ハケン・ユーティリティ   作:ジョイン君

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彼女の搬入作業


依頼内容:物資の配達、それに伴う配達先での搬入、整理等の軽作業②

 大型のトラックが行き交っても問題ない程度の広さの道路を塞ぐように築かれたバリケード。

 大きな瓦礫や廃材で作られたそれはそのまま通れるものでもなく。

 

 そのバリケードの中央は開閉可能な木材で、戦車程度なら通れそうな幅の出入り口になっており、そこには複数の、銃器を持ったマスクで顔を半分覆った不良生徒たち…スケバンと呼ばれる者たちが数人立っている。

 

「止まれ!この道は通行止めだ!」

 

 銃口をこちらに向けながら叫ぶ、集団の頭らしきスケバン。

 他のスケバンもこちらに銃口を向けている。

 ざっと見ただけでAR、MG、GLにSR。

 随分と手厚い歓迎だこと。

 

「狐坂ステイ」

 

「なぜ?」

 

 ぼくはシートベルトを無言で外した狐坂を止める。

 

「なぜじゃねンだわ...とりあえず通行止めの理由を聞こうよ…ここだけなら別の道使えばいいし」

 

「どうせろくでもない理由に決まっています。そのような些事でこの無駄な時間が引き延ばされるなんて私には耐えがたいです」

 

「いや待ってホント。狐坂としてはおままごと(ハケン)なんだろうけど一応シャーレの看板背負ってんのよ、こっちは。変に騒動起こして先生に余計な仕事抱えさせたいんか?」

 

「…チッ」

 

 【真紅の災厄】を担いで助手席側のドアに手をかけ、浮かせかけていた腰を座席に戻す狐坂。

 めっちゃ舌打ちされたわ...。

 

 ぼくはそのまま運転席側の窓を開けて顔を出し、こちらに銃口を向けてきたスケバンたちの声をかけてきた子に話しかける。

 

「この先に用事あるんだけど道路工事かなんか?他の道なら通れるかなー?」

 

 幸い、窓から顔を出した瞬間撃たれる、ということはなくて一安心。

 

「あァ!?通行止めは通行止めだっつってんだよ!!この先のアビドスにはカイザー以外誰も近づけるなって言われてんだ!!わかったらさっさと帰れや!!」

 

 …ほーん?

 

「…つまりアビドスに行く道は全部通行止めってコト?」

 

「そう言ってんだろうが!?…ってオイ…お前【銀髪鬼】じゃねえか!!」

 

 およ、ぼくをご存知なタイプの不良生徒か。

 

「テメェが散々アタシたちを食い物にしたせいでD.U.では笑いものにされてこんなところで交通整理の真似事するハメになってんだ!!…言われた通り追い返すだけにしようと思ってたが気が変わったぜ…テメェをここでボコしてその車ごとアタシらがいただいてやる!!」

 

「狐坂、シートベルト」

 

 はぁ、とため息をついてシートベルトを再度着用する狐坂。

 

「やはり無駄な時間でした」

 

「相互理解は大事だからさ…」

 

 ぼくは運転席の窓を閉めながらトラックをそのまま勢いよくバック。

 何発か弾が車体を掠めたのを確認するが正面の口径の小さい弾以外、GLの榴弾やMGの集中砲火はまともに食らわずに済んだ。

 

「この状況のどこに相互理解の要素が?」

 

 助手席の窓を少しだけ開けながら、狐坂が呆れたような声音でぼくに問う。

 方向確認、ヨシ。

 相手の榴弾の爆発で視界も今は通りにくい。

 SR持ってたやつもそこまでの腕じゃない。

 何よりこの連邦生徒会の運搬用トラックは頑丈だしバリケードの板部分は見た感じ脆そうだったし行けるな。

 

「今はとりあえず話になんねーなっていうのは理解の一歩かな、って!」

 

 ぼくはそのまま思いっきりアクセルを踏み込む。

 大型車特有の野太いエンジン音。

 

「クソがっ!ギリギリで避けやがったな!!」

 

「お、おいスーちゃん!!この音ヤベえぞ!!」

 

 お、気づいたのが一人いる。

 ならまぁ、大丈夫でしょ。

 

「こうするのなら最初から薙ぎ倒していけば早かったでしょうに…」

 

 狐坂がどこからか取り出した手榴弾のピンを引き抜きながらそう溢す。

 ぼくと狐坂の乗ったトラックはひとつの鉄塊となり、出入り口の板に向かって突撃する。

 

「結果論なんだよなぁ…」

 

 慌ててトラックの車線(射線)から飛びのくように離れる出入り口の前を塞いでいたスケバン達。

 

 

 ゴシャッ!

