仮面ライダーW 追われるS   作:日吉舞

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謎の同業者 -8-

「さあ、お前が山波から預かっているメモリを渡せ!」

 

 プライド・ドーパントが手を鋭く突き出し、昨日と同じ要求を叩きつけてくる。

 

「う、そ……こんな、こんなことって……」

 

 未来は驚愕に目を見開き、その場から動くことができなかった。

 あんなに小さなガイアメモリが人間を怪物に変えるアイテムだと聞かされてはいても、実際にその働きを目にするまでそんなものが現実に存在するなど、心の底からは信じていなかったのだ。だからこそ、今この場で目撃した光景が事実であることをすぐには理解できず、硬直した筋肉が身体を縛っていたのである。

 

「早くメモリを出せと言っている。大人しく渡してくれれば、命までは取らん」

 

 もう一度手を突き出されて、未来はやっと我に返った。まだ舌を自由に動かせず歯切れの悪いしゃべり方になってしまうが、それでも何とか誤解であることを説明しようと試みる。

 

「だ、だから……さっきから違う、誤解なんだって言ってるじゃない!あんた、人の話を……」

「まだ白を切るつもりか。お前がそのつもりなら、殺してでも渡してもらうことにしよう」

 

 顔らしく見える部分から言葉を発するが早いか、プライドは未来に鋼鉄の如き拳を振り翳してきた。

 

「わあっ!だから、できるわけないって言ってんだろ!」

 

 頭を狙ってきた一撃を避けながら、未来は必死に元人間であるプライドと話を続けようとする。だが、この一言は誤った意味をもたらし、更なる思い違いを生むだけの結果となっていた。

 

「できるわけがないだと?良かろう、今の言葉、後悔することになるぞ!」

 

 プライドは手近な生け垣に手を伸ばして若い葉を毟り取り、未来に向かって投げつけた。素早く横へ跳んだ彼女に空を切って飛んできた葉は掠りさえしなかったものの、柔らかい筈の新緑は鋭い刃物と化し、カッターナイフのように土の地面に突き立っていた。

 先日も目にした、物質の硬度を変化させるプライドの特殊能力だ。

 

「……聞く耳を持ってるような状態じゃないってわけ!」

 

 未来が舌打ちを漏らし、プライドから走って離れてから呟いた。超常現象とも言うべきドーパントの変身を目の当たりにし、膝がまだ震えているものの、動きに支障をきたすほどではない。

 まさか永峰がプライド・ドーパントだとは思いもしなかった。そうと早く気がついていれば変身する前にガイアメモリを奪えたのに、自分の間抜けさがひたすらに腹立たしい。しかし戦闘になってしまった以上、この状況を嘆いたところで何も変わりはしないのだ。早急な事態の収束を目指す以外に道はなかった。

 

 それに不幸中の幸いと言うべきか、永峰は研究者で戦闘技術に関してはずぶの素人だ。ドーパントに変身したところでその穴は埋めようもない筈で、自分のペースで戦うことができれば、十分に勝機はある。

 未来はプライドが様子を窺っていた数秒間のうちに冷静な普段の自分を取り戻し、考えをまとめると、再度向けられてきた攻撃を迎え撃った。

 

 走り込んできた怪人が放つ拳をかわし、蹴りを受け止め、弾き返す。そのどれもが鋼鉄の塊相手に立ち回りを演じているかのように、彼女の四肢に鈍い痛みを残していた。さしもの自分も、生身のまま格闘戦に持ち込むのはきついと考え始めた時である。

 

 突然、横合いから引きつったような悲鳴が上がった。

 見ると、白衣を羽織った二人連れの女性がこちらを凝視して立ち尽くしている。彼女らはC-SOLで働く一般職員だ。未来はここが会社の敷地内であることを、今の今まで失念していた。

 地面に足を叩きつけた未来が跳躍し、プライドと職員の間に割り込んで怒鳴る。

 

「逃げろ、早く!」

 

 緊張した声が消えないうちに、彼女はプライドへ猛然と躍りかかった。瞬時に懐へ飛び込んで四肢に力を込め、打撃の一発ずつに重さを乗せるよう意識し、突きと回し蹴りの連続技を叩き込む。

