ハケン・ユーティリティ   作:ジョイン君

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彼女の有様


依頼内容:部活動の大会に向けた活動の臨時講師※特別任務!⑥

 大将戦が始まる。

 

『さぁはじまりました最終戦!開幕はファントムスノウジンの遠C置きにアリスシャユウジャはバクステで距離を取る!ショウハや低空バクセイを撒いて牽制するアリスシャユウジャ!お互いじりじりとチャンスを伺っている!』

 

「いいよアリス!冷静にいこー!!」

 

 モモイの声援。

 アリスちゃんは地上で出せる飛び道具のショウハや斜め上に向かって槍を投げる必殺技の投槍、空中で斜め下に向かって出せるバクセイを使いジンが容易に突っ込んでこれないように牽制している。

 アリスちゃんの使うシャユウジャは出の早い攻撃や豊富なガード崩し手段を絡めたセットプレイで相手をダウンさせてから一気に倒しきることを得意とするキャラクターだ。

 対して相手の使うジンは判定の強い攻撃を豊富に持ち、その判定の強さを生かして戦うキャラクターである。

 

『あぁっと!ここでアリスシャユウジャの牽制のバクセイの出がかりにゴクトが刺さる!!カウンターで一気に壁まで吹っ飛ばされるシャユウジャ!ジンは空中ダッシュで追いかけて追撃!起き攻めの低ダBはガードしたがコマ投げが通ってしまう!!アリスシャユウジャの体力は残り僅かぁー!!』

 

「ぎゃー!!シャユウジャの防御力低いからって減りすぎー!!!」

 

 モモイがゴクトカウンターからのコマ投げ追撃で3割まで減ったシャユウジャの体力バーを見て叫ぶ。

 シャユウジャはこのゲームでのキャラクターで最も防御力が低く、ちょっとした攻撃でも大ダメージになってしまうというわかりやすい弱みがある。

 

「あぁ、これは厳しいね…」

 

 ユズの呟きにぼくは頷く。

 思うようにジンに触れておらずゲージが何も溜まってないアリスちゃんのシャユウジャにコンボを2回完走してブーストゲージのあるジン。

 このラウンドは相手がこのあときっちりやることやってきたらほぼ取られることが確定してしまった。

 

『起き攻めから固めに移行するファントムスノウジン!低ダJDから刻んでスライディングをブーストキャンセルして2A2A2Aブーストで刻んでいくぅ!!アリスシャユウジャオーラガード*1をするがオーラゲージが足りなぁぁぁい!!!!ガードクラッシュが確定してそこからコンボでラウンドを先取するのはファントムスノウジン!これは苦しい展開のアリスシャユウジャ!ここから描いている青写真はあるのかぁ!?』

 

 ぼくとユズが想像していた通り、ガードクラッシュの連携でアリスちゃんが一本取られてしまう。

 

「あぁぁぁ!?昨日ハジメが散々やってきたやつ!!あれずるいよ!!ケンジはガークラしないのにジン相手だとガークラするのずるい!!」

「お姉ちゃん落ち着いて!アリスちゃんの気が散るから!!」

 

 カシオペアの拳には相手の攻撃をガードし続けるとガードが強制的に解除されて無防備になるガードクラッシュというシステムが採用されているがこのゲームはキャラクターに寄ってガードクラッシュをするキャラとしないキャラが存在する。

 モモイの使っていたケンジやミドリちゃんの使うフェイなどはガードクラッシュゲージが存在しないため、通常ならガードクラッシュは起こらない。

 しかしジンのキャラ固有の能力としてジンと戦うキャラクターはガードクラッシュゲージが付与される。

 普段は気にしないでいいガードクラッシュというシステムをジンと戦う時は気にしないといけないのだ。

 

 なお、シャユウジャはさっき言った通り防御力の低いキャラなので元々ガードクラッシュゲージを持っている。

 おかげでゲージを持っていない状態1ラウンド開幕にトリに先に触られるとガードクラッシュがほぼ確定してそのまま死ぬ。

 いや強攻撃から移動技キャンセル小パンが連ガ*2になってそのあと強攻撃まで連ガになるの正しくハメでしょ?開発さんちゃんとテストした?トリのあのクソ強性能移動技はロケテの段階だとなかったって聞いたんだけどマ???????

 

「大丈夫です、モモイ、ミドリ。ゴクトが噛み合ってラウンド先取を許してしまいましたが…だうんろーでっど(完全に理解しました)!」

 

「「おぉ!!」」

 

 モモイとミドリちゃんはアリスちゃんの言葉を聞いて二人そろって感嘆の声を漏らす。

 

「あ、アリスちゃんがハジメみたいな事言い出した。これはメンタルは全然大丈夫だね」

「まって」

 

 ぼくみたいなってなに?

 

「え、でもハジメ…わたしと10先やってる時にあったまってくる*3とよく言ってるよね、DOWNLOADED(完全に理解した)って…」

 

 え、なにそれこわい。

 優勢とられてるときにキレ散らかしてる時の戯言なんて本人の記憶領域に留まってるわけありませんわ~~~~!!!!

