ソードアート・オンライン〜Inherited Great Sword〜 作:野良猫h
【シンside】
〜高原地帯〜
デスゲーム開始から1ヶ月半が経ったある日、俺とキリトは高原地帯を訪れていた。山の頂上は霧で覆われ進軍するのも危ういことになりアジトに引き返す中、急斜面に沿って風がヒューッと吹き荒れ小石や埃を巻き上げ視界を狭め更に難易度を上げて自然の恐怖が襲ってくる。ゴツゴツとし岩の足場を慎重に移動しながら下山する俺たちに容赦無くなくモンスターが襲い掛かってくるが....
「おい、キリト。此処はどんなモンスターが居るんだ?」
植物の様なモンスターを斬り捨てながらキリトに尋ねる。
「そうだな...今、出現している【ネペンテス】がメインだな...」
キリトも同様にモンスターを斬り捨てながら答える。
「へえー、じゃあ楽だ」
慌てることなく、攻撃を避け擦れ違い様に斬り裂いて蹴り飛ばす。簡単な作業だ。楽観的に答える俺をよそに、キリトは神妙な顔で...
「いや、そうでもない...」
「アン?どうしてだ?.......」
疑問をぶつけると
「【フルーツネペンテス】って言うモンスターがいるんだが...形は【ネペンテス】と一緒だが間違えても攻撃はするな」
「??」
「【フルーツネペンテス】の頭部の赤い実を割ると【ネペンテス】が大量に湧いてくる...。はっきり言って対応できずに死ぬ」
「...。」
大量という言葉に内心ビビり、ここで自殺行為云々する気が更々ない為、従う俺氏。うん。賢い。
「そろそろ帰るか?」
モンスターをある程度狩り経験値が貯まったので、切り上げ拠点に戻る事にした俺達。戻る道中、俺はこれからのことを考えていた。ゲーム攻略には情報、経験値、アイテムの3つが大まかに必要とされる。
(情報はキリトに任せるか...)
キリトが時々、情報屋...もといい【鼠のアルゴ】と呼ばれている女性プレイヤーから情報を買っているから問題はない。度々、俺も顔を合わせるくらいだが、情報の信憑性、鮮度は流石と言って良いほど正確で、仕事が早い女性と言った感じた。
(経験値は...)
現状、狩って帰るを繰り返しているから、それなりに稼げるだろう。
(アイテムは...)
色々、足りないな。回復系は勿論だが、武器、防具も決して強い訳でもない。油断は命取りだ。
思考にふけながら帰っていると
「キャァー!!!!!」
「「!!」」
「「ん!!」」
何処からか、女性と思われる悲鳴が聞こえてきた。俺達は、一瞬お互いの顔を見て頷き、即座に駆け出した。場所は高原を降りた丘の上、ここから約数百メートル離れているが、そんなことを気にする暇なく全力で駆ける俺達。懸命に駆ける俺達を、嘲笑うかのように次々出現するモンスターたちが進路を塞ぐ...。
「邪魔だあぁぁ!!!!」
怒号を上げ突き進む俺は正しく、烈火の如く感情の赴くまま右手に持っている片手剣でモンスターを斬り殺す。空いている左手でモンスター殴りつけ続け様に首筋を握りしめ、離れたモンスター目へ掛け投げ飛ばし、怯んだ相手には隙をつき、ガラ空きのボディーを飛び膝蹴りを入れ、追撃で剣で突き刺し殺す。脇目も振らないで最短ルートで突き進む。
「シ、シン!?」
俺の鬼気迫る戦い方で、狼狽するキリトの叫び声が聞こえたが、振り向くことさえ惜しく、ただ前を襲い掛かるモンスターを、斬る、突く、殴る、投げ飛ばす、蹴る、それを繰り返す。頬や腕などを斬り付けられた【痛み】と血が垂れる様な感覚を味わうが、そんなこと構うものかと駆ける。
「どけえぇぇ!!!!」
モンスターの群れを突破した俺は、休むことなく丘の上へ駆ける。一瞬だが【栗色をした髪】と【赤いコート】が見えた。後もう少しで襲われているプレイヤーに辿り着く、自分のHPバーがいつの間にか、グリーンからイエローの半分近くまで減っていたが構う事なく、ただ、最短で突き進む。
「だ、だ、れ、か...だ..誰か助けて!」
女性プレイヤーのHPバーは、既にレッドを切っていた。この世界で死ぬと現実世界でも、死ぬことに繋がる為HPが減っていくのは、死へのカウントダウンを刻々と進めることと同義。死の恐怖と絶望に打ちひしがれた声で、助けを呼ぶ栗色の髪をした女性プレーヤー。それを嘲笑うかの様に、巨大なゴリラに似た姿をしたモンスターが、噛み殺さんと牙を剥く。
(間に合え!!)
