Re:零から始める世界最強   作:ゲーマーN

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……納得の行く内容に執筆できない。

けど、途中まで書いたので放り投げておきます


第壱話 再びの始まり

 ヴェルカ王国。遠い未来においては、ハイリヒ王国と名を変えるこの国は、王都の中心部に大規模な地下坑道を有するという特徴を持っている。淡い緑の光を放つ『緑光石』が豊富で、地下にありながら人工の明かりを必要としないが故に、この坑道は一般に【緑の大坑道】と称されていた。

 

 緑の大坑道は、魔物や不埒者が時折出没する油断ならない場所ではあったが、その分、種類が豊富で高品質な鉱物を大量に採掘することができる名所であった。

 ヴェルカ王国は、この緑の大坑道周辺に作られた採掘村が、やがて良質な鉱物を求める職人達により発展して町となり、買い付けに来た商人達により更に発展して、とうとう国になった――という歴史を持っていたりする。

 

 その建国史と今も尚、多くの職人と彼等の必要とする素材の全てを自国で賄える当該王国は、周辺各国から職人と技術の王国と称されている。

 そして、その技術大国であるヴェルカ王国の王都ヴェルニカにおいては、日々職人達が鎬を削り合っているわけであるが、その中でも特に名の通った幾つかの職人集団があった。

 

 その内の一つ――オルクス工房。

 

 天職『錬成師』を持つ者達の中でも優秀な人材が集まる工房で、貴族や他国の職人ですら門下に入ることを熱望する名門中の名門工房だ。

 その工房において、一人、真面目な面持ちで一振りの剣を構える青年の姿があった。知識を持つ者であれば、『刀』と称するだろうその剣を鞘に納めた青年は、「疾っ」と息を吐くと共に空間そのものを斬り裂くような鋭い斬撃を繰り出した。

 

 一泊。

 

 青年の目の前に置かれた金属製の鎧がズレ落ちる。その結果を見届けた青年は、その整った顔立ちを僅かに歪める。どうも、青年的には満足の行かない結果だったらしい。

 細い黒縁眼鏡を掛け、肩ほどの長さの白髪を首の後ろでチョロリと結っているその青年は、黒に赤のラインが入ったコートと、下に同じように黒と赤で構成された衣服を纏っている。金属糸と魔物の素材の合成繊維で作られたこの衣服は、高い防御力を有する防具としての機能も有している。

 

「”錬成”」

 

 錬成魔法の光が僅かに舞う。逆再生をしたかのように、金属鎧は元の形を取り戻す。

 

「今日も精が出るな、オスカー」

 

 振り返れば、其処には熊と見紛うばかりの巨躯を有する大男が立っていた。

 実際、獣人族の国【ハルツィナ共和国】の熊人族の戦士に間違われることも少なくない、そのお男の名前はカーグ・D・オルクス。

 栄誉あるオルクス工房のトップ――偏屈ばかりの職人達が敬愛を捧げる彼等の棟梁だ。

 

「棟梁。今日は一日、王宮の方で用事のはずでは……」

 

 予定より早く戻って来た理由には答えず、熊と見紛う体躯のカーグは「ふん」と鼻を鳴らし、未だオスカーが持ったままの一振りの刀へ視線を向けた。そして徐ろに錬成で修復された金属鎧に視線を移すと、その金属鎧の表面をそっとなぞった。

 

「……ほぅ、いい剣だ。この鎧を真っ二つにするほどとはな」

 

「お褒め頂き光栄です、棟梁」

 

「自分の腕を誇示するより、使用者の利便性を優先した作りだな。飾り気はないが、間違いなく一流の仕事だ。刀身の強度も申し分がない。よほど無茶な使い方をしなければ、戦場で壊れるようなことはないだろう」

 

 カーグの言葉を聞いた周囲の職人達がピクリと反応した。その視線は露骨でない程度にオスカーへ向けられる。その視線を気にも留めずに、オスカーはジーッとカーグの顔を見つめている。

 

「気は変わらないか? オスカー、次代のオルクスはお前しか――」

 

「棟梁」

 