 え、そんなこと言ってたのぼく。

 せいぜいはいクソー!とか二度とやらんわこんなクソゲー!くらいだと思ってたのに。

 そもそも実際に言った人はそれで勝ってるセリフやんけ!!

 ユズ相手に言ったって事はほぼ負けてるでしょその後!!

 

「それ負けフラグでは?」

 

「大丈夫じゃないかな…あのセリフ言った時のハジメってなぜかすごい読みが冴えるようになるし…アリスちゃんがあれを言う時は自信がある時だよ」

 

「え、普段から言ってるのあの子…」

 

 本人ですら記憶にない師匠の暗黒面を真似するのはやめましょうよ!!

 これが早瀬の言っていた悪い影響ってやつか…ちょっと本当に反省するべきな気がしてきたぞボカァ。

 

『さぁ第2ラウンド開始!!開幕ファントムスノウジンがゴクトをぶっぱするぅ!ラウンドを取ってできた余裕で勝負を仕掛けにいったか!?しかしアリスシャユウジャはこれを冷静にしゃがみガード様子見で回避して近C対空からダウンまできっちりつないで起き攻めぇ!!シャユウジャはここからが怖い!!』

 

「いけーアリス!」

「アリスちゃん!やっちゃえ!!」

 

 モモイとミドリちゃんの声援に応えるように相手のジンのダウンに詰め寄るアリスちゃんのシャユウジャ。

 

『シャユウジャの地獄の起き攻めだぁ!最初はバクセイ!飛び道具を出している腕の部分は中段です!!着地2BグレイヴでJB、JC、JDバクセイで星をとりつつ地面に落ちたジンにJBを当ててバクセイ重ねて起き攻め継続~!!重なったバクセイを盾に低ダJB!ここからバクセイ中段か着地2Bの二択を迫られるもホワイトスノウジン、ここでガーキャン!ヒットして立ち回りに戻します!!』

 

「あー惜しい!」

「アリスちゃん、落ち着いていこう!!」

 

『ホワイトスノウジン!切り返しの後に低ダJBをかぶせていく!アリスシャユウジャはこれはガードする!!ジンが着地に2A2Aバニ…シャユウジャバクステでジンのバニを空かして近Bで暴れているぅー!!シャユウジャのターンがまた来てしまったぁー!!基本の安定コンボで起き攻めにバクセイ重ねで地獄の中下択!!ファンタムスノウジンここでたまらずリバサライシンー!!しかしアリスシャユウジャここはきちんと様子見ガードしていたのでバクセイがカウンター!ライシンは飛び道具が消せないのでシャユウジャ起き攻めに出すのはいけません!!きっちり星を取って第2ラウンドはアリスシャユウジャ!!これで1:1!フルセットで最終戦だぁー!!』

 

「ライシンガードえらいー!!!!!!」

「バニからの割り連携をバクステして反撃もえらいー!!!!!!!」

 

 モモイとミドリちゃんがもろ手を挙げてアリスちゃんを褒め称える。

 

「反撃に気を大きくして低ダで安易に重ねにいかなかったのえらい…!」

 

 ユズも胸の前でぐっと両手を握りしめる。

 

「ライシンカウンター確認できちんと殺しきったのもえらいよ。星の状況もこれでアリスちゃんが4で相手が3になった、次の試合先に触れれば…!」

 

 ワンチャンある!

 

『さぁ泣いても笑っても最後のラウンド3!!開幕ジンがブー2B!シャユウジャは垂直ジャンプ!これはコマ投げ読みかぁ!?通り過ぎた先でファントムスノウジンのゴクトォ!!これはアリスシャユウジャきっちり空中オーラガードでしのいでいる!!!着地して対空を狙うがジンの空中オーラガードが間に合う!!しかしシャユウジャこれを追いかけて2Bとバクセイ中下択を仕掛けるがぁ!ガードしている!ファントムスノウジンのガードがかたぁぁぁぁい!!』

 

 最終戦は開幕からアリスちゃんも相手も手持ちのリソースを使用して画面内を縦横無尽に動き回る。

 カシオペアの拳のブーストキャンセルというシステムはこのゲームを面白くしている最大の要因と言える。

 専用ゲージであるブーストゲージというものを使用して赤い独特なエフェクトを出しながら即座に最高速でダッシュすることができるシステム、これはほとんどの行動をキャンセルすることができるし、何もない状態でも通常では思いもよらない速度で相手がすっとんでくるので非常にスピーディな試合が展開できる。

 

 ゲージなどを次のラウンドに持ち込める仕様上、1ラウンド目の開幕とそれ以降のラウンドの開幕ではブーストの有無で取れる手段は激増するし、コンボもこれのあるなしでは火力が段違いになる。

 