 

 

 音と衝撃と共にバリケードを突き破り、ぼくらはスケバンたちの検問を突破してそのまま全速でアビドス高校へと向かう。

 

 

 

 

 

ドドドドドォォォォン!!

 

 

 

 

 後方からは狐坂がバリケードを通り抜けがてらに窓から放っていた手榴弾いくつかの爆発音。

 サイドミラー越しに後ろを確認、検問をしていた場所はもうもうと煙が立ち込めている。

 これなら少なくともすぐに追ってくるということもあるまい。

 

「次からは最初からこうしなさいな」

 

 開けていた助手席側の窓を閉め、ドリンクホルダーから飲みかけのペットボトルを手に取った狐坂は狐面を横にずらし、口に着けてからこちらをじろりと睨む。

 美人さんから睨まれるのこーわい!

 

「そ、相互理解…」

 

「向こうはあなたを理解した上でする必要のない強奪に至ったようですけれど…素晴らしき相互理解ですこと」

 

 うぐっ。

 …まぁ、身から出た錆みたいな感じではあったけども…

 

「…せめてこのトラックとか物資がぼくの私物だったならまだ一考の余地はあったんだけどなぁ…」

 

「あるわけがないでしょう、どこまで愚かなんですかあなたは」

 

 ドリンクホルダーにペットボトルを戻した狐坂はさらに視線をきつくしてぼくを睨みつける。

 だから怖いつってんだろ!!

 

「いい加減その必要以上に己の価値を下に見るのを改めなさい。不愉快です…あなたのその言動は先生への侮辱となり得ることをいい加減理解なさい」

 

 そう言って狐坂は狐面をかぶり直し、また窓の方を向いてしまった。

 

 …先生への侮辱、かぁ。

 先生に関しては絶対的信頼のおける狐坂がそう言うってことは、そうなるんだろうなぁ…。

 

「お、見えてきた」

 

 トラックを走らせること幾分。

 ついに目的地のアビドス高等学校の校門が見えてきた。

 

 そのまま開いている校門から校庭へとトラックを乗り入れ、昇降口の方へと向かう。

 

 誰も出てこない…。

 

 うーん、アヤネちゃんとは面識あるんだけどモモトークの交換まではしてないんだよな…。

 とりあえず中に向かってみるべきか。

 

 そんなことを考えていると昇降口から人影が見える。

 

 桃色の長髪の小柄な生徒。

 右手でSGを持ち、左手には盾を持っているようだ。

 

 こちらを見つめる視線は鋭く、警戒心MAXと言った感じだ。

 

「こんな場所まで連邦生徒会のトラックでやってくるなんてどちら様~?」

 

 柔らかい、どこか眠そうな口調。

 視線と態度とは正反対な言葉にちょっと面食らう。

 

「えーと…物資の配達に来たんですけど」

 

「物資の配達?今はこの辺りはどこも封鎖されてるはずだけど~?」

 

 ますます鋭くなる視線のピンクさん。

 え、これもしかしなくても疑われてない?

 まぁあそこで封鎖が行われてる時点であまり状況はよくなさそうだと思ったけどここまで疑われるほど状況悪いって事?

