※注意!
今回の話では差別用語や他にも強めの言葉がが出てきます。
あくまでも使ってはならないという意味を込めてのことですが、気分を害してしまう可能性がありますので、その点は誠に申し訳ありません
「ぺれぺんぺんぺんぺんぺんぺんぺん。ぺんぺんぺれぺんぺん……」
眼球を小刻みに動かしながらはるかは明後日の方向を見ていた。
口ずさむリズムは舞のためのものだ。決して頭がどうかしてしまったわけではない。
ただ、ちょっとばかり行き詰っているだけだ。
今も、はるかは自分にしか見えないスランプ天女を宙に漂わせていた。
天才美少女漫画家も、詰まる時くらいはある。
「あ、あの……!」
「ほえ?」
いかん。ぼーっとしていたから、客が来ていることに気づかなかった。
「ああ、すみません。おひとりですか? お好きな席にどうぞ」
「あのッ、違うんです!」
「え?」
「あとで合流して……! じゃなくて!」
眼鏡をかけた、気の弱そうな女性だった。
おどおどとしながらも、どこか嬉しそうだ。
「鬼頭はるか先生ですか!? 私、ファンなんです!」
そう言って、
◆
「つまり、貴女はわたしの漫画の……ファン?」
「はい!」
「新初恋ヒーローではなく……」
「はい! 初恋ヒーローのファンなんです! はるか先生の影響でわたしも漫画を描き始めたくらいで」
「なんッッでも食べてください! ここはわたしが、奢りますから!」
心なしか、はるかの鼻が伸びている気がする。
瑛子はというと慌てて手を振った。今日は個人的な食事をしに来たわけじゃないらしい。
なんでも今日、このどんぶらでクリエイターたちの集まりがあるらしいのだ。
所謂、オフ会というものである。
「そういえば、めったにない『予約席』の札をテーブルに置いたっけ……」
「私、ウマ娘の二次創作をやっていて、それで。ここはよくウマ娘のコスプレイヤーが来るって噂を聞いたから選んだんですけど」
(本人なんですけどね……)
「まさか先生にお会いできるなんて!」
褒められるのは気分がいい。はるかはフフンと鼻を鳴らした。
しかし考えてみればオフ会というものには参加したことがない。
それに『盗作騒動』があったせいで、冗談社の作家ともほとんど接点がないし。
とにかく、他の作家たちが何を考えているのかは興味がある。
「ね、そうだ瑛子さん。今から始まるオフ会、わたしも参加していい?」
「えっ!」
「刺激を受けてスランプから抜け出せるかもしれないし! ねえいいでしょう?」
「もちろん私は大丈夫なんですけど……」
「じゃあ決まり決まり! ほら、なにか飲みましょう! マスター! コーラ二つ!」
「……はいはい」
ほどなくして、続々と二次創作家たちが集まってきた。
とても絵を書いているとは思えない奇抜なものたちで、はるかは思わずギョッとする。
「皆さんフォロワーがとっても多いんですよ。まずはそちらの『アッキー12』さん」
「どもーっす!」
ジャージを着て、バンダナを巻いたいかにもな風貌の男性が手を振る。
「フォロワーは十八万人っす。まあ主に四コマを中心にやってまーす」
デフォルメ化したウマ娘たちがワイワイやってたり、トレーナー相手にヤンデレ化したりと、コメディがメインのようだ。
「そちらは
「ごきげんよう」
着物を着た美人が頭を下げた。
「フォロワーは六万人。主にアートとウマ娘を組み合わせた一枚絵をアップしております」
はるかは彼女を絵を見てごくりと喉を鳴らした。
かなり上手い。北斎を思わせるような浮世絵とグラスワンダーを取り合わせたり、アメリカンポップアートとタイキシャトルを合わせたり、ホラーテイストにマンハッタンカフェを描いたりしている。
なかには現代アートというのか、まったく何を意味しているのかわかりかねる絵もあった。
「そして
コンスタントに一枚絵や漫画をアップしている人気の絵師らしい。
一見すればミュージシャンとも思わしき金髪の青年が、鋭い目つきではるかを見る。
「……どうも。あなたは?」
「この喫茶店でバイトしてます。鬼頭はるかです」
「ああ。パクったヤツか」
「パクってなーいッ!」
「おいおい見苦しいぞ。あの構図はたまたま被ったでは済まされないものだ」
「ぐッ! そうかもだけど、本当に──」
「アイディアを参考にすること自体は悪ではない。過ちを認めろ。それにもしも本当に自覚がなかったとしてもあのトレスレベルの犯行を覆すことはできない。よほどの証拠があるか、もしくは潜在的なものか」
