「ぬわーーーーーっっ!!!」
モモイの操るキャラクター、ケンジが放ったガードキャンセルをミドリちゃんの操作キャラ、フェイが攻撃を一度だけ耐えれる必殺技で見事に耐え切り、そのままコンボを決める。
モモイのケンジの残り体力3割をそのまま削り切り
叫び声をあげるモモイの横でコンボを完走した瞬間ミドリちゃんが両手を天高く掲げガッツポーズ。
目を閉じたその顔はクールを装っているがとてもドヤ顔であった…
「よし、これで明日の大会の先鋒はモモイで決まりだね。次鋒がミドリちゃん、大将がアリスちゃんで」
現在何をしていたかというと、一通りの練習や指導が終わったモモイ、ミドリちゃん、アリスちゃんで総当たり戦を行い、勝率でチームの出場順を決めることにした。
素直な性格故か、教えたことを吸収してすぐにプレイに反映させるアリスちゃんは二人に危なげなく勝利。
モモイとミドリちゃんの勝負は今見た通り。
ゲーム開始直後はモモイがリードを取り一本先取したが二本目にミドリちゃんが取り返し最終ラウンドでお互い一進一退の攻防を繰り広げ、ギリギリのところでミドリちゃんの一点読みが通りモモイに勝利したのである。
「うぅぅ…悔しぃ~~~!!!最後のガーキャン通ってればゲージはたっぷりあったからワンチャンあったのにぃ~!」
「あの状況ならお姉ちゃんは絶対にガーキャンしてくるって信じてたのでハジメちゃんに教えてもらったやり方を試したの」
「ミドリのずるがしこい手段がまた増えた!!ハジメのせいだよ!!!」
ぼくを指差してそんなことを糾弾してくるモモイ。
ほほう、ぼくのせい?
これは異なことを…
「え、でも2ラウンド目に一撃*1出なくて勝ち確逃してそのままラウンド取られた上に牽制通ったのにコンボ完走できずに落として暴れ*2通されたりクッソぬるいセットプレイを返されて逆に起き攻め食らった挙句起き攻めの低ダJDに安易にガーキャン擦ってそれを狩られたのは多分モモイのせいだよね?」
「もうやめて!!!正論が人を救ったことは有史以来一度もないんだよ!?今私に必要なのは限定スイーツショップの個数限定の超絶ゆる甘プディングのような甘くてほっぺが落ちるような慰めの言葉なの!!!」
頭を抱えてその場に蹲ってしまうモモイ。
どこぞのお嬢様みてぇな泣き言言いやがって…あのお嬢様はもっとストイックだぞ?
「ま、まぁまぁハジメ…モモイもジャンプ攻撃から以外もコンボできるようになってきたし攻めてるときは圧もあるから…」
「2ラウンド目にコンボミスがなければ勝ってたのは私じゃなくてお姉ちゃんだったしね」
正論の無敵対空で見事モモイを撃墜したぼくにユズとミドリちゃんがそう言って待ったをかける。
「それなぁ…モモイはちょっとムラッ気が強いのがネックだし、先鋒なのはある意味正解じゃないかな」
「モモイの攻めは驚異的です。アリスも対戦している時にヒヤっとすることがあります」
ぼくの言葉にアリスちゃんも肯定。
熱くなると凡ミスとかもしちゃうんだけど勝つときはほんとあっさり格上に勝ったりする感じだよね、ファンタジスタタイプとでも言おうか。
最強とは違うが大会とかに出れば妙に期待されたり愛されたりするプレイスタイルだ。
「ふーんだいいもん!明日の大会は全部私が3連勝してやるんだから!!」
「またお姉ちゃんは無茶なこと言って…」
「いやまぁ、モモイの考え方も大事だよ。自分が勝たせてやる!って気持ちを全員が持ってるのは重要だからねぇ」
そんなことを話しながら部室にある掛け時計を見る。
「うわ、もう日付変わってるじゃん。そろそろシャワーとか浴びて寝ておかない?」
ぼくの言葉にモモイとミドリちゃん、ユズにアリスちゃんも時計を見上げる。
「ホントだ!?お夕飯食べてからそんなに時間経ってたんだ!?」
「一日中ずっと同じゲームで対戦するのは珍しいからなんか新鮮だね」
「今日は師匠とユズのおかげでアリスのレベリングは超効率的でした!」
ミレニアムサイエンススクールは泊まり込んだりする生徒が多いためか校内のシャワールームをいつでも利用できる。
今日はそのシャワーを借りて、部室にモモイとミドリちゃんが自宅から持ってきた布団を敷いてみんなで雑魚寝するということらしい。
「それじゃあ、ゲームを片付けてお布団敷いて、シャワーに行こうか?…ハジメは寝巻の代わりにこれを使って?」
ユズはそう言ってぼくに白衣とミレニアム指定の制服のワイシャツを渡してくる。
