【ネタ】故障してる千里眼持ち王子inブリテン王国   作:飴玉鉛

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お待たせしました。
(本作が)死んだと思ったかな。死んでましたとも、作者が。
39.4℃も熱が出た時は本気で死ぬかと思いました。今年に入ってからどうも体調が崩れがちですが…なんとか持ち直しましたよ…。

今回は新しい舞台に移る為の話なので、かなり駆け足気味です。次話移行から腰を据えての描写になります。


第29話

 

 

 

 

 

 

 ペリノア王が死んだ。

 

 自らの領地に帰っている最中のことだ。

 

 老いてなお円卓屈指の武勇を持ち、自らもその武に自信があった為か、彼は迂闊にも護衛を付けずに単独行動していた。そこを待ち伏せた何者かに暗殺されてしまったのである。

 暗殺者の正体は不明だ。証拠や目撃情報はどこにもなく事件の真相は闇から闇に消えた。そこにドラマは何もなく、斯くしてブリテンにその名を轟かせていた老雄はこの世を去ったのである。

 

「予も老いたものだ」

 

 ――下手人は日輪の騎士ガウェインと、陰影の騎士ガヘリスだ。

 

 二十代後半となり肉体的な全盛期に在る日中のガウェインと、円卓でも中位の実力を持ったガヘリスの二人に不意を打たれてしまえば、さしものペリノア王も敵わず斬り殺されてしまった。

 ガウェインとガヘリスには、ペリノア王に親を殺された恨みがあった。彼らは私怨だけで味方を斬るような騎士ではないが、伝説で語られる彼らは後世の勝手な見方で書き連ねられるだろう。親の仇を討つ為に、名高い英傑を斬り殺したのだ、と。

 暗殺がロホルトの指示であることを、下手人となった者は死しても語らず、そして王子のイメージにそぐわない為、後世に於いてもペリノア王暗殺に彼の名が出ることはない。果たしてブリテン島でも有力な権力者だったロット王とペリノア王が死去したことで、王国は遂に主な政敵に成り得る者がいなくなりアーサー王一強時代を迎えることになった。

 

 それはつまり、強引な人事に表立って口を挟める者がいなくなったことを意味する。ロット王とペリノア王の退場により、ようやくロホルトの企図した中央集権が進行を開始したのだ。

 

 ロホルトは以前から内定していた通りに『最果ての国オークニー』の王冠を戴き、彼の地の領主として赴任すると大々的に報じられた。

 これによりオークニーの領主の座につくことが決定されたロホルトは、アルトリアやケイ、アグラヴェインやマーリンへ話を通して移民計画の第一段階を発動することを告げる。最果ての国を中心に各地の豪族を取り込み、新たにスコットランドと改名して、自らを初代スコットランド王と称し、自身の領土を拡大してペリノア王の旧領を併呑してしまうのだ。

 

 ペリノア王の一族の新たな長は、彼の嫡子であるラモラック卿だ。他にはまだ幼いパーシヴァルなどもいるが、ラモラックは王としての責務を厭悪している。というのも、彼はロホルトとも親交があり、ロホルトの苦悩を間近で見ているのだ。自分には荷が重い、騎士として騎士王に仕えるのが身の丈に合っていると溢していた彼は、むしろ積極的にロホルトに協力を約束してくれた。

 ラモラックは全盛期のペリノア王に匹敵、あるいは凌駕している騎士だ。その武勇はランスロットやトリスタン、ガウェインと比べてもなんら見劣りしない。おまけに王への――王子を含めた王家への忠義が厚く、裏切りの心配がない稀有な人材だった。故にラモラックは一族を率いてスコットランドに帰順することになると、そのままロホルトの家臣になる運びと相成ったのである。

 

 これによりロホルトはアルトリアからの指示通りに国を統治する為、実質的にブリテン王アルトリアの固有戦力が劇的に増加する。そうなればブリテン王の権威と権力は比類ないものとなり、どれほど横暴に動いても黙殺、圧殺できるようになった。

