苦労人な弟~脇屋義助戦記~   作:(TADA)

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え? 第二回あるの!?

あります

あ、オリジナルキャラ一人でますので苦手な方注意


鎌倉攻め、戦後処理

 倒幕は成功した。

 上洛した足利軍は幕府を裏切り、後醍醐天皇の下に伺候したあと六波羅探題を急襲し、これを撃滅。これによって上方の幕府軍は壊滅。

 それと呼応して上野で新田義貞が蜂起。源氏の嫡流の足利高氏の嫡男を総大将にしたことで、幕府に反感を持つ武士達が続々と参加。兄・義貞が指揮する倒幕軍は武蔵入間小手指原と武蔵府中分倍原で幕府軍を撃破。さらに戦力を増やして鎌倉を包囲した。

 鎌倉を攻めるには大きく分けて3つの経路がある。山内からの巨福呂坂を越える経路、化粧坂を越える経路、そして片瀬浜から極楽寺を越える経路である。当然、幕府軍もこの3つの経路を重点的に守る。

 だが、足利兄弟から「できるだけ被害を少なく」と注文を受けた俺は、無理攻めはしない。幕府軍に狙いがバレても嫌なので、適度に攻撃はするが、被害が大きくなりそうであればすぐに引いていた。

 そして準備は整った。

 由比ガ浜の潮が引き、新たな新軍経路が確保できる前日、兄に進言して刀を海に奉納して神仏に祈るというアピールをする。そしてそれを行った翌日、見事に由比ガ浜の潮が引き、新たな進軍経路が確保できた。

 この時代、神仏の加護があると思うと武士はさらに獰猛になる。兄が率いた倒幕軍は由比ガ浜から鎌倉に侵攻。これによって勝敗は決定的となり執権北条高時を始めにした幕府の主だった面々は自害。鎌倉幕府は滅亡した。

 そして俺の主な仕事はここからである。

 勝ったとはいえ、鎌倉付近の住人乱暴するのは今後の統治を考えて却下である。そのためにまっさきに軍令をだして略奪暴行を禁じた。

 無視して略奪を働いた奴は全員斬首である。

 だが、高氏が送り込んでくれた嫡男・千寿王の名前を借りて、戦功のあった者には後日、恩賞を約した。

 そして放っておくと何をしでかすかわからないのが武士である。そのためにやることとして幕府の残党狩りを命じた。仕事を任せておけば少なくとも略奪、暴行はしないだろう、という考えである。

 そして本陣とした鶴岡八幡宮にて兄と共に俺は一人の男を謁見していた。

 男の名前は五大院宗繁。その隣には縄で縛られ、顔を青白くしている少年。自害した執権高時の子・邦時であった。

 五大院宗繁は愛想笑いを浮かべて必死に命乞いをしていた。そんな五大院宗繁を兄は怒りの形相で睨みつけている。

「義助!」

「はい」

「この不埒者を斬れ!」

(まぁ、兄者ならそう言うよな)

 潔癖症なきらいがある兄である。主君から遺児を託されたのに、あっさりと裏切って命乞いをするなど兄にはぶち切れ案件なのは間違いない。

 兄の言葉を受けて必死に命乞いをする五大院宗繁を横目に、俺は一度溜息をつくと兄に進言する。

「兄上、五大院宗繁殿を斬ってはなりません」

「何故だ!!」

 兄の怒りの形相がこっちに向いた。

 だが、まぁ慣れている俺は兄の眼をみながら話し続ける。

「今はまだ戦闘が行われている地域もあります。そこで降伏していた五大院宗繁殿を斬っては、残党がここが死に場所と奮闘し、こちらにいらない被害がでます。ですが、五大院宗繁殿を許せば自分も許されると思って降伏してくる者もおりましょう」