「おぉ、助かるタスカル。ゲーム開発部も白衣使うことあるんだ?」
「ミレニアムの部活には大抵支給されるものだから…使ったことはないけど洗濯はして必要な時に使えるようにはしてあるから…」
ぼくの疑問にユズが苦笑しながら答える。
他の皆は普通にパジャマを持ってきてるらしい。
ぼくもショップエリアで購入した下着やお泊りセットなどを用意して準備完了。
「よーし!それじゃあシャワーで今日の疲れを洗い流して明日に備えよう!!」
モモイのそんな掛け声と共にゲーム開発部ぷらす一名でシャワールームへと向かうのだった。
その後シャワー浴びてさっぱりしたぼくたちは部室へと戻って来た。
シャワーに入る前の更衣室でアリスちゃんに「なるほど…確かに師匠ではアリスたちの下着では装備不可能です…」とか言いながらぼくの下半身をじっと見つめてきて気恥しい思いをしたり、恥ずかしがり屋のユズにモモイがちょっかいをかけようとしてミドリちゃんに怒られたりした。
シャワーシーン?すいませんもう終わったんですよ。
「ふわぁぁぁぁ~…」
「お姉ちゃんすっごいあくび」
「シャワーを浴びたらなんか急に疲れを自覚したかも…」
モモイが目をこすりながらそんなことを言うとミドリちゃんもふわ、と口を抑える。
まぁあれだけの長時間を実力の近い者同士で格ゲーしてたら疲れるよね。
教える側だったユズも眠そうだしぼくも多分そんな顔してるだろう。
あんなに元気だったアリスちゃんもシャワー室から戻ってくる道中からすでに半分夢の中のようでうつらうつらとしてる。
っとと、そのまま倒れて寝ちゃいそうだったアリスちゃんを支える。
「おーいアリスちゃん、お布団まであとちょっとだぞー」
「…ふぁい…アリスはおふとんまでふぁすととらべるします…」
ほぼ完全に寝の姿勢入ってしまったアリスちゃんを苦笑しながらお姫様抱っこする。
部室には着いているのでこのまま布団まで運んでしまおう。
「おぉ、出たよハジメのイケメン行動」
「アリスちゃん寝ちゃったんだ。お姫様抱っこ、ちょっとうらやましいかも…」
「さ、先にお布団敷いておいてよかったね」
モモイ、ミドリちゃん、ユズはそんなことを言いながら布団までの道を開けるように避けてくれたのでぼくはそのままアリスちゃんを部室の床に敷かれている布団へと運び横たえる。
そのまま一度離れようと思ったがなぜかアリスちゃんはぼくが借りた寝巻代わりの白衣の裾をきゅっと握って離してくれない。
軽く握られた手を触ってみるが…これ一度起こさないと離してくれないやーつ。
「ほらハジメもそのまま寝ちゃって寝ちゃって、ユズはその隣!」
「えっえっ?わ、わたしはソファでいいよ?5人で寝たら狭いし…!」
「いや、ぼくがソファで寝ようと思ってたんだけど…ぼくは部員じゃないわけだし」
「しゃらーっぷ!!お泊り会なんだから今日は全員で同じ布団で寝るの!!」
なぜか妙に押しの強いムーブでぼくとユズを布団に寝かせたモモイはそのまま一緒に横になりユズにぴったりとくっついてぐいぐいと押してくる。
「ほらー、もっと詰めてくれないと私布団からはみ出ちゃう!私が風邪ひいて明日の大会に出れなくなったらユズとハジメのせいだよっ。ほらっユズももっとハジメにくっついてっ、ハジメももっとアリスにくっつくのっ」
ぐいぐいとモモイからかかる圧にぼくとユズはぴったりと密着する感じになってしまう。
いやそこまで詰めないでもこの布団でかいからはみ出さないでしょ…
そんなことを思ってたら今度はアリスちゃんの方からぐいっと力を感じる。
アリスちゃんが起きたのなら一度手を放してもらってソファへ退避しようと思いそちらに目を向けると、
「あ、こっちもはみ出ちゃいそうですね…ハジメちゃんももっとアリスちゃんとくっついてください♪」
なぜかアリスちゃんの向こう側にいつの間にか寝転がったミドリちゃんがアリスちゃん越しにぐいぐいとぼくに力をかけてくる。
いやなんでさ。
アリスちゃんは起きることなくそのまま無意識にぼくを抱きしめるようにして眠り続けてる。
拘束がさらに強くなったんだけど???????
「あ、ソファはみんなの荷物を置いちゃって塞がっちゃいました。今からどかすのも面倒ですし…このままみんなで寝ちゃいましょう♪」
そんなことを言いながらいたずらを成功させたような表情でこちらに笑いかけてくるミドリちゃん。
何してくれてるん????????