 ここは戦う力を持たない人間が多過ぎる。未来にとっては極めて不利な状況となりかねないことを、プライドに悟られるわけにはいかなかった。

 

「全く、わかりやすい女だな。あくまで他人を巻き込むわけに行かないというわけか」

 

 しかしプライドは、未来の放つ攻撃の殆どをものともしていない。彼女が上段に放った突きを跳ね返し、あたふたと建物に逃げ込もうとする女性職員たちを追おうとした。

 人質を取ろうとしている意図を察した未来が、すかさずずんぐりとした足元に滑り込んでくる。両手で地面を掴んで身体を浮かせ、腕だけで体重を支えた彼女は、膝を胸に引き寄せて身を縮めた。

 

「させるかあっ!」

 

 叫びとともに弾みをつけ、渾身の力を両足に込めてプライドの胸板を蹴り上げる。

 がん、と乗用車の事故と聞き間違うほどに重く、鈍い衝撃音が大きく周囲の空気を震わせた。

 

「ごあっ!」

 

 銃撃と同じくらいの威力を秘めた、強烈極まりないカンガルーキックをまともに喰らい、プライドの巨体が濁った呻きを上げて宙を舞う。中庭の木々を突き抜けて弾き飛ばされたプライドは、十メートルは後方の地面に叩きつけられた。

 しかし、動く金属の岩も同然の相手に蹴りを放った未来も、流石にただで済んでいるわけではない。両足は軽く痺れており、骨に響く痛みが残っていた。

 

「ったたたたたたた……リュー!誰か、そこにいないの?」

 

 ドーパントを打ちすえた衝撃が走り続けている足の痛みをぴょんぴょん跳んで紛らわし、未来は右耳につけているピアスに触れてひとりごちた。

 

『どうしたんです、未来?敷地内にいるんですから、携帯でも使えば……』

 

 すると、すぐさま彼女の耳だけに聞こえるのんびりした感じの声が答えてくれた。脳に埋め込まれた装置を介した特殊通信に即、リューからの反応があったことに安堵して、矢継ぎ早に状況を伝える具体的な語句を紡ぎ出す。

 

「緊急事態発生だよ!AWP棟北の中庭で、不審者と遭遇。周囲に被害が出る可能性もあるから、交戦しながら爆発物試験場に移動する。至急、敷地内の全職員に屋内退避の通達を出して!」

 

 未来の張りつめた調子で異常が発生したことが伝わったのか、リューの声の印象がきびきびとしたものに変わる。

 

『何ですって?相手の人数は?』

「一人、だけど……」

 

 しかし、未来は口ごもった。

 事実ではあるのだが、共同研究室でリューがぽかんとした顔をしているのが目に浮かぶようだった。

 

『は?……それで、武装は?』

「してない。けど」

 

 またも正直に状況を伝えるのが申し訳ない気持ちになり、彼女の緊張していた語尾が萎んだ。

 一瞬の間を置いて、呆れたようなリューの言葉が返ってくる。

 

『やれやれ。丸腰の不審者如きで、いちいち騒がないで頂けませんか?貴女なら、そんな連中が何百人と束になってかかってきたところで、全く問題ないでしょうに。ビリビリでさっさと片付けて、警備員にでも引き渡して……』

「相手はただの人間じゃないんだよ!」

 

 未来が大袈裟に騒いでいると決めつけたリューの言葉を遮ると、彼女は何とか説明しようと試みた。

 

「何て言うか……その、怪物?身体がものすごく硬くて、物質の硬度を自由に操れるって……」

『能力者というわけですか……未来、それは何と言うラノベですか?』

 

 本当の非常時だと言うのにリューに茶化され、未来は立ち上がろうとしているプライドから目を離さずにいながらも、ついかっとした荒い口調で返してしまった。

 

「ちがーう!ラノベじゃなくて、本当に襲われてるんだってば!」

 

 プライドは落下する際に頭を打ち脳震盪でも起こしたようで、なかなか起き上がれないでいるらしい。これ幸いと、未来はリューに説明を続けた。

 