「つまり、こちらの被害も考えてこの不埒者は斬らないほうがいいということか」

「さよう」

 俺の言葉に兄は怒りの形相のまま腕を組む。そしてすぐに郎党に向けて大声をあげた。

「この不埒者を鎌倉から放り出せ!」

 その言葉に兄の郎党達が五大院宗繁の両手をつかんで引きずり、表につれていった。

 残ったのは俺達新田兄弟と縛られた邦時である。

 視線で兄に任された俺は縛られている邦時の縄をほどく。不思議そうにする邦時に向かって俺は頭を下げた。

「幕府執権の遺児に行った非礼、まずは詫びさせていただきます。あちらにいるのが鎌倉攻めを事実上指揮しました新田小太郎義貞」

 俺の言葉に頭を下げる兄。そして俺は言葉を続ける。

「そして私は小太郎義貞の弟・脇屋次郎義助」

「私は……」

 そこまで言うと邦時が怖がりながら口を開く。なので俺は邦時の言葉を待つ。

 そして邦時は恐れながら口を開く。

「私は斬られるのですか?」

 邦時の言葉に俺は兄をみる。兄はむっつりと腕を組んだままだ。

 任された、と思って俺は言葉を続ける。

「邦時殿は執権北条高時殿の息子。五大院のように許すわけにはいきませぬ」

 俺の言葉に邦時はがっくりと肩を落とした。

 子供に対してむごいようであるが、これも新田家のためである。心を鬼にするしかない。

「ですが執権の息子を斬首……というのは邦時殿があまりにも哀れ。場は我らで整えさせていただきますので、そこでお腹を召していただければ、と」

「介錯は俺が勤めさせていただきます」

 俺の言葉に黙っていた兄が口をだしてくる。

 しばし、うつむいていた邦時であったが、すぐに覚悟を決めた表情を浮かべて俺達を見つめてきた。

「敗残の身に自害の機会をくれたことに感謝いたします」

 その言葉に兄と俺は頭を下げ、俺の郎党を呼んで丁重に送り出した。

 邦時を送り出しながら兄は目を細める。

「あんな子供を斬らねばならないのか」

「仕方ないだろう。一歩間違っていれば我らの息子がああなっていたかもしれんのだ」

 俺の言葉に溜息を吐く兄。だが、すぐに気分を変えたのか晴れやかな顔で俺をみてきた。

「しかし、鎌倉攻め……終わったな」

「落とした……という意味では終わりだな」

「うん? どういう意味だ?」

 俺の言葉に不思議そうにした兄に俺は説明をする。

「鎌倉を落とし、主だった者はみな死んだ。だが、正室腹のために執権・高時の嫡男である時行がまだ捕らえられていない。それと高時の弟・泰家もだ」

「だが、義助のことだ。鎌倉は厳重に包囲しているんだろう」

「ああ、だがまだ捕らえられていない」

「……まだ鎌倉にいるということか?」

 兄の言葉に俺は頷いた。

「外の包囲は俺が受け持つ。兄者に鎌倉内部は任せた」

「わかった」

 そう会話すると俺は陣幕をでて自分の陣に向かうのだった。

 

 

 

 鎌倉を落として一週間程度。邦時の自害も終わり、その亡骸を兄と共に懇ろに葬ってから降伏してくる者が増えた。

 それらの者を千寿王の名前で許しながらも、俺は鎌倉の包囲をといていない。

 京にいる直義に向けた書状を俺が書いていると、何の用だか知らないが俺の陣にきて胡坐をかいている一門が俺に話しかけてくる。

「で、義助殿はいつまでこの包囲続けるつもりなんだ?」

 俺は一度筆を置くと、声の主を睨む。俺の視線に貫かれ、一瞬萎縮した雰囲気をみせたが、すぐに虚勢をはってくる猫耳のような烏帽子をかぶり、浅黒い肌をした男。

 新田一門である岩松家の次男。岩松経家であった。

 史実において経家は新田一門であるが足利に鞍替えし、足利直義の鎌倉将軍府で重要な役割を持ち、そして北条時行の中先代の乱で戦死している。

 女好きを絵に描いたような男で上昇志向の塊だが、武勇に長けてはいる。

 この時点ではまだ足利に接近しておらず、鎌倉攻めでも一手の大将に任される人物だ。

 そんな男に俺は何故かライバル視されていた。何かと言えば絡まれるので正直めんどくさい。

 俺は溜息をつくと、再び筆をとりながら説明する。

「いまだに北条時行が捕縛できていない。京からも特に指示がないのなら探し続けるしかないだろう」

「ふぅ~ん、あんたならもう情報持ってるんじゃねぇの?」

 経家の言葉に特に反応せず、俺は筆を走らせながら言葉を続ける。

「降伏した者の情報で北条時行は信濃の諏訪に託された、という情報がある」

「信濃の諏訪ってぇと、諏訪大社の神官か?」

「そう。諏訪の『現人神』だよ」

 諏訪大社の神官、諏訪氏は信濃では圧倒的な勢力を誇る一族である。執権北条家との仲もよかったから遺児を託されたのだろう。

「ふ~ん、だったらその諏訪の神官と北条のガキを捕らえたらどうなる?」

「勲功第一として千寿王殿を通して高氏殿に進言してやる」

 俺の言葉に経家は獰猛に笑うと、愛用している大剣を担いで俺の陣幕からでていく。

「優秀であるが、いささか自己主張が強い男だ。さて、この男を直義はどう使うやら」

 俺はそう呟きながら直義に向けて書いていた書状を巻き始める。そして経家をみてから頭の隅に引っ掛かりがあることに首を傾げる。

「しかし、経家のあの見た目にあの扱いづらそうな大剣……見覚えがあるんだよなぁ」

 首をひねって考えようとする俺であったが、すぐにそれは大声によって邪魔された。

「殿ぉ!!」

 大声で俺の陣幕に入ってきたのは鎧姿の女性。長い黒髪はポニーテールのように纏められており、その美しさは周囲を圧倒する。さらには鎧にはおさまりきれない巨大な胸によって鎧のほうが可愛そうな音をたてている。

