ドンブラザーズ×ウマ娘 俊足の残夢   作:ホシボシ

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ドン一話 おウマのはなよめ-3

 

その翌日のこと。

美咲は真っ青になって走っていた。

フラワーが怪我をしたという話を聞いたからだ。彼女は怪我のことは美咲には言わないでほしいと周囲にお願いしていたそうだが、その中のサクラバクシンオーのトレーナーは美咲と親しかったので、勝手ながらも伝えたのである。

 

「大丈夫!?」

 

美咲は花壇の前にいるフラワーに声をかけた。

彼女のお気に入りの場所らしい。なのに、彼女はそこで泣いていた。

 

「ごめんなさい! わたしっ、ぐすっ! ひっく!」

 

勇気をもらった。

美咲がかけたその言葉は、周囲に圧されて自信を失っていた彼女にとっても『光』であったらしい。

だからもっと美咲に勇気を与えたいと思ってしまった。

その結果、張り切ってしまい、怪我をしてしまったのだ。

 

これがもしも美咲に知られれば彼は苦しむだろうから。ガッカリするだろうから。

だから、黙っておいてほしかったようだ。

 

「………」

 

美咲は悩んだ。どうすればフラワーを慰めることができるだろうか?

いくつか簡単な言葉は浮かんだが、どれも違う気がして、声を出すことができなかった。

ひとつわかることがあるとするならば、嘘はつきたくない。

彼女の苦しみがひしひしと伝わる中、飾った言葉を投げたところで釣り合わないからだ。

 

かと言って、また足りないのも嫌だった。

力がないから、経験がないから、だから半端に終わっても仕方ないという、そんな結末だけは嫌だった。

どうすればこの雨は止むのだろうか? あいにく、傘はもっていない。

 

「お花畑を照らすお日様になろう!」

 

美咲は思った。

正しいか間違っているかはわからないが、心をさらけ出せば何かが変わるかもしれない。

 

「キミをスカウトしたい……ッ!」

 

「え……?」

 

「キミは枯れない。ぼくが枯らせないッ! だからつまり、その……」

 

首をかしげる。あんなことを思っておいて、さっそく格好をつけすぎたか?

 

「と、とにかく! ぼくの担当になってくれませんか!?」

 

「!」

 

「リハビリ一緒にがんばろう! どんなことでも手伝うから! だから、とにかくとにかくっ! キミの力になりたんだ!」

 

フラワーはしばらく固まっていたが、やがて笑顔を浮かべて美咲の手を取った

 

 

 

 

「――ということがあって」

 

「へぇ、そうだったんだ」

 

「トレーナーさんのおかげでリハビリも上手くいって。それからそれから──」

 

お弁当を作ってあげたことや、そのせいでいろんな勘違いが生まれてしまったこと。

一緒に映画を見に行ったことや、ママみたいに励ましてあげたこと。

二人で夜にしか咲かない花を見たことなど、いろいろな思い出を端的に話した。

 

スカーレットは、ははあと納得する。

今ならウオッカの言っていたことがよくわかるというものだ。

 

「でも、ちょっぴり困ることもあって……」

 

「?」

 

「夜、眠る時とか、ふいにトレーナーさんの顔が浮かんでくることがあるんです。胸がぽかぽかするんですけど、なんだか眠れなくなっちゃって」

 

他にも以前ならば考えたこともないことが気になってきているのだという。

たとえばフラワーAと仲のいいウマ娘の一人に、マヤノトップガンという子がいるのだが、彼女が活躍するとSNSにトレーナーを悪く言う人がちらほらと出てきたのだという。

以前、授業でも『レースで勝てば勝つほどに注目を集める。それは時として信じられない悪意に触れることもある』と教えられたが、その意味がやっとわかった気がする。

 

ウマ娘にはファンがいて、応援している子が負けるとどうしても面白くないし、応援している子に近いトレーナーはどうしても目障りになってしまう。

現に、ウマ娘と担当トレーナーが結婚したというケースも珍しくはないのだし。

フラワーも改めて自分のことを調べてみたが、既にフラワーが勝てないのは美咲のせいだというコメントを見かけてしまった。

それはとても苦しくて、つい練習をがんばりすぎてしまうと。

 

「負けるのは、わたしに光るものを見出してくれたトレーナーさんの目が嘘だったことになる気がして嫌なんです。でも勝ってもトレーナーさんが他の人を応援してる人たちとか、わたしのことを応援してくれてる人からやきもちを焼かれて悪く言われたりするのも嫌で……わたしだけなら大丈夫なんですけど……」

