「帰ってくれ! アンタ等に話すことなんて何もない!!」
ピシャんッ!!
と、強く扉を閉められて、ユーマとビスケは玄関前で立ち尽くした。
取り付く島もない――とは、正にこのことだろう。
情報屋で仕入れたネタを元に行動を開始した二人は、早速その足でクヌギ・ゴロウ教授の家を訪ねたのだ。
しかし、クヌギ・ゴロウ教授本人は此方の話しを聞こうともせず、こんな始末である。
「あのオッサン、随分と怒ってたけどさ。ビスケ、知り合いか何か?」
「初対面に決まってるでしょ。……まぁ、アンタがどうしてそう思ったのかは置いておくとして、あぁも過敏に反応するところを見ると、結構なチョッカイが出てるのかもね」
為息を吐きながらビスケが言うとユーマは途端に面倒くさそうな表情を浮かべた。
それもそうだろう。
ユーマからすれば、こんな仕事なんてのはサッサと引き上げて修行に戻りたいくらいなのだから。
「でも、どうするんだよ? ビスケはコーラルダイヤモンドとかってのが欲しくて此処まで来たんだろ? だったら、あのオッサンに会わないと」
「うーん。必ずしも会う必要性はないんだけど、余り大事になるようなことしたくはないしね」
最悪、家探しでもして教授の持っている情報を調べあげる事も考えたビスケであるが、そんなことはしたくはない。
ビスケはハンターではあるが、ゲスな犯罪者になるつもりはないのだ。
「でも、まぁ……運が良いわよ、私達は」
「運が良い? どこが?」
ユーマが不満そうに首を傾げると、ビスケは『シーッ』と言って静かにするように促してくる。
見ればいつのまにやらビスケは体を覆うオーラを消し、絶の状態になっていた。
何か意味があるのだろうか? ユーマはビスケに習ってオーラを消すと、どういうことなのか尋ねるために視線を向けた。
「(声を密かに、音を立てるんじゃないわよ)」
小声でビスケはそう言うと、ハンドシグナルをしながら教授宅の裏庭へと回りこんでいく。
完全に不法侵入なのだが、その辺りのことをビスケは考えているのだろうか?
足音に気をつけながら家屋の裏側に回りこんでいくと、ビスケは一つの窓の下でユーマに待ったをかける。
そしてクイクイと指で窓を指すと、ユーマは其処から家の中をのぞき込むのだった。
※
窓からユーマたちが家の中を覗くと、其処は随分と解りやすい修羅場が展開されている。
其処には数人の男たちと一人の少女、そして先ほどユーマたちを追い払ったクヌギ・ゴロウ教授が居た。
もっとも、その雰囲気は酷く剣呑としており、男たちは笑みを浮かべながら少女に対してナイフを押し当てている。
「――さっきの連中、もう帰ったのかい?」
「あぁ……」
「そうか、帰ったか。良かったな教授? 娘さんの顔に傷がつかなくて」
「グッ!」
ヘラヘラと笑いながら、男はナイフを少女の顔の周りで弄ぶように動かしている。教授はその相手の動きに怒りを覚えるも、愛娘の安否を思うと歯ぎしりを浮かべることしか出来ないでいる。
「まぁ、落ち着きなよ教授さん。俺達だって、何も
「…………コーラルダイヤモンドの、沈んだ座標」
「なんだ、やっぱり解ってるなじゃないか。そうだよ、俺達も会社からの意向でこうやって出向いてるんだ。嫌なんだぜ? こんな中途半端に犯罪めいたことをするのは。だからさ――――娘を殺されたくなきゃ! さっさとその場所を教えろって言ってるんだよ!」
ヘラヘラとした態度から一変して、男は大声で怒鳴り散らした。
男たちに捕らえられている少女はソレを間近で聞き、身を竦ませるように身体を縮こませてしまう。
「おい! 止めてくれ! 娘は関係ないだろ!?」
「テメェの娘だろうが! ……なんで関係がないんだよ!」
叫ぶように訴える教授だが、相手の言い分はめちゃくちゃである。
やっていることは強盗の類と同じではないか。
その光景を窓越しに覗いていたユーマは、解りやすいくらいに不快感を露わにする。
「……ビスケ、あれがハンターの仕事かよ」
怒気孕んだような声を出しながら、ユーマはビスケを咎めるように言う。子供らしい純真な気持ちから――と言うわけではなく、ユーマは単純に目の前で起きた光景から自分の過去のことを思い出してしまったのだ。
「流石に、あんな馬鹿みたいな真似がハンターの仕事なわけ無いでしょ。……さっさとぶっ飛ばすわよ」
「あぁっ!」
力強く頷くユーマに、ビスケは少しだけ口元に笑みを浮かべた。
普段から生意気なだけだったユーマに、このような正義感が有ったことが嬉しいのだろう。
しかし、喜んでばかりも居られない。
教授の家の中では今でも修羅場の真っ最中なのだから。
「それじゃあ、先ずは二手に分かれて――――」
家の中と外からの二面作戦を提案しようとしたビスケであったが、
バゴォーンッ!!
