苦労人な弟~脇屋義助戦記~   作:(TADA)

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いつか脇屋義助主人公の南北朝時代小説書きたい→え? やだ……逃げ上手の若君面白い……→んじゃ練習のために逃げ上手の若君二次創作書くかぁ

そんな感じで書き上げた小説です。

原作との若干のキャラ違いありますがそれでもよろしければどうぞ


はじまり

 俺は鎌倉にある岩場に座って釣り糸をたらしながらぼんやり考える。

 恥ずかしながら俺は転生者だ。残念ながら神様にも仏様にも会っていないが、前世にて「あ、死んだ」と思ったら赤ん坊になっていた。

 まぁ、転生したのはいい。前世の頃から色々な不条理に巻き込まれていたので諦めはいいのだ。

 問題なのは産まれた時代だ。時は鎌倉幕府末期。安泰と思われていた鎌倉幕府に亀裂が入り始めた時代、俺は上野国新田荘に生を受けた。

 鎌倉末期に上野国新田荘に産まれたので「すわ!? まさか俺は新田義貞か!?」と思ったが、赤ん坊である俺を見に来た兄の新田小太郎、後の新田義貞をみて自分が何者かを知る。

 歴史においては兄の補佐に尽くし、常にその傍らで兄・新田義貞を助け、兄の戦死後は甥達とともに南朝のために戦い、最後は四国で病没した『脇屋次郎義助』が俺である。

 兄は俺を信頼し新田荘や自分の領地の経営を全て俺に丸投げ。そんな状況だから兄は今でも無位無官の『新田小太郎』のままである。

 だが、そんな兄のおかげで俺はこの時代のことを詳しく知ることができた。現状のままだと普通に新田家が潰れかねないので楠木正成よろしく幕府に隠れて悪党働きで隠し財産も築いた。

 そんなせこせこと新田家を守ろうとしていた俺に大きな事件が起きる。

 後醍醐天皇の倒幕運動である。

 足利一門だけでなく足利一門の有力者である新田家にも護良親王の令旨が届いた。ここで兄は当然のように俺に聞いてきた。

「倒幕側につくべきか?」

 この質問に俺は即答できなかった。

 前世においてまぁまぁ歴オタだった俺はこの政変を知っている。楠木正成や赤松円心の奮闘、そして足利尊氏の裏切りによって倒幕は成功する。

 勝ち馬にのるなら倒幕一択だろう。

 だが、その後に待っているのは後醍醐天皇の建武の新政の失敗と、足利尊氏による天下取りだ。

 で、最終的に勝ち馬になる足利尊氏につくという選択肢もあるが、足利家が起こした室町幕府は初代尊氏の時から内乱続きで、正直なところ微妙である。

 以上のことから「この政変に勝者いなくね?」状態である。

 兄の質問に悩んでいた俺であったが、思いがけないところから救いの手がくる。

 足利家棟梁足利高氏(後の尊氏)からの新田兄弟招集である。

 前世においても言及されていたが、新田家は有力な足利一門である。同じ一門で年齢も近い足利高氏、直義兄弟と新田義貞、脇屋義助兄弟は自然と仲良くなり、幼馴染とも言える関係になった。

 お互いに名前を呼び捨てで呼び合うほど仲の良い高氏からの招集に兄は上機嫌で応じた。ご丁寧にお酒まで持って。

 そして足利屋敷にて俺は親友の直義から衝撃的な計画を持ちかけられる。

 そう、倒幕計画である。

 まぁ、歴史知識がある俺には「ああ、やっぱりそうなるか」という印象しかないのだが、武闘派で幕府に恩義もない兄は一も二もなく賛成。家長である兄が賛成ならば弟である俺も否はない。

 で、問題はその後の直義からの願いだった。

「新田軍は鎌倉を落として欲しい」

 これもまぁ、前世の歴史知識があるから特に驚くことではない。それに兄は政治とかはからっきしだがこと戦に関しては尊氏に並ぶほどの豪傑だ。

 で、何が問題だったかと言えば続く高氏の言葉。

「今後のことも考えてできるだけ被害は少なくして欲しい」

 鎌倉は頼朝が開いた天然の要害だ。高氏から願いを受けて兄・義貞と一緒に鎌倉中を歩き回ったが、いい方法は思いつかない。

 とりあえず詳しい地図は作れたので兄は先に新田荘に戻って作戦を考え、俺は何かないかといまだに鎌倉にとどまっている。

「あ! 脇屋殿!!」

 俺を呼んだ声に振り向くと、見るからに育ちのいい武家の少年がいた。

「よう、長寿丸」

 俺の言葉に岩場を身軽にぴょんぴょん跳ねながら近寄ってくる長寿丸。ちなみに長寿丸とは俺が適当につけた名前なので本名は知らない。だが、着ている服装からかなり高位な武士の子供なのは見当がつく。