 

もっと何も考えずに走れるものとばかり思っていたが、どうにも変にいろいろ考えてしまうのだという。

そのころ美咲も、大きな問題点をトコから指摘されていた。

 

「キミは、フラワーを想いすぎ」

 

「えっ?」

 

「過去のトレーニング記録を見た。疲労からくるパフォーマンス不足と、それによるトレーニングの失敗率が高まるのはわかるけど、デウスで調べたところこの時の失敗率は約10%程度。これなら目視で大丈夫とわかるはず。なのにキミはフラワーを休ませている。それが、結果として、トレーニング量の低下につながってるってこと」

 

「それは、その……」

 

「たしかに私もそれが気になったわ。まあ、フラワーちゃんがリハビリで苦労したという過去があるのはわかるけど、アスリートに怪我はつきものよ。なかには万全の状態なんてないって人も多数いる。でもみんなそれを理解した上でパフォーマンス向上を目指すの」

 

美咲は何も言い返せなかった。

結局、この日はこれで勉強会が終わり、美咲たちは部屋に戻った。

といっても、約束通り、そこはトコたちが使うことになるので、美咲は荷物をもって実家のほうへと向かうことに。

日用品はリュックに入る程度でいいが、資料等が多い。

それは雉野が運ぶのを手伝ってくれることとなり、歩くこと十五分くらいで実家に到着する。

 

「綺麗なおうちですね」

 

それなりに、広い。

なんでも父親が有名なゲーム会社の開発担当らしく、幼いころはたくさんゲームで遊んだものだ。

 

「だから運動が苦手になちゃったんでしょうけど」

 

そういって美咲は苦笑した。

 

「これでよし! すみません雉野さん。わざわざ手伝ってもらっちゃって」

 

「いいんです。僕にはこれくらいしかできませんから」

 

「お礼にお茶でも飲んでいってくださいね。お菓子もありますから!」

 

そういうと美咲はティーセットを持ってきて、慣れた手つきで紅茶を淹れる。

 

「へぇ、なかなか本格的ですね」

 

「料理と一緒に始めたんです。フラワーが喜んでくれるかなって」

 

「なるほど。で、どうでした?」

 

「え、えへへっ! まあ、その、喜んでくれました」

 

「そうだ。トレーニング方法はどうでした? 何か役に立つものが得られましたか?」

 

「はい。浅口トレーナーも玉野トレーナーもやっぱりすごいです!」

 

美咲は今日教えてもらったことをかいつまんで説明する。

そして最後に言われたこともだ。

 

「フラワーちゃんを大切にしすぎている。ですか」

 

「ええ、まあ。気を付けてるつもりではあるんですけどね。やっぱりフラワーの泣いてる顔がチラついちゃってついつい怪我をしないことのほうに意識が……」

 

「気持ち、わかりますよ」

 

雉野は俯き、眼鏡を整えた。

 

「……大切な人は、どんなことをしても守ってあげたいですもんね」

 

「どんなことをしても、ですか」

 

「はい。どんなことをしてもです」

 

「ふふ、そうですね。それくらいの覚悟があったほうがいいですもんね」

 

するとそこで美咲のスマホが鳴った。

画面を見ると『瀬戸内(せとうち)トレーナー』とある。先輩トレーナーで、よく目にかけてもらっている間柄だ。

チャンピオンズミーティングは、三人のウマ娘が一つのチームとなって走るが、担当ウマ娘が足りない場合は他のトレーナーたちと組んで走る。

美咲と瀬戸内はチームメイトだった。

 

「雉野さんちょっとすみません」

 

「ああ、どうぞ。僕は気にしないで。席を外しましょうか?」

 

「あ、いえ。そこまでしていただかなくても大丈夫です」

 

そして、美咲は通話ボタンをタップする。

 

「もしもし、お疲れ様です」

 

『おい! 最悪のニュースだ! 今、カプリコーン杯の組み合わせが発表された!』

 

美咲は慌ててノートPCを開くと、メールを見て、組み合わせを確認する。

するとギョッとして、すぐにリモート通話システムを開いた。

そこには既に瀬戸内トレーナーと、同じくチームメイトである優しそうな女性である『里庄(さとしょう)』トレーナーの姿があった。

 

『見ての通り──』

 