 

「悪いんだけど今の状況では信用できないかな~。そもそも連邦生徒会自体あんまり信用してないからね~」

 

 そう言ってピンクさんは左手の盾をこちらに構えて、右手のSGを軽く掲げる。

 それを合図に飛び出してきたのはARを持った銀髪の生徒、同じくARを持った黒髪のツインテールの生徒。

 ピンクさんの後ろには大きなMGを携えた生徒も見える。

 

「…面倒です、まとめて制圧してしまいましょう」

 

「ん、あの狐は前にリゾートで私たちを襲った奴」

 

「おやおや~?ますますあやしいねぇ?」

 

「狐坂ステイ!!」

 

 いつの間にか助手席から降りて運転席側に回ってきた狐坂が今にもアビドスの生徒たちに襲い掛かろうとしてるのを慌てて止めたぼくは運転席から飛び降り、両手を上げて戦闘の意志がない事を伝える。

 

「いやほんと違うんです!ぼくらはシャーレの先生からの依頼で物資の配達に来ただけで怪しい者じゃないんです!おい狐坂ァ!!今すぐその殺気を放つのをやめろ!!」

 

「なぜ?」

 

「先生に!迷惑がかかるんだよ!!先生に!!!!!」

 

「…チッ」

 

 舌打ちをした狐坂は放っていた殺気を抑えて引き金に掛けていた指を外し、【真紅の災厄】を肩に乗せてそっぽを向く。

 一応戦闘の意志はないというポーズだろう。

 

「ね、ねぇ...先生って言ってたし本当にシャーレからの物資なんじゃないの?」

 

「ん…でも今アビドス外から物資を運んでくる事は不可能のはず」

 

 黒髪の子と銀髪の子が何やら話している様子を両手を上げたまま聞いているぼく。

 うーん、どうしたもんかなぁコレ。

 というか先生も連絡くらいしといてくれよな!

 周りが敵に囲まれてる状況で連絡にない補給物資とか怪しさマックスじゃん!!

 

『み、皆さん!その人はシャーレに所属するさかまんじハケンサービスの部長の安納ハジメさんで間違いありません!』

 

 不意にアビドスの生徒たちの傍を飛んでいたドローンから声が響く。

 

「あらら~?それじゃあ本当にシャーレからの…?」

 

 MGを構えていた立派なおもちの生徒が構えを解いて首を傾げる。

 

「ありゃ~、それじゃあ本当に味方だったか~。ごめんごめん~」

 

 そう言ってピンクさんは警戒を解いてこちらに歩いてくる。

 先ほどの鋭い視線とは打って変わって眠そうな顔だ。

 

「いやぁ~おじさんたち、ちょっと四面楚歌になっちゃって疑り深くなっちゃっててさ~。物資の補給は助かるよ~。すぐにどうこうって状況ではないけどこのままじゃジリ貧だったからねぇ~」

 

「来るときになんか検問みたいなのありましたからねぇ…シャーレ所属のさかまんじハケンサービス部長の安納ハジメです。本日は物資の配達で伺いました。あ、代表の人は中身の確認が終わったらあとでサインもらえます?」

 

 上げていた両手を下して、運転席から物資の目録と出向証明書の入った透明なクリアファイルを手に取る。

 

「りょ~かい~。私は小鳥遊ホシノ。気軽におじさんって呼んでね~。一応おじさんが代表ってことになるのかな~」

 

「私は十六夜ノノミです☆こんな状況なのに物資を運んできてもらえて本当に助かります~」

 

「砂狼シロコ。あの狐と一緒にいたからてっきりテロリストかと思った」

 

「黒見セリカよ、よろしく!シロコ先輩はもう少しオブラートに包んで言って!?それにしても検問があったのによくたどり着けたわね?」

 

 ホシノおじさんにノノミさんに、シロコちゃんにセリカちゃんね。

 ぼくはホシノおじさんにクリアファイルを渡しながらセリカちゃんの問いに答える。

 

「うん、頑丈だからね、このトラック」

 

「…頑丈?」

 

 不思議そうに首を傾げるセリカちゃんを横目にぼくはトラックの正面に回る。

 前面の端の方に擦ったような塗装が少し汚れた場所を発見。

 でもへこんだりとかはしてないね。

 あのバリケード随分脆かったんだなぁ。

 

「うん、頑丈だわ」

 

「…え?このトラックで無理やり突き破ってきたって事…?」

 

「うへ~…随分とバイオレンスだぁ」

 

「なるほど…これは将来銀行強盗をする時にはかなり便利そう。次回の購入備品として一台確保しておくべき」

 