「ぐぎぎぎぎ!」
すると雲雀がバッと勢いよく扇子を広げた。それで口元を隠し、目を細めて帝坂を見る。
「ごめんなさいね、はるかさん。この人ってば商業のお人に敵意むき出しですのよ」
「……なんだと?」
「昔、連載を持ちたかったけど無しになったみたいで」
「何度言わせる気だ、都女史。あれはオレではなく、無能な編集者が悪かったんだ」
帝坂は作り笑いを浮かべたままで、お茶を飲む。
「それより都女史。先日のイラスト、いいねの数が減っていたな。手を抜いた罰だぞ」
「……あ、あの白井たちが動いたのですよっ? そちらの影響ですわ!」
「あんなのただのダブル老害だろ。そもそもパラレルワールドが展開されている作品でどの派閥がなどと争う意味がわからん。馬鹿は大変だな」
「解釈違いな作品というものは目にも入れたくないものですわよ。ましてや公式が出すともなればなおさら。あなたは人のお心というものがわかっていないのね」
「都女史こそ、あのイラストの説明はなんだ? 心がどうこうとか、現代アートを気取って適当にやったようにしか見えなかったがな」
「たしかにアレ、意味わかんなかったっすもんね」
「クッ! あれはレースで負けたウマ娘の複雑な心境を現したのであって!」
「へぇ、気になるなぁ。どれですか? 見たい見たい」
はるかは手を挙げるが、雲雀は扇子で顔を隠す。
「い、いいわ。見ないで頂戴!」
「え、どうして?」
「いいねの数がかなり少なかったからな」
「でも、そんなの、見てみないとわかんないじゃないですか」
「いえ、プライドが許しませんの。わかってくださるでしょう漫画家さんなら」
「いいねとリツイートは評価のようなものだ。直接値段をつけられているようなもの、商業漫画家には理解できないか?」
「うーん……わかるような、わからないような」
すると瑛子が小声で教えてくれた。
帝坂と雲雀は前々から知り合いで、別のジャンルでも同じようなことをしていたらしい。
なので、いいねやリツイートの数には敏感になっているとのことだった。
「まあつまるところ、ライバル関係ってやつですよ」
アッキーも小声で教えてくれる。
「都さんは帝坂さんのフォロワーの数や、たくさんのいいねが羨ましくて。一方で帝坂さんは都さんのコメントでたびたび見られる『本当に上手いのは貴女』みたいなコメントに嫉妬してるんですよ。そういうの貰ってるの見たことないっすから」
「へー、なんだか複雑なんですねー」
「あ、そうそう! 帝坂さんはまたフォロワー増えてましたね。すごいっすね。やっぱ」
「一番上手いからな、オレの絵が」
「言うなー。やめてくださいよ。おれがデフォルメに逃げてるって知ってるでしょ?」
「お前の逃げはどちらかというと"妊娠シリーズ"だろ。ネタが切れた時に出していたのだが、今はどんどん回数が増えてるぞ」
「ぎくーッ! でもちょっと待ってくださいよ。あれは妊娠じゃなくて太り気味っすからね!?」
「あら、そうでしたの? あたくしも勘違いしてました」
「いやまあ勘違いじゃないんすけど、まあなんていうか妊娠しているように見せてるというか。ほら、直球だとちょっとセンシティブすぎるじゃないですか。だからなんていうか誤魔化しというか。うまぴょいが性行為を意味してるみたいなもんで……」
「あら、やだ、そうなの。いけないわよ俗なのわ。ねえそう思うでしょ瑛子さんも」
「え? あ! は、はい! えと、でも本当に帝坂さんはすごいですね。昨日のイラストも私よりもずっといいねついてて羨ましいです……」
「瑛子さんはなぁー。上手いんだけど、アナログ一本でしょ? デジタルにしたらいいのにってずっと思ってたんすよ! おれ」
「あ、ありがとうございます。お金がなくて……! いいパソコンとか、いいペンタブ変えないから……」
「そっかぁ。まあ仕方ないね。あとはなんていうか、キャラが……」
「え?」
「もっと人気キャラだと、いいねがつくよ」
「人気、キャラ……ですか」
「まずはダスカとかフラッシュさんとかがいいんじゃない? オタク向けなんだからさ、オタクが好きそうなキャラ描かないと。ピクシブとかで検索して出てくんのが多いのがいいっすよ」
「は、はぁ。ありがとう……ございます」
「ま、およしになって瑛子さん。人気とか不人気とか嫌ですわアッキー、あなた品のない」
「す、すんませーん!」
「べつに。当然の話だろ? 不人気など書いて何になる。時間の無駄だ」