『ファントムスノウジン、崩れない!!一体何度中下択をガードするのか!?…あーーーーっとぉ!!!ここでアリスシャユウジャ低空バクセイブーストキャンセル着地小足でついにファントムスノウジンの鉄壁の牙城を崩すゥゥゥ!!最低空バクセイブーストキャンセルは声だけ出して攻撃判定は出さずに着地する発声保障です!!その後の下段の2Bは見えるわけがなぁぁい!!グレイヴにつないでJCバクセイ、出来るのかぁ!?JAJDブーストバクセイ、出来るぅぅぅぅ!!着地バニをブーストして一撃はちゃんと出る!!星3一撃が決まったぁぁぁぁぁ!!描いてた青写真ンンンン!!!!!!!!』

 

「やったよアリス~!!!」

「アリスちゃん信じてたよ~!!!」

「ふわっ!?」

 

 アリスちゃんのシャユウジャが一撃を決めた瞬間、モモイとミドリちゃんがアリスちゃんに抱き着く。

 アリスちゃんは集中していたところに突然の衝撃を感じてびっくりしたのか不思議な声をあげていた。

 二人とも、気持ちはわかるけどもうちょい落ち着いて。

 

 しっかし…

 

「「はぁ~…」」

 

 なんとか肩の荷が下りた、と思いながら大きく息を吐いたぼくの隣でユズも同じように息を吐いていた。

 思わず二人で目を合わせて、

 

「「…ふふっ」」

 

 二人でこれまた同じように笑いだす。

 

「最後は本当にすごかったね…あれ、入力がちょっと特殊だからわたしはまだ教えてなかったんだけどハジメが教えたの?」

 

「え?いやあれは入力が特殊だからぼくは教えてないんだけど…ユズが教えたんじゃなかったの?」

 

 はて?ぼくとユズはお互いの顔を見つめ合って首をかしげる。

 

『それでは結果発表!!!本大会第三位は三国マサラエックスチーム!!三位の賞品はこちらの筐体展示用のインストカード一式!!*4二位はオリオンチーム!!二位の賞品はゲームセンターに展示する用の販促ポスターと実は結構レアな家庭用のパッケージと同じ絵柄の未使用図書カード!!おめでとうございます!!!そしてぇ、本日の覇者!!テイルズ・サガ・クロニクルチームの皆さんには告知にありました通り!この家庭用発売記念に作られた時に何をとち狂ったのか作ってしまったカシオペアの拳限定仕様のプライステーションが授与されます!!!!!それではテイルズ・サガ・クロニクルチームの大将のアリス選手に一言いただきましょう!』

 

 実況の人からマイクを向けられたアリスちゃんはぼくとユズの方を向くとたった今実況の人から受け取った優勝賞品のプライステーションの箱を頭の上に掲げて、

 

「ユズ!師匠!アリスたちはやりました!!」

 

 とても素敵な笑顔と言葉をこちらに贈ってくれた。

 

『アリス選手は決勝戦が今日の最初の試合だったとは思えないほどいい動きでしたねぇ。特に最後の空かし下段は素晴らしかった!』

 

「はい!あれは師匠とユズが対戦している時に師匠がやっていたのを真似しました!!」

 

 アリスちゃんが元気に答えたのを聞いて驚く。

 バクセイは空中で214+Aという入力で出せる必殺技だがブーストキャンセルは6+Eと入力しないと出せない。

 先ほど試合の最後にアリスちゃんがした発声保障というテクニックは入力的には地上から21476+A+Eという入力をほぼ最速で行わないといけないため、まだ教えるには複雑かな、と思い敢えて伝えていなかったテクニックなのだが…

 

「ふふ…アリスちゃんの成長速度はすごいね」

「弟子に思惑を越えられる師匠ってこんな気持ちなんだねぇ…なんだか感無量」

 

 胸の奥がなんだかじーんとしてくる感覚。

 あの子ならすぐにぼくも越えてユズと並ぶくらいの腕前になるんじゃないだろうか?

 

『はい!ありがとうございました!!これにて本日のカシオペアの拳大会を終了いたします!!当店では定期的に大会、対戦会、フリープレイやランバトを開催しておりますのでご興味のある方は是非当店までお越しください!この後は閉店まで配信台の垂れ流しになりまーす!!ご視聴ありがとうございました!!』

 

 

 

「おーいハジメ、ユズ~!!」

 

「二人とも、こっちに来てー!!」

 

 実況さんの実況が終わった後に何やら話しかけられていた3人をユズと見ているとモモイとミドリちゃんから声がかかる。

 言われるがままぼくとユズも3人の方へと向かう。

 

「みんな、おめでとう…!」

「みんなえらすぎてぼくエラ呼吸になっちゃいそう」

 

 ぼくとユズで3人の偉業を称える。

 みんな試合できちんと練習したことを出し切っててほんとえらかった。

 感動した!!

 

「えぇ!?師匠はお魚さんにもなれるんですか!?」

 

「アリスちゃん、ハジメちゃんの言ってることは半分くらい聞き流した方がいいよ…ハジメちゃんもそうやって思いついたことをすぐ適当に言わない!アリスちゃんの教育に悪影響!!」

 

 おおう、ミドリちゃんからなぜかお叱りが入ったぞぉ。

 

「え、なんか当たりキツくない?」

 

 あのモモイ相手以外には基本的に柔和で優しいミドリちゃんのはずなのに…!