 当然、周囲からの反発は強いだろう。自分達の王権を脅かす事態だからだ。しかしブリテン王を抑え、諌められる者は既に亡くなっている。これより先、ブリテン王は諸王から権力を剥いでいくだろうが、それに抗うのは寿命を縮めるだけの愚行となるだろう。

 最終的に『王』という称号は、ブリテン王ただ一つとなるのだ。絶対王政を目指す以上、王冠の特別性を高める為、たかが一地方の領主如きを『王』と称する時代に終止符を打つ――それこそが移民計画の第一段階、足場固めの権力集中。絶対王政への第一歩だ。

 

「『エリネドの指輪』は嵌めましたね? 『パダルン・レドコウトの外套』は着ましたか?」

「はい」

「『日蝕の外套グウェン』は?」

「ガヘリスに貸し出してます」

「む。では『リゲニズの皿と壺』は……ガレスに貸しているのでしたか」

「ええ」

「『ティドワル・ティドグリドの砥石』は貴方が持っていなさい。それから、えっと他に……『エリネドの指輪』は常に付けておくように。片時も離さず、絶対に外してはいけませんよ」

 

 そわそわとして、オークニーに赴任するロホルトに確認を何度もするアルトリアの様子に、ロホルトは凄い変わりようだなぁと苦笑させられていた。

 ブリテンの十三秘宝と銘打たれる数々の宝具を、アルトリアは惜しみなくロホルトに与えたのだ。過保護ではないかと思うほどに。それだけ心配なのだろうが、アルトリアに言わせてみればいずれロホルトの物になる宝具を、先んじて渡しているだけ、となる。

 

 身に着けた者の姿を透明にする白い外套グウェン。これはとある特別任務を果たす為にガヘリスへ貸し出されており、それにより彼は後々『陰影の騎士』と渾名されるようになる。

 壺に入れた物は腐らず、皿に盛れば温度調節が自在になる『リゲニズの皿と壺』は、厨房の騎士とも揶揄される料理好きのガレスに預けられて。ロホルトは外界からの干渉を阻む、強力な祝福の施された『パダルン・レドコウトの外套』を普段着として着用する。他には武器全般の修復、内包した神秘の回復を成す『ティドワル・ティドグリドの砥石』を鎧に嵌め込んでいた。

 身体能力と魔力を強化する『エリネドの指輪』は右手中指に嵌めている。アルトリアはこれを特に重要視しているらしい、手放してはならないと繰り返し口にしたが……。

 

「分かった、分かりました、大丈夫ですから心配しないでください。鬱陶しいですよ」

「鬱陶しい……!?」

「父上の構い方は極端過ぎます。零か百しかないんですか、貴女は」

 

 オークニー改めスコットランド新王の辛辣な指摘に、う、と王様は怯んだ。

 

 アルトリアはブリテンの十三秘宝の内、五つも愛息子へ与えたことになるのだ。それ以前にも王剣クラレント、宝剣モルデュールも下賜しており、月の聖剣も所有していることを加味すれば、ロホルトは極めて強力な宝具を多数所持していることになるだろう。それでも心配そうにしているあたり、アルトリアはある意味吹っ切れたと言えるかもしれない。

 男親らしく、父王らしくと肩肘を張らず、ありのままのアルトリアとして、素のままに接してもよいのだと知ったからだ。今のアルトリアは遠慮がない、これまでの隙間を埋めようとするかの如くグイグイ来ていた……が、物事には限度というものがある。今のロホルトは顔は笑っているが目は全く笑っていなかった。多感な年頃云々ではなく、いつの世も親の発揮する過保護には、子供の立場の者は大なり小なり反発してしまうものなのである。

 

 永遠の別れというわけでもなし、適当に一時の離別を告げてさよならする。アルトリアはしょんぼりとしていたが、ロホルトは特に構う気はなかった。

 諸々の儀式を終わらせると、ロホルト派の騎士達を率いてスコットランドへと向かう。付き従うのは円卓の騎士だとラモラックのみで、後はガレスやモードレッド達を引き連れていった。

