から爆発させることで会場に甚大な被害をもたらすだろう。

 

雉野は一度、会場の外をパトロールしてみる。

しばらく歩いていると、何やら怪しい動きをしている老人を見つけた。

 

「あ、あの、どうしたんですか?」

 

もしやと思って、声をかけてみると、どうやら老人は落とし物をしてしまい、困っているようだった。

 

「何を落としたんです?」

 

「いやそれがその……、会員証みたいなもので。黒いカードなんだけど」

 

「はぁ、どこのお店のですか?」

 

「それが、その……」

 

「?」

 

「なんというか……だね」

 

ははあ、雉野はそういうことかと笑みを浮かべる。

きっとキャバクラだかエッチなお店だとか、そういう類のものなのだろう。

 

「わかりました言わなくてもいいです。まあ、それらしいのがあったら届けますから連絡先を教えてもらってもいいですか?」

 

「本当かね! いや助かる。とても大切なものなんだ。見つけてくれたら謝礼も出すよ!」

 

「え?」

 

「弾むから。期待していてくれ」

 

お金をたんまりもらう。

みほちゃんが喜ぶ。

みほちゃんと旅行。

みほちゃんが喜ぶ。

 

「みほちゃぁああああああん!」

 

「!?」

 

「任せてください! すぐに見つけますから! みほちゃん待っててねぇーッ!」

 

雉野は目の色を変えて、会員証を探しに走りだした。

 

 

 

 

「げほっ! げほ! ああ、クソ!」

 

犬塚翼は鬱々としていた。

逃亡生活が続いていたから、まともな飯を食っていなかったのが悪い。

強いストレスがかかっていたのも原因だろう。

そこに断絶の波動で川に吹っ飛ばされたのがトドメとなったようだ。

 

つまり、風邪をひいてしまった。

知り合いの田辺誠という青年が彼女と長期の旅行中であり、その間、部屋を使わせてもらえるため、ベッドが使えるのは幸いだった。

そうしているとインターホンが鳴る。

重い体を起こして扉を開くと、そこには(いぬい)龍二(りゅうじ)が立っていた。

 

「買ってきましたよ! 薬とヒエヒエシート」

 

「ああ、すまなかったな」

 

龍二はちょっとした手違いでほんの少しだけイヌブラザーになった男だった。

どうやら空港で田辺と仲良くなったようで、そこで犬塚のことを知ったらしい。

久しぶりに会いたいと来てくれたようだった。

 

「歌はどうだ?」

 

「はい。あれから、なんだかんだバンドを組むことになりまして」

 

「ほう。孤独が売りだったんじゃないのか?」

 

「慣れあいは嫌ですけど、同じ方向を向いた仲間となら、なんとかやれると思って」

 

「そうか……彼女はどうだ? 祥子ちゃんだったか?」

 

「はい。おかげさまで仲良くやってます。今度結婚しようって」

 

「そうか。それはよかったな……ごほっごほっ!」

 

とりあえず薬を飲もう。

犬塚が水を口に含むと、その時、天井をぶち破って頭が『城』の男が着地してきた。

 

「ぶぅううう!」

 

「おわぁ! な、なんだテメェは!!」

 

ひっくりかえる犬塚と龍二。

犬塚は、すぐに来訪者がゴールドシップのトレーナーである王城だということに気がついた。

 

「な、なんの用だ!」

 

『ゴルシ! ゴ……ッ! るッッ! シ!?!?』

 

「は?」

 

『ルッッ! ルシッ! ゴルシ! ルシファー!!?!??』

 

「わからん! 普通に話せ!」

 

『突然すみません。今日は犬塚さんにお願いがあって来ました』

 

「普通に話すな! い、いや、それでいいのか? ん? ゴホッゲハッ! あぁ、ダメだ! 疲れる! しんどいぞ!」

 

「んなことより天井が! 普通に入って来いよ!」

 

『これは失礼しました。今、天井修復光線を撃ちますので』

 