「お泊りなのに一人だけ違うところで寝るなんて甘えだよっ」
「そうそう、お姉ちゃんの言う通りここでみんなで寝ないのはエアプだよ」
才羽姉妹のはさみうち!
「…そうだね、甘えたエアプは許されないね…」
きゅっ、と
ぼくの背中に添えられたユズの手に力が籠められる。
ユズ!?裏切ったのかユズ!?
ユズのバックスタブ!!
「むにゃ…ししょーのスペースキャットすごいです…のーみすくりあでしゅ…」
アリスちゃんはもはやぼくに完全に抱き着く形ですやすやと寝ている。
そういえばアリスちゃんにスペースキャット実機クリア見せるって言ってたのにまだ見せてないなぁ。
…いやノーミスクリアて。
めっちゃ練習しておかないとじゃないか。
「わかった…わーかったから、抜け出したりしないからそんなにぎゅうぎゅうにしないでー」
前門のアリスちゃん、後門のユズ、それを囲んだモモイとミドリちゃんに降参宣言。
「まったく…強引すぎる…」
「こうでもしないとハジメはいつのまにか抜け出して一人で床で寝たりしそうだったし。ふわぁぁぁぁ…」
「これに関してはお姉ちゃんと同意見かな…あふ…」
モモイとミドリちゃんはそんなことを言いながらあくびをして…そのまま寝息を立て始める。
…まったく。
まぁ、このまま寝静まってしまってから抜け出してしまえばいいだろう。
ソファは埋まってしまってるが、まぁ壁に寄りかかったりして仮眠してみんなが起きる前に起きればいいでしょ。
ゲーム開発部のみんなはいい子たちだが優しすぎるな。
ぼくみたいな
なんならぼくだけ床でも問題なかったんだぞ、寝袋買っておいたし。
「…ハジメ、まだ起きてる?」
「起きてるよ~ユズも早く寝な?」
じゃないとぼくが抜け出せないからね!
「うん、もういつ寝ちゃってもおかしくないくらいだよ…あふ…」
そんなユズの声は確かに眠そうだ。
幸い両サイドの才羽姉妹が寝たことによってぎゅうぎゅうの状態ではなくなった!
やっぱり布団からはみ出しそうとか嘘だったやんけ!!
「今日はありがとう…ハジメと一緒にゲーム開発部の皆とゲームができてすっごく楽しかった…ハジメは教えるのもすごい上手だったね、まるで先生みたいだった」
「教えることで先生みたいって言われるのはものすごい嬉しいけど、ちょっと荷が重いかなぁ…ぼくも楽しかったよ。お仕事で来てるのに遊んじゃってていいのかなぁって気はするんだけども」
「ふふ、でも皆今日一日でものすごい上手くなったよ。きっとハジメも一緒に楽しく教えてくれたから…だからね、ハジメ」
背中に添えられたユズの手に少し力が篭る。
「このままちゃんと布団で寝て、明日はみんなでおはようって目を覚まそうね」
息を呑む。
「えー…いやなんで気づくの…」
「…なんとなく?ハジメならそうしそうだなーって。人読みかな?」
人読みって、ゲームじゃないんだから。
「わたしは今日はとっても楽しかったから…明日もこうやって楽しい朝を迎えたい…そのためにもハジメにはこのまま寝てもらいます」
そこでユズは一度言葉を切る。
すぅっ、と息を吸う声が聞こえたような気がした。
「ゲーム開発部の部長としてさかまんじハケンサービスの安納ハジメさんに業務命令、です。今日はこのまま、わたしたちと寝てください…」
「…ずるくな~い?ぼくが絶対断れない言い方じゃん…
「違うもん…露骨なバースト*3対策だもん…」
なるほど
ぼくはまんまとユズの対策に引っかかってフルコンボ確定の状況に持ち込まれてしまったということか。
「流石UZQueen…今回はぼくの完敗だぁ…今日は大人しくこのまま寝ます…」
「ハジメ対策は…完璧です…それじゃあおやすみ、ハジメ…」
背中越しにユズのすぅ、すぅ、という寝息が聞こえてくる。
この子たちほんと寝つきいいな…
しっかし…こんな状況でぼくは寝られるかね…
アリスちゃんはしっかり抱き着いて寝てるし、
ユズも背中にぴったりくっついてる。
その横にいるであろうモモイからはいびきが聞こえてくるし、
ミドリちゃんはなんかアリスちゃんごと抱きかかえるように片手がぼくの寝巻代わりの白衣を掴んでる。
こんなに
そんなことを考えながら、ぼくの意識はゆっくりと溶けるように落ちていったのだった。
平和…圧倒的平和…!!
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