「嘘だと思うなら、監視カメラの映像を見てみなよ!それから、私の視点カメラも」

『視点カメラは結線していないので、監視カメラを確認しますよ』

 

 はいはいと受け流す態度を崩さないリューの音声が、そこで未来の耳から途切れた。まだバランス感覚を取り戻していないプライドの様子を注意深く見続ける彼女を、焦りが襲ってくる。早く手を打たなければ、建物の中に入り込まれてしまう危険性がある。かと言って、まだどんな能力を隠しているか測り切れない敵に近寄るのも危険だった。

 数十秒が何十分にも感じられる苛立ちに胃が痛くなり始めようかという頃、ようやくリューの嘆息が未来の耳を打った。

 

『はあ……驚きました、特撮ですね。それはコスプレした変質者ではなく、本当の怪人なんですね?』

「さっきからそうだって言ってんでしょ!」

『……不謹慎ながら、胸熱です』

 

 恐らく今現在の映像だけでなく、永峰が変身する瞬間の録画も確認したのだろう。未来の仲間であるオタク青年は、いつもと違って恍惚とした印象のしゃべり方になっている。「特撮」などという単語をすんなり思いつく辺り、非日常的な状況に酔っているとしか思えなかった。

 

「ああもう!あんたがどう感じようが勝手だけどさ、あいつを追っ払わなきゃならないのは私なんだから!ちゃんと援護しろっての」

 

 今一つ緊張感に欠ける司令官の楽しそうな態度に、未来は頭を掻きむしりたい気分である。が、文句はけりがついた後でまとめて並べ立てることとして、今は施設の安全を確保することが優先事項だ。

 

『とりあえずは了解しました。職員は全員、屋内に避難させます。防弾シャッターを下ろした方がいいですか?』

 

 しかしそこは元戦闘のプロと言うべきか、やるべきことはきちんと把握しているのがありがたい。ようやく立ち上がったプライドを睨み、未来はリューの提案に同意した。

 

「役に立つかどうかわからないけど、一応そうして」

 

 プライドは、物質の硬度を自在に変化させる能力を持つ。その気になればどんな材質のシャッターも破ることができる筈だ。施設内の者を盾にされないためにも、早急に倒さねばならない。

 ただし、それが小型の拳銃しか持っていない今の状態で可能かどうかは不透明だ。彼女はゆっくりと足を進めながら、リューにもう一つ指示した。

 

「それから、私の装備を揃えておいて。隙があったら一度退却して、武装するから」

『了解。サポートが必要なら、いつでも言ってください。視点モニターで、私も様子は逐一確認します』

 

 以降の様子はリューが確認し、適切に対処もしてくれるだろう。満足げに頷いた未来が、まだ頭を振っているプライド目掛けて走り出し、一気に距離を詰めた。あっと言う間に相手の懐へ飛び込んで、上段を狙った突きを叩き込んでいく。

 

 彼らが戦うのは研究棟が集まる敷地のほぼ中央、煉瓦を組み上げて作った噴水がある広場だ。ここも休憩時間には大勢の職員がくつろげる場所だが、今は半端な時間であるため誰もいない。これならば、未来も思う存分に暴れられそうだった。

 

 自分の方が遥かに素早いのをいいことに未来が突きの連打を浴びせかかると、プライドはまず防御する体勢に入ったようだった。案の定と言うべきか、彼女の繰り出す打撃すべてを受けても、プライドは全くダメージを蓄積させているように見えない。

 逆に恐ろしく堅固な鎧を殴り続ける未来の拳の皮膚が擦り切れ、早くも血が滲み出す有様だ。

 

「さっきはよくもやってくれたな、この小娘が!」

 

 未来の回し蹴りを腕で防いだプライドが大きく後退し、浅い噴水の縁で低い姿勢を取る。的を外した彼女の蹴りは煉瓦の柱の一本に命中し、大きな破壊音を響かせて粉砕していた。

 

『未来。頼みますから、施設内での破壊行為は慎んでください』

 

 視点カメラを通じてその光景を目撃していたらしいリューが、困ったような口調でたしなめてくる。

 

「不可抗力だよ。文句なら、このドーパントに言ってよね!」

 