王城トレーナーは目から赤いレーザーを発射して、ぶち破った天井を一瞬で直した。

そこに触れるだけの気力はないので、犬塚は要件を先に聞くことに。

 

『実はチームレースというものが開かれるのですが、うんぬんかんぬん……でして』

 

「ほう、うんぬんかんぬんか」

 

『はい。ですので、手を貸していただけないかと……』

 

「確かにそれは大変だな。だがあいにくとオレはこんな状況だ……。しかし待てよ」

 

『?』

 

「いい案がある」

 

 

 

 

「ここは……」

 

ジロウは周囲を見回す。

サングラスの男に連れてこられたビルの中には、他にもたくさんの人がいた。

なんだかやけに煌びやかな装いをしているが、サングラスやマスクをしているものがチラホラと見える。

客席があり、タブレットが並び、そこにはレース場の映像が映し出されている。

中央にある巨大なモニタにも、これからはじまるチームレースが中継されるようだった。

ライブビューイングというヤツだろうか? しかし何かがおかしい。目に入るものや、他の人間の様子から引っかかるものを感じていたが、グラサン男の一言でそれは確信に変わった。

 

「アンタ、どの順番にする?」

 

それで確信をもった。

ここにいる人間は、ウマ娘のレースで『賭け』を行っているようだ。

本来の競馬で考えればおかしな行為ではないが、ウマ娘の世界において、このように隠れながらコソコソ行っているということは、おそらくは禁止されていることなのだろうと予想する。

するとアナウンスが流れた。

どうやら会場に爆弾を持っていくという予告があったようだ。

この集まりに大きな影響があるようで、客たちは不安げにザワつきはじめる。

 

「最近この会合を邪魔しようとする過激派がいるらしくてな。困ったもんだ」

 

サングラスの男はジロウに話しかけたつもりだったが、既に彼の姿はどこにもなかった。

 

 

一方、会場の外では雉野と、会員証を落とした『岡』という老人が肩を並べて歩いていた。

一度まだ見つからないと報告をしたのち、少し会話をするうちに雉野は妻であるみほのことを話した。

すると岡は少し羨ましそうにそれを聞いて、やがて身の上話を始める。

 

「私は今まで典型的なダメ夫でね。仕事をして金を稼いでいれば何をしてもいいと思っていた。タバコ、酒、ギャンブル、女、妻には随分と迷惑をかけたよ……」

 

雉野を直視できないのか、地面を見つめている。

 

「妻が、病気になってね。少し珍しい病気で、最先端の治療を受けさせてあげたいんだが、金がいるんだ」

 

「そ、そうだったんですか……、すみません。そうとは知らずに僕……」

 

「いや、いいんだ。それで例の会員証、あれはもしかするとその問題を解決してくれるかもしれない希望でね。だからなんとしても見つけたいんだよ」

 

「そういうことだったら絶対に見つけましょ──」

 

「あれ? 雉野さん?」

 

「ん? あっ、桃谷さん!」

 

ジロウは大きく手を振ると雉野たちのもとへ駆け寄ってくる。

 

「ちょうどよかったです! これ見てください!」

 

ジロウは黒いカードを雉野に見せた。

すると思わず岡が声をあげる。

 

「あッ! こ、これだ! これが会員証──!」

 

雉野はホッとしたが、反対にジロウは岡を睨みつける。

 

「そうか! お前だったのか! 悪いヤツめ!!」

 

ジロウは岡に掴みかかると、背負い投げでも決めてやろうかと踏ん張った。

しかし血相を変えた雉野が岡を押さえ、ジロウから引きはがそうと力をこめる。

 

「わ! わっ! わ!! なにやってるんですか桃谷さん! やめてください!!」

 

「雉野さんこそ! この人は悪い人なんですよ!」

 

「なんなんですかいきなり! そんな失礼な!!」

 

「だからですね……!」

 

ジロウは説明しようと思ったが、ちょっと待てよと固まった。

ここで言っていいものだろうか?

