【ネタ】故障してる千里眼持ち王子inブリテン王国   作:飴玉鉛

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第2話

 

 

 

 

 

 ロホルトが赤ん坊の頃、彼はいつもを視ていた。

 

 西暦2020年代の現代日本で生まれ育ったとある男の人生を。

 

 如何に恵まれた血筋、優れた才を具えて生誕した身であれど、無色透明、無垢な赤ん坊なのだ。二十数年分の時間を追体験するように視てしまえば、あっさり染められてしまうのも仕方ない。

 真っ白なキャンパスに絵の具の詰まったバケツをぶちまけたようなものだ。たちが悪いのは、染められた側に染まった自覚がないことで、あるがままを受け入れてしまっていたことだった。

 

 赤ん坊の魂を染めた男の人生は平凡なものだ。

 

 何処にいても不思議ではない、ありふれたものである。

 

 男は嗜む程度に娯楽を齧り、落ちこぼれない程度に勉学に励み、苦しくならない程度の生活水準を保ち暮らしていた。女性との交際経験はあっても結婚する意思はなく、男は独り身の気楽さを謳歌した。――交通事故で命を落とすその瞬間まで、ずっと。

 夢はそこで途絶える。果たして己が視ていたものが別人の軌跡だったことなど赤ん坊に判じられるはずもなく、すんなりと赤ん坊は男の人生の終わりを受け入れて、そして己が彼だと錯誤した。ブリテン王国唯一の王子であるロホルトが、男の持つサブカルチャーの知識を引き出して、己はロホルト王子に転生を果たしたのだと認識したのだ。

 

 だが彼はどこまでいってもロホルトである。ロホルト以外の何者にもなれない。たとえ彼自身の認識が、ここではないどこかで生まれ、死んだ男だったとしても、彼そのものにはなれなかった。

 長ずれば高貴な美青年として、熟達した騎士を唸らせる武勇を得る、英雄の資格を有した男の根幹にある遺伝的高潔さは、自己認識が上書きされただけで歪むほど易いものではなかったのだ。

 

 さもなければ末期に等しいブリテン王国の窮状を正確に把握していながら、外国に逃げ出そうともせずに自らの責任を果たそうとはすまい。凡人なら心が折れ全てを投げ捨て逃げ出しているような状況で、どっしりと踏みとどまって働きはしなかったはずである。

 

 故にロホルトの悲劇はそこにある。己を凡人と規定していながら、英雄らしい無謀な忍耐力を発揮してしまうからこそ、ロホルトは死を迎えるその時まで苦しみ続けることになるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五歳になったロホルトは、早くも騎士としての英才教育を受けさせられていた。

 

 本来なら七歳から小姓となって主君の下につき、雑用の仕事をしながら騎士に必要な初歩的技術を習得するものである。十四歳から従騎士となって先輩騎士の身の回りを世話をして、武器防具の持ち運びと簡単な修理を担当し、実戦にも参加するようになるのだ。

 二十歳ぐらいでようやく一人前の騎士扱いで、主君から叙任の儀式(アコレード)を授けられると、ロホルトは乳母リオノレスから聞いていた故に、それはもう自身の扱いに驚いていたという。

 

(あのぉ、オレってまだ五歳なんですけど?)

 

 ロホルトは積極的に剣の技術を習熟し、好んで馬の世話をして、武器防具の点検を行なった。王子は特に剣才に優れ、既に叙任を受けている大人の騎士ですらその才気に圧倒されたという。

 これに最も喜んだのは父であるアーサーだった。王はロホルトを自らの小姓にすると、従騎士に昇格した後も自分に仕えさせることを決定した。ロホルトは王子である、父王にしか仕えられないのは仕方ないことだと周りは納得していたが、騎士の制度を歪めかねないと義兄のケイに窘められた。だが最後には黙認した辺り、初の実子が可愛くて仕方ないんだろうと諦めたようだ。

 斯くして幼いロホルトは、アーサーに何処に行くにも連れ回された。剣の稽古でも熱心に指導して、楽しくて嬉しくて堪らないといった旨の言葉を腹心のベディヴィエールに溢していたという。