「あ、あの、でもっ、なんていうか、その子が好きな人にとっては嬉しいと思います」
「それはただのファン活動だ。佐伯、お前はそれで終わりたいのか?」
「え、え……? あ、あの、それは……」
「ファンアート。もはや今の二次創作はそれを凌駕した。影響力は計り知れず、作品の影、つまり一部と言ってもいいくらいだ」
確かに二次創作で人気になったイラストレーターがそれぞれ連載を持ったり、公式の仕事を与えられることは珍しくはない。
「編集者は絵師のツイッターをチェックしてるって聞きますしねぇ」
「そ、そうなんですか? はるかさん」
「うーん、どうだろう? わたしも新人だからそこまで中の事情はわかんないけど、たしかにそういうところはあるんじゃない?」
「コミケは知ってるだろ。同人誌は大々的に報道されているくらいだ。うまよんを見たか? グラスワンダーが長刀をもって暴れるのは間違いなく二次創作の影響だ」
「あ! なんかSNSで話題になってましたね。イカサマしない設定のナカヤマが普通にヤッてたっていう。公式も結構ガバいんすね」
「別世界の話だろ。どうとでも説明はつく。べつに矛盾はしていない」
帝坂は一点を見ていた。
「話を戻すぞ。この世は人気がすべてだ。不人気キャラも有名な絵師が書けば数字は出るが、無名が書いたところで何も変わらない」
「フン! 強欲な! あなた。そんなことだからインターネッツの皆様にイナゴと馬鹿にされるんですよ?」
「いい広告塔さ。バランスはまだ俺に味方してる。やつらが吠えたところで、まるでそれは馬鹿な陰謀論を訴えるアカウントのようなもの」
はるかは、瑛子に小声で問いかける。
「ねえ、イナゴってどういう意味?」
「流行りだったり、旬な作品に飛びついて絵を描いたりして、いいねをたくさんもらって、ある程度稼げるだけ稼いだら次の流行ジャンルに流れていく人のことを指します。その様が農作物を食い荒らし、次の場所へ飛び立つバッタに見立てられてそう名付けられました」
「まあ今だったらブルアカとじゃないっすか? ウマ娘ばっか書いてた人が急にブルアカばっかり書き出したりすると、イナゴって言われるんすよ。絵師も人間っすからね。飽きたり、好みの変動があるのは当たり前なんすけど、やっぱどうにもこうにも人気だから飛びついたみたいに見られて……」
「ねえブルアカってなに……?」
「あっ、ソーシャルゲームです。ウマ娘と同じ。人気なんですよ」
「そうなんだ。ごめんっ、ここ最近漫画しか描いてなかったから……」
まあ流行るということはそれだけ人気を獲得できるのであって。
何がそうさせるのかを分析するのは漫画家にとっても必要なことだと思う。
すると一連のコソコソ話が聞こえていたのか、帝坂は鼻を鳴らした。
「そう。人気のコンテンツに人が集まるのは当然のことだが、バカにはそれが理解できないらしい。たしかお前もイナゴと言われていたなアッキー」
「いや過去ツイート掘られたんすよ。消したんすけどね」
「あら、どんな内容なのかしら」
「オレ擬人化コンテンツ地雷だったんで。偉人とか女の子にするの、普通に冒涜してると思ってましたから、ウマも嫌悪感があって。しッかも最初の頃って本当にCGもショボくありませんでした? だから延期してここまで人気になるなんて、ガチで思ってなかったんすよ……」
「まったく。口は災いのもとですのよ」
「いやでも絶対、競馬ファンに叩かれると思ってませんでした? わかんねぇもんすよね」
「そもそも貴方、まだゲームをプレイしてないんでしょう。あれもバレたら燃えるのではなくて?」
「いやッ、たしかにそうっすけど。リュビエ様の配信ぜんぶ見てますから他の人よりは詳しいですって。それに姫に捧げる税金で姫がガチャ回してますから。これ実質オレもウマに課金してるってことになりません? てかここだけの話ネイチャの同人誌作ってたワカサさんいるじゃないっすか。あの人、アニメ割ってましたからね。これ漏れたら終わりっすよあの人」
アッキーはそこでキョロキョロと店内を見回す。
「あれ? ところで『プリンパフェ将軍』さん遅いっすよね。今日たしか来るって言ってませんでした?」
「なんだ、知らんのか? ヤツは先日アップした漫画で屠殺という単語と、馬刺しネタを使って絶賛炎上中だ。殺害予告まで来たそうで、お気持ちツイートを出していたぞ」
「うッわガチっすか? ダブルで地雷踏んだんだ。ちょっとエペのアプデきたり、マルモちゃんの耐久配信あったり漫画描いてたんでチェック浅かったっすわ」