「はあぁ!!!」
俺は、助走をつけ、両足に意識を集中させるとゴリラ型のモンスターに飛び込み、その顔面目掛けて、全体重+助走+自身強化スキル攻撃アップ(小)を上乗せさせた、体術スキル、ドロップキックを決める。モロに喰らい悲鳴を上げ後ろに下がるゴリラ型のモンスター。俺は落下するほんの一瞬で体躯を捻り、着地、素早く立ち上がると栗色の髪をした女性プレーヤーとモンスターの間に入り込み、モンスターを牽制する為に片手剣をむける。ちらりと女性プレーヤーを見て....
「大丈夫か!?姉ちゃん? アンタの獲物だが.......。横取りするけど構わねぇ?」
本来なら相手の獲物を横取りするのはマナー違反なのだが...目の前で死にそうになってるのを、放っておく気にはなれなかった。
まさか、本当に助けが来るなんて思っていなかったのか、ポカーンとした顔で答えた。
「え?、えぇ...だ、大丈夫で...す」
「そうか、了解だ。それじゃあ、今のうちに回復しときな?...回復薬が無いならこれを使いな」
俺はモンスターに剣をむけたまま、素早くメニュースクリーンを開きポーションを2つ取り出して、1つを女性プレーヤーに渡し、もう1つを自分に使って回復した。
「!い、良いんですか?」
「アンタには、死なれて欲しくないからなぁー。早く使いな?死ぬぞ?
それと......。良く、頑張ったな?後は任せて休んでな」
空になった瓶を放り投げ、チラリと女性プレーヤーを見て気遣う言葉をなげモンスターを睨み付ける。女性プレーヤーが、ポーションを使って回復したのを確認すると、モンスター目掛けて剣を振りながら駆け出す。
「いくぜ!豚ゴリラァァ!!」
モンスターは女性プレーヤーから俺に標的を移し変え咆哮を上げ襲い掛かる。大きく重たい拳が、俺を殺さんと迫って来るが、それがどうした?と何一つ恐れることなく、ただ、邪魔だと、お前の出番は終わりだ、さっさと消えろと、殺気を込めた一太刀で迎え撃つ。
☆☆☆☆☆
〜【アスナside】〜
「いくぜ!豚ゴリラァァ!!」
そう雄叫びにも、叫び声にも似た声を上げモンスターへと斬り込んで行くプレーヤーの背中を私は、ただ黙って見ている事しか出来なかった。
紅葉色をした髪のプレーヤーから貰ったポーションで、なんとか回復することが出来たことに安堵した私。
(怖かった)
体躯を起こした私は、自分の身体を抱き締め恐怖に打ちひしがれ、震えていた。目の前のプレーヤーが助けに駆け付けてくれなかったと、ゾッとする恐怖を必死で鎮め、今、私の代わりに闘っているプレーヤーを見詰める。
「すごい....。」
呟き漏れた。闘い方は、はっきり言って荒々しいかった。洗練された剣技は無く、ただ剣で斬りつけたと思ったら、素早くサイドに回り死角から拳をぶつけ、流れる様に鋭い蹴りを入れ、ダウンを狙う。剣で闘う剣士ではなく、剣で闘い、剣が駄目なら拳、拳が駄目なら蹴り、とあらゆる手段で闘う戦士としてのスタイルだ。私には到底出来ない闘い方だから、凄いと思った。
それでも、技自体まだまだ粗削りといった感があると、なんとか平常心を取り戻し落ち着かせた私は冷静分析する。
「本当は、私も一緒に闘いたいだけどな......」
細剣の耐久値はゼロに等しく、一撃を入れられるかの瀬戸際。アイテムは既にゴリラ型のモンスターとの戦闘で使い果たし、回復も出来なかった。だから、今戦闘に介入して勝てる見込みは、はっきり言って皆無に等しい。戦闘は任せてしまったのが酷く申し訳なかった。