 

「ハジメちゃんには遠慮しない方がいいってさっきわかったから。これからは甘やかさずにビシバシいくからね?」

 

 なんで????????????

 ミドリちゃんに疑問の表情を向けるがミドリちゃんはなんかめっちゃジト目でぼくを見ている。

 え、何その適当ぶっこいて矛盾点を指摘されて言い訳をしているモモイを見る時のような目は。

 

「そんなことより!優勝者は記念撮影させてほしいんだって!今日の勝利は私たちゲーム開発部みんなの勝利だからみんなで撮ろう!!」

 

 そんなことってなんじゃい!!

 お前の妹反抗期やぞ!!

 

「記念撮影…?」

 

「優勝者は許可があるなら写真撮影して展示するんだって!ほら、あのへんの壁がそう!!」

 

 モモイが指差した先の壁にはゲームタイトルとその下に何枚も写真が貼られていた。

 どの写真も笑顔で、中には顔の部分にポヨポヨが貼られているものも存在している。

 

「顔出しNGなら配慮してくれるしそもそも写真NGなら撮らないって言うしせっかくだからみんなで撮ってもらおう!お友達も一緒にどうぞって言ってたし!」

 

 ほうほうなるほど。

 あれか、大食い大会のやつみたいなノリ。

 ゲーム開発部みんなでの勝利、モモイはこういうところは外さないよなぁ。

 

「なるほどねぇ…ほらユズ行っといで。こういうのは楽しんだもん勝ちだし記念になる。顔は最悪隠してもらえるみたいだし」

 

 ぼくはそう言ってユズの背中を押して3人の方へ引き渡す。

 この子はこういうところで変に尻込みしたりしちゃうからさっさと捕獲するんだよ!!

 ぼくに押されたユズの手をアリスちゃんがしっかりと握るのを見届ける。

 よしよし。

 

 

「じゃあぼくはあっちで待ってるから終わったらごはんでも食べに行こう。優勝記念でぼくのおごりだぜぇ~」

 

 

 

 

「「「は??????????」」」

 

 4人を見送って離れようとしたぼくになぜかモモイ、ミドリちゃん、ユズが声をそろえてそんな声を上げる。

 声を上げてないがアリスちゃんもとても不思議なものを見るような目でぼくを見ている。

 

 

 

 えっ?

 

「えっ?師匠も一緒に写真を撮るんじゃないんですか?」

 

「いやハジメも一緒に撮るに決まってるじゃん!!みんなの勝利だって言ったじゃん!?」

 

「ハジメちゃんはこの状況でなんで自分だけ入らないって考えるかなぁ…」

 

「…ハジメってこういうところあるよね…」

 

 アリスちゃんは不思議そうな顔で聞いてくるし。

 モモイは何言ってるの?って顔してるし。

 ミドリちゃんはため息をついて額に手を当てて首を振っているし。

 ユズは心底疲れたような顔で肩を落としている。

 

 えっ?おかしくない?

 ゲーム開発部のみんなの記念撮影にハケン(他人)のぼくが入るのは変でしょ?

 

 そんな当然の疑問を浮かべ困惑していたぼくはいつの間にかモモイとミドリに両腕をがしっと捕まえられて引っ張られてしまう。

 それはさながら捕獲された宇宙人のような様相であった。

 

「はーい、いいから行くよー。お店の人に待ってもらってるんだからー」

 

「観念してねハジメちゃん」

 

 あぁぁぁー…

 

 そのままずるずると引きずられていくぼく。

 いややっぱおかしくない??????

 

 

 

「すいませーんお待たせしました!」

「ちょっと駄々をこねてる子がいまして…」

 

 モモイとミドリちゃんはお店の人に声をかける。

 え?駄々をこねてる子ってぼくぅ?

 

「はい、じゃあハジメが逃げないようにみんなで囲もう!」

 

 えっ

 

「アリスちゃんとユズちゃんはハジメちゃんの前で膝立ちするといいかな?」

 

 両サイドをモモイとミドリちゃんにがっちりと固められ完全に動けない。

 

「これは鳳天舞の陣ですね!ロマンシング物語で見たことのある陣形です!」

 

 つまり真ん中のぼくが一番ヘイトが高い囮役…ってコト!?

 

「真ん中だし、ハジメには商品も持ってもらおう…」

 

 ユズはアリスちゃんが持っていたプライステーションの箱をぼくの胸に押し付ける。

 両腕ホールドされてるから両手でちゃんと挟まないと落ちる!!!

 この状況で!ぼくに物を渡すな!!!!!

 でも落としたらみんなの頑張りが無駄になる!!

 せめて、せめて両サイドの二人は拘束を緩めてくれないか!?

 

「落とす…この姿勢だとプライステーション結構重い…!」

 

「あ、それならアリスも下から支えます!」

 

「じゃあ、わたしはこっち側支えるね?アリスちゃんもハジメにもっとくっついちゃえ」

 

 なんでだよぉぉぉぉおお!!!!