「もともと燃えそうな男ではあったがな。ここ最近は露出度も上がってた」
「品がないのよね。バクシンオーの脇の書き込みは見事でしたが、一方でスズカの胸部を盛ったのは愚かとしか言いようがありませんわ」
「いい人なんすけどねぇ、実際に会うと」
「だがヤツはインターネットでも生きていた。そこにはリアルの要素は関係ない」
はるかは作り笑いを浮かべながら首をかしげる。
「あの何回もごめん。屠殺って何?」
「ウマ娘……というか、お馬にかかわる場所では絶対に使わないほうがいいワードといえばいいかしら。ネットではそういうタブーを気軽に使う人もいるでしょう? たとえば、その、憚られるけど、あの……」
「キチガイ、ガイジ、沼プレイも”沼にハマったようなグダグダなプレイング”ではなく、知的障碍者を意味するスラングの『池沼』からきているとされている」
「そ、そうですわ。それです……」
「発狂というワードもしばしば見かけるが、本来は軽々しく使うものではない。似たようなところでいえばホモという単語も使用するべきではないが一時期のインターネットでは盛んだったな」
「キチゲとかありますよね」
「き、きち? 何? 基地ゲーム?」
「キチガイゲージっすよ。パワー系とかもやばいか。はるか先生も気を付けてくださいよ」
「言葉の重さは受け手次第で変わる。一番簡単なのでいうと『死ね』がわかりやすいか。まあそれをコントロールするのは我々創作家の最も初歩的な部分にしか過ぎない。過激さを求めて言葉を尖らせれば、当然向けたほうに深く突き刺さる可能性がある」
「それでそのプリンパフェ将軍って人は……」
「わかりやすくいえば賭けに負けたんだ。逆張りや一石を投じるというのは聞こえはいいが、所詮は邪道」
「馬主の許可あってですからね。コンテンツがどうやって成り立っているのかを考えていただきたいものだわ」
「ウマ娘は──」
はるかには意味がわからないだろうと、アッキーがもう説明を始めてくれた。
「他のアニメやゲームとは少しワケが違うというか。
「な、なるほど」
「実際に競馬は億単位の金が動く場所っすからねー。訴えられたりでもしたら怖いっすねぇ」
「馬主も人間だ。言っていることがすべて正しいわけではないだろうが、少なくともウマ娘というコンテンツのなかでは神に等しい。逆らえば文字通り、終わりというわけなのだよ」
「へぇ」
「だがまあ当然だ。馬主にとって競走馬は子供のようなもの。性的なものであったり暴力的なものを見たいと思うはずがない。だから公式でも禁止されているのだからそれに従えばいい」
「あ、あの、一ついいでしょうか……?」
「どうした、佐伯」
「ばぬし、ではなく、う、うまぬしというのが一般的かと……」
「……これはどうも、勉強になったよ」
帝坂たちは微妙な表情をして、目を逸らした。
そこで元気よく、ジロウがどんぶらに入ってきた。
「こんにちは! はるかさん!」
「あ、ジロウ」
「やっぱりボクもはるかさんみたいにドラゴンファイヤー一本で真っ向から勝負します! 二次創作が間違っていました。あれは結局、他人の褌でしか相撲がとれない未熟者がやるものですからね! 他の人が必死に絞り出したアイディアを横取りして人気を取ろうなんてせこい真似はせずに自分自身の力で有名になりますよぉ!」
「「「「………」」」」
「あれ、どうしたんですか皆さん。暗い顔して。マスター! チョコレートサンデーください!」
「帰るか」
帝坂の言葉に、皆、何も言わずに頷いた。
◆
「ごめんね瑛子さん。わたしの知り合いがあんな失礼なこと」
「い、いえいいです。なんだか悪気があったわけじゃなさそうだし」
「それが問題なんだけどね」
瑛子だけは喫茶どんぶらに残っていた。
はるかに貰ったお詫びのパンケーキをモソモソと食べている。
「なーんか思ってた会と違ったね。もっと漫画のテクニックとか作画技術の話をするもんだとばっかり」
「……そう、ですね。あはは」
「大丈夫? 気分が悪そうだけど」
「ちょっと、強い言葉というか、刺激的な単語もたくさん出てきたので……」
「優しいんですね」
「弱いだけですよ。悪意に触れるのが怖いんです。この会は何度かあるんですけど、帝坂さんたちに前にも言われました。二次創作といえど、電子の世界に流す以上は、いろいろな人の目に触れます。だから批判的な意見も……」