 俺に近寄ってきた長寿丸は俺の釣り竿と俺を交互にみる。

「脇屋殿は今日も釣りですか?」

「ああ、こうしていたら官位でも釣りあげられないかと思ってな」

 俺の言葉に意外そうな表情になる長寿丸。

「脇屋殿も出世に興味がおありなんですね」

 長寿丸の言葉に俺は苦笑しながら手をひらひらと振る。

「まさか。別に俺自身は出世しなくてもいいよ。だが、足利一門の有力者たる兄者がいつまでも無位無官の『新田小太郎』じゃまずかろうと思っているだけさ」

「は~、お兄さん思いなんですね」

「お前さんも兄を持てばわかるさ」

 俺と似たような境遇である直義とは幼馴染であり親友とも言える間柄だ。俺達に共通しているのは兄を盛り立てようとするその気持ち。

 まぁ! 俺の場合新田荘の稼ぎに直結するので出世して欲しいだけだけどな!

 俺の言葉に長寿丸は困ったように頭をかく。

「実は私にも兄がおります」

「お、そうなると長寿丸も次男か。兄とは仲良くしろよぉ。兄弟で殺し合うほど虚しいことはないぞ」

 まぁ、武士である以上家督を継ぐための一番のライバルは兄弟なわけだが!

「え~と、それが兄上の母上様は……その……出自があまり……」

 長寿丸のその言葉だけで俺は察しがつく。つまり兄の出自が低いので事実上の跡継ぎは長寿丸なのだろう。

「お~、それは大変だ。家督相続したら頑張れよ」

「ひ、他人事みたいに言いますね!」

「いや、事実他人事だしな」

 それに他家の家督に首突っ込むとろくなことにならないのは歴史が証明している。

 俺の言葉に苦笑いしていた長寿丸だったが、すぐに思いを変えたのか話しかけてくる。

「そういえば脇屋殿はよく由比ガ浜からこのあたりで釣りをしていますが、何故ですか?」

「ん~、ああ、それはな。噂でこのあたりの海が干上がることがある、って話を聞いてな。それは生で見物してみたいと思ってここで釣り糸をたらしているのよ」

 歴史において新田軍は海がひいた由比ガ浜から進撃して鎌倉を落とした。この知識がある俺はどのタイミングで由比ガ浜の潮がひくか見極めようと思っているのだ。

「あ、それなら私知ってますよ」

「なに……っとぉ!?」

「わ!! すごい引きです!!

 長寿丸の言葉に詳しく聞き出そうとした瞬間、すさまじい力で釣り竿が引っ張られる。嬉しそうに俺の周囲を飛び回る長寿丸に詳しいことを聞きたいのを我慢しつつ釣り竿をひく。

「この脇屋義助を舐めるなよ魚風情が!!」

 その叫びと当時に思いっきり竿を引いて魚を釣り上げる。

 1mは越えそうなサイズの鯛が釣れた。

「え~……」

「わぁ!! 鯛ですよ鯛!!」

 あまりのサイズに呆然とする俺だったが、長寿丸は目を輝かせて鯛をみているので鎌倉ではこのサイズは普通なのかもしれない。

 そして一度咳払いすると改めて長寿丸に尋ねる。

「ところで長寿丸。由比ガ浜の潮をひくのを知っているということだったが……」

「あ、はい。一か月に一度、数刻程度ですが由比ガ浜の潮はひいて砂浜になりますよ。今月はたぶん明日か明後日くらいだと思いますけど」

 俺はその言葉に天を仰ぐ。

「これが天運って奴か……」

「? どうかしましたか?」

「いや……そうだ長寿丸。この鯛はお前にやろう」

「え!? いいんですか!?」

「ああ、面白い話を聞かせてくれた礼だ」

 素直に喜ぶ長寿丸をみて、この鎌倉を燃やすことになる俺は罪悪感を覚えるのであった。

 