 連邦生徒会の備品の頑丈さにうんうんと頷くぼくにセリカちゃんは声を震わせ、ホシノおじさんはそれになんか軽い感じで同意してる。

 シロコちゃんはなんか物騒なこと言ってるけど、多分冗談だろう、うん…。

 

「ハジメさん、お久しぶりです!」

 

 お、アヤネちゃんだ。

 昇降口からメガネをかけた黒髪の少女、奥空アヤネちゃんが駆け寄ってくる。

 

「アヤネちゃんおひさ。いやぁ、止めてくれて助かったよ」

 

「アヤネちゃ~ん、物資の目録はこれだってさ~。確認したらサインよろしくね~。おじさんたちは先に物資を運び込んじゃうから~」

 

「あ、ぼくも搬入手伝うんで指示くださーい」

 

 ぼくはトラックに積まれたコンテナの扉を解放して、その扉が閉まらないようにストッパーで固定する。

 アヤネちゃんが目録で物資の数を確認しながら、ぼくたちは校舎内へ物資を運び込むのだった。

 

 あ、狐坂はいつの間にか助手席に戻って座ってた。

 わかってはいたけど手伝わねえのな!!

 

 

 

 

 

 

 粗方物資を運び込んで、目録と照らし合わせて不備がないことを確認してぼくたちは今対策委員会の使用している教室で一息ついている。

 狐坂も一応呼んだけどガン無視されて動く気配がなかったので諦めた。

 

「うわほんとだ。電波つながんないじゃん」

 

 物資の搬入中に先生が連絡してくれればあんな事態にならなかったのになぁとぼやいたら、なんと今朝からこのアビドスでは携帯電話やスマホの電波が通じない事態に陥っているらしい。

 昨日までは問題なく使えていたのに今朝から突然の事だったため、かなり警戒レベルを上げていた矢先にぼくらが着いたのであの事態になった、ということらしい。

 それを差し引いても現在散発的にこの校舎に襲撃を繰り返してる複数の不良グループがいるため、連邦生徒会の車両であってもそうすぐに信用できるものでもなかったらしい。

 

「先生は信頼してるけど、連邦生徒会は正直ね~。いやぁ疲れた疲れた。おじさんに荷物運びは重労働だよ~」

 

「ホシノ先輩私たちと歳ほとんど変わらないでしょ!」

 

 机に突っ伏して眠そうな顔で言うホシノおじさんにそれにツッコミを入れるセリカちゃん。

 

「あ、ホシノおじさん別に年齢層が上ってわけじゃないのね」

 

「ホシノ先輩は3年生で私たちの中では最上級生ってだけですよ~☆」

 

「ほら!ハジメちゃんも勘違いしてるじゃない!紛らわしい事言わないでくださいよホシノ先輩!」

 

「うへ~…おじさんにはみんなの若さは眩しいんだよ~…でもハジメちゃんはおじさんの事、おじさんって呼んでくれるんだね~?」

 

「え?そりゃまぁ、本人からそう呼べって言われましたし…」

 

「真面目だねぇ...」

 

 真面目か?

 本人が希望するならよほどのことがない限りその呼び方をするのが普通だと思うんだけど…。

 まぁおじさんって言う割に可愛い感じの見た目ですよね、ホシノおじさん。

 でも最初に相対した時のあの鋭い視線は滅茶苦茶強そうだったし出来る女って感じだった。

 

「まぁでも確かにおじさんっていうよりはカッコイイお姉さんって感じですよね。ホシノさん、とかの方がいいかな?」

 

「ホシノ先輩が…」

「カッコイイ…お姉さん…?」

 

 セリカちゃんとアヤネちゃんは目をぱちくりさせてぼくの言葉に首を傾げる。

 

「わぁ、ハジメちゃんったら目の付け所がシャープです☆」

「ん、ホシノ先輩はやる時はやる女…」

 

 ノノミさんはぼくの意見にご満悦のようだ。

 シロコちゃんも頷いてる。

 

「うへ、照れるなぁ~。でもおじさんの正体はやる時以外はほとんどやらないおじさんなんだよね~」

 