 気づけばぼくは両腕を拘束された状態でゲーム開発部のみんなに4方向から抱き着かれるような恰好で写真撮影に参加することになってしまった。

 

「ははっ、仲がいいですねぇ。それじゃあ撮りまーす。いちたすいちはー?」

 

 ええい、こうなったら目を閉じて乗り切ってやる。

 周りの皆のいい匂いや柔らかい感覚など無視だ無視!

 

「「「にー!!!」」」

「ふー…」

「うひょわぇっ!?」

 

 パシャッ。

 店員さんの持ったデジカメからの撮影音。

 ぼくは耳に走った暖かな感触に思わず目を見開いてその場で体をびくんっ、と跳ねさせてしまった。

 

「…ぷっ…くっく…!」

「…ミ~ド~リ~ちゃ~ん?????????」

 

 ぼくの左耳から聞こえてくる笑い声の主、ミドリちゃんに怒りを込めて語り掛ける。

 

「あっはっはっは!!!!うひょわって!!!ハジメからあんな声出るなんて!!!あっはっはっはっは!!!」

 

 笑いすぎだモモイィ!!!!!

 ぼくだってあんな声出すつもりなかったわい!!!

 

「わたしたちも支えてて正解だったね…」

「プライステーションは無傷です!!」

 

 ユズとアリスちゃんは思わず支えていた手を離してしまったプライステーションを落とさず保持、そのままアリスちゃんが胸に大事そうに抱え込んだ。

 

「ミドリちゃん…なんであんなコトしたの…?」

 

 努めて低い声を出してぼくは抗議の意を示す。

 あんなコトとは当然撮影の瞬間にぼくの耳をふーっ…っとしたコトだ!!

 あんなん突然されたらびっくりするに決まってるじゃないか!!

 

「ハジメちゃんがずっと目をつむってしかめっ面してたから驚かせちゃおうって」

 

「大丈夫です?撮り直します?」

「あ、大丈夫でーす!!」

 

 モモイ!?ぼくは大丈夫じゃないんだが!?

 

「あ、展示する時に顔写さないようにした方がいい人はいます?ポヨポヨのポヨの画像で隠したりできますけど」

「大丈夫…です…!」

 

 ユズ!?

 むしろ君は普段隠したがるだろ!?

 せ、せめてぼくだけでも…

 

「この子との写真は、貴重なので…全員隠さないでほしいです…!」

 

「あ、わかりましたー。そういえば展示する写真に一言何か書いてもらっていいですか?あと展示する写真の下にチーム名を書くんですけどこれはチーム名のままにします?部活とかで参加した人たちは部活名に変えたりする人たちもいるんですよ」

 

 とんとん拍子に話が進んでいくー!!

 ぼくはぼくは隠すって言いたいのに!!

 なぜかミドリちゃんに完全に捕獲された状態になっててモモイには手で口をふさがれてる!!!

 人権!!

 ぼくの人権はどこですか!?

 戸籍なかったわ...

 おのれキヴォトス…!!

 

「あ!それならミレニアムサイエンススクールゲーム開発部にしてください!一言書くのは今日の大将だったアリスがいいかな?」

 

「いえ、ゲーム開発部としてなら部長のユズが書くべきです!」

 

「あ、じゃあこの画面のプレビューにお願いします、このタッチペンで…慕われてますねぇ、いい部長さんなんですね」

 

「い、いえ…!みんないい子…なので…!」

 

 店員さんにそう言われたユズは頬を染めながらも嬉しそうにそう答えて店員さんから渡されたプレビュー画面にタッチペンで何かを書き込んでいく。

 ぼくはその間完全に拘束されて口も塞がれてむーむー言うしかない。

 アリスちゃん助けて!!

 

「ところで師匠はなぜモモイとミドリに捕獲されているのですか?」

 

 そう!そうだよアリスちゃん!

 その調子で助けて!!

 

「ふっふっふ…アリス、それはね!」

「今アリスちゃんが持ってる限定プライステーションを持ったこのタイミングでハジメちゃんを捕獲しておくとすごいレアアイテムがもらえるからだよ」

「あぁ!?私が説明しようと思ったのに!?…そう!この捕獲イベントをアリスが今持っている限定プライステーションを持っている状態でクリアするとワールドレジェンドレアクラスの究極の隠しアイテムが手に入るんだよ!!」

 

「ワールドレジェンドレア…究極…!!」

 

 あぁ!?アリスちゃんの目がキラキラと輝いてる!?

 これ絶対騙されてるやつじゃん!?

 いたいけなアリスちゃんを騙すなんてやっていいと思ってるのか!?

 

「…できました」

 

「はい、じゃあすぐに印刷しますねー。お持ち帰り用に皆さんの分も印刷します?」

 

「是非…お願いします…!!」

 

 店員さんがユズにデジカメを受け取りすぐ横のカウンターにあるPCにつなげて操作をしている。

 …いやそろそろ離してほしいんだけど!?