 

 

 

 

 上野国足利荘足利屋敷。ここに俺は兄・新田義貞と一緒にやってきていた。家宰である高師直も遠ざけて行われる足利兄弟と新田兄弟の密談である。

「それで? 鎌倉を落とす算段はついたかい、義貞」

「おう! 俺達兄弟に任せておけ!!」

 怪しい笑みを浮かべる高氏に豪快な笑いをしながら高氏の背中をバシバシと叩く兄である義貞。この屋敷にくるまでに詳しい作戦は伝えたが、いまいち理解しているかがわからないのが兄の欠点である。

 義貞の言葉に義貞の肩を組んで嬉しそうに笑い始めた高氏を尻目に、直義がすすっと俺に近寄ってきて小声で尋ねてくる。

「義助、本当に大丈夫なのか?」

「基本的には。だけど根本的な問題がある」

「聞こう」

 直義の言葉に俺は小声で話す。

「新田じゃ人が集まらない。やはり高氏殿か直義のどちらかがいてくれたほうがいい」

 俺の言葉に直義は難しい表情をする。

「それは難しい。幕府を騙すには足利の総力をあげて上洛する必要がある。それに上方では六波羅を落とさなければならない」

「だが、兄者と俺じゃあ人が集まらない。集まらなかったら鎌倉は落とせない」

 俺の言葉に難しい表情をして腕を組む直義。歴史を知っている身からすると、どうすればいいのか答えはでているのだが、それを言うには俺の足利での発言力が弱い。

「義助、もう、方法は考えているんだろう」

 全てを見通すかのような言葉に背筋が凍る。弾かれたように声の主をみれば、薄笑いを浮かべた高氏が俺を見つめていた。

 そして微笑をたたえながら言葉を続ける。

「君はもうその解決策も思いついている。違うかい?」

 この目だ。高氏のこの全てを見通し、吸い込まれるような深淵の瞳。この瞳を恐れて俺はとりあえず足利と組むことに決めた。

 俺は生唾を飲み込むと高氏を見ながら口を開く。

「幕府に人質としてだされている高氏殿のご嫡男を旗頭にさせていただきます。上方で高氏殿、上野で足利のご嫡男がたてば日和見しそうな武士もこちらに靡くでしょう」

 俺の言葉に高氏は笑いながら頷くと直義をみる。

「直義はどう思う?」

「それが一番かと」

 直義の言葉に頷くと高氏は兄をみる。

「義貞、息子を預けるよ」

「おお!! 任せておけ!! 初陣を見事に勝利で飾ってやるとも!!」

「ふふ、ありがたいね」

 そう言って高氏は立ち上がると広間のふすまを開く。時はすでに夜。月明りに照らされて高氏は一種荘厳な雰囲気になる。

 そして高氏は笑いながら俺達に振り向く。

「さぁ、天下大乱の刻だ」

 その言葉に兄は笑いながら答え、直義は頷く。

 俺は高氏に頭を下げながら心のうちで舌をだす。

(天下は乱れる。その通りだ。だが、勝者は果たして誰かな?)

 頭を下げている俺には、俺の心中を見透かすように俺をみている高氏に気づくことはできなかったのであった。




脇屋義助
転生者系オリ主。しかし残念ながら俺TUEEEEはできない

新田義貞
脳筋兄ちゃん。弟のことを全面信頼。政治関係は任せた

足利高氏
のちの尊氏。ラスボス候補

足利直義
義助くんのマブダチ

長寿丸
いったい何条時行なんだ……



他の作者の作品をお読みの方はいつもありがとうございます。初めての方はお読みいただきありがとうございます。

逃げ上手の若君は連載開始当時、北条時行が好きだった自分は胸をときめかせて読んだところ足利尊氏の解釈違いにキレて読むのをやめました。
しかし、その後に推しである足利直義や最推しである楠木正成がメインででてくると知り、改めて買って読んだら無事にハマりました。

で、今後一次小説でいつか南北朝時代の小説を書きたいと思っているのでその練習のために書き上げた、って感じです。

ほぼ一発ネタみたいな感じなので続くかは未定です

ちなみに作者が好きな南北朝時代武将
楠木正成とその一族、大塔宮護良親王、赤松円心、脇屋義助、足利直義、北畠顕家、北条時行、桃井直常などなど
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