真の敵はヒロインのようです   作:はちのえ

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第一章 シズリ編
第一話 


 

 

気づけば俺は見知らぬ場所にいた。

精神と時の部屋みたいな、見渡す限り真っ白な世界。

自分が今浮いてるのか地面に足がついてるのかも分からない、フワフワとした感覚。

 

夢の中にいるような、言い知れない不安感が胸を覆う。そんな時だった。

 

「気分はどうじゃ?」

 

目の前に突然、着物姿の幼女が現れた。

ボサボサに乱れた白髪を指でクルクルと巻きながら、気だるそうな雰囲気を醸し出している。

 

「どうやら意識ははっきりしてるようじゃの。時間がないので手短に説明するぞ。ここはあの世とこの世の狭間じゃ。死後の世界と言うた方が伝わりやすいじゃろうか?おぬしは死に、魂だけとなってここに来たのじゃ。」

 

いまいち状況が理解できず、ポカーンと口を開ける俺。

死後の世界?てことは俺死んだのか?それとも夢か?目の前の幼女はなんだ?

 

(疑問が増殖しやがる。)

 

心の中でかっこつける俺。

 

「まあそうじゃろうな。死後の世界と言われても夢かと疑うのは当然のことじゃ。夢だと思うのならそれでもよい、わしは忙しいのでな、手っ取り早く用件を言おう。」

 

俺の心を読んだのか?ていうか、あれ?声が出せない。

色々と聞きたいことがあるのに……ああ、心を読むなら声が出せなくても関係ないのか。

 

「おぬしには二つの選択肢がある。ひとつはこのままあの世へ行くこと、ふたつめは別の世界へ今の記憶を保持したまま転生し生まれ変わること。ほれさっさと選ぶのじゃ。」

 

ちょ、ちょっとまって!これがもし夢じゃないとして、別の世界へ転生ってそれもしかして異世界転生ってやつですか!?

したい!異世界転生したい!

 

「あいわかった。ではおぬしの要望は別世界への転生じゃな。」

 

とんとん拍子に話が進む。

まあ夢でも楽しそうな夢だし、死んでたとしたも転生できてラッキーってとこか。

そんな楽観的な俺でも、ひとつだけどうしても気にかかることがあった。

 

あの…色々聞きたいことあるんですけど、いいですか?

 

「……ひとつじゃ。先程言うたじゃろう、ワシは忙しいんじゃ。

ひとつだけ質問に答えてやろうぞ。」

 

ええ…なんて不親切な幼女なんだ…。

 

「幼女ではないわ!おぬしより千年は長生きしとるわい!中身は立派なれでぃ中のれでぃじゃ!!」

 

れでぃって。舌ったらずで可愛いなあ。

 

「ぐぬぬ……まあよい、ほれさっさと一つ質問せんか。」

 

創作物でしか見たことのないのじゃロリに興奮していたのか、くだらないことを考えてる場合じゃない。とブンブンと頭をふる。

 

ここが、これが夢だとしたならそれでいい。

だが問題はそうじゃなかった場合。

転生する世界のことも興味があるけど、それ以上に解消しときたい疑問がある。

 

俺は……なんで死んだんですか?

 

「おぬしの死は…うむ、その〜……べ、別の質問にせんか?」

 

ぺらぺらと回っていた舌が絡まったかのように明らかに言い淀む神様的存在の幼女。

俺の死はそんなに凄惨だったのか、幼女が答えをはぐらかそうとするくらいなのだから、それなりの理由があるんだろう。

 

(教えてもらえませんか?どうしても知りたいのです。)

 

声を発することができないのでそう強く念じてみる。

 

俺は自分の死の真相が知りたい。単なる好奇心ってだけじゃなく、なぜかどうしても知りたいのだ。

 

それはきっと俺が本当に死んでいるからなのだろう。

 

「ううむ…仕方ない…神に二言はないしの…。じゃがひとつ、おぬしの死の原因を教える前に約束してほしいことがあるのじゃ。」

 

なんですか?

 

「ぜったいに、ぜっっったいにおぬしが死ぬことになった原因を他言するでないぞ!!!よいな!!」

 

はっ、はい、わかりました。

 

とても幼女とは思えない、まるで還暦を過ぎた田舎のお婆ちゃんが時折見せるブチギレた時のあの感じ。

そのロリババアの剣幕に俺は思わず頷いてしまった。

 

「また不敬なことを考えておるな…。」

 

幼女はふうっとため息をつき、先程までの強気な顔とは打って変わって申し訳なさそうに俺を見る。

一瞬、意を決したかのような顔をするが、またバツの悪そうな顔に戻る。コロコロと表情を変えながらもじもじとする様は、とても俺より千年以上生きているとは思えなかった。

 

実家で飼ってた犬思い出すな。粗相した時とかこんな感じだったわ。

 

なんてことを考えてると、誰が犬じゃと言わんばかりに睨んできたので思わず顔を背けた。

 

「ゴホンッ!……おぬしが死んだ理由はじゃな……その〜…わしが、ちょっと下界にちょっかい、じゃなくて…人間を管理するための、あの〜光的な?神の光的な?やつをぽーいと降らせたら…それが運悪くおぬしに当たってしもうて……その、ほんとわざとじゃないんじゃけど!!わしはとても申し訳なく思うておるよ!?」

 

………は???