 

 絢爛な馬車に乗る、とある侍女が抱いている赤子を見る。

 まん丸とした手足と、まだ生え揃っていない髪。愛らしい容貌はふっくらとしていて、将来はとても容色に優れた男性に成長するだろう。

 名はギャラハッドだ。つい先日生まれたばかりの異父兄弟である。

 ロホルトの騎乗しているカヴァスも気になるのか、ちらちらと赤子へ視線を向けていた。出生はともかくきちんと養育するつもりだが……ガレスが馬を寄せてくる。

 

「殿下」

 

 正妃であるのに騎士甲冑を纏った彼女は、赤の魔剣を腰に佩いている。ガレスもまた赤子を気にしているようで、その表情はなんとも言えない複雑なものであった。

 

「あの子の名前、ギャラハッドでしたよね。曖昧な聞き方で恐縮なんですけど……その、私はどうしたらいいのでしょう」

「前にも言った通りだよ。あの子は私が養父として引き取った捨て子だ、君に責任はない。ガレスが接したいようにすればいいさ」

「そう、ですか……やっぱり、親は秘密なんですか?」

「ああ」

 

 ギャラハッド。今はマーリンが傍についている、ロホルトの育ての母であるギネヴィアの本当の第一子。親友であるランスロットの血も引いているのは、ギネヴィアを敬愛する身として、少なからず言葉に出来ない感情がある。だが誰よりも混沌とした感情を持て余しているのは、知らぬ内に王妃と関係を持ってしまい、しかも子供まで生まれていたランスロットの方だろう。

 国とギネヴィアの為を思えば、ギャラハッドをランスロットに預けるわけにはいかない。関係を明かすわけにもいかず、全てを知らされたランスロットは虚無の面持ちで固まっていた。

 知らぬ間に騎士としての忠節が汚されていたのだ、彼の心情は察して余りある。ロホルトとしてはランスロットに変わらぬ友情を懐いている為、これを切欠に疎遠になるつもりはない。彼はロホルトとアルトリアに命で償うと、蝋のように白い顔で断罪を望んだが、友人であり恩人で、国にとっても重要人物であるランスロットに死なれるわけにはいかなかった。

 

 ロホルトはアルトリアとの二人掛かりでランスロットを説得した。今までの功績や友情、忠誠。彼の行いに非がないことを何度も語り、悪いのはギネヴィアと何も知らなかった自分達だとした。繰り言になるがランスロットは本当に何も悪くないのだと、ロホルトは得意の弁舌で客観的に唱え続け、彼の顔色に一握りの生気が戻るのを確認してホッと安堵したものである。

 そして公の場で引き合わせてはやれないが、非公式の場でギャラハッドと対面させたいと考えている。もちろんギネヴィアも同様に、だ。ランスロットはこれに少し考え、頷いた。

 

『……私に父親を名乗る資格があるかは分かりかねます。ですが、伝えたいことはある。陛下と殿下の差配に私は頭を垂れましょう』

 

 ギャラハッドの出生を知っているのはランスロットとギネヴィア、マーリンとアルトリア、そしてロホルトだけである。それ以外にはたとえどれほど信頼している相手にも明かさないと、アルトリアと相談して決定していた。実の子と引き離されてしまった王妃に対し、ロホルトも罪悪感がないわけではない。いつかギネヴィアとも会って話をして、礼と謝罪がしたかった。

 

 本来ならば国の為だとはいえ、親子を引き裂いて良い道理はない。オレはいずれ地獄に堕ちるんだろうなと、今までの悪行を思い返して自嘲する。

 

 ――ロホルトは自覚していなかったが、彼の中でギネヴィアへの優先順位は格段に落ちていた。

 実子ギャラハッドを引き離し養子とした手前、会いに行き難い心理がある。ギネヴィアの許に顔を出しては負担になるだろうという遠慮もあった。自身に余分な時間が全く無いのもあり、アルトリアがそれとなくギネヴィアから自分を遠ざけている事情もある。