「まぁ、何事もほどほどに、くらいがいいですよねぇ~」

 

「おぉ、ハジメちゃん話がわかる~」

 

 ホシノおじさんはにへ、とこちらに笑顔を向けてくれる。

 ノノミさんはにこにこ笑顔を浮かべてるし、シロコちゃんもうっすら微笑んでる。

 セリカちゃんははぁ、とため息をついてアヤネちゃんはなんだか苦笑してる。

 

 ここもいいところだなぁ。

 先生が心配する気持ちもわかるわ。

 

「学年と言えばハジメちゃんは何年生なの?制服は見たことないのを着てるけど…」

 

 おっと。

 何年生…何年生になるんだろう?

 セリカちゃんからの問いにぼくは考え込んでしまう。

 勉強とか授業はこの間の補習授業部がはじめてだし…一年生か?

 いやでも年齢不詳だし…そもそも高等部ではない可能性…うーむ…。

 

「セリカちゃ~ん?女の子に年齢を聞くのはセクハラだよ~」

 

「セク…っ!?あ、でも確かにあんまり聞かれたいことじゃなかったかも!?ハジメちゃんごめん、答えにくいなら無理しないでも!」

 

「あ、いや別に。えーとなんていうか、ぼくも自分が何年生になるのかわからなくって…」

 

 ぼくの言葉にきょとんとした顔をむけるセリカちゃんとアヤネちゃん。

 対してシロコちゃん、ノノミさんは真剣な表情に見える。

 ホシノおじさんは眠そうに閉じていた目を片方だけ開けて、その片目は鋭くぼくを射抜いているように見える。

 

「あ、いや…今は編入予定でどっかに入ったら一年生からになるんじゃないかな!?年齢はちょっと記憶がないからわかんないんだけど…あ、やべ」

 

 今言わないでいいことまで言った気がするぅぅぅぅぅ!!!

 いや、大丈夫、ちょっと出ちゃっただけだし聞き流されるって!

 

「編入するところはもう決まってる?」

 

 シロコちゃんが内心慌ててるぼくに質問をしてくる。

 お、これは誤魔化せる流れだな!!

 乗るしかないこのビックウェーブに!!

 

「いや、まだ決まってないけど幸いなことに色々な所からお誘いはいただいてる…かな?」

 

「ハジメさんはハケンで色々な学園のお手伝いに行ってると聞きますがやっぱりその縁で?」

 

 アヤネちゃんのナイスパス。

 よしよし、このまま話の流れを上手く反らすんや!

 

「そうそう、どの学園の子もいい子たちばっかりだし目移りしちゃう。ぼくなんかにはもったいないお誘いばっかだよ~」

 

 …よし、これは完全に流れ変わったな!

 

「ハジメさんはとても優秀でお仕事ができるってシャーレに顔を出したときに他の学園の方も言ってましたもんね」

 

「…あ!柴関ラーメンに来てた便利屋が言ってたハジメってもしかしてハジメちゃんのこと!?」

 

 ハッと思い出したように言うセリカちゃん。

 

「え?便利屋ってアル社長のところの便利屋68?」

 

「そうそう!ライバルなんでしょ?」

 

 そう言われてぼくは先日感じた誇らしさや嬉しさが混ざった胸の熱をまた感じてしまい、照れる。

 

「ら、ライバル、なのかな…その、ハケンのお仕事でたまにかち合うからそれで、勝ったり負けたりすることもあるっていうか…」

 

 自分でライバル、と口にした瞬間なんだか嬉しさと気恥しさが混ざってなんだか落ち着かない。

 

「うふふ、ハジメちゃん可愛いですね~☆」

 

「ハジメちゃんも若いねぇ~。おじさんには眩しいよ~」

 

 妙な評価するのやめてもらっていいっスか!?

 

「もし選ぶのに困ったらうち(アビドス)に来るといい。私も一緒だったから」

 

 おぉ?この短時間の付き合いでぼくにお誘いをくれるのか。

 いい子だなぁシロコちゃん。

 …ん?

 今何かおかしなこと言ってなかったか?

