ゲームワールド / ザ・セカンドライフ   作:祐。

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VSドン・ワイルドバード

 3メートルはあるだろう体長と、鮮やかな青色の体毛が特徴的な風貌。折りたたんだ翼や首筋は返り血のような暗い赤色で染まっており、ワイルドバードとは比べ物にならないほどのゴツゴツな筋肉が、首や脚に詰まっている。

 

 頭部の赤いトサカはそそり立っていて、血走った黒色の眼が走禽類の獰猛なそれだった。また、飢えによる淀んだ空気感とは別なる殺気を放っており、例えるならば『誰でもいいから爪で引き裂き、クチバシで貫きたい』という、戦闘の衝動を想起させるものとも言えただろう。

 

 どっしりと佇んで、こちらを真っ直ぐと捉えてくるドン・ワイルドバード。鳥類特有の細い輪郭が眼光の鋭さを一層と際立ててくる中で、次の瞬間にもそれはノーモーションで飛び掛かってきた。

 

 咄嗟の判断で、横へ回避した自分。舞い散る灰色を身に纏い、体勢を整えてドン・ワイルドバードへと意識を投げ掛けていくのだが、既に次の行動として左脚で立ち上がっていた相手はスライドするように迫りながらも、右足のかぎ爪による引っ掻き攻撃を連続で繰り出してきたものだ。

 

 2発、3発、4発、5発。何度も何度も引っ搔く素振りでこちらへ攻撃を行い、その度に水平を移動するようじりじりと距離を詰めてくる動作。絶え間ない連撃はこちらの余裕を奪っていき、回避を連打するしかない追い詰められ具合に、焦りが滲み出ていたことだろう。

 

 そして、右脚による薙ぎ払いが行われた。

 ワイルドバードと同じモーションのそれを見極めて、無敵時間を利用しながら潜り抜けた自分。だが、そうしてドン・ワイルドバードの真後ろへと移った直後にも、相手はホーミングするようにぐるりと振り向くなり、引き絞っていた首を思い切り突き出すことで必殺の突き攻撃を繰り出してきたのだ。

 

 思わず、盾で攻撃を凌いだ自分。その必殺技を間一髪で防いだ動作と共にして、ボス戦に突入した際のスローモーションの演出が挟まれた。

 

 【セザム・ノワールの山脈のヌシ:ドン・ワイルドバード】

 

 攻撃を防いだ盾は腕ごとかち上げられ、衝撃で後方へと下がりながら自分はブロンズソードを構えていく。

 

 耐性のある盾を以てしても、この破壊力……!

 さすがに動揺してしまい、嫌な汗を流しながら身構えていく。だが、格上を相手に引けを取らない姿勢を見せていくと、ドン・ワイルドバードも真剣な眼差しを向けながら、こちらと対峙してきたものだった。

 

 すぐにも反撃へと出た自分。出し惜しみすることなくブレイヴ・ソウルを発動することでブロンズソードの攻撃範囲を広げていき、そこから繰り出される超範囲の回転斬りでドン・ワイルドバードを狙っていく。

 

 だが、それを跳躍で回避してきたドン・ワイルドバード。着地後にすかさずかぎ爪の攻撃を振りかざしてきたことで、またしても回避行動を強要させられる。

 

 時折とタイミングを見計らい、盾によるパリィで反撃の隙を作った。

 しかし、こちらのレベルが低いからだろうか。叩き込んだブロンズソードの攻撃は相手の弱点である首にヒットしながらも、ドン・ワイルドバードは怒りを滾らせた怒気の表情でこちらを睨みつけてきたものだ。

 

 再び繰り返される引っ掻き攻撃。それと見せかけて左脚による突き攻撃を繰り出してきたり、その俊敏な動作を活かした身軽なモーションの数々に、自分は翻弄されてしまう。

 

 こちらの周囲をグルグルと駆け回り、様子をうかがってくるドン・ワイルドバード。隙を晒してもなお動き続ける独特な挙動が目まぐるしく、常に忙しない対象を目で追い掛けるだけでも神経を奪われた。

 

 ……一切、気が抜けない。

 今までの経験が、足りないレベルの分を補っているだけに過ぎない。ステータスだけで言えば実力差は歴然であり、とても現時点で挑むような相手ではないことは確かだ。

 

 駆け回っていたドン・ワイルドバードが、地面すれすれまで姿勢を低くした突進で距離を詰めてくる。その勢いはさることながら、クチバシで突き上げる攻撃や、それを振り下ろすことで地面に突き刺してくるモーション。そこで生じたチャンスに攻撃を叩き込んでいくと、怯む動作からかぎ爪による反撃を行ってきたりと、なかなか体力を減らせない。

 