 

(ロホルトは天才だ。私に似ていて、魔力放出もできる。剣の才能は贔屓目なしに飛び抜けているし魔力量も申し分ない。誇らしい気持ちだ、自分の子供が優れているのがこんなに嬉しいなんて)

 

 アーサー王――アルトリアは嬉々としてロホルトを滅多打ちにした。自分もされたことだ。当然手加減はしていて、その絶妙さは少し痣ができるぐらいに留めている。その後も熱心に騎士としての務めを説きながら武具の点検を見てやり、馬の世話の仕方を教え、王として励む自身の姿を見せていた。王は円卓の中で孤立していたが、我が子が見ているのだから辛くはなかった。

 

(つ、疲れた……そりゃあ剣の修行は楽しい。頑張れば頑張っただけ上達するし……魔力とかいう超パワーがあれば大人にも負けないって素直に凄いし扱うのは楽しいさ。けど他に娯楽がないから仕方なくやってるってとこもあるんだけど? ……なにあの女顔お父さん。こちとら五歳児なんですけど、なんであちこち連れ回すんですかね……眠いんだよ、勘弁してくれ)

 

 アルトリアの不幸は子育ての先輩が周りにいなかったことだ。いたとしてもそれは身分の低い侍女達であり、子持ちの侍女達は王に意見するのを憚り、見て見ぬふりをしていた。

 アルトリアは思いやりの心を持った善良で、この時代だと聖者の如き幸福観念を持つ女性だった。しかし彼女の幼少期は悲惨である。夢の中でマーリンに厳しく英才教育を受け、目が覚めていても養父に指導され、義兄のケイの世話をしていた。そんな体験があるから、むしろロホルトに施している指導は生温いとしか言えないものであり、アルトリアはかなり気を遣っていたのだ。

 だがロホルトは普通の子供ではない。精神は成熟し、知識もこの時代にはありえない水準にある。未来レベルだとヘソで茶が沸くが、当代だと賢者を名乗れる博識さを誇ってもいたのだ。故にロホルトにとってアルトリアからの指導は虐待以外の何物でもなかった。

 

 未来には豊富にある娯楽がなく、好みのコンテンツもない。食事は食えるだけマシで、喰い方も潰したポテトをテーブルに直に置いて手掴みで食べる。入浴したくてもそんな文化はなく、城の内部は――魔法の城キャメロットでなければ清潔でなかったことは間違いない。ロホルトからしてみれば、自身の認識する前世になかった魔力や魔術、剣の修行しか楽しめるものがなかっただけ。

 なのに楽しかったはずの修行は苦痛になっていた。

 彼は平凡な男の人格をトレースした子供である、苛烈に鍛えられ、()()()()()()()()、散々に駄目出しされ続けてはやる気もなくなるというものだ。そもそも痛いのは嫌なのもある。耐えられなくはないが、耐えなくていいなら耐えたくないというのが本音だった。

 

 ――アルトリアは不幸にも失策を犯している。彼女にとって生温い指導なのだという感覚が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という想いを醸成していたのだ。

 故にロホルトがどれほど成長しても、心の何処かで満足していないし、出来て当然のことをしているのだから褒めるという発想が出てこなかった。

 不幸は重なる。性別を隠している為、一分の隙もない完璧な少年王を演じなければならない都合上、アルトリアは周りに気を許せる人物が少なかった。円卓の中で孤立していたのは、事実アルトリアが完璧すぎて人間性を感じさせなかったからであり、そのような環境に長く身を置いていた為、アルトリアは他者からの視線の裏にある感情に鈍感になってしまっていたのだ。

 故にアルトリアは、ロホルトが自分を見る目に、恐怖と嫌悪を宿していることに気づかなかった。またロホルトは精神が成熟している為、態度に自分の感情を出さなかった為、周りもロホルトの態度がおかしいとは感じなかった。

 

(女顔の父親が美形で未来は明るい! しかも父さんは王様? オレは王子様なのか! やったぜ、人生イージーモード確定だろ! ……なんちゃって。ハハハ、どこがイージーなんだよ)

 