あのサングラスの男のように、他にもあちら側の人間が潜んでいるかもしれないし。

 

「………」

 

「桃谷さん?」

 

「だ、だから──って、あーッ!!」

 

ジロウが指をさす。

そこには全速力で逃げ出す岡の背中があった。

 

「逃がしませんよーッ!」『龍虎之戟!』

 

「ちょッ、ちょちょちょ!」『ドン! ブラスター!』

 

「アバターチェンジ!」『超一龍! アチョォーッッ!!』

 

「あッ、アバターチェンジ!」『よッ! トリッキー!』

 

ドンドラゴクウは飛び上がり空中を一回転。

そのまま勢いをつけて岡の前に着地するはずだったが、空中でキジブラザーに掴まれて、二人はもみ合いながら地面に墜落した。

 

「ちょっと雉野さん! 邪魔しないでくださいよぉ!」

 

「だぁから! 事情を説明してくださいってば!」

 

「あぁ、えっと、ですから──ッ!」

 

そこでキジブラザーとドンドラゴクウの全身から火花が散った。

 

 

 

 

「桃井タロウ!」

 

「タロウ様!」

 

「おお、奇遇だなお供ども」

 

慌てた様子の猿原と真利菜を前にして、桃井タロウは平然としていた。

だが無理もないと猿原は言う。タロウは事情を知らないのだ。

 

「どういうことだ?」

 

「今この会場には千里眼という特殊な警備システムが作動している。まあ要するに進化した監視カメラと思ってくれればいい」

 

「ほう」

 

「それが、キミの荷物に異常があると検知したんだ」

 

普通の段ボールならば中が分かるようになっているのだが、どういうわけかタロウが持っているものは黒塗りになっており識別不明と出た。

そもそも今この状況下で荷物が送られてくること自体がおかしい。

よって猿原たちが駆けつけたというわけだ。

 

「気を付けてくださいタロウ様! 爆発物の可能性があります!」

 

「なんだと?」

 

「送り人の名前や住所はどうなっている?」

 

「いや、特に変哲のない名前だが……」

 

「偽名の可能性があるな。品物は何と書いてある?」

 

「爆弾とあるな」

 

「それだ!」「それです!」

 

「騒がしいぞお供ども。何を慌てている」

 

「慌てるに決まってるだろ! というよりそんなものを運んでくるな!!」

 

「と、とにかくそれをこちらに渡してください!」

 

「それはできない」

 

「ど、どうしてですか?」

 

「確かに爆弾と書いてあるが、本物かどうかはわからない。そもそももしも本当に爆弾なら、わざわざ馬鹿正直に書くものだろうか?」

 

「それはまあ、一理あるが……」

 

「俺は嘘がつけない。それが周りからしてみれば、なかなか不便なものだということくらいはわかっているつもりだ。だとすれば、悪戯の可能性もある」

 

「ッ、わかった! 中を見てみればいい!」

 

「それはできん。配達人として、荷物はきちんと届ける義務がある」

 

「そんなことを言っている場合か! とにかく渡すんだ!」

 

猿原が一歩前に出た時だった。

 

「待ちな!」

 

猿原はビクっと肩を震わせて停止する。

声がした方向を見ると、革ジャンにオールバック、そしてサングラスをかけた男が歩いてきた。

 

「オレは、孤独しか愛せない男……!」

 

「キミはたしか、乾龍二だったか」

 

「その通り。お久し……久しいな。魂の兄弟たちよ」

 

「真一さん、どなたですか?」

 

「前に少しな。それでなんのようだ」

 

「用があるのはそこの配達員のお兄さんだ。火傷したくなかったら、持ってる荷物を大人しく渡しな」

 

「断る!」

 

「んなッ! い、いや……、まあいい。だったら仕方ねぇ」『ドン! ブラスター!』

 

龍二は犬塚から借りたギアを装填し、走る。

 

「アバターチェンジ!」『イヌブラザー!』

 

「ほう、面白い! ちょうどいい機会だ! 猿原、真利菜! お前らも荷物が欲しければかかってくるがいい!」

 

タロウは荷物を置くと、代わりにドンブラスターを手にする。

 