 さらには、躊躇なく必殺技の突き攻撃を交えるようになってきた。

 盾で攻撃を防ぎ、仰け反りながらも盾を構え続けていく自分。拮抗した戦闘は長時間に及ぶ激闘となり、自分とドン・ワイルドバードは互いにじりじりとHPを減らし合いながら、終始、睨み合い続けた。

 

 ……攻撃のバリエーションが豊富だな。

 俊敏性と破壊力を兼ね備えた強敵。間違いなく、この世界に降り立ってから最も苦戦した敵であり、正直なところ勝機も見えずにいた。

 

 とても苦しい戦いを強いられている。

 盾でガードを行い、隙を突いてブロンズソードの反撃をお見舞いしていく。それを繰り返すことで、ドン・ワイルドバードもHPを消耗してきたのだろうか。直にも相手は体色を怒りの赤色に染めていくと、次にも溜めの動作を挟んでから、あろうことか水平に跳躍を行うことで自らの体を弾丸のように飛ばしてきたのだ。

 

 回転を伴った必殺技。溜めの動作で嫌な予感を察知していた自分は、警戒していたこともあってかこの攻撃を避けていく。

 だが、今までに見せてこなかった第二の必殺技まで披露してきた。それも、食らっていたら致命傷になっていたかもしれない、見た目だけでパワフルな一直線の突撃。

 

 回避してからも、着地することなく水平に飛び続けたドン・ワイルドバード。この勢いは壁に衝突することでようやく止まるのだが、その際に壁が揺さぶられたことで、上にあった岩石がドン・ワイルドバードへと落下を始めていく。

 

 尤も、ドン・ワイルドバードは軽快な横ステップで難なく避けようとした。

 

 しかし、このチャンスを自分は見逃さない。

 

「ブレイヴ・ソウル!! 落下する岩石の『攻撃判定を広げろ』ッ!!」

 

 左手を突き出して、水縹のオーラを送りつける。それが岩石に到達するや否や、回避を終えていたドン・ワイルドバードは唐突に押し潰される様子を見せながら、地面に力強く叩き付けられたものだった。

 

 何も乗っていないのに、勝手にダメージを受けていくドン・ワイルドバードの様子。その隣では落下を終えた岩石が砕け散っていき、跡形もなく消えていた。

 

 ……レベルの低い自分が攻撃するより、だいぶ大きなダメージを与えてくれたはず。

 環境を利用した戦いも、これからは意識した方がいいのかもしれない。それに気付かせてくれた偶然に感謝しつつも、目の前ではボロボロになりながら起き上がるドン・ワイルドバードの姿が見えたことで、自分は半分絶望しながら身構えていった。

 

 怒りで赤くした体色。ドン・ワイルドバードは我を忘れるようにこちらへと突進を行っていき、勢いに任せたクチバシの突き攻撃を繰り出してくる……。

 

 ……その直前のことだった。

 

 空を切る刃。回転を帯びた“それら”を認識した頃には、真正面から突っ込んできたドン・ワイルドバードの体表を“2つのチャクラム”が駆け巡っていたものだ。

 

 接触した対象に密着し、切り刻みながら表面を走り抜ける武器。それらが体から首、そして頭部まで巡っていくと、何かが着地する音と共にして後ろからメーの声が聞こえてきた。

 

「キタキタァ!! 勝ち確定演出っ!! ……お待たせ! 先輩冒険者のメー様が来たからには、もう大丈夫だからね!!」

 

 勝気に微笑みながらチャクラムを回収するメー。それと同時にして、こちらの下にラミアが駆け寄ってくる。

 

「来るのが遅いので、薄々とそんな予感はしてましたけど。まさかと思って覗きに来てみれば、ホントに先におっぱじめてるなんてフツー気付けやしないじゃないですか」

 

「ラミア……!? メー……!!」

 

「こんなの、勇敢なんかじゃなく無謀と言うんです。アナタのよーなニンゲンにこそ、命知らずというコトバが似合うんでしょーねー」

 

 ドン・ワイルドバードへと駆け出していくメーがチャクラムで応戦する中、ラミアは持参した回復アイテムでこちらの手当を行ってくれる。

 

 使用してくれたアイテムは、回復量の少ないただの薬草だった。しかし、同時に発動したラミアのヴィジョン『マナ・ゾーン』がその効果を増幅させ、薬草とは思えない回復量を発揮してくれる。

 

「ありがとう、ラミア。おかげで助かったよ」

 

「お礼なら、メーさんに仰ってください。メーさんが様子を見に行くことを提案したからこそ、ウチらがこーして駆けつけるコトができたモンですからねー」

 

 怒れるドン・ワイルドバードを相手に、飄々とした身軽な動作で戦うメー。投げるチャクラムは不規則な軌道でドン・ワイルドバードを削っていき、飛び交うそれらに翻弄されていた相手は次にも怒気を放つように溜めを行い出していく。

