ハケン・ユーティリティ   作:ジョイン君

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彼女の反省


依頼内容:物資の配達、それに伴う配達先での搬入、整理等の軽作業⑤

「ハジメちゃん、次は右ね~」

 

「ハイヨロコンデー」

 

 ホシノおじさんの指示に従ってぼくはSR【sincere Pray】で右方向のキャットウォークからこちらを狙撃した、ホシノおじさんの盾に狙撃を阻まれたオートマタ3体の眉間を撃ち抜く。

 これで見えるところの狙撃兵はほぼ処理できたかな。

 

 正面の歩兵部隊やドローンもアビドスのみんなやスーちゃんたちや後から合流してきた不良生徒たちによってほぼ制圧寸前といったところだ。

 これはぼくも前に出てダメ押しの流れだろう。

 そのままぼくは勢いに任せて前に駆け出そうとして

 

「ハジメちゃん、ダメだよ~?」

 

「いや、その…もう狙撃兵も片付いたことだし」

 

「そうだね~いやぁ百発百中で全部倒してくれておじさん大助かりだよ~。正面の集団ももうおじさんたちが出張るまでもないだろうしゆっくり行こうね~」

 

「…ホシノおじさんはゆっくりしてもろて…ぼくはほら、もう元気なので少しでも早く終わらせるために応援にですね」

 

「ダメ」

 

「…ダメッスか?」

 

「ダメ。この作戦中はもうおじさんと一緒に行動しないとついてきちゃダメってさっき約束したでしょ~?」

 

「はい…」

 

 ダメだった。

 いやぁ、そりゃそういう約束で同行を許してもらいましたし?

 わかってはいるんですがね…?

 

 

 

 

 

 あの後、アビドスのみんなとスーちゃんたち不良生徒はこの工場の執務室にいるであろうチーフと呼ばれるカイザーの職員の身柄を確保するために手を組んだ。

 ちなみにぼくも当然参加するつもりだったんだけどなぜか外で待ってなさいと言われて泣きそうになった。

 いやここまで来てそれはないでしょと。

 流石に後生だから手伝わせてくださいとそれはもう必死に懇願した。

 

 だがホシノおじさんは決して首を縦に振らなかった。

 頼み込んでもダメ。

 縋り付いてもダメ。

 もう何をどう言ってもダメ、ダメ、ダメ!

 

 結局スーちゃんの狙撃だけさせて傍に置いときゃいいだろ、という鶴の一声でホシノおじさんも渋々同行を許してくれた。

 同行の条件はホシノおじさんから離れない、指示された戦闘行為以外はしないというものだった。

 

「もし守ってくれなかったら撃ってでも止めるからね~」

 

 と言われて背筋に冷たい汗が流れる感覚がしたが同行させてもらえるなら是非もなし、ということでそのまま工場内に突入したのだが…。

 

 工場内はそこそこ広い面積で、兵器を生産する用途であろう様々な機械、それを遮蔽物として随所に配置された歩兵集団、壁の高いところに設置されたキャットウォーク足場にはずらりと並んだ狙撃兵たちも見える。

 正面からそのまま入れば狙い撃ちにされるのは必至。

 これは初撃をホシノおじさんに受けてもらってぼくが一気に狙撃兵のところまで突っ込んでヘイトを買ってその間に他の皆に蹴散らしてもらうのが一番効率がいいかな?

 

「じゃあホシノおじさんに初撃を受けてもらってぼくが突撃して狙撃のヘイトを取ってる間に残りの皆で一気に突撃って感じでいいですかね?」

 

 とりあえずぼくがざっと思いついたプランを伝えると、なぜかみんなぼくのことを呆れた目で見つめてくる。

 え、なんすかこの空気。

 

「あ?お前そんなシャレたSR持ってんのに狙撃ヘタクソか?」

 

「スーちゃんひどくない?普通に狙って撃てば当てられるんだけど??????」

 

「いやそれなら普通に狙撃しろよ」

 

「いやここで芋撃ちするなら突っ込んだ方が効率いいじゃん…結構人数いるんだからぼくが遊撃すれば」

「ハジメちゃん」

 

 ぽむ、と肩に手を置かれたので振り向くと、

 

「おじさん、離れるなって言ってハジメちゃんもそれを承諾したと思ったんだけど~…さっきのプラン、何一つ約束を守る気がないって宣言だったりするかな~?」

 

 え、口元だけしか笑ってないやん、こわ。

 ホシノおじさんはまっすぐにぼくの瞳を射抜くように見つめている。

 やだこわい…なんで怒ってるの?

 ぼくは救いを求めて隣のノノミさんに視線を移すと。

 

「悪い子にはお仕置きが必要かもしれないですね~☆」

 

 え、めっちゃ笑顔なのに物騒な事言うじゃん…

 っていうか満面の笑顔なのにコワイ!!