 俺の便女(郎党の女性)である月であった。

 ほめてほめてと言わんばかりの笑顔で月は報告してくる。

「見るからに怪しい神官を捕らえました!」

 そう言って月は持っていた縄を引っ張って男を俺の陣幕にいれる。

「あいたぁ!? 私は神職なんですけど!? もうちょっと丁重に扱ってもらえませんかねぇ!!」

「煩いなぁ。胡散臭い笑みに変な光!! 殿! こいつ間違いなく北条残党ですよ!!」

 眉目秀麗で武勇にかけては古来の巴御前や板額御前か、と呼ばれる月の欠点はその単細胞ぶりだった。だが、その底抜けの明るさもあいまって単細胞も『愛すべき莫迦』と言った存在である。

 俺は月の言葉に溜息をつきながら縛られて地面でびたんびたんしている神官の縄をとく。

「私の郎党が失礼しました。私は脇屋次郎義助。おそらくは私が鎌倉攻めで死んだ者達の供養のために呼んだ方……かと……」

 俺はその男の縄をときながら言葉がつまる。

 だが、その男は胡散臭い笑顔を浮かべ、さらに顔から後光を光らせながらまくし立ててくる。

「ええ!! ええ!! 義助殿の言う通り私は亡くなった方々を供養するために参った者!! あ、一緒にきた子供達は私の手伝いです!!」

 スーパー胡散臭い笑顔、そしてなぜか差している後光。俺はこいつを知っている。

「諏訪頼重……!?」

 俺の発した言葉に笑顔が固まる頼重。そして何やら諦めオーラをだす頼重の郎党。

 俺がこいつを知っているのは脇屋義助としての経験ではない。前世の知識だ。

 前世において南北朝時代に活躍した武将・北条時行を主人公にした漫画『逃げ上手の若君』という漫画があった。南北朝時代好きで北条時行が好きだった俺は当然読んでいたのだが、その作品の重要キャラとしてでてきたのがこの胡散臭い笑顔となぜかさす後光でインパクトの強い諏訪頼重だ。

 というかこいつが諏訪頼重だったら後ろにいる子供達は雫と孤次郎と亜也子か!? そして最後の一人が……。

「……長寿丸」

 俺の言葉にびくりと肩を振るわせる長寿丸改め北条時行。俺は時行をみながら高速で色々考える。

 ここで時行を見逃すとどうなるか? 見過ごすメリットとデメリット。逆にここで斬ってしまった場合のメリットとデメリット。

「とりあえず殿!! この胡散臭い神官は北条なんですね!! じゃあ首刎ねてきます!!」

「待て待て!! ちょっと待て!!」

「はい!! 待ちます!!」

 速攻で諏訪頼重の首を刎ねようとした月を止めて俺は考える。

 だが、不安そうな表情をしている長寿丸をみて決めた。

「神官殿」

「はい」

「私はあなたのことを知らない」

 俺の言葉に諏訪頼重はすぐに察した表情になる。

「ええ、私は一介の神官。今回は鎌倉攻めにてなくなった方々の供養のために参りました」

 頼重の言葉に俺は頷き礼をする。

「亡くなった者達への供養。助かりました。帰り道お気をつけを……月」

「はい!!」

「この方は大丈夫だ。警戒網の外までお前がお連れしなさい」

「わかりました!!」

 そう言って俺の言葉に月は頼重を引きずってでていく。それに雫達もついていった。

 そして俺は長寿丸に聞こえるように呟く。

「すまん、長寿丸」

 俺の言葉に時行は俺に勢いよく頭を下げると陣幕からでていった。

 一人になった空間で俺は一人呟く。

「漫画の世界に転生ってラノベかよ……」




脇屋義助
南北朝時代に転生したと思ったら漫画世界だったことに愕然とする主人公

岩松経家
原作キャラ。義助くんをライバル視する男

諏訪頼重
原作キーパーソン。その胡散臭い笑顔と後光で義助くんの原作知識を呼び起こした

北条時行
義助に見逃されたことを恩に思う


オリジナルキャラ。眉目秀麗、武勇自慢な巨乳女郎党(しかし単細胞



そんな感じで第二回です。さくっと鎌倉攻めを終わらせて戦後処理に入る義助くん。真面目に鎌倉攻め書いたら逃げ上手の若君二次創作じゃなくて南北朝時代一次小説になるので仕方ないですね。

そして義助くん、ここが漫画世界だと気づく。きっかけが岩松経家で決定的だったのが諏訪頼重の胡散臭い笑顔と後光

オリジナルキャラの月は作者の性癖を詰めました

黒髪ポニテ巨乳美人いいよね……
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