 

「あ~…そうですね、前例がありましたね」

 

「えぇ~?シロコちゃんほど生きの良い子はそうそういないんじゃな~い?」

 

 ノノミさんとホシノおじさんはなんか訳知り顔でそんな事を言い合っている。

 

「んん???あ、でもハジメちゃんがもし編入したら借金返済ももっと捗るわね!」

 

「セリカちゃん…編入の障害になる情報をポロッと漏らすのはやめようね…」

 

 よく理解してないようなセリカちゃんに、ぽろっと本音を出したことを嗜めるアヤネちゃん。

 

「ん、ハジメが優秀なら借金返済も捗るし編入のついでにあのトラックも一緒にもらえば銀行強盗のプランがより現実的なものになる」

 

「シロコちゃ~ん、ステ~イ」

 

「めっ☆ですよ~シロコちゃ~ん?」

 

 シロコちゃんは相変わらず物騒な冗談を言ってて、ホシノおじさんとノノミさんがそれを止めてる。

 …冗談だよね?本当に冗談だよね????

 

「…残念…」

 

 めちゃくちゃ残念そうにしょんぼりしてるぅ!?

 え、もしや冗談ではなかった…?

 

「新メンバーの加入ならちゃんとファウストにも確認を取らないとだね~」

 

「ん、失念してた。あとでヒフミにも確認を取っておく」

 

 冗談じゃなかった!?

 あとなんかすげえ聞き覚えのある名前が聞こえたんだけど!?

 

「シロコちゃ~ん?リーダーの名前はトップシークレットですよ~☆」

 

「ん、確かに覆面水着団の実態はトップシークレット…」

 

 覆面水着団ってなんだよ。(困惑)

 

「…覆面…何?」

 

「わー!わー!!ハジメちゃん!世の中気にしたら負けな事ってあると思うの!!」

 

 なぜかぼくの耳を塞ぎながらよくわからない事を叫ぶセリカちゃん。

 

「いやでもヒフミちゃんって…」

 

「ハジメさんもヒフミさんとお友達なんですか!?私たちもお世話になってるんです!!」

 

 友達…うん、友達。

 友達!

 

「うん!友達!というか補習授業部にちょっと参加させてもらった時にすっごいよくしてもらってね!あ、見てこのSMG!これそのヒフミちゃんが部長をしてる補習授業部の皆がデコってくれたやつなんだ!!」

 

 ぼくは思わずちょうど手元にあったSMG【best Bond】を見せる。

 デコった時に聞いたアレやコレを説明しようとウッキウキのぼく。

 

 

 ビーッ!ビーッ!ビーッ!

 

 

 突如校舎内に鳴り響く警告音。

 

 ハッと顔色を変えるアビドス生徒たち。

 アヤネちゃんが教室の隅にある端末に駆け寄り、声を上げる。

 

「校門にヘルメットをかぶって武装した人影多数、戦車も2台確認!ヘルメット団の襲撃です!」

 

 ぼくは急いで窓際に走り寄り校門の方向を確認する。

 そこにはアヤネちゃんが言った通り、目視で十数人ほどのヘルメットをかぶった不良生徒たちと二台の戦車が校庭に入り込んでいる姿が見えた。

 荷物を降ろした後に昇降口から少し離れた場所に停めたトラックの方を見ると、コンテナの天井に狐坂が足を組んで座っているのが見える。

 愛銃は持っているようだが、昇降口に向かってくるヘルメット団を撃退するような素振りはない。

 見てるだけかい!!

 わかってたけどさぁ!!!

 

「や~れやれ、今日はお客さんが多くておじさん困っちゃうね~」

 

「せっかくハジメちゃんとおしゃべりしてたのに…邪魔をする悪い子はお仕置きしないとですね~」

 

「物資も潤沢…ドローンも準備完了」

 

「ハジメが届けてくれた物資があるからあんな奴ら全員追い返してやるんだから!」

 

「物資には燃料もあったのでいざという時には屋上に移動させておいたヘリで撃退も可能です!」

 

 アビドスの生徒たちは各々戦闘準備を整えて教室の入り口へと向かう。

 ホシノおじさんはくるりと振り向いて、

 

「あまりゆっくりできないでごめんね~ハジメちゃん。多分今なら戦闘のドサクサで脱出できると思うから。物資、本当に助かったよ~。先生にもお礼言っといて~」

 

「校庭に今踏み込んできた集団以外に反応はないので、あの戦車がこちら側に抜けてしまえばトラックで一気に走り抜けて脱出できると思います。ハジメさん!急いで!」

 

 この状況で。

 いくら物資が届いたからって真っ先にぼくを逃がそうとするかね?