 吐き捨てついでに弁償の請求書も永峰に回して欲しいと思った未来だが、実はそんなに余裕があるわけではない。鋼鉄製とも言えるほどに硬度があるプライドの身体を立て続けに攻撃していた手足は、骨にこそ異常はないだろうが、痣ができ内出血くらいは起こしているだろう。

 

 いくら何でも、生身のままで戦い続けるのは危険だった。最低でも専用武器がなければ無事なままで凌ぐことは困難に思えたが、ここまで誰かに武器を届けさせることは避けたかった。

 

「大型のキャタピラロボットは、まだメンテナンス中だっけ?」

『申し訳ないですが、アサルトライフル本体を運べるものが他にないですね……高周波振動ナイフならいけると思いますが』

 

 未来はリューとの特殊通信を続けながら、内心で舌打ちした。確かに高周波振動ナイフならプライドの硬い外皮を切り裂けるだろう。しかし、身体に刃が触れた時に刀身の硬度を変えられたら、ナイフそのものをたやすく折られてしまう可能性の方が高い。確実に反撃するには、やはり飛び道具が欲しいところだった。

 

「何をぶつぶつ言っている?さっきのお返しをさせてもらうぞ!」

 

 リューと話すため未来が一旦間合いを離した間に、プライドが噴水へ右腕を突っ込んだ。

 

「うっそ……何あれ」

 

 鋼の鎧に全身を守られたドーパントが腕を掲げると、未来の唇から驚きの呟きが漏れた。

 プライドの右腕が、陽光を反射してきらきら光っている。目を凝らしてよく見ると、黒っぽい外皮が光の膜を纏い、薄いそれは指先から一メートル程度先まで、細長い形を取り突き出ていた。先端が鋭く尖った形は、まるで西洋剣のようだ。

 

『あれは……水、ですかね?』

「水?」

 

 プライドが物質の硬度を操る特殊能力を持っていることを思い出した未来は、特殊通信に乗ったリューの一言を受けてすぐ勘づいた。プライドは水の硬度を上げた氷状のものを右腕に纏い、剣の形を持たせているのだ。

 未来の表情が険しさを増す。

 元が水とは言っても、その刃は硬度と鋭さ次第で強力な武器となる。その上破壊に成功したとしてもすぐに再生されてしまうし、別の物質で同じように武器が作り放題ということだ。考えていたよりもずっと厄介な能力ではないか。

 

「どうした?まさか、私のこの力が手強いと今更気がついたのか!」

 

 嘲りながら、プライドが透明な刀身を振りかぶってきた。

 図星を突かれた未来であったが、敢えて何も言い返さないことにする。プライドの素早さはさほどでもないため、斬撃を避けるのは容易だったが、目標を途中で見失った剣は先に未来が砕いたのとは別の柱に当たり、一抱えもあるそれを真っ二つに切り裂いていた。断面が滑らかなところを見ると、恐ろしいまでに研ぎ澄まされた剣であることがわかる。

 確かに脅威となるほどの威力を持った武器だと言えるだろう。

 

「そいつも、当たらなければどうってことはないんだよ!」

 

 叫んだ未来は既にプライドの背後に回り込み、渾身の回し蹴りを黒光りする外皮に炸裂させていた。敵がバランスを崩したことを確認し、すかさずショルダーホルスターから拳銃を抜き放つ。

 

「ぎゃっ!」

 

 前方につんのめったところへ更に鉛の銃弾を撃ち込まれ、プライドが奇声を上げた。

 だがその巨体は倒れたり、転んだりはせず、ただよろけただけである。

 プライドは未来の素早さについていけず、未来はプライドに決定的なダメージを与えられずにいる。それは戦いの素人であるプライドの方でも、もう勘づいていることだろう。どう考えても、短時間で決着をつけることは困難になりつつあった。

 

 あの翔太郎とフィリップが変身する仮面ライダーなら、この程度の相手など簡単に叩きのめすことができるのだろうかと、ふと彼女は考えた。餅は餅屋と言う諺の通り、素直に彼らを頼るのが賢明だったということなのだろうか?