その時、にゅッと、瀬戸内とカメラの間にサクラバクシンオーが割り入る。

故に、画面がバクシンオーの顔で埋め尽くされた。

 

『え? 邪魔だな……』

 

『トレーナーさん! お気づきのこととは思いますが! カメラをピカピカに磨いておきました! どうでしょうこの輝き!』

 

『え? ああ。うん』

 

『褒めて頂いても結構ですよ! えっへん!』

 

『あ、ああ。なるほど。いや、どうもありが──』

 

『高画質は気持ちがいいですからね。優れた環境も健全な学習には必要不可欠です!』

 

『……え?』

 

『はい!』

 

『いやッ、べつにカメラを磨いたからって画質は変わらないんじゃね?』

 

『なんと! ではおわびに桜餅をご用意しましたのでお召し上がりください! 会議は脳を使いますからね! 糖分補給は大切です! このさりげない気づかいもまた、学級委員長に必要なスキルですからね! さあどうぞ、熱いお茶も入れましたので!』

 

『あ! 勝手にお口に入れないで!』

 

『はいどうぞ! さあどうぞ!』

 

『もががが! ほががが!』

 

『遠慮せずにどんどん食べてください! トレーナーさん!』

 

『ひゃめろ! わふぁっふぁから! もういいっへッ!』

 

『美味しいですかトレーナーさん! バクシンしていますでしょうか!?』

 

『いれふひはっへッッ! おひ! ひいへんのは!』

 

『そうですかそうですか! はーっはははは!』

 

「あ、あのッ! 打ち合わせいいですか!?」

 

『これはこれはフラワーさんのトレーナーさん! 聞いてください。今朝、不思議な夢を見たんです!』

 

「夢ですか?」

 

『なんと別の宇宙で、別の私と別のフラワーさんがお付き合いをしていました! ですがご安心ください! 内容のほとんどを忘れているのですが、それでも私とフラワーさんは成人をしておりましたので非常に健全なものとなっております! 海辺が見える公園を手を繋いで散歩をしていました! とても仲睦まじい様子だったので私とフラワーさんは違う星のもとであっても模範的な──』

 

『うるせぇ! ほら! 桜餅がなくなったぞバクちゃん! おかわりがほしいな俺は!』

 

『ちょわ! さすがですトレーナーさん。もう召し上がったのですか! お任せください! 今すぐ次の桜餅を作ってまいります! バクシン! バクシーン!』

 

そう言ってバクシンオーはフェードアウトしていった。

 

「相変わらず元気がいいですね。バクシンオーさんは」

 

『悪いな、美咲。里庄も』

 

『いえ、それはいいんですけど。メール見ましたよ!』

 

里庄は、画面に対戦相手のウマ娘たちを表示していく。

 

『一組目はチームファーストで活躍していたデュオペルテ。予選では常に上位のブックオブシュガ―。そしてチームメーク☆アップの一番星であるシルバーベリー!』

 

『そいつらだけでもヤバいってのに二組目は無敗のヤマニンゼファーを筆頭に、ジャズステップとエクセレンシーだぞ? ファンからは既にアブソリュートという名前をつけられて、ユニットファンまでいる始末ときやがった!』

 

「スランプとリハビリ明けってだけで、本来はBグループに入るべきではない器と言われたウマ娘たちがまさか同じグループだなんて……!」

 

『俺らは完全にかませ枠だな……!』

 

話を聞いていても雉野にはピンとこなかったが、まあ要するに美咲たちと戦うウマ娘は、かなり強いということだった。

 

『もっ、もうおしまいだよぉ!』

 

里庄の担当ウマ娘である『ミッショナリ―』も頭を抱えていた。

確かにデータだけ見ると、すべてを凌駕しており、一人くらいは抜くことはできてもグループ内での優勝は絶望的に思えた。

なかでもミッショナリーはチームの中ではここ最近、調子がよくないので、自分がビリになるイメージが固まってしまっているのだろう。

 

「おちついてくださいナリーさん。ここまでこれただけでも凄いことなんですよ」

 

『うぅぅ、そうですよね、ありがとうございます……美咲トレーナーさん』

 

『だがナリーの気持ちもわかる。まさかこうまで格上相手とマッチングしちまうとは……』

 

『やや!?』

 

そこで戻ってきたバクシンオーが画面を凝視する。

 

『トレーナーさん! 私はたしか決勝は長距離だと伺ったのですが……!』

 

『――超・長距離だ』

 

『!?』

 