 穏やかに、しかし確固たるものを感じさせる声音で、言葉を遮るオスカー。

 カーグは、以前から変わらないオスカーの態度に溜息を吐いた。

 

 オルクス工房に於ける『オルクス』とは、当代の棟梁を示す名だ。

 そして、オルクス工房において当代『オルクス』を超える者が現れた場合、その者が次代の『オルクス』として襲名する。

 当代『オルクス』たるカーグが、次代はオスカーだというその意味。

 

「お前の腕は既に俺を超えてやがる。いや、見栄を張った。俺なんぞ、既に足元にも及ばない。文字通り、お前の錬成師としての腕は別次元にある」

 

「……」

 

 オスカーは、カーグの言葉を否定することなく、ただ無表情でカーグの顔を見つめていた。

 

「お前をモーリンのとこの孤児院で初めて見たとき、度肝を抜かれたもんだ。ガキ共の玩具を錬成で作り出してるわ、それが工房の職人達と同等以上の腕前だわ……俺ぁ自分が正気を失ったと思った」

 

 オスカーは赤ん坊の頃、モーリンという女性が経営する孤児院の前に捨てられていた。

 大規模な戦争こそここ数年起きてはいないものの、小競り合いや局地的な紛争は絶えず、緊迫感と政情不安に揺れる時代においては、孤児の数も、孤児院の数も増える一方。

 当然、国の援助も完全には行き渡らない。カーグは当時から既にオルクス工房の棟梁だったため、個人的に知り合いだったモーリンの孤児院に援助をしていた。

 

『ん? こいつは……』

 

 その日、モーリンと親交を深めていたカーグは、何気なく子供達の様子を見渡したところでそれに気が付いた。前に来た時まではなかったはずの玩具が、何故かやたらと増えていることに。

 

 そのことをモーリンに尋ねたカーグは、驚愕の事実を知ることになった。

 

 当時、十歳になったばかりのオスカーが、錬成魔法で作り出したというのだ。

 てっきり金持ちの援助者が付いたと思っていたカーグは愕然とした。何故なら、そう予想するほどに玩具の出来が良すぎたからだ。

 

 僅かな狂いもない完璧な造形の積み木。

 目を見張るほど精巧な造形の芸術的なビスクドール。

 チャンバラ用に作られた模造剣のバランスと言ったら言葉もない。

 女の子が遊びおままごと用の調理器具は、実際に調理に使っても何ら問題はないだろう。

 何よりも、本物の人間と見紛うばかりの人形はカーグをして見たこともない。

 

 それを、十歳の少年が、錬成魔法で作り出した?

 

 とても信じられなかったカーグは、実際にオスカーに実演してもらった。そうして目にしてしまえば、現実を受け入れざるを得ない。今すぐ工房に入れたとしても、他の職人と肩を並べて国の仕事ができるだろうレベル。

 どこで錬成魔法を覚えたのか、どうやってこれほど高度な技術を身に付けたのか、そう問いただしたカーグに、当時のオスカーが答えることはなかった。

 

「お前が工房に入ってもう随分と経つ。本当なら、既に『オルクス』を襲名しているはずだった」

 

「それはできない、と俺は前にも言ったはずですよ」

 

「……ああ、そうだな」

 

 苦虫を噛み潰したような表情のカーグに、オスカーは言葉を重ねる。

 

「いずれ、俺はこのオルクス工房を出て行くことになる。だから、『オルクス』を襲名することはできないと前にも言ったはずです」

 

「……なぁ、オスカー。勝手な話だろうけどよ、お前のことは……息子みてぇに思ってる。俺はよ、お前が花開いて、多くの人に認められる立派な男になるところを見てぇんだ。俺の望みは、お前の望みとは、やっぱり合わねぇか?」

 

 オスカーとて、カーグとは長い付き合いなのだ。カーグの心情はよく分かっている。

 立派な男になると期待されることは凄く嬉しい。しかし、それでも……

 

「おやじさん……すまない。それでも俺は『オルクス』を襲名する訳にはいかないんだ」

 

 そう言って、踵を返したオスカーの背中を父親代わりの男はどこか寂しそうに見つめていた。

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