 

『膠着状態になりそうですね。武装警備員の応援を呼んだ方がいいかも知れません』

 

 リューが提案してきて、思考が中断される。

 未来は答えない。未知の力を持った怪人を相手にしているこの戦闘に、なるべく一般人を巻き込みたくないというのが本音だった。

 

「おのれ、ちょこまかと鬱陶しい小娘が……」

「あんたこそ、私を脅しても無駄だってわかったでしょ。ガイアメモリは諦めて、おとなしく撤退しろ。デザートイーグルで撃たれたんじゃないことに、感謝するんだね」

 

 一向に目的の人物を追い詰められないことに歯噛みしているプライドへグロックの銃口を向けたまま、未来が強い命令口調で言い放つ。

 

「黙れ!その生意気な口を、二度と叩けないようにしてくれる!」

 

 未だ少女の面影を残した若い女に見下されたのが気に食わないのか、プライドが吠える。ここは敵が後ろ向きに考え始めた今、少しでもダメージを蓄積させるべきと踏んで、未来は積極的に挑みかかることにした。

 

「できるもんならやってみろよ……って、わあっ!」

 

 猛烈なチャージをかけるべく突進しかけた未来の勇ましい言葉が、途中から素っ頓狂な叫び声に変わった。

 一体何が起こったのか、咄嗟には把握できなかった。足元にぽっかりと大穴が開いて垂直に落下したかのように、目の高さが突然一メートルは低くなったのだ。

 

 それだけでなく、野性動物を凌ぐ脚力を誇る両足が何かにがっちりと絡め取られているのか、びくともしない。

 驚いて下を確かめようとすると、信じ難いことが起きていた。

 地面にほっそりとした腰から下までが完全にめり込み、今もじりじりと沈みつつあったのだ。彼女がうっかりグロックを放り出してしまったことも忘れ、慌てふためきながら脱出しようともがいても、支えにするべく力を入れた手までもがずぶずぶと沈んでいく有様だ。

 

「ななな、何これぇぇ!」

 

 すっかり動転した未来が悲鳴を上げる。まるで自分がいる周囲だけ、底なし沼になったようだ。必死で足を動かさなければ今にも胸まで地面に沈みそうで、全く這い上がることができないのである。

 

「肉体的には無敵を誇るお前も、こうすればただの人間と変わらないということだ」

 

 嘲笑を浮かべているらしいプライドが、地面に半身を埋めて無様にもがく未来に歩み寄って水の刃を鼻先に突きつけた。

 彼女は、プライドの能力が「触れた物質の硬度を変化させる」ことだと理解し、物理的に接触した場所にしか影響が及ばないものだと思っていた。それが正確には「一定の範囲において自在に物質の硬度を操れる」ことだったのだ。

 とんでもない勘違いをしていたことを、認めざるを得なかった。

 

「く……」

 

 目の前の切っ先とプライドのずんぐりした姿とを交互に見やり、未来が呻く。水の剣を掴んで敵を引っ張ることも考えたが、石柱を切り裂くほどの鋭利な刃だ。下手に触れれば、指が切断されかねなかった。

 

「貴様の方が諦めて、ガイアメモリを渡すがいい。それとも、そのまま生き埋めにされたいか」

「……不可能だ、つってんでしょ」

 

 憮然としたままプライドを睨む彼女は、それでもまだ諦めていなかった。最悪、腕一本を犠牲にすることになるかも知れなかったが、その程度で済むのならまだましだ。持ってもいないガイアメモリを持っているから助けろと偽って交換条件を出したとしても、相手は正気を失っているのだ。逆転できる保証はどこにもない。

 自分が圧倒的に優位な立場にいるとプライドが思い込み、油断している今のうちに何とか手を打たねば--

 未来が歯軋りを抑えつつ思った時である。

 

「ぎゃあっ!」

 

 勝ち誇っていたプライドが突如、濁った叫びを漏らして吹き飛ばされた。同時にその岩の如き身に幾つもの光が爆ぜ、数えきれないほどの火花が散ったのを、未来の大きな瞳が映す。

 プライドの身体を狙って飛んできたかに見えた光の束は、上空から降り注いでいた。

 仮面ライダーWが携える、トリガーマグナムの光弾であった。

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