ープロローグー
ー1600年、美濃国関ヶ原ー
太閤秀吉が死んで僅か2年、毛利安芸中納言輝元と徳川内府家康を総大将とし、計10万人以上が集った日本中を巻き込んだ戦、関ヶ原の戦い。その決着は僅か一日で着いた。大谷刑部吉継は戦場で自決し、石田治部三成も敗走した。彼は後に10月1日に小西行長、安国寺恵瓊とともに六条河原の刑場にて斬罪に処されることになる。その中でひとつの部隊が家康の横腹を突き抜け遥か彼方の故郷へと帰ろうとしていた。家紋は十字、薩摩から兵を率いた島津軍僅か1500人。彼らは戦場からは離脱したものの追撃戦で多くの死者を出した。
ー第1話、迷いし者ー
ー美濃国、大垣烏頭坂ー
義弘「豊久!!退くのじゃ!!豊久ッ!豊久ッ!!豊久ぁッ!!!」
豊久「お退きあれ!叔父上!!ここはお豊にお任せあれ!!」
義弘「お前も帰るのじゃ薩摩へ!!帰るのじゃ!!豊久ッ!!」
豊久「帰りたかです。死ねるなら薩摩で死にたかでも…」
豊久「おじ上1人、薩摩に戻られたならおいも兵子もここで皆死んでもこん戦島津(おいたち)の勝ちなんでごわす」
豊久「兵子供!!撃ち方構えいぃ!!死ぬるは今ぞ!!」
捨て奸の兵士達が追ってきている井の文字の軍団に鉄砲を向けた。
豊久「敵は最強徳川井伊の赤備え相手にとって不足なし」
豊久「命捨てがまるは今ぞ!!」
直政「奴らを生かして薩州に帰さば井伊…徳川の恥ぞ!!」
豊久「時をかせぐ!!一刻でも多く。敵をとどめる、1人でも多く!!」
義弘「待っておるぞ豊久!!待っておるぞ薩摩で!!」
義弘「待っておるぞっ!!死んだら許さぬぞ!!豊久ぁ!!」
島津義弘は壮絶な撤退戦の末、薩摩へと帰還する。薩摩に着いた際の兵士は86人…連れていった兵士の僅か1%にも満たない数であった。
豊久(良か御養父(おやじ)どのじゃあ…。豊久は幸せもんだわ。ようし!!ここは一番武者働きせねば!!)
豊久「放てぇ!!」
ドッ!!ドドドド!!!
鉄砲の硝煙から1人の兵士が躍り出た。島津中務少輔豊久その人である。馬上の武者二、三人を討ち取り、井伊の赤備えと恐れられた男に向かっていく。
直政「おお!!見事也!!」
豊久「島津中務少輔豊久!!推参!!」
また1人馬上の将を討ち取った。
直政「死兵め!!貴様らはもう負けたのだぞ!!」
直政「その首…俺の手柄となれ」
豊久は顔を綻ばせた。
豊久「何を言いやがるクソボケが!!首になるのはおいじゃない!!貴様よ!!」
直政「阿呆が!!」直政が馬上で槍を振るった。
『直政様!!殿を!!守れぃ!!』
『応!!』『応!!』
あっという間に槍衾が築かれた。
豊久「…よか!」
顔に滴りし血を舐める。その刹那、豊久は飛び上がっている。
直政「こ…こやつ!!」
数多の槍に貫かれながら目線は直政をしっかりと捉えていた。
直政「阿呆が!」
豊久は槍を貫かれながら背中の鉄砲に手を伸ばし、構えた。
豊久「あほうはお前(うぬ)じゃ、井伊侍従直政!!」
豊久は鉄砲を放った。ドッ!!っという音がして鉄砲の弾が直政の左肩に直撃した。直政は落馬した。
豊久「はッはー!!やったど!!」
直政「うおぉ?!」ドッ!!
豊久もまた投げ出された。
『直政様!!』『殿!殿ぉ!!』『退け!!退くのだ!!』
井伊軍は直政を連れて逃げた。この時豊久が放った銃弾(たま)は後年直政を死に至らしめる。
豊久「待てぇ!!直政!!」
豊久「ふざけるなよ…!!手前…!!」
豊久「首置いてけ!!直政ぁ!!」
井伊軍が去り、島津兵の骸が重なる烏頭坂で豊久は1人叫んだ…。
ー?ー
あれから何時間たったのだろうか。雨が降ってきた。冷たい雨である。刀を引きずり骸が置き去りにされてある野山を1人の歩いていた。
?「へぇ…貴方そんな体へどこへ帰ろうというのかしら?」
豊久の前に1人の女が現れた。
豊久「…?!何だ!!おまんは誰だッ!!」
?「あらあら…そんなに傷ついて…まだ戦おうとするのかしら?」
豊久「野郎…!!俺(おい)は帰るのだ!!薩州へ!!」
豊久は女の元へ駆け出した。
?「…貴方…気に入ったわ」ブワッ…!!
豊久の前に裂け目が現れた。
豊久「おっ?!うぉっ?!」ズズズ…!!
?「そんなあなたを…」
紫「幻想郷に招待するわ」ニコッ
豊久と女は消えた。後年、烏頭坂戦いの後島津家は豊久の行方を追った。見つかった豊久の痕跡は血のついた鞍。これにより豊久は死亡したと思われたが…。
…本当の真実は闇の中である。
#1 はここまで。ほとんど原作漫画の写しでありますが、楽しんでいたただければ幸いです。同時執筆の『東方のシェフ』共々よろしくお願いします!