ユーマはビスケの言葉を聞かずに行動を起こしてしまった。
オーラを拳に込めて、目の前の窓枠と壁を粉砕して大穴を開けてしまう。思い切りの良すぎるというか、考えなしすぎる行動だ。
「あ、アンタね……!」
「面倒なことは後で考える。今は兎に角、目の前の彼奴等をぶっ飛ばす!」
呆れと怒りが混じったようなビスケに、ユーマはそれだけ言うと男達に向かって歩き出す。
一方、いきなり壁を粉砕され、急に現れたユーマとビスケに男達は最初呆然としてしまった。
ソレはそうだろう、不意に乱入者が現れて驚きもしたが、そうして登場したのは自分達が捕まえている少女と変わらないような子供なのだから。
「な、なんだぁ、お前等は?」
ユーマ達から見て、一番近くにいた男が声を上げる。
だがユーマはその言葉に応えることもなく、力強く踏み込むと一瞬で相手の懐に入り込む。
そして問答無用で、相手の腹に向かって数発の拳を叩き込む。
「あ、ぼぶ!? あギャッ!?」
攻撃を受けた相手はその威力に身体をくの字に折り曲げると、ソレに合わせて放たれたユーマのアッパーが顎を砕いた。
吹き飛ぶ男を尻目に、ユーマは直ぐに次に行動に移る。
低く低く、姿勢を低くしながら駆け出すと、
「な、なん――ギャっ!」
急に現れた子供に仲間が殴り飛ばされ、慌てるように声を出そうとした男へと水面蹴りを放ち、相手の足元が崩れたところで回転肘打ちを御見舞する。
3人中2人を鎮圧。
ビスケは思いの外に上手く動くユーマに
「へぇ……」
と、声を漏らしていた。
あっという間にならず者連中の2人を鎮圧した、ユーマの手際は大したものである。怒りに任せて行動するのは頂けないが、それでも結果を見れば大したものだろう。
まぁ、もっとも
「なんなんだ? 何なんだテメェはよ!?」
少女を捕獲していた男は未だに残っている。
本来ならば、今のユーマの動き合わせて最後の男を鎮圧することもビスケならば可能であった。
しかし、ソレを敢えてしなかった。
霊光波動拳の使い手である幻海の、そして自分の弟子でもあるユーマがどの程度の使い手になっているのか? そしてどのように立ちまわるのかを見ておきたかったのである。
そもそもビスケがその気になれば、男がナイフを使うよりも早く距離を詰めて腕を握りつぶすことも可能なのだから。
「おい、その子を離せ!」
怒りをぶつけるようにユーマが吠える。
子供の体躯に子供の声。どこからどう見て小さな子どもでしか無いのだが、今のユーマを念能力者の目で見れば中々に舌を巻く。
ユーマのオーラが怒りで膨れ上がり、激しく唸っているからだ。
「な、なんだ、お前、本当に子供かよ……っ!?」
ユーマの身体から溢れているオーラを肌で感じたからだろう。男は怯えるように肩を震わせて戦慄く。思わず後退った相手の動きに、ユーマは一瞬で反応を示した。
飛び跳ねるように壁に向かって跳躍をすると、そのまま壁を走って移動をし相手の死角に回りこむ。恐らくは相手には、一瞬でユーマが消えたように感じたはずだ。
男が次にユーマの存在に気がついたのは
「――――おい、コッチだ」
「ハッ! ――ハボびゅっ!?」
自身の背後からユーマに声を掛けられた時だった。
もっとも、振り向いた瞬間に念を込めた拳を何発も叩き込まれて宙を舞ったので、本人は覚えていないかもしれないが。
クルクルと回転しながら宙を舞い、そのまま着地して尚も回り続ける男を無視してユーマは少女に問いかける。
ニコッと笑みを浮かべて、
「大丈夫か? 何処か傷つけられたりしてないか?」
さっき迄の怒りの表情など其処にはなく、心底に相手を心配しているといった瞳で少女を見つめている。
「…………――ぁっ」
「怖かったよな。助けて欲しかったよな?」
「――――ぅう、うぅああああ!」
少女の方を撫でるようにユーマがすると、少女は大きな声で泣き始めた。ユーマは少女の姿に哀しそうな瞳を浮かべて、ただ宥めるように撫で続ける。
「まぁまぁだったわね。65点あげるわさ。でも感情に任せて動くのは頂けないわね。もっと慎重に行動できるようにしないと、もしもの時に対応が出来なくなるわよ。怒りを燃やしながら、理性で制御が出来るようになれば一人前だわさ」
「気をつけるよ」
「本当に気をつけなさい。あんたの行動によっては、その子に一生残るような怪我をさせていたかもしれないんだからね」
「っ!?」
ビスケに言われたことで漸くそのことに気がついたのだろう。
ユーマは目を見開いて息を呑む。
そして申し訳無さそうな顔になると、
「ごめんな」
と、泣きじゃくる少女の頭を撫でるのだった。
「……君たちは、さっきの」
一瞬で劇的に変化した状況に、教授は未だに頭の整理が追い付いていないようだ。だが、それでも自分達を脅していた連中が倒されたことで当面の危機は無くなったと思ったのかもしれない。
恐る恐るといった具合いに、教授はユーマとビスケに声を掛けた。
「間一髪だったわね、クヌギ教授? 運が良いのか悪いのか。まぁ、私達が此処に居るってことは、まだ捨てたもんじゃないって事なんでしょうけどね」
ビスケはそう言うと、教授に対して笑みを浮かべる。
だがそんなビスケのことをチラリと覗き見るユーマは知っていた。
(アレは絶対、自分に都合の良いように話を持って行こうとしている時の眼だ)
と。
※
クヌギ教授の家を襲った連中は、やはりというかなんというかM/D(ミッシングディテクティブ)コーポレーションの人間であった。
ビスケは随分と手慣れた様子で男達の身包みを剥いでいくと、男達の持ち物から名刺や社員証が出てきたのである。
ビスケは侮蔑するような表情を一瞬浮かべると、手早く警察を呼んで男達の身柄を引き渡す。ハンターライセンスを持っていることが効いたのだろうか? ものの数分でパトカーがやってくると、気絶している男達が次々としょっ引かれていった。
ハンターという職種が持っている権限を目の当たりにしたユーマであるが、この騒ぎを起こした連中の元締めもハンターだということを考えるとどうにも納得の行かない部分がある。
割り切るということが、今のユーマには出来ないのだろう。
一段落ついたところでビスケはクヌギ教授と話し合いを始めた。
ユーマにとっては面倒で退屈になるような内容であったのだが、それでも隣でそのやりとりを聞いていた。
弟子だから? という気持ちもゼロではないだろうが、一番の理由は教授の娘の状態が気がかりだったからだ。
しかし、ビスケのやりとりを隣で聞いていたユーマは、その内容に少しばかり難色を示した。言ってしまえばビスケは、先ほど起きた厄介事をことさらに強調して、『このままでは危ない』と教授に思い込ませたのだ。
もっとも、実際問題として危ないのは本当だ。
犯罪に手を染めても教授から情報を引き出そうとしてきたのだ。次はどんな手で来るのか解ったものではない。
ビスケは最終的に
『コレはいっその事、さっさとコーラルダイヤモンドを引き上げてしまったほうが良いわよ』
と
言い分としては、大々的に調査を行ってしまい、物が見つかったら有名なハンターに譲ったということにしてしまえ――ということだ。
ビスケはハンターとしては名前の売れた人物であるらしく、その実力もかなりの物である。手段としては文句のない方法だろう。
……まぁ、その場合は教授にちょっかいを掛けた連中が暴走して、事が済んだ後に教授や娘を害する可能性もあったが――
『大丈夫よ、連中もまとめて処理してあげるわさ』
と、幾分だけ地の出たような口調で言い放っていた。
さて、上手い具合に自分の良いように話を纏めたビスケは何をしたのか? というと…………
「――で、座標としてはこの辺りになる訳ね?」
「えぇ、しかし正確な位置情報でも何でもないのですよ? 当時の資料を元に類推しているだけで……」
「ソレでも十分でしょ。探して見る価値はあるわ」
教授を連れて、現在はトレジャーハントの真っ最中である。
トントン拍子に話を纏めたビスケは、直ぐ様にハンターサイトを通じて優良な
その業者の所有している船で、目的の海域へと突き進んでいた。
同行者としては勿論ユーマも居るのだが、クヌギ教授の親子も乗っている。コレは教授から直接話しを聞きながら作業を行いたかった事も理由の一つなのだろうが、単純に放置しておくことで危険があるのではと思ったからである。
「まぁ、付いたら軽くソナーを当てて何か変わった物がないかを調べましょうや」
「そうね。元々ダメ元みたいな部分もあるんだし、地道にやっていきましょ」
話に割って入ってきた船長に、ビスケは頷いて返す。
着々と進む話し合いの風景を、ユーマはただ呆然と眺めているしか出来なかった。
「…………うぇ」
船酔いに苛まれながら。
こみ上げる吐き気に必死に耐え、ユーマはキャビンの隅っこで横なっていた。当初は大海原に漕ぎ出す船と潮風の魔力にやられて元気だったのだが、それも30分ほどで鳴りを潜めてしまう。
顔を青く変化させ、海に向かって吐瀉物を撒き散らしたのだ。
ビスケにはそんな姿を呆れた様子で溜め息を吐かれ、サルベージ会社の者達には子供を見守る大人の視線を向けられる。
そして
「うぅ……」
「ねぇ、大丈夫?」
「大丈……ぶぇ」
「濡れタオル作ってきたから、はい」
「ありがとう…アスナ……」
護衛対象である、クヌギ・ゴロウ教授の一人娘であるクヌギ・アスナに介護をされる始末であった。
弱々しい動きでユーマは濡れタオルを受け取ると、ソレを自身の顔に掛けて荒い呼吸を繰り返す。アスナはそんなユーマを心配そうに見つめていた。
「――悪いな、護る側の人間が……こんな風になっちゃって……」
「気にしないでいいよ。家では助けて貰ったんだから、恩返しだよ」
へこたれて言うユーマに、アスナはニコッと笑って魅せる。
いい子だな――と思う反面、やはり護衛対象に気を使われることにユーマは情けない気持ちになってしまうのだった。
「なによユーマ。まだダウンしてるの?」
と、教授や船長との話し合いが終わったのか、ビスケが『やれやれ』といった様子で歩いてきた。
普段ならばそんなビスケに反論の一つもするユーマなのだが、今はソレをする気力もないらしい。
「…………」
「あらら、本当に駄目みたいだわさ。酔い止めでも買っておけばよかったかしらね? ――兎に角、帰ったらそっち方面の修行もしましょうか。そんな簡単に乗り物酔いになるなんて、ちょっと問題だからね」
「ゥグ」
修行の一言に、ユーマは更なる吐き気を感じてしまう。
何も修行が嫌なのではなく、『吐き気と戦う修行』と考えた瞬間に込み上げてきただけである。
「兎に角、よっぽど辛いのなら絶をしておきなさい。乗り物酔いってのは自律神経の乱れからくるものだから、絶の状態にしておけば少しは回復するわよ」
「自律……ぬぉ」
「いいから、早く絶をする」
言葉の意味を考える事も出来なかったユーマは、言われるままにオーラを抑えて絶を行った。
だがそうすると、ビスケの言葉が正しかったようで幾分だけ吐き気が楽になるのを感じる。
「相変わらず絶は上手いわね? まぁ、最近では他の技もそれなりになってるけど」
関心したような言い方をするビスケ。
ユーマは楽になってきたことで内心でビスケに感謝の言葉を思い浮かべていたが、面白く無さそうな表情を浮かべている人間も1人居る。
アスナであった。
ムスッとした表情でビスケを睨み、まるで『どっかに行け』とでも言いたげな視線を叩きつけている。……まぁ、ビスケがその視線に気づかない訳もなく、僅かに口元をニンマリとさせると
「それじゃあ、私は船長ともう少し話しを詰めてくるわさ」
と言いながら『フホホホホ♪』といった風に去っていく。
その時の態度と雰囲気にアスナは更に不機嫌に成り、眉間に皺を刻むのであった。
もっとも、ビスケが言っていることは嘘ではない。
確かに向かう場所、潜水するポイントなどは決めているが、他の懸念がない訳ではない。
そう、M/D(ミッシングディテクティブ)コーポレーションの連中である。
もしもハンター崩れの連中が攻めてきた場合、ビスケは自分達の乗っている船の護衛をユーマに任せようと思っていたのだ。
「――でも、ちょっと無理そうだわね」
うんうんと唸って転がっているユーマを見るに、どうにもソッチのほうで期待は出来そうにない。これならばいっその事、連中の本社ビルにでも乗り込んで暴れまわっていれば良かった――なんて、物騒な考えも浮かんでしまう。
「最悪、連中が強硬手段で攻めて来てくれれば楽だけど……」
これまた物騒な願望を口にするビスケ。
何時来るかわからない敵よりも、さっさと襲ってきてくれたほうが対応が楽だということなのだろう。
もっとも、その場合はビスケが1人で
「まぁ、そうそう上手くは行かないか」
ビスケはそう言って溜め息を吐くのだった。
※
潜水ポイントに到着すると、サルベージャー達はテキパキと言った風に行動していく。先ずは海底探査様に小型の水中カメラを投入した。
「ソナーの情報だと、この辺りには奇妙な物体が在るように見える。とは言え、唯の岩礁とか、海藻の群れの可能性が高いんだがな」
「まぁ、基本的には当たるも八卦当たらぬも八卦――ってことでしょ? だったら見てみるしか無いわさ」
船長の言葉にビスケが同意をすると、船員たちは軽く頷いて海中へと小型カメラを投入した。
……一応言っておくが防水性の家電カメラではなく、海中でのリモコン操作を可能とした特別製である。
「だいたい200m位だな。そのくらいの深さにソナーでは反応があった。その辺りにユックリと落として――」
「船長、高速艇です! 高速艇が3隻近づいてきます! コッチに向かって一直線ですよ!」
「……なりふり構わずってことかね?」
「さぁ? でも、私の方としてはやりやすくて良いわさ」
呆れたように肩を竦める船長。そしてそれに対して軽い口調で返したビスケ。
二人の雰囲気は、慌てて連絡をしに来た船員のソレとは大違いである。
ビスケは腕を軽くグルっと回すと、
「あ、ユーマの奴を起こさなくちゃだわね」
と、言うのであった。