「うーん。まあそりゃあねぇ」
はるかも信じられないくらいの言葉をぶつけられた経験者である。
まあ本人の中に盗作していないという確固たる保証のようなものがあるから、どんな言葉も刺さらないが、瑛子は違っていた。
ありとあらゆる言葉が胸に突き刺さる。
「それに、よくわからなくて」
「なにがです?」
「私がウマ娘に触れたきっかけは大好きな声優さんがキャラクターを担当するってなったから。それで頑張るウマ娘ちゃんたちに感動して、だから少しでも魅力を伝えたらなって……」
瑛子はシュンとしてテーブルを見る。
「でもそんなつもりじゃない人たちのほうが全然いいねとかも多くて。それはちょっぴり複雑です」
「いいねが全てじゃないですよ」
「それはそうなんですけど……、えへへ。どうしてはるかさんは一次創作を?」
「描きたいものがあったからかな」
「堂々としてますね。それは帝坂さんたちも同じで……」
『いいか茶伯。多少品がなくとも、大切なのはウマ娘に興味のない人間にリツイートされてこそだ。俺たちが魅力的な絵を書けばそれが新規のファンの獲得につながり、結果としてコンテンツの延命になる』
『人なきコンテンツに未来などありませんわ。あたくしたちが作品を支えているんですのよ』
『アプリは容量取るんでやるつもりはないっすね。まあウマ追いかけてる一番は好きなブイチューバーがやってるからで、たまにいいねとかもらえるんすよ。もしかしたらワンチャン中の人と付き合えるかもしれないじゃないっすか。だから彼女がウマ娘よりたとえばNIKKEにいくなら、オレもすぐにウマ娘からケツ娘に乗り換えっすよ』
などと三者三様の答えが返ってきた。
「なんかみんな割り切ってるっていうか、堂々としてて」
(堂々っていうか、まあなんか変な人たちばっかりだったな……)
「……純粋なファンアートなわけでもないんです。私、昔は小説家になりたくて。でも諦めて。そしたらまた絵を書くようになって今度は漫画家になりたいって……」
イラストだけ描いていたが、はるかが受賞したのを見て漫画に手を出したみたいのだという。
「でもやっぱり、ぜんぜんうまくいかなくて。だからこういう二次創作活動で自信でもつけられれば、なんだったら注目してもらえたらいいんですけど……でも、うぅぅ」
なにやら瑛子はいろんなものが混ざり合って落ち込んでいるようだった。
そうなってくると、元気づけてあげたいところだが……
「そうだ! ウマ娘は好きなんだよね!」
「え? ええ。それはもちろん」
「だったら会わせてあげる! 行こう瑛子さん!」
「え? え!?」
はるかは瑛子の手を引いて店を出た。
「あ、あれ!? あれっ?」
店を出て、しばらく進むと瑛子は混乱する。
ここら辺の地形は把握していたはずだが、あれよあれよと知らない街にやってきてしまったではないか。
「実はね、あそこからウマ娘の世界に行けるんだよ」
「それはッ、どういう意味?」
「わたしも詳しくはわからないんだけど、まあとにかくついてきて」
はるかはサングラスをかける。
人間界でこれをかけると、ウマ娘世界が見えるようになったが、ウマ娘界でかけると、脳人の世界を見た時に近い感覚になる。
目の前に『脳人レイヤー』世界のように扉があり、それを開けて中を通ると、あっという間にトレセン学園の前にやってきた。
「え? え? え?」
「ふふーん。驚くのはここからよ瑛子さん。周りを見てみて」
「あっ、えと、すごくたくさんのコスプレイヤーさん?」
「違う違う。本物のウマ娘なんだって」
「ど、どどどどういう……!?」
「なんかある日、交わっちゃったみたい。よくわかんないんだけど知り合いもいるから何とか会えるといいんだけど……」
目の前まで来てみたはいいが、そもそも美咲トレーナーと連絡先を交換していなかった。
雉野ならば知っているだろうが、彼はまだ仕事中のはず。
どうしたものかと悩んでいると、突如目の前にドンブラスターが現れた。
「あッ、ごめん瑛子さん! すぐ戻るからここにいてね!」『オニシスター!』
「え? えッ! えぇええええ!?」
光が迸り、はるかは瑛子の前から消えてしまった。
本当はもっと後日更新という予定だったのですが、アマプラでのドンブラザーズの無料配信が今月(26日辺り)で終わってしまうということで更新することにしました。
もしもアマプラに登録している人で興味がある方がいれば、ぜひ見てみてください。
本当に面白い作品ですんでね。