 アルトリアはギネヴィアと相対していた。そして彼女の常軌を逸した言い分を聞き――ギャラハッドが騎士王の血を引いているという狂言――今の実母と会わせるのはロホルトの為にならないと判断したのだ。アルトリアの判断と、ロホルトの遠慮、そして彼らを追い立てる現実の時間が噛み合って、ロホルトとギネヴィアが対面する機会は失われていたのである。

 

「………」

 

 ガレスはロホルトの横顔を見上げ、そしてギャラハッドを見遣る。

 正妃としての立場に立ち、しかしその役割を果たさず、騎士として仕える。これは自身の望んだことではあるが、多分に主と定めたスコットランド王の厚意に甘えた形になっている。果たしてそれで良いのだろうか……ロホルトは今誰よりも世継ぎを望まれているのに。

 ロホルトが真に愛せる人が現れたなら、自分はそれを受け入れるつもりでいる。だがお飾りとはいえ正妃がいながら、ロホルトは他に愛する人を作るような人だろうか。そうは思えない、養子をこうして取ったのは、もしかすると情報操作をしてガレスとの子供ということにして、ガレスに負担を掛けない為にしていることなのかもしれない。ガレスはその可能性を考え眉根を寄せる。

 

(……どうであれ私は殿下に寄り添い、仕え続けます。たとえ何をお命じになられても、必ず成し遂げる気概があればなんとかなる。うん、きっとそのはずですよね……殿下)

 

 ガレスがそのように決意を新たにしているのを横に、ロホルトの一行は新天地へ到達した。

 

 自身に付き従う青年会の元メンバーは、そっくりそのままロホルトの近衛騎士となっている。全幅の信頼を置ける彼らの力を借りて、スコットランドの統治を安定させれば、ノルウェーへの侵攻準備を年単位で行なっていく。様々な不穏の種を残しながらも、ロホルトはその英雄的な生涯を掛けた、最も困難な使命に取り掛かるのだ。艱難辛苦の待ち構える事業へと。

 オークニー改めスコットランドは、ブリテン王国では辺境に位置している。本国からの支援はほとんど望めない。多様なノルウェーへの侵略、支配の為の計画はロホルトの双肩に掛かっていた。ロホルトは国を救う為の第一歩を、この最果ての国から踏み出した。

 

 彼には頼りになる騎士達がいた。彼自身も優れた指導者である。だが、滅びの運命を唱えた魔竜の怨念がこびり付いているかのように、ノルウェーへの侵攻準備は遅々として進まぬだろう。

 急な悪天候、旱魃、賊の大量発生。そして国内に残留していたピクト人の脅威が、なぜかスコットランドに集中しはじめる。まるでロホルトがノルウェー侵攻に乗り出すのを阻むかのように。

 これらへの対応に苦慮し、船や兵糧の手配に頭を痛めさせられながら、ロホルトの四年間は丁寧に潰されていくことになるだろう。彼はそれで魔竜の齎した滅びの運命を痛感させられる。世界そのものが自分達を殺そうとしている、と。そしてそうであるからこそ、ロホルトの闘志は燃え盛った。大いなる意思に抗うかのように。

 

 最果ての国の王冠を戴いたことで、月輪王ロホルトの苦難の日々が、本番を迎えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ギネヴィア
 「この子は陛下との子なのよ!」
 そんな妄言を叫ぶ王妃の狂気を、ロボルトは知らぬ。
 彼女の醜態を見たアルトリアは、一人の女性をここまで追い詰めた己の罪を胸に刻み。そしてこんな状態のギネヴィアを、ロホルトに会わせるわけにはいかないと判断し、今後彼女はロホルトとギネヴィアが出くわさないようにスケジュールを調整した。
 「――ほら。やっぱり、わたくしにしかロホルトは救えないのよ」
 ギネヴィアはマーリンの見せる夢、全てが都合の良い幻に浸り続けている。ギャラハッドはアルトリアの後を継ぎ、用無しになったロホルトが自分の許に帰ってきてくれた幻を――。
 幻は優しく、狂気を癒やすだろう。やがて己の見ているものが幻だと気づいた時、彼女は。