 やっぱ基本的に先生に関わった生徒っていい子しかいないんだなぁ。

 

 でもぼくは聞き逃さなかったんだよなぁ。

 

「アヤネちゃん、通信用のイヤホンマイク、すぐに用意できる?」

 

「へ?」

 

「ハジメちゃん~?物資の潤沢なおじさんたちにとってはあんな奴ら余裕だよ~?…それにうち(アビドス)は貧乏だからハジメちゃんへの依頼料も払えないかな~」

 

 驚くアヤネちゃん。

 ホシノおじさんはあえて突き放すような言い方でぼくの行動に断りを入れる。

 このチームと一緒に仕事出来たら楽しそうだから、今まで依頼がなかったのは残念だよなぁ。

 

「…ところがどっこい、実は先生からの依頼は配達だけじゃないんですわぁ。「もし困ってたらちょっと助けてあげてほしい」って言われてるんですよねぇ」

 

「うへ~先生らしい。でもさっきも言ったようにあのくらいなら余裕…」

 

「さっき「困っちゃうな~」って言いましたよね?大丈夫!先生のおごりですよ!!」

 

 ぼくはアヤネちゃんの方を向いて自分の耳を指でとんとん、と叩く。

 アヤネちゃんはぼくとホシノおじさんを交互に見て、ぼくにワイヤレスのイヤホンマイクを渡してくれた。

 

「…もぉ~…おじさんとアヤネちゃんの指示は絶対聞く。おじさんより前に出ない、無茶をしない。わかった?」

 

「りょーかいでっす。あ、ハンドサインとかすぐに確認するような事あります?」

 

 ホシノおじさんは軽くため息をついてぼくの助太刀を受け入れてくれた。

 

「特にないかな~?基本的には声かけでなんとかしてるよ~。しいて言うなら...」

 

「私の声が聞こえたら出来るだけ早く射線を空けてくれると嬉しいです~☆」

 

 ノノミさんが大きなMGを持ち上げてにっこり微笑む。

 なるほど、メイン火力。

 

「私も必要なら声をかけるわ!」

 

「ん、私は基本的に合わせて動くから」

 

 セリカちゃんとシロコちゃんも各々のスタンスを教えてくれる。

 オペレーターとして残ったアヤネちゃんを除いたぼくたち5人は昇降口へと駆ける。

 

「ハジメちゃんからは何か伝えておくことはあるかな~?」

 

「ぼくが今持ってるのはこのSMGとHGなのでフロントでホシノおじさんとセットで遊撃気味に動きますんで、あとは適当に?」

 

「て、適当って大丈夫なの?私せっかく友達になった子にいきなり誤射とかするの気まずいから嫌よ!?」

 

「だいじょ~ぶだよセリカちゃん。こんな状況で適当なんて言葉が出る子はきちんとできる子だからさ」

 

「ん、いつも通りに適当に、だね」

 

 駆ける。駆ける。

 駆ける。

 

 たどり着いた昇降口。

 展開しているヘルメット団十数人。

 2台の戦車の砲塔はすでにこちらを向いている。

 

「それじゃ~みんな、適当にね(最善を尽くそう)~」

 

 ホシノ先輩は盾を構えて前に駆ける。

 そのすぐ後ろをぼくは適度な距離で着いていく。

 

 他の皆も各々のベストポジション(適当)へ。

 

 

 こうして、ヘルメット団VSアビドス廃校対策委員会withぼくの戦いの火ぶたが切られたのだった。




次回、なぜか戦車2台も持ってるヘルメット団VSバランスのいいアビドスパーティ
ファイッ

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