 ロホルトの目が澱む。幾ら父親が美形で、王様で、優秀でも、ロホルトは全く嬉しくなかった。

 アルトリアは完璧だった。完璧に自身の隙を晒さなかった。故に未だに自身の性別をロホルトに気づかせていないし、これからも教えるタイミングが来ないことを痛切に願っていた。女と女の間に生まれた子供だったとロホルトが知れば、なんと言われるか怖かったのだ。

 だからこそロホルトはアルトリアを嫌っている。アルトリアに連れ回される中で見た国の実情、政治の実態、個人の人間性――に見える完璧さ。隙を見せないで完璧超人な自分を我が子に見せ、尊敬されたいという欲はアルトリアにもあるのだ。それが逆効果になっているのだと全く想像もしていない。ロホルトはアルトリアのことが嫌いで嫌いで仕方なかった。

 

 自分の成長の成果を全否定する親である。眠くても、辛くても、泣き言を言えば「え? この程度の修練で?」という目で見てくる親である。きちんと食べられて、きちんと睡眠時間がある、なのに何が不満なのかアルトリアには本気で理解できなかったのだろう。

 アルトリアにとっての幸福とは、誰もが殺したり殺されたりせず、奪わずに生きていける環境だ。つまり平和という形こそが幸福であり、それを誰もが享受できることを願い、実現させようと努力する高潔さを具えてある。そして騎士であるならば、民をこそ最優先に考え自身を犠牲にするものだ。――まさに誰からも尊敬されて然るべき姿勢だろう。

 だが親としては落第だった。しかもそのことでアルトリアには咎がないのが最悪だ。アルトリアの施す指導や、注ぎ込んでいる愛情はどこまでも正当であり、この乱世では子煩悩の親ばかと言われるレベルなのである。ちょっと言葉が足りないのは愛嬌という奴だ。

 

(え、えぇ……? お、終わってる……未開の国じゃん、ブリテン……)

 

 更にロホルトを襲うのは、三年掛けて見て回り理解した国の実情だ。

 まず、文字による記録がない。文字はあるが、記録として残すという文化がない国だった。

 故に納めた税は目分量、役人の仕事は口頭報告のみ。明らかに不正し放題であり、しかも貧しさに喘ぐ国でそれなのだ。下から上に納められるべき税が、下と上の中間にいる者に抜き取られているのは火を見るより明らかで、なのに上の人は不正が少ないと認識して野放しにしている。多少の不正は仕方ない、完全に不正を根絶するのは不可能だ、それは分かる……だが()()のレベルに収まる状態じゃないのがロホルトにはハッキリと分かった。

 

 だって喰うのも苦しい生活環境なら、捕まるリスクを犯してでも食い物を盗むのが人間だ。そんなのは当たり前の常識として識っている。

 

 ロホルトは真剣に悩んだ。オレがこの国を継ぐの? それなんて罰ゲーム? 嫌過ぎる……でも、嫌でも継がないといけないなら、多少はマシにしておかないと後が辛いんだろうなぁ――と。

 だがロホルトにアルトリアへ意見するという発想はなかった。

 アルトリアの向ける失望に似た眼差しは、未来の日本人男性の影響を抜きにした素のロホルトのトラウマになっていたからだ。無意識にアルトリアへ自分から話しかけ、意見するという行動を排除したロホルトは、代わりに自身の母親に会いに行った。

 

 ロホルトは母ギネヴィアが好きだった。

 

 会いに行けばいつでも迎え入れてくれて、自分の話を嫌な顔をせず楽しそうに聞いてくれて、明らかに愛しているのだと態度と言葉で伝えてくれる。母親として明白に接してくれるのだ。ロホルトからしてみれば、ギネヴィアだけが心のオアシス、癒やしだったのだ。

 ロホルトはギネヴィアに頼んだ。内政関連が終わってる、きちんと管理しないと駄目、というか王子ですら文字の学習機会がほとんどなく、使用頻度がほとんどないって駄目過ぎる。内政関連で文字による記録を作り、きちんと管理しないとますます国は貧しくなるよ。