 

「むー…むー…!」

「はーい、あとちょっと我慢しようねぇハジメ」

「もう少しだから我慢だよぉ…ハ・ジ・メ・ちゃ・ん?」

 

 耳元で囁くのやめロッテ!?

 あとミドリちゃん!?君のその囁き方はなんか色々危ない!!

 ほんとやめて!なんかちょっとゾクゾクする!コワイ!!

 

「はい、お待たせしましたー。またよかったら大会参加してください!部長さんや師匠さんも是非参加していただきたいですね!!」

 

「…はい、また来ます…!」

「今日はありがとうございましたー!」

「大会進行と実況、お疲れさまでした。とってもわかりやすかったです」

「アリスも今日の結果に満足せずにもっと強くなります!」

 

 店員さんから写真を受け取ったユズを筆頭にゲーム開発部の皆は店員さんに挨拶をしていく。

 やっと解放されたぼくはなんだか釈然としない気持ちを抱えたが…

 

「とてもわかりやすい実況にスムーズな大会進行でこの子たちも楽しかったと思います。ありがとうございました」

 

 ぺこりと一礼。

 

「ハジメー!早くこっちきて!!」

 

 うるへー今行くわい。

 

「ハハハ…ほんとに問題ならあとで連絡もらえれば写真のプライバシーには対応しますよ」

 

「…いえ、大丈夫です。ありがとうございました」

 

 店員さんの気遣いの言葉になんだか嬉しくなったぼくは、出来る限りの笑顔でお礼を言ってゲーム開発部の皆の元へ向かったのだった。

 

 

 

 

 

「なるほどねぇ…最初からあの笑顔をしてればあんな悪戯されなかっただろうに」

 

 

 

 

 

 

「あっはは!!ハジメが目を見開いてるよ!!」

 

「証明写真撮ろうとして失敗した人みたいだね」

 

「ミドリちゃんのせいだルルォ!?」

 

 ユズが受け取って来た写真を皆で一枚づつもらって。

 

「確かにこれはワールドレジェンドレアアイテムです!!アリスのだいじなもの欄から一生消えることのない素晴らしいアイテムです!!」

 

 目を輝かせて写真を両手持って喜ぶアリスちゃん。

 いや騙されてるから…あの捕獲なくても手に入ったから…

 

「捕まえなきゃ一人だけしかめっ面の写真だっただろうからね…」

 

 ユズは写真を両手に持って喜んでいるアリスちゃんのかわりにプライステーションの箱を胸に抱えている。

 いやだってさぁ…ぼくも写真に写るとかおかしくないって思ってたんだもん…

 

 ゲーム開発部としてっていうから、てっきりぼくとは関係ない話だと思ったんだ。

 そう思いながら渡された写真を見る。

 

 

 

 

 

 目を見開いて中途半端に口を開いているぼく。

 ぼくを囲むように笑顔を浮かべるモモイ、ユズ、アリスちゃん。

 ぼくの耳元に息を吹きかけた瞬間であろう、耳元に目を閉じて唇を寄せているミドリちゃん。

 

 まったく、ひどい写真だ。

 そもそもセンターがぼくっておかしいじゃん。

 今日の立役者ならアリスちゃんがセンターにいるべきだし。

 ゲーム開発部ならユズがセンターにいるべきだろう。

 

 だというのになぜか写真のセンターはぼくで。

 

 写真の左上にはカラフルな文字列が踊っている。

 

 

 

 

最高の仲間たち!!

 

 

 

 

 

 こんなの不意打ちだ。

 昨日の夜だってだましうちしてきたくせに、こんな形でふいうちまでしてくるなんてずっこい。

 

 この子たち、その内悪い人にだまされたりしないか心配だよボカァ。

 

 

「よーし!ハジメのおごりでごはん食べて帰るぞー!!」

「何食べようか?」

「アリスはあの鉄板でじゅーじゅー焼いてひっくり返すのが行ってみたいです!!」

「お好み焼き…アリスちゃん前にも行ってみたいって言ってたもんね…でもハジメ、本当におごってもらっちゃっていいの?」

 

 

 あぁ、でもこの子たちがぼくを仲間(友達)と言ってくれるのなら。

 もしこの子たちに何か悪いことが起こることがあるのなら。

 

 

「とーぜん、今日はみんながんばったからね、ぼくにお任せあれってね」

 

 

 ぼくはこの身に代えても友達(仲間)を守るだろう。

 トモダチって、そういうものだろう?