 

え?どゆこと?ちょっと理解が追いつかないんですけど。

 

「わ、わしは神としての責務を全うしようとしてじゃの…その…ほんとすみませんでした……。」

 

…つまり、つまり俺はあんたに殺されたと。

あんたがふざけて落とした神の光的なやつにたまたま当たって殺された(、、、、)と。

 

他言するなって約束させたのはそれが他の神様にバレるとまずいから、さしずめ俺が今から行く世界の神様にってとこか。それとやけに忙しそうにして俺を急かしてたのも俺の質問に一度言い淀んだのも、全部自分の保身のためだったてことか。

 

そうだよな。そういうことだよな?

 

「ほんとうに申し訳ないのじゃ……。」

 

もはや言い訳もなく、観念したかのように幼女は深々と頭を下げる。そこに神様の威厳というものは微塵も感じられなかった。

ボサボサの髪の毛もなんだかしなびているように見える。

 

正直かなりむかっ腹が立っているが、もう過ぎたことだしどうしようもないか……。転生させるかあの世行きを選ばせたってことは、現代に生き返ることは出来なさそうだし…。

 

てか、俺の死んだ時の記憶がなかったのってもしかして…。

 

お前やったな、という目でじーっと幼女を見ていると、幼女はわたわたと慌てながら顔を上げた。

 

「い、いや!ワシが記憶を操作わけじゃないのじゃ!大体の死者は自分が死んだ時の事は覚えておらぬのじゃよ!稀に覚えておる者だったり思い出す者もいるが、おぬしの場合は死を直感することもなく、一瞬でチリになったので……。」

 

一瞬でチリに。

 

ほー。一瞬でチリにか。

 

なるほどね〜そもそも肉体がないから俺を生き返らせれないってことか。

それで転生ねぇ。ふーん。

 

「こ、これまでのやり取り、諸々込みですまんかった…。じゃがワシは仮にも神なのじゃ。神に失敗は許されぬ。それが徒に下界の命を奪うような行為ならば尚更じゃ……ワシはこう見えても神の中では位が高い、それゆえこのように死者に対して特別措置を取る事ができるのじゃ。

異世界への転生…これがワシにできる今精一杯のことじゃ。」

 

再度、申し訳ないと頭を下げる神様幼女。

 

まあ何度も謝ってるし、許す許さないは別として、こうなった以上はもうどうしようもないか。と自分の中で踏ん切りをつける。

 

(わかりました。今までの非礼を許しましょう。自称神様の中身老女の見た目幼女よ。)

 

声を発する要領で心の中で念じる。

 

「なんじゃ立場が逆転しとる気がするが…許してもらえるのか!

本当にすまなんだ…わしにできることはもう少ないができる限り応えようぞ。」

 

それならば。

 

向こうの世界の神様に口添えしてもらえませんかね?

なんかチート能力がもらえるようにとか、超絶イケメンにしてもらえるようにとか。

 

「それくらいならば容易い御用じゃ。他にはなにかないか?」

 

まあ、向こうにも神様がいるんなら質問とかはそっちですればいいですしね。それくらいで大丈夫です。

 

「あいわかったのじゃ。では、これからお主を別世界の異空間に飛ばすぞ。

くれぐれも、くれぐれもあの事は他言なさらぬように頼んだのじゃ…!」

 

(了解です。

色々と文句はありますけど、今は素直に異世界ってやつが楽しみです。

なんやかんや気遣っててくれたみたいなんで、まあありがとうございました!)

 

そう心の中で強く念じ、目の前の幼女に俺は深々とお辞儀をした。

 

「なんとできた青年じゃ……。よかろう!お主の外見に関してはワシ自ら造形するとしよう!とびっきりの美形にするので楽しみにしておくように!」

 

おお!!

 

この神様幼女、中身アレだが外見だけはいいからな。

これはなかなか期待がもてるぞ!

なんだか楽しくなってきた!

 

「では、今度こそ幸せに生きるのじゃぞ!」

 

いや割と幸せに生きてはずたけどそれ終わらせたのあんたーーー。

 

などとツッコむ間もなく、俺の視界は眩い光に包まれていった。

 

 

 





最後まで読んでいただきありがとうございます。
小説自体書く経験がなかったもので、章分けなど試行錯誤しながらやっております。読みにくい、伝わりづらい部分があれば是非ご意見をお聞かせください。
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神様幼女もヒロインの一人になります。

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