 

 必殺技が飛んでくる。

 これを察したメーが、おどけたサマで「あは、マジ? ……あれ、これもしかしてヤバいやつ?」とセリフを口にする。その直後にもドン・ワイルドバードは弾丸のように飛ぶ水平の跳躍を行い、メーめがけて強力な一撃を繰り出していった。

 

 そんな彼女の下へと駆け出した自分が立ち塞がっていき、盾を構えて迎え撃つ。瞬間にもドン・ワイルドバードの必殺技が直撃したことにより、自分は突属性に耐性のある盾でダメージを軽減したにも関わらず、回復したHPが根こそぎ削られる大ダメージを負いながら仰け反っていった。

 

 防御によって、軌道が反れていったドン・ワイルドバードの攻撃。ガードしたのに手痛い一撃をもらったものだったが、おかげで後ろにいたメーを攻撃から守ることができた。

 

 命懸けの防衛に、彼女は感激した声音で「わぉ! なんてドラマティックなアプローチ! アレウス君ありがとーっ!!」とお礼を告げてくる。それからメーは淡いピンク色のオーラを纏い始めると、ラミアへと掛け声を行ったのだ。

 

「そんじゃ、アレウス君の勇気を讃えて私達もぶちかましてやりますか!」

 

「軽口をたたくヨユーくらいあるじゃないですか。……まー、イイです。ドン・ワイルドバードを相手に、駆け出しのアレウスさんがココまで健闘してくれたんです。先輩の立場として、コレ以上と情けない姿は見せていられませんからね」

 

 薄い紫と薄い水色のオーラを醸し出したラミア。共にして「マナ・ゾーン!! 対象はメーさんのヴィジョン、バタフライ・エフェクト!!」とセリフを口にし、『対象にかかっている効果を増幅する能力』のそれはメーの全身へと注ぎ込まれていく。

 

 ラミアに合わせるように、メーは勝気な笑みを浮かべながら「バタフライ・エフェクト!」と言い放つ。同時にして『対象を複製する能力』を持つメーは3体の自身の分身を作っていき、どれが本物か見分けのつかない4人のメーを並べていった。

 

 加えて、ラミアのヴィジョン『マナ・ゾーン』の効果で分身の数が更に増えた。

 8人となったメーが、一斉にチャクラムを投げ込んでいく。そんな彼女らは蝶のように鮮やかなモーションでそれらを投擲していき、不規則に飛ぶ計16個のチャクラムがドン・ワイルドバードに襲い掛かった。

 

 視界を埋め尽くす、ザクザクと切り裂く音を響かせた地獄のような空間。囲まれたドン・ワイルドバードは体中を刻まれることで体勢を崩していくのだが、さすがはボスとも言うべきだろうか、その強靭な精神力を以てしてメーを捉えるなり、ドン・ワイルドバードは力を振り絞ったクチバシの突き攻撃を繰り出していったのだ。

 

 体長が大きく、8人のメー達がいる距離まで詰め寄った一撃。その内の1人に向かってドン・ワイルドバードの攻撃が放たれていくのだが、その必殺技が彼女に接触する寸前にも、双方を遮るよう“水縹の盾”が立ち塞がったものだった。

 

 ブレイヴ・ソウルの能力で、突属性に耐性がある盾の効果範囲を広げた。その効果がメー達の手前にも張り巡らされていく中で、ドン・ワイルドバードが攻撃対象に選んだ1人のメーは、小悪魔風の微笑を交えながらセリフを口にする。

 

「あは、当ったりぃ~! 野生の勘って言うのかな。本物の私をよく見分けることができました~。えらいぞ~? そんな君に、私達からのプレゼント。とても刺激的な贈り物を受け取ってもらえると嬉しいな? …………敵ながら、よく戦ったと思うよ。ただ、相手が悪かったよね。アレウス君の底知れない実力を前にして、本当によくやったと思う。だから、今回は名誉ある死だと思って退場していってよ。君の素材は必ず有効活用させてもらうから。じゃあね!」

 

 からかう調子から一転として、真面目な面持ちでドン・ワイルドバードへと声を掛けていったメー。今も範囲が広がった盾越しに喋る彼女が手をかざしていくと、その動作と共にして16個のチャクラムがドン・ワイルドバードに降りかかった。

 

 同情さえしてしまえるほどの、斬撃の雨。切り刻まれる衝撃により、踊るようにその場で回転し続けたドン・ワイルドバードが天を仰いでいくと、直にも収まった攻撃と共にして、その図体はゆっくりと地面に倒れ伏したものだった。

 

 戦闘終了。長時間に及ぶ激闘の末に、ラミアとメーの助力を受けることで自分はドン・ワイルドバードに勝利することができた。

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