 熱心に、的確に、問題点を説いた。ギネヴィアは聡明な女性であり、その話の重大さを理解した。これは確かに放置できない。だがギネヴィアはすぐさま親子の場を投げ出しはせず、母親として愛情を持ってロホルトを褒めた。よく気づいたわね、凄いわ、貴方はわたくしの誇りよ。気づいたことがあったらわたくしに言ってね? ちゃんと聞いて、正せるように頑張るから――と。

 

 母親の深い愛にロホルトは泣きそうだった。嬉し泣きだ。母さんマジで聖女だよと尊敬する。

 

 ロホルトから話を聞いたギネヴィアは、早速行動に移った。とはいえ秘密裏に、である。なにせギネヴィアは公にも女性の立場だ。王妃とはいえ女性の発言力は低い。女の出した改革案というだけで無視を決め込むのが大半だろう。それに、ギネヴィアの役割は『置物』だ。ブリテンで最も大事な置物で、ともするとアーサー王よりも重要な価値を持つ財産なのだ。

『置物』が政治に口出しをして、男の世界に意見した。これだけで反発し、ギネヴィアを王宮の奥深くに閉じ込めようとする動きは必ず出てくる。そうなればロホルトとも会えなくなるだろう。それは嫌だ。絶対に嫌だった。ロホルトが騎士見習いになっても、自分から会いに来てくれる。ギネヴィアは我が子が可愛くて可愛くて堪らない。だから会えなくなるのは避けたかった。

 

 故にギネヴィアはアーサー王を褥に誘ったのだ。

 

 此処でなら秘密裏に話せる。だが誘われたアルトリアは困惑していた。何せギネヴィアは出産以来アルトリアを徹底的に避けていたし、褥に誘うようなはしたない真似もしてこなかったから。

 だがギネヴィアから伝えられた案を聞いて、アルトリアは王の顔になる。青天の霹靂に似た、盲点というか発想すらなかった案だったのだ。しかも明らかに効果を見込める。アルトリアはそれを聞いてすぐに断じた、これはギネヴィアの考えではないと。誰から齎されたものなのかと静かに訊ねると――彼女は優越感を覗かせて囁いた。ロホルトよ、と。

 え――とアルトリアの口から声が漏れた。ロホルト? なぜ、ロホルトが?

 もしかしたら、という思いはある。ロホルトは利発で、賢い、時折りアルトリアもハッとさせられるようなことを言うこともあった。だからロホルトの考えた案だというのは正しいと直感した。

 

 だけど、なぜそれを自分に直接言わない? 明らかにギネヴィアに言うより自分に言った方が早い。アルトリアには理解できなかった。そして、ギネヴィアの笑みの種類も判じられなかった。

 ギネヴィアは知っている。ロホルトが、アルトリアを嫌っていると。そして自分が他の誰よりも好かれて愛されていると。それだけで――ギネヴィアは心地よい優越感に浸れた。いけないとは思いつつも気持ちいいのだ。自分よりも遥かに長く息子を独占していながら、アルトリアは我が子に嫌われ、会える時間の短い自分の方がずっと好かれているのは。

 ギネヴィアからの仄暗い感情には気づいたが、アルトリアは見て見ぬふりをした。そうして悶々とした想いを抱えながら翌朝を迎えると、すぐにロホルトを呼び出した。

 

「ロホルト」

「はい」

 

 完璧な美少年だ。八歳になったロホルトは、非の打ち所がない騎士見習いになっている。

 対して外見だけなら兄弟、あるいは姉弟にしか見えないアルトリアは、しかし詰問できなかった。

 なんと訊ねればいいのか分からなかったのだ。

 なぜ自分に言わずギネヴィアに改革案を伝えたのか……。何時間も考え、息子の顔を見て理解した気になる。そうか――ギネヴィアと私の関係が疎遠だから、心配して話題の種にしたのか、と。

 そう思うとますますロホルトが可愛く見える。

 

「なんでもない。今日も励むように」

「はい」

 