「テストをしてやる! アバターチェンジ!」『ドン! モモタロウ!』『よッ! 日本一!』

 

「やれやれ、なぜそうなる……! アバターチェンジ!」『サルブラザー!』

 

「タロウ様! 参ります! アバターチェンジ!」『オニシスター!』

 

ドンモモタロウはまずは置いておいた荷物を抱え上げると、後ろから来たイヌブラザーのスライディングを最小限の動きで回避してみせる。

 

「そらぁあ!」

 

直後、その持っていた荷物を思い切りブン投げた。

 

「きゃあああ!」

 

「なにをやっている! 真利菜ぁ!」

 

「は、はいぃ!」

 

サルブラザーが手を真上に上げると、飛び上がったオニシスターが掌を踏んで、さらに大きくジャンプした。

しかし完全に意識がそちらのほうを向いてしまっている。

ドンモモタロウは容赦なく銃を連射して上昇中のオニシスターを蜂の巣にして墜落させる。

 

「こんの!」

 

イヌブラザーが飛んできた。

しかしドンモモタロウは力なく倒れ、そのせいでイヌブラザーの手は空を切る。

アルターチェンジだ。

小型ロボットは猛スピードで飛んでいき荷物をキャッチすると、安全な場所に運んでいく。

だがしかしアルターチェンジ中は本体は無防備、サルブラザーはすぐに声を荒げた。

 

「イヌブラザー! 本体だ!」

 

「へ?」

 

「倒れてる本体を叩け! ロボットに精神を移してる!」

 

「あ、ああそうなのか。てっきり気分が悪くなって倒れたのかと思ったぜ……」 

 

そうと決まればイヌブラザーは手裏剣を取り出して──

 

「甘いわ!」

 

「ほげぇえ!」

 

ガチャリとレイヤー世界の扉が開いてアルターが飛び出してきた。

突進でイヌブラザーを吹き飛ばすと、元の体に精神を戻す。

 

「真一さん!」

 

オニシスターは猿原の名を呼び、ドンブラスターを投げる。

サルブラザーは二丁に構えた銃を連射し、ドンモモタロウを狙った。

 

「アバターチェンジ!」

 

サルブラザーは困惑した。

ドンモモタロウの声は聞こえれど、その姿がどこにもないのだ。

どこにいったのか探していると、脇腹に衝撃を感じて、体は浮き上がる。

 

『よッ! 特命戦隊!』

 

高速移動で一撃を与え、ドンモモタロウは地面を蹴る。

しかし、一瞬で距離を詰めたものの、刀にしっかりと金棒を合わせられた。

 

「ほう! 見事だ! 五十点!」

 

「写真家は一瞬のチャンスにフォーカスを合わせます。目には自信が──ッ!」

 

弾く。そして思い切りフルスイング。

 

「あるんです!!」

 

空振り。ドンモモタロウは後ろに移動していた。

 

「アバターチェンジ!」

 

光が迸り、顔に『火』の漢字が刻まれた侍に姿が変わる。

赤い大剣を振るい、金棒とぶつけ合った。

 

「あ!」

 

凄まじい力に圧し負け、金棒が手から弾かれた。

ドンモモタロウは踏み込み、大剣を振るいあげるが、そこでサルブラザーが割り入ってきて両手で刃を挟み止める。

さらにそこでオニシスターがサルブラザーを飛び越えて、そのままドンモモタロウの背後に着地した。

サルブラザーも無理やり大剣を奪い取った。

これで挟み撃ちかと思われたが──

 

「ぐあぁ!」

 

衝撃。見るとキジブラザーが銃を撃ちながら飛んできた。

さらにドンドラゴクウも追走しており、ドンモモタロウのもとへ滑り込む。

 

「大丈夫ですかタロウさーんッ!」

 

「桃井さんも襲われていたんですね!」

 

「なんの話だキジブラザー。今はテスト中、手出しは無用だぞ!」

 

「そうはいきません! やられっぱなしじゃ戦士が廃ります!」

 