数多の攻防を繰り返しモンスターのHPも後僅かにまで迫った頃、それは起きてしまった。
何度目か分からない攻防を繰り広げてるプレーヤー、モンスターの攻撃を片手剣で受け流し、反撃でモンスターの首筋を斬り掛かる寸前に攻撃をガードされた瞬間、プレーヤーの片手剣は折れポリゴンとなり消滅してしまった。すかさず、モンスターはその隙を逃さことなく大きな拳で、プレーヤーを近くの岩目掛けて殴り飛ばした。
「! ゔあ"ぁ!」
ダメージを受けて、身動きが取れないプレーヤーにトドメを刺す為に、大きく振りかぶる瞬間、私は持てる全ての勇気を振り絞り、モンスター目掛けて駆け出す
「だ、ダメエェエ!!!」
(あの人を、死なせる訳にはいかない!!!)
「間に合えぇぇ!!」
必死で手を伸ばした。
とどけ!
間に合え!
死なないで!
お願い!
そんな、私の願いを嘲笑う様に、モンスターの拳はプレーヤーを襲った。その衝撃で私の足はピッタっと止まり、巻き上がる土煙でプレーヤーの姿を見る事は出来なかった。
「そ、、そ、、そ、ん、な、、い、、い、、、い、やあぁぁぁ!!!」
私はその場で泣き崩れた。
なんで!
どうして!
私なんか助けようとしたの!
放っておけば良かったのに!!!
あなたが死ぬ必要なんて無かったのに!!
絶望の淵で、後悔、不甲斐なさ、申し訳なさ、怒りが渦巻く。
泣きじゃくりながら、何とか立ち上がり、持っている細剣を握り、やけになった私は、モンスターに突進と言う名の自爆特攻を仕掛ける。
「例え怪物に負けて..死んでも
...このゲーム この世界に負けたくない!!!」
「はあぁぁ!!」
ごめんなさい。
せっかく助けて貰ったのに
あなたの命まで、無駄にして
私も跡を追います.....
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、名前も知らない、あの人に【ごめんなさい】と胸の中で謝り続け瞼を閉じ最期の瞬間を待つ。
ただ、モンスターいくら経って【私には】攻撃してこなかった。
「な、な、なんで?」
何の痛みも来ないことに不思議に思い瞼を開けると...
「...。お覚悟上等じゃねーか?姉ちゃん」
「え?....」
あり得ない
「大層な覚悟決めんのは、いいけどさー」
あり得ない
「ここで死ぬは勿体無くない?」
あり得ない
「せっかく助かったんだからさー?」
まるで、軽口を叩く様に、あっけらかんに、何も気負うことなく。そんな声が、煙の向こうから聞こえてきた。
「!!」
「な.....な...ん..で.....?」
「なんでって? はぁー、勝手に殺すなよ?
まぁ、心配させちまった俺が悪いんだけどな...」
煙が晴れソコに居たのは...
「っよ..良かった..無事で.....」
「ハッ! 無事かどうかはアレだけど...
悪いな?..手間取った。もう、終わる もうちょっとだけ、待っててくんねーか?」
モンスターの拳を左手だけで受け止め、こっちを不敵な顔で笑うあの人そこに居て、不覚にもその顔にドッキっとなってしまった私がいた。生きててくれた事にホット、胸を撫で下ろすし感謝と共に、恋する乙女のように頬を染めながら
「はい! 待ってます////」
返事を返すのだった。
お付き合いいただきありがとうございました!
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