 助けてシロコちゃん!

 

「ん、ハジメはばか」

 

 ばかってなんだよ!!!!!!!

 クッソ辛辣じゃん!!!!

 

「アヤネちゃんの言ってたことがようやく理解できたわ...」

 

 そう言ってセリカちゃんははぁー…とくそでっかいため息ついてる。

 なんでや!!!!

 アヤネちゃんは周辺警戒で雨雲号で上空にいるので助けにならないっていうかそもそも最初にぼくに怒ってたのアヤネちゃんだったわ!!

 逃げ場…逃げ場がない…!

 

 その時、ホシノおじさんがぼくの胸倉を掴んでぐいっと顔を寄せてくる。

 オッドアイの瞳が真っすぐにぼくの瞳を射抜いてる。

 

「ハジメちゃんはおじさんから離れないで相手の狙撃兵を減らすことを最優先、まぁ最悪の場合自衛をすることは認めるけど…今がチャンス!とか言って勝手に前に出たりするのも禁止ね~?…わかった?」

 

「えぇと…こ、高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に」

「わ か っ た ?」

「アッハイ」

 

 ホシノおじさんからの"圧"に屈してこくこくと頷けば、ホシノおじさんはぼくを解放してくれた。

 

「いや~、ハジメちゃんがおじさんのいう事を聞かずに無理やり突っ込んだりする子じゃなくてよかったよ~」

 

 にへら、といつもの眠そうな笑顔に戻ってホシノおじさんはくるりとぼくに背を向けた。

 

「おじさんも友達の背中はあまり撃ちたくないからね~」

 

 さっき言ってたアレ、脅しじゃなくて本気だったんですか!?

 つ、つまり…勝手に前に出たら撃ってでも止める…ってコト!?

 やだこわい、やめてください…(懇願)

 

「それじゃ、まずはおじさんが前に出てヘイトを買うから第一波の攻撃が終わったら残りの皆も突入して各個撃破、ハジメちゃんは狙撃兵の処理ね。そっちの子たちもそれでいい~?」

 

「おう、問題ねぇ」

 

 ホシノおじさんの問いにスーちゃんはロケットランチャーを担いで頷く。

 

「おっけ~、それじゃ適当に終わらせてハジメちゃんの奢りのラーメンさっさと行こう~」

 

「えっ」

 

「あー、まぁ…妥当なトコだろな」

 

 何がどう妥当???????????

 

「うへ、わかってくれる~?」

「コイツ頭おかしいからな」

 

 ひどくない?????????????

 

 

 

 

 

 というわけでぼくはホシノおじさんの指示で言われた場所の狙撃兵を淡々と撃ち抜いていたのだった。

 

 いや実際すごいね、ホシノおじさん。

 盾で射撃を受けた瞬間に狙撃兵の方向を指示して、言われた通りにその場の狙撃兵を倒せば他の皆が一気に前に出れるようになるんだから。

 よく見てるし、とにかく指示や動きが的確だ。

 

 

 

 そして工場内の殲滅もあらかた終わったぼくたちは執務室前にたどり着いた。

 

 皆で頷き合って、ホシノおじさんが一気に扉を開け放つ。

 

「ここまで来たか…道理も知らぬガキどもが…」

 

 室内にはスーツを着た大人が執務用の大きな机に肘を立てて、両手を組み合わせて座っていた。

 

「自治区内を突然封鎖して襲撃までかけてきたりするような道理も知らない大人に言われてもね~」

「依頼をしたくせに突然それを踏み倒してくるようなヤツが道理とか笑わせるぜ」

 

 ホシノおじさんは眠そうな顔をして、スーちゃんは思いっきり睨みつけながら今も机に座っている大人、チーフへと言い返す。

 

「じゃ、アヤネ生徒会長(予定)、よろしくね~。」

『もう、ホシノ先輩はまたそんな事を…こほん、アビドス廃校対策委員会所属、奥空アヤネです。今回の一件はアビドス自治区へ対する明確な侵略行為です。私たちはアビドス高等学校に認められた正式な自治権によって今回の件は連邦生徒会を通してカイザーコーポレーションへと正式に抗議します!』

 

 ホシノおじさんが手元の端末を操作して現れた、中空に浮かぶホログラムディスプレイにアヤネちゃんの顔が表示され、通信越しにチーフへと正式な抗議を行う。

 これは雨雲号の方にも記録され、後日正式に連邦生徒会へと提出されるのだろう。

 

「クククク…正式な自治権…本当に哀れで無知なガキどもだ」

 

『…おっしゃっている意味がわかりませんが。先日にカイザーPMCが行った一件でシャーレを通じて私たちアビドス高等学校の生徒には正式に連