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「コールサイン00(ダブルオー)、こっちの掃除は終わったぜ。数はひのふのみの…目につく数は17ってところか」

 

 ゲームセンターより少し離れた廃ビルの立ち並ぶ廃墟群。

 複数の不良生徒が倒れ伏す戦闘跡にただ一人立つのはCleaning&Clearing(C&C)のリーダー、美甘ネル。

 死屍累々といった様相で倒れ伏した不良生徒たちは誰も動けず、完全に意識を飛ばすか呻くだけだ。

 

『コールサイン02(ゼロツー)、戦闘区域から離脱しようとしたターゲットを2名クリア』

 

『コールサイン01(ゼロワン)、戦闘区域の端っこの瓦礫に隠れてた4名をクリア!』

 

『コールサイン03(ゼロスリー)、待機地点にはターゲットの姿は確認できず。報告されていたターゲットの数23と一致…これはここに仕掛けた掃除道具は回収しませんとですね…』

 

 通信機越しに各員からの報告を受けたネルは辺りを一瞥し、倒れ伏している不良生徒のほかに動く影がないかを確認する。

 

「んじゃあとはセミナーに回収要請を出せ。02は周囲警戒、01はいねぇとは思うが一応まだ隠れてるターゲットがいねぇかの確認。03はあたしと合流して回収要員が来るまでターゲットが動かねえように養生*5だ」

 

「コールサイン02了解」

 

「コールサイン01了解~!」

 

「コールサイン03了解。掃除道具(爆薬)を回収次第隊長の方へ向かいますね」

 

「おう、こっちはまとめてふんじばっとく」

 

 通信を切ったネルはその辺に蹲っている不良生徒を引きずって先ほどまで戦闘を行っていた瓦礫がそこらに散らばっている広場の開けた場所へと放り投げていく。

 

 

 

「隊長、お待たせしました」

 

「おう、回収要員の現着は?」

 

「およそ20分ほどかかるかと」

 

「相変わらずあくびが出そうな迅速さだぜ…どこぞの誰かさんみたいな身軽さを見習ってほしいもんだね」

 

 ネルはそんなことをぼやきつつ頭部の後ろに腕を組み、適当な瓦礫に座り背を預ける。

 気怠そうな雰囲気を出しながらも視線はターゲットであった今は捕縛された集団からは目を反らさない。

 

「どこぞの誰かさん…というとハジメさん、ですか?」

 

「おう、仕事に実直で対応が的確で依頼主を第一に考えて自分(テメェ)のことにはてんで無頓着などこぞの誰かさんさ」

 

「…ハジメさんのお仕事の評価は高いというのは聞きますが、自分の事には無頓着…ですか?」

 

 ネルのすぐそばに姿勢よく、瀟洒な姿勢で立ち、同じく集団へと視線を向けながら答えるのは通信でコールサイン03と名乗っていた室笠アカネ。

 

「あぁ、無頓着…つーか、相手にするにはこの上なく面倒くせぇ。胸糞も悪ぃ。お行儀よく座って仕事させる分にゃ優秀なんだろうけどな」

 

「なんだか、不思議な評価ですね?彼女は戦闘面でも優秀だとお聞きしましたが…以前に戦闘訓練を依頼した時も隊長に及ばないまでもかなり食らいついていたと記憶しているのですが…そういえばあの日の訓練のあと隊長の機嫌が悪かったことと何か関係が?」

 

 集団の中の一人がふと縛られたまま床に転がされていた半身を起こし、辺りを見回す。

 早い段階で気絶でもして傷が浅く済んだのだろうか。

 その不良生徒は状況を理解しなんとかこの場から脱しようと拘束を脱出しようと、

 

 ダダダダダッ!!

 

 その瞬間、ネルの愛銃のSMG(サブマシンガン)【ツイン・ドラゴン】の発砲を受け、不良生徒は再び意識を落とす。

 【ツイン・ドラゴン】の銃口を集団に向けながらネルは口を開く。

 

「ったく、掃除したってのに次から次へとゴミが湧きやがる。ゴミは掃除しねぇとな?」

 

 びくっ、と床に転がされた不良生徒(ゴミ)のいくつかが震えたように動いたが、その後は動き出す気配もなく静かになる。

 【ツイン・ドラゴン】の発砲した片方をアカネに投げ渡したネルはそのまま言葉を続ける。

 

「まぁ、あのハケンはよ。意識がある限り何度でも食いついてきやがる。最初はよ?根性あるじゃねえかって思ったんだがよ」

 

 ネルに投げ渡された【ツイン・ドラゴン】のマガジンを入れ替えながらネルの言葉に耳を傾けるアカネ。

 

「とんでもねぇ勘違いだったぜ。アイツぁ根性があるんじゃねえ、そもそも自分(テメェ)に価値なんぞ見出してねぇのさ」

 

 思いもよらぬ言葉にアカネは思わず目を見開いてネルへと振り向く。

 ネルの視線は変わらず集団へと向けられている。

 その瞳に一切の揺れはない。

 静かな視線だ。

 

「目ぇ反らすなよ03、C&Cの名が泣くぜ?」

 

「…っ…失礼しました、隊長」

 

 ネルの指摘を受けアカネは体勢を元に戻す。

 ネルは気にした様子もなく、ハッと鼻で笑いながら話の続きを語りだす。

 

「まぁなんてこたねぇ。アイツにとっちゃ自分(テメェ)も備品のひとつってワケだ。だから食らいつくし肉薄できる。勝つ条件に自分の損害を欠片も考慮しちゃいねぇ。そしてそれをアイツは当然だと思ってやがる。模擬戦だぜ?どこの世界にたかが訓練に(タマ)張る奴がいるんだよ。意識ごと刈り取らねぇと止まりゃしねぇ。最初はマジで薄気味悪かったぜ」