ランスロット
 「……ばかな。そんな、ばかな!」
 ランスロットは余りに無常な現実と、王妃の狂気、そして不義の子の誕生を知って愕然とした。それは騎士としての彼の在り様の、根底を揺るがす一大事であった。
 友に合わせる顔がない、己が騎士を名乗るのが恥ずかしい。深い慚愧に心が軋む、酒に酔っていたからなどとは言い訳にもならない。知らぬまま生まれた我が子と向き合うことも許されず、最高の騎士ランスロットは混沌とした激情を持て余す。やがてランスロットは、己の不覚を正すため、贖罪をするため、狂えるギネヴィアを守護することを決める。
 ギネヴィアのせいだなどと口が裂けても言えぬ。なぜならば、彼女と交わっていたのだと知った時、確かに己は悦んでしまったのだから。
 「ギャラハッドよ、お前は私のような男にはなるな」
 成長した我が子を見た時、ランスロットは懺悔するようにそう言うだろう。父だと名乗らぬまま。ギャラハッドが己を騎士として敬愛してくれるのに苦しみ、歓び、彼がその生まれの秘密を知って――父さん、と。そう呼ばれた時にランスロットはどう思うのか。その胸の裡を彼は誰にも打ち明けないだろう。


マーリン
 ギネヴィアという急所を護ることに。外敵から、そして彼女の正気と狂気から。


アルトリア
 ギネヴィアの状態をひと足早く知り、あまりの惨状に目を覆った。自身への自責の念、ギネヴィアへの多くの想い、渦巻く気持ちに蓋をして彼女が懸念したのはロホルトのことだった。
 『今のギネヴィアを見せるのは余りにも酷だ……』
 ロホルトにとっても、ギネヴィアにとっても。二人のためを思えばこそ、二人を会わせてはならない。アルトリアは優しさ故にそう考えて、ロホルトを引き離すように振る舞った。
 必要以上にロホルトに構い、仕事を振り、公的な社交の場を設ける。幸いにもそうしても全く不自然ではない状況ではあった。アルトリアの優しさがどうなるのかは、やはり全知全能ならぬ者には裁定できないだろう。


ガレス・モードレッド
 モードレッドは実年齢で言えばギャラハッドに近い。そのせいか何かとギャラハッドを構う姿が頻繁に目撃される。
 ガレスは義理の母になってしまったが特に気負ってはいない。ロホルトのフォローがあったからか『親戚の子』ぐらいの感覚でいた。どことなくランスロットに似ている気がしたが、深く追求する気はない。スコットランドについてからが、モードレッドとガレスの騎士としての人生は本番を迎える。


ロホルト
 アルトリアとマーリンの二人に、ギネヴィアと会えないように差配されている。実際問題として多忙を極めることになるロホルトは、即位してからの諸々や足場固めなどで頭が一杯であり、ランスロットやガレスなどへのフォロー、円卓を去らざるを得なかった双剣の騎士ベイリン、その弟ベイランに恩赦を与えて自身の騎士に引き込む計画を立てたりなど、とてもアルトリア達の計らいに気づける余力はなかった。結果として会わなくて正解とは言える。
 その『正解』が長期的に見てどう巡るかは、人の身で予測を立てるのは困難だろう。全てを把握している第三者か、卓越した感受性と多様性を受け入れる精神・頭脳を併せ持った者以外には。


if
 ギネヴィアの狂気と動機を知ったとしたらロホルトは何を思う。そんなのは自明だ。嫌悪し、しかし同情もする。失望するし、納得もする。言葉で母に介錯して、彼女がこれ以上狂う前にトドメを刺していたかもしれない。余計なお世話だ、母上――この一言で狂える母は止まれるのだから。失意と安堵、知らぬ間に巣立った我が子に寂寥を覚えて。


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