そう言ってドンドラゴクウは矛を振り回してサルブラザーを攻撃し始めた。

それを援護するように射撃していくキジブラザー。

サルブラザーは回避するのがやっとである。

 

「何を言っている!? おい、やめないか!」

 

そうは言えど、二人は攻撃を止めない。

やむをえず、サルブラザーは走り、アバターチェンジでサメの戦士となって地中に飛び込んだ。

そうやってしばらく泳ぎ、地上に出ると変身を解除してため息をつく。

 

「やれやれ、いったいなんなんだ?」

 

「俺と勘違いしたんでしょうね」

 

「!?」

 

ただならぬ気配を感じて思わず銃をそちらに向けた。

その先にいた者を見て、一瞬、見間違いだと思ったが、何度も見てもそれはやはり『サルブラザー』であった。

 

「なに……ッ!?」

 

「驚きましたよ。まさか兄さんも同じ姿をしていたとは」

 

サルブラザーはバックル中央にある銀色の桃を押した。

すると光が体を包み、変身が解除される。

そこにいたのはラーメン屋で顔を合わせた『シライ』だった。

 

「なるほど。そちらが、"この世界の"サルブラザー、というわけだ」

 

「察しがよくて助かります」

 

「わからないこともあるさ。なぜ雉野つよしたちを攻撃した?」

 

「そりゃ兄さん。あの方たちが祭りを止めようとしていたからですぜ」

 

「祭り?」

 

時を同じくして、ドンモモタロウたちは断絶の波動を受けて吹き飛んでいた。

それを放ったのは強欲鬼ではなく、新たに現れた『憤怒鬼』であった。

かつて人間界に現れた救急鬼と姿がそっくりで、色だけが違っている。

そしてその隣には鬼のような形相の老人が杖をついている。

 

「あ、あの人です! 悪いなかでも特別悪いのは!」

 

ドンドラゴクウが指をさす。

 

「ウマ娘たちでギャンブルをやってたんですよあの人たちは!!」

 

視線が集まる。

男は鼻を鳴らした。

 

「いかにも。賭け屋のマツイ組たぁ、俺たちのことよ」

 

奇しくも同じような紹介をサルブラザーもしていた。

猿原はそれを聞いて、顎を触る。

 

「なんだ? マツイ組とは、ラーメン屋ではないのか?」

 

「ははは、お兄さんは意外と面白い冗談を言いなさる」

 

「なるほど。私たちの世界ではそうだが……ということか」

 

「よくわかりませんが、そんな綺麗なもんじゃありませんよ俺たちぁ」

 

とはいえ、やっていることはシンプルである。

客から参加費を集めて、ウマ娘のレースの結果で賭け事を行う。

それは本来禁止されていることなので、バレたりするのはよくないわけだ。

 

「あるいは兄さんみたいな『決められた運命を捻じ曲げようとする』要因も、ね」

 

「……なるほど、イカサマか」

 

なぜ瀬戸内トレーナーが狙われていたのか。なんとなくわかった気がする。

おそらく彼を襲うことで、サクラバクシンオーの順位を操作しようとしていたのだ。

 

「そうだろ?」

 

「聞こえが悪い。ただの、演出ですよ」

 

「……それより、一つ聞きたい」

 

猿原はドンブラスターを構える。

 

「それをどこで手に入れた」『ドン! ドン! ドン! どんぶらこー! 暴太郎!』

 

「なぁに、ちょいとばかり優秀な科学者さんが作ってくれました」『ドン! バックル!』

 

シライはバックルを腰に押し当てる。

するとベルトが伸びて、自動的に装着が完了した。

鳴り響く待機音、その中でシライはポーズをとる。

 

「変身!」『サルブラザー!』『よッ! ムッキムキ!』

 

青色の光と共に、シライの姿がサルブラザーへと変わる。

 

「私とは違うようだ。アバターチェンジ!」『サルブラザー!』『よッ! ムッキムキ!』

 

「確かに。俺は、仮面ライダーサルブラザーです」

 

 

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