『確かに説明が足りなかったことは謝ろう。だが1200mを全力を超えて走ることができれば、その時のスタミナ消費量は3200mを走る時を凌駕する』

 

『それはつまり! 長距離を走るのと変わらないということですか?』

 

『その通り! 流石は委員長! 頭がいい!』

 

『えっへん! あれ? でも……』

 

『喝ッッ!』

 

『ちょわ!』

 

『お前は音速を超えて光となれ。そうすれば距離の概念さえ置き去りにできる。時間も同じだ! それはいまだ誰も至れぬ境地。一番最初に到達するのはお前だ。サクラバクシンオー!』

 

『……ごくり!』

 

『1200を超えて、3400を超越し、お前はやがてゼロに還る。これは短距離ではない。長距離でもない。そう! 究極──』

 

『超・長距離!』

 

『え? あ! そう! それだ!』

 

『そうでしたか! ありがとうございます! このサクラバクシンオー、伝説となります!』

 

『だったら練習あるのみ! 行け! 本番はすぐだぞ!』

 

『バクシーン!』

 

再び声が遠くなっていく。

 

「……瀬戸内さん。いつか怒られますよ」

 

『いつかが来たら謝るだけだ。それより、お前のほうは大丈夫なのか?』

 

「………」

 

『今回ので勝てなかったら、フラワーとの契約解除の話も出てるんだろ?』

 

「……はい」

 

『まあ理事長は優しいから、想いを伝えれば乗り切ることはできるかもしれないが、周りはどう思うかだな』

 

明確に答えを返せぬまま、会話は進んでいく。

 

『まあ、どれだけ強かろうが相手も同じウマ娘だ。調子の良し悪しもあるし、ペースさえ崩せれば飲み込めるかもしれない。いっちょやってやろうぜ』

 

瀬戸内のこの言葉で打ち合わせは締めくくられた。

美咲はノートパソコンを閉じて、雉野を見る。

 

「すみません雉野さん。長々とお待たせてしてしまって」

 

「それはいいんですけど、ちょっといいですか……?」

 

「?」

 

「あ、あの。ちょっと思ったんですけど……」

 

一時間後、美咲たちはトコたちのもとへと戻っていた。

 

「なるほど。つまり、こういうこと?」

 

トコと、梨花は、複雑そうな表情の美咲を見る。

そしてすぐに、その提案をしてきた雉野のほうへと視線を戻した。

 

「フラワーAのかわりに、うちのフラワーBを走らせる。と」

 

美咲の目には、覚悟の焔が宿っていた。

 

 

 

 

「んもぉー、ひどいですよ皆さん。ボクにも教えてくれればよかったのに」

 

「ごめんごめん。いろいろ突然で説明するの忘れてて」

 

喫茶どんぶら。

桃谷(ももたに)ジロウは、チョコレートサンデーを食べながら不満げな表情を浮かべている。

彼もまたドンモモタロウと同じくドン家のものであり、ドンドラゴクウに変身して脳人やヒトツ鬼と戦っているのだ。

 

「それで、雉野さんが協力したいっていう美咲さん……でしたっけ? どうなったんですか?」

 

「さあ? うまくやってるんじゃない?」

 

「ひどいなぁ、皆さん。手伝ってあげればいいのに」

 

「アスリートが負けられないのは皆、同じこと。そこに超人的なヒーローである我々が入りすぎるのは好ましいものではない。雉野一人くらいで十分というわけだ」

 

猿原は端の席でほうじ茶を飲んでいた。

 

「そんなこと言って。手伝いうのが面倒なだけなんじゃないですかぁ?」

 

「やれやれ、まだわからないのか。よろしい、ではここで一句、ハードルを駆け抜け──」

 

「ところで、はるかさん、さっきから何を見てるんですか?」

 

「これね。つい最近、ネットに現れた謎の歌姫」

 

「おい!」

 

猿原は不愉快そうに立ち上がると、ジロウと共にはるかのスマホを覗き込む。

そこには仮面をつけた女性が歌っており、再生数がどんどん上がっている。

 

「めちゃめちゃ上手いの。思わず聞き入っちゃった」

 

ダンス。パッション。ボーカル。ビジュアル。メンタル。どれもが目を惹く。

まさに超新星の到来であった。

 

「でも、どうして仮面をつけてるんでしょう? 不細工なんですかね!」

 

「最近のアーティストだとそう珍しいものでもないわよ」

 

はるかは腕を組んで首をかしげる。

 