 

 ネルは立ち上がり、地面に座ったために付着した土や埃をパンパンと払う。

 ゆっくりとアカネの一歩前まで歩いたネルはアカネに向かい右手を上に向けて差し出す。

 

「何度か模擬戦だなんだ、使ってはみたが…ありゃダメだ。アイツ相手の訓練なんて役に立つ日が来たらキヴォトスも相当末期だぜ?人間サイズのデカグラマトンでも想定しろってか?あんなに脆いデカグラマトンなんざいるわけねぇってのにな?」

 

 アカネは差し出された手をしばし見つめ、思い出したようにネルから渡され、リロードを済ませていた【ツイン・ドラゴン】を差し出されていたネルの手へ乗せる。

 軽く握りこみ、くるくると銃を回しながらホルスターへと戻すネル。

 

「まぁアイツは仕事は早ぇし正確だ。話せば気のいいヤツだし、ゲームも滅茶苦茶上手かった。いやマジで何もできなかったからな…思い出したらイライラしてきやがった…アイツ絶対いつかゲームで泣かす!!」

 

「隊長?」

 

「お、落ち着け03!サボんねぇよ!!サボって勝てるようになってもそれはそれでアイツに負けた気がするしな!」

 

「…彼女の自己肯定感が非常に低い、というのはなんとなくわかりました。それでは彼女には何が必要なのでしょうか?」

 

「あぁ?友達(ダチ)がケツ引っ叩くしかねぇだろ?アイツは滅茶苦茶ナチュラルに自分(テメェ)のことを下に置くクセして次から次にキヴォトスのそこら中に友達(ダチ)作ってんだぜ?笑えるだろ?」

 

「…お友達が増えるのは良いことなのでは?」

 

 アカネが首を傾げているとそれまで二人の声とうめき声しか響いていなかった空間に複数の足音が迫ってくる。

 セミナーの回収部隊が到着したようだ。

 

「例えば拘束されてロシアンルーレットを交互にやって生き残った方だけ助かるって言われたとしてだ…ハズレなしのロシアンルーレットだって気づいた上で、喜んで最初に引き金を引こうとするようなヤツ、あたしは友達(ダチ)とは呼びたくねぇな」

 

 回収部隊が踏み込んできたタイミングで視線を切って元来た道へと歩き出すネル。

 

「だからアイツはあたしの後輩止まりなんだよ。ま、その内友達(ダチ)の誰かをガチギレさせてやっと少しは改めるんじゃねえ?そうなったらまた模擬戦のハケンでも依頼してやろうじゃねえか。んじゃあとは任せたぞアカネ。あたしは帰る」

 

 そう言ってネルは背を向けたままアカネに手をひらひらと振って帰投した。

 

「…相変わらず損な性格をしてますね、部長。ハジメさんの在り方に怒っているのに、一歩引いて見守ってる…後輩どまりだなんて言ってもうほとんど友達だと思ってるじゃないですか」

 

 ネルの不器用な気の遣い方に笑みを零すアカネ。

 そしてたった今彼女の敬愛するネルから知らされたハジメの歪さをどうにかできないか、考える。

 考える。

 思考の海に沈む。

 

「…いっその事C&Cの6人目のメイドにしてしまいご主人様の備品であるという自覚を持たせてしまうのはどうでしょうか…?彼女が彼女を顧みなくてもご主人様なら叱ってくださるでしょうし…」

 

 不穏な事をぶつぶつと呟くアカネ。

 彼女から今回の掃除とターゲット回収の報告と引継ぎを受けようと近づいたセミナー所属の回収要員の生徒は眼鏡を白く光らせる彼女に何か寒気のような言いようのない何かを感じ、彼女が自分の存在に気づくまで待機するしかないのであった。

*1
ガード中にEボタンを押すことでキャラの周りに丸い半透明のエフェクトが出、必殺技などをガードした時に発生する削りやガードクラッシュ値の減少を無効化できる。通常、地上攻撃は空中ガードできないがこのシステムを使えば一部の例外を除いてガード可能になる。オーラガード展開中は超必殺技に使用するオーラゲージを消費していく。デメリットとしてガード硬直が通常のガードより長くなってしまう。

*2
連続ガード。ガード硬直中にさらに攻撃をガードさせられる状態。硬直中なので当然動いたりジャンプしたりできない。

*3
あったまる、熱くなる、キレそう、今のは足でプレイしてた。人は負けが込んでくると燃え上がる生き物なのだ

*4
インストラクションカード。アーケードゲームのパネルについている一般的にはA5サイズの2枚1組の物が多い。格闘ゲームにはこれに付随して横長の短冊状の各キャラクターの必殺技が記載されている通称コマンド表もセットでついてくる場合が多い。

*5
漏れ出ないように保護すること。この場合逃走防止の監視を意味する。




大変長く続いたゲーム開発部編もこれで終わりです。
次からはきっと普通のハケンの話を書けるはず…!

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