 従順なロホルトにアルトリアは満足する。従順なことにではなく、真面目な少年に見えることにだ。

 だがアルトリアは自覚していなかった。彼女の言葉に、ロホルトは「はい」「わかりました」としか返してないのだと。それ以外の台詞をここ最近聞いていない、と。

 アルトリアは最近登用し、有能さから側近に取り立てた青年騎士アグラヴェインを呼び出した。そして鉄のように固く、冷たい相貌の彼に改革案を伝え、それがロホルトの考えだと話した。

 

 アグラヴェインはロホルトを見る。一瞬――探るような目をした。

 すぐに跪いて、騎士の礼を示したアグラヴェインに対し、ロホルトはにこやかな顔と声で応じる。

 ロホルトからのアグラヴェインへの第一印象は悪くなかった。真面目そうで堅物そう、普通にこの国にならいそうなのにいなかったタイプ。ロホルトは仕事の関係としてきちんと会話が成り立つタイプを欲していて、アグラヴェインはそれに適任だと感じたのだ。

 

 社畜適正高そうだなこの人、なんて失礼な感想はおくびにも出さない。

 

 嘗て社畜の父を持っていた男――と思い込んでいる少年――は、アグラヴェインにどこか無条件の親近感を懐いたのである。その友好的な眼差しに困惑を覚えたアグラヴェインは、後日この一回りも二回りも年下の少年と仕事を共にする最中で、冷血に判断を下した合理性を絶賛されてますます困惑する羽目になる。そして完璧な王の下に完璧な王子が生まれたと判断して、アグラヴェインはアーサー王に次ぐ第二の主君に定めるのもいいだろうと高く評価した。彼の目から見ても、ロホルトは聡明で合理的な判断力を持っていたのだ。

 ロホルトもまたアグラヴェインの優秀さを知って満足していた。この人がいるなら大丈夫だと、信じられる人種だと感じたのだ。大丈夫、まだブリテンは盛り返せる、なんとかなるはずだと信じることが出来た。――そんな最中のことだ、ロホルトの耳に父の話が伝わる。

 

 アーサー王は不老不死である。永遠の少年王だ。

 

(……は?)

 

 ロホルトは首を傾げた。純粋に疑問だったのだ。

 この異世界ファンタジーなら、まあ不老不死もあるのかもなとは思う。だがそれは本当なのか?

 ロホルトは意を決し、多大な勇気を秘め父に訊ねた。なぜなら自身の存在意義に関わる問題だからだ。

 

「――父上は不老不死なのですか?」

「そうだ。私には聖剣とその鞘がある。これがある限り私は死なないし、老いることもないだろう」

 

 アルトリアは素直に教えた。知ってる人は知っている話だからだ。

 だがそれを聞いてロホルトは愕然とした。

 だってそうだろう?

 

 

 

(――は? 不老不死の王様なら、なんでオレを生んだんだよ。後継者なんか要らないだろ。

 え? もしかして……何? オレ……死ぬまでこの人の下で仕事しないといけない……?)

 

 

 

 嘘だろ、と。

 ロホルトは人知れず絶望した。

 

 アルトリアに死んでほしいのではない、彼女の下で働きたくないだけだ。

 嫌いだから。ただ、それだけ。

 幼い絶望が、ロホルトの胸を満たした。

 

 だが彼はその絶望の中でも折れない。ロホルトは、英雄だった。

 折れずにいられることこそがロホルトの地獄なのだ。

 

 

 

 

 

 




アルトリア
 パーフェクトコミュニケーション!()
 この件に関しては本当にアルトリアは悪くない。
 悪いのは元を正すとマーリンとウーサー。
 ただ一言足りないだけ。一言足りていたら嫌な親父、程度に収まっていた。

ギネヴィア
 親として勝った! と仄暗い優越感に浸る自分に気づいて自己嫌悪。
 ロホルトが可愛い。――瞳の色が、アルトリアと同じじゃなかったらよかったのに。

ロホルト
 この国終わってる。けどまだ蘇生できるはず。アグラヴェインさん頼みます!
 父王? ああ、普通に嫌いです。え、不老不死ってマジです?
 なんでオレを生んだんだ、本気で意味わからない。
 本当は権威の為なのが理解できる。できるから――

 ギネヴィア大好き。「母さんだけが癒やしだよ」――今はまだ。

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