ガチャと俺のプライベートプラネット 番狂わせの召喚王 【第1巻発売中!】   作:太陽くん

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史上最も単純かつ頭の悪い作戦

イベント『エンジェルフォール』第10エリア  聖堂要塞エクレシア 大聖堂 中庭

 

 

 

大聖堂の中庭には、美しい花畑が広がっていた。

 

普段は大聖堂に勤める司祭や修道士達の憩いの場として親しまれてきた、花々が生い茂る中庭。

 

 

 

 

中庭では、ひとりの男が静かに立っていた。彼は手にしたじょうろから、優しく水を花たちにかけていた。降り注ぐ水滴が花びらにそっと触れ、太陽の光を浴びてキラキラと輝く。

 

 

彼の名はトーラス。聖堂要塞エクレシアの神殿長であり、第10エリアの代表である。

 

色とりどりの花々が風に揺れる。咲く花々はトーラスにより大切に育てられてきた。

 

 

男は静かに、その大切な瞬間を過ごす。

 

これから、戦争が始まる。そうなれば、この中庭も攻撃を受ける。

 

 

トーラスは、花々と最後の時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

 

中庭に入ってきたのは、一人の少女であった。

 

この要塞唯一の聖女である。ミネである。

 

多くの聖女が華々しい聖地や豪華に飾られた教会で働く中、中央からこんな古ぼけた軍事基地に流れてきた変わり者だ。噂では不正を告発しようとしたらしいが、真偽は分からない。だが上がやりそうなことだ。

 

 

 

「ついに始まりますね。異世界との戦争が」

 

「兵たちの様子は?」

 

「最後の祈りを捧げています。戦争が始まれば、大規模な集会を開くことはできませんから」

 

 

 

これから戦場に立つ兵士たちの士気は高い。

 

迫り来る異教徒の軍勢に対し、一致団結し、勇敢に戦おうとするだろう。だが真実を知る将兵は、厳しい現実に直面しており、一部の将兵の顔に影を落とした。眼には悲しみと無力感が滲み、しかしそれでも将兵は戦場で仲間たちと共に立ち続け、この一戦に臨む決意を胸に秘めていた。

 

 

 

 

 

 

 

「…我々も死ぬのでしょうか」

 

「あまりそのようなことを言うべきではない」

 

「申し訳ありません」

 

「………いや、謝る必要はない。君の気持ちもわかる」

 

 

はあ、と大きくため息を吐き、ベンチに腰掛ける。

 

 

 

「我々は死ぬ。聖軍作戦本部の報告書によれば、避けようのない事実らしい」

 

「ッ」

 

「我々は完膚なきにまで敗北し、全滅だ。上は我々を見捨てたらしい。この要塞に伝わる神器や聖遺物は一つ以外上が全て持って行ってしまった。虎の子の伝承騎士団も一緒にだ。今は要塞最下層で待機中と誤魔化してるが、いつまで持つか」

 

「そんな馬鹿な………あり得ません!この聖堂要塞は教典にも記載のある歴史ある要塞です!そんなはずは………」

 

「上にとってはかび臭い、ほこりだらけの老朽化した要塞としか思っていないのだろう」

 

「それにそんな事をいっている場合では無いということだ」

 

 

 

大きくため息を吐く。

 

 

 

「既に2つの世界が敗北した。獣と魔。どちらも我々の世界よりも低俗で劣ってはいたが、それでも彼らは強い。本来なら獣が勝利していたはずだ」

 

「ですが、彼らは…」

 

「そうだ、敗北した」

 

「まさか、こんなことになるとはな」

 

 

大きくため息を吐く。聖女は内心、「こいつため息吐きすぎだろ」と思った。

 

 

「簡単に勝てる戦だと誰もが考えていた。相手は愚かにも神秘を根絶やしにした世界。かといって科学もまだまだ未熟な世界」

 

「多少のイレギュラーはあったが許容範囲内」

 

「だが2つの世界が負けた。情報が規制されていて詳しくは知らないが、敵の戦力は強大だ」

 

 

「………どれだけ戦況が絶望的でも、戦うべきです。一兵でも多く殺し、一秒でも長く足止めする。そうすることで、他のエリアも楽になるはずです」

 

 

「上もそう考えた。これが作戦だ」

 

 