「でもなーんか。フラワーちゃんに声が似てるような……」

 

「いやいや。どう見ても年齢が違うが」

 

「それは、まあ」

 

「あ、見てください。また仮面の女の人が出てきましたよ」

 

「プロデューサー兼マネージャーよ。二人は結婚してるらしいんだけど、こっちもなーんか……」

 

はるかが続きを口にすることはなかった。流石にありえないと思ったのだろう。

一方、猿原はジロウの横に、ノートパソコンあるのを発見した。

 

「それは?」

 

「よくぞ聞いてくれました。中古で買ったんですよ!」

 

「キミがか? なぜ?」

 

「お金がない猿原さんには理解できないでしょうけど、今はなんでもデジタルの時代なんです!」

 

「そ、それくらい知っているとも! 何に使うのかと聞いてるんだ。キミの目的であるタロウを超えることとは関係がないように思えるが」

 

「ボクはみなさんのリーダーになるために改めてちゃんと勉強することにしたんです。これがあれば俳句も書けるし、漫画も描けるし、仕事にだって使えるし、強くなる方法を調べることだってできるんですからね! そうだ、さっそくSNSも初めてみたんですよ!」

 

そう言ってジロウはホーム画面を見せてくる。思い切り本人の写真で、本人の名前だった。

 

「はるかさんをフォローさせていただきました!」

 

「うげッ!」

 

「なんで嫌そうな顔をするんですか!」

 

(嫌だからだよ……)

 

「そういえば今、新作を書いてるんだとか!」

 

「ん、まあね。初恋王子VS初恋ハンター。フラワーちゃんの件でビビッときたの!」

 

なにやら複数のパラレルワールドから主人公と同じ存在が集まるラブコメアクションものらしい。

 

「同じ人間だけど出会ってきた人や環境のせいで性格や信念が違ったり、時に性別や年齢までも違うの。でも根っこのところには通ずるものもあってね! 当然そうなると愛するものも違う。それってすごくロマンチックで、ドラマチックじゃない?」

 

主人公Aはヒロインのことが好きだが、主人公Bの世界にはヒロインと同じ存在であるヒロインBがいるものの、実際は他の女性と恋に落ちている。

運命というものはそういうものだ。儚いが、美しい。

 

「わたしたちだってきっとそう。違う世界では、お姫様かも……!」

 

「へぇーまあボクはどれだけの世界があっても必ず、るみちゃんと結ばれるでしょうけどねぇー!」

 

ジロウはパフェを食べ終わると、嬉しそうにノートパソコンを開く。

 

「今はボクも漫画を書いてるんですよ。ドラゴンファイヤーとウマ娘のコラボ漫画です!」

 

「コラボって……、同人誌?」

 

「よくわかりませんが、今日はこれから詳しい人とリモート打ち合わせをすることになってるんですよ! よかったら見学していきますか?」

 

「よくわからないが、本当に大丈夫なのかぁ?」

 

「何言ってるんですか猿原さん当たり前じゃないですか。あ、ほら、話をしてたら来ましたよ。もしもーし!」

 

画面に二人の男性が表示される。

 

「ウマオさんと、ウマージさんですよね! 今日はよろしくお願いします!」

 

『………』『………』

 

「あれ? どうしたんですかお二人とも怖い顔をして」

 

ウマオはウマージを。ウマージはウマオを見てそれぞれ表情を歪ませていた。どうやら知り合いのようだ。

ここでたまたま鉢合わせたらしい。

 

『い、いや、なんでもないよ。えーっとウマ娘の二次創作を書きたいんだったね?』

 

「はい! だからウマ漫画の評論家として名高いお二人に声をかけたんです!」

 

(評論家ぁ? なんだそりゃ)

 

はるかは頬杖をつきながらスマホでウマオたちのことを調べてみる。

 

「有名なのか?」

 

「いや、たぶんカス」

 

とはいえ、気になるので猿原とはるかも遠目で打ち合わせを見守ることにした。

 

 






フラワーは、かなりトレーナーと想いあってるし、主人公とヒロインの関係としてはお手本みたいなもんなんですけど、ただ一点、年齢がめっちゃ『年齢!』みたいなアンバランス感がすごいなって思いました。
とはいえ、温泉イベントとかも一見両親同伴で健全とみせかけて、最後にすごい一撃を放り込んでくるのも凄いし、特別なチョコの渡し方も完全に好き寄りなんで、そこはかなりいろいろ面白いキャラだなぁとは思いました
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