トーラスが聖女に、極秘と書かれた封筒を渡す。その封筒を開け、中の書類を見た聖女は絶句した。

 

 

「笑えるだろう?」

 

 

 

 

 

 

極秘 神殿長トーラス以外の閲覧を禁じる。

 

作戦名 ノーリターン作戦

 

発令日 【■■■■】

 

受信者 聖堂要塞エクレシア トーラス神殿長

拝啓、トーラス神殿長。

 

本命令は極めて秘匿性が高くかつ神聖な性質を帯びており、我々の信ずる神と守護すべき聖地の尊厳に関わるものです。異世界軍が聖堂要塞エクレシアの地上部を制圧し、敵本隊が地下に侵入した場合、以下の命令に従ってください。

 

あなたはこの神聖な使命の最高責任者です。この命令を率直に理解し、執行してください。

 

聖堂要塞エクレシアの自爆について

要塞の全ての神聖力を解放し、要塞全体を自爆させてください。この行為は神聖な犠牲であり、敵を排除し、我々の信仰と聖地の尊厳を守るための決して避けることのできない措置です。

 

聖女について

彼女の生命を作戦成功に捧げてください。

 

女神像について

聖堂要塞エクレシア最下層に設置されてある女神像は太古より存在する神秘です。この資源を有効に活用してください。

 

兵士について

本作戦は神殿長以外知る必要はありません。神殿長以外の全ての兵士の生命を捧げてください。例外はありません。

 

脱出について

神殿長は要塞最下層に極秘に搬入された保護装置に乗り込んでください。戦争終結後に回収します。幾つかの勲章と中央への栄転が約束されます。

 

 

 

この使命は、我々の信仰を守るための必要な手段です。私たちはこの聖なる犠牲を忘れません。この作戦の犠牲者は我々の神聖なる使命を果たすための選ばれた者です。彼らの献身は記録より完全に抹消されますが、我々はその行いを忘れることはないでしょう。

 

 

なお、この書類は閲覧後速やかに処分すること。

 

 

神の加護があなたと共にありますように。

 

敬具

 

[署名] 【■■■■■■■■■■■■■■】

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが、こんなものクソくらえだ」

 

「は?」

 

 

書類は、神殿長の手から飛び出た魔法の火に触れ、燃え上がった。その火はあっという間に燃え広がり、灰となって風に舞い上がる。

 

 

 

 

「俺の神殿が、負ける?舐められたものだ」

 

 

「確かに神器や聖遺物はない。我々は下位エリアだ、難易度調整のための武装制限もあるが、他のエリアとは違い元々が老朽化した要塞だ。制限など有って無いような物」

 

「上はこの要塞を舐めている。何度も何度も増改築し、数多くの武装、迷路のように地下深くまで彫り込まれ、何十層にもなる結界で守られた不沈の要塞。精強な兵士。それに比べて敵はどうだ?下位エリアに来るのは、敵軍の中でも弱い軍隊だろう。強い奴らは上位エリアの攻略に向かうはずだ」

 

 

 

 

「我々は勝つ。戦争終結後、上の奴らをあっと言わせてやろうではないか」

 

 

 

聖魔大戦、それは神話の時代における戦争。この聖堂要塞エクレシアは敵軍に囲まれ、物理的にも精神的にも孤立した状況下でも戦い続け、援軍が来るまでの間耐え続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「神殿長。もうすぐ時間です。早く要塞最下層へ」

 

「わかっている。だがその前に、地上の兵士に最後の祈りを捧げたい」

 

 

 

 

今日は実に素晴らしい日だ。雲ひとつない青空が広がり、太陽の温かな日差しが心地よい暖かさで眠くなりそうだ。

 

木たちは元気に育ち、大気は魔力で満たされる。心地よいそよ風が吹き、髪をなびかせ、心を穏やかにする。

 

 

この絶好の天気を活かして、ピクニックに出かけたくなってくる。

 

しばらくはこの美しい空を見上げることがないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「待て」

 

 

 

「なんだあれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前11時32分  聖堂要塞エクレシア上空

 

山田 竜 視点

 

 

「いてッ」

 

 

●第10エリア限界高度に達しました。これ以上の上昇は不可能です。

 

 

このイベント『エンジェルフォール』のイベントエリアは50に分けられる。最初は45までのエリアが開放され、イベントの進行によって残りのエリアも開放される。

 

イベントエリアは天井と横に透明な障壁で囲まれており、この障壁は破壊不可能。

 

今俺は、障壁に頭をぶつけたと言うわけだ。クソが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「7号」

 

「うん」

 

 

「魔力供給開始」

 

俺に寄越せ、その膨大な魔力を。

 

 

 

 

 

 

『ゴールデンボール』作戦に必要な物は、5つ。

 

 

『ミダースの手』

 

俺の右手に触れた物を生物非生物を問わずあらゆる物を黄金に変えるスキル。

このスキルを利用して俺は魔力と暇さえあれば可能な限り黄金に変えてきた。

 

 

 

『レフトハンド・シルバースライム』

 

左腕をシルバースライムに変え、一本の触手を自由に操るスキル。伸縮自在で様々な形に変形し、硬度を自由に変えることが出来る。俺はミダースの手を使う際、シルバースライムに変身した左手を黄金に変えていた。

魔力がある限りシルバースライムは増殖し大きくすることが出来るため、魔力だけで黄金を生み出すことが出来る。

 

 

『膨大な魔力』

 

山田ドラゴンガチャ王国の国民であるホムンクルス達。彼らは合成により色々混ざり合っているが、ベースとなるのは戦闘用ホムンクルスなため、一人一人が普通の人間よりも魔力の生産効率と最大魔力量が大きく、またホムンクルスは魔力タンクとしての用途もあるらしく、魔力の譲渡効率が良い。

 

 

『ホムンクルス統括個体 ハブ』

 

7号が進化ポーションを飲んだ結果、まさかの大成功。進化過程をいくつもすっ飛ばして最終進化先である、全てのホムンクルスの統括者であるハブへと進化した。

ハブとなった7号は、ホムンクルスの代表、絶対的な命令権を持ち、全てのホムンクルスの情報を知る女王となった。7号を中心に、全てのホムンクルスより魔力を徴収することが可能。

 

 

 

そして最後の一つ

 

発動に必要なのは、一言だけ。

 

 

「ガチャコール」

 

 

 

出現したのは、巨大な黄金の玉。

 

ガチャコール。それはガチャより排出されたアイテムを召喚する機能。

 

 

あらかじめスライムの左手を黄金化、そして黄金で大きな玉をつくる。

ホムンクルスの魔力を7号に集め、俺に譲渡。

 

この膨大な魔力を使い、玉をガチャコールで召喚する。

 

シルバースライムは、黄金となってもガチャからの排出アイテムとして判定されるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

【ゴールデンボール作戦】

 

それは、超巨大質量による攻撃。

 

 

 

重くて大きい物を、上から落とすだけ。

 

 

 

 

「落下」

 

 

 

黄金が、墜ちていく。

 

 

 

重力と加速装置により、地上の要塞に向かって猛スピードで接近していく。空を切り裂く黄金の軌道は、展開された結界を、まるでガラスを割るかのように粉砕する。

 

 

落下する黄金に対して地上の天使達は全力で飛び逃げようとする者、魔法や大砲で黄金を破壊しようとする者、様々だった。

 

だが、黄金はその軌道を変えず、全てを吹き飛ばした。

 

 

 

地響きとともに、歴史ある要塞に衝突する瞬間、街は爆発と炎に包まれ、煙と破壊の渦に巻き込まれた。

 

 

要塞の建造物が吹き飛び、炎が空に舞い上がる。悲鳴と絶望の叫び声は大隕石の猛烈な衝撃にかき消され、要塞は地図から消え、クレーターだけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ~、ストレスが解消される~、7号はどう思う?」

 

「勿体ない………………あれ全部お金になりそうだったのに」

 

 

 

「大丈夫だ、あとで発掘作業でもして価値ありそうな物は回収するさ」

 

「ならいっか」

 

 

 

 

 

 

●山田竜陣営により、第10エリア代表 神殿長トーラスが死亡しました。第10エリアが攻略されました!

 

●クリア率99.2%!

 

●功績値計算中です。しばらくお待ちください。

 

●一定の功績値に満たないユーザーの侵入を禁止します。

 

●業績として、【鏖殺】【スピードアタック】【単独攻略者】などが与えられます。

 

●運営内で攻略方法について現在審議中です。

 

 

 

 

 






質量攻撃について詳しいことが知りたい人はブリティッシュ作戦と調べよう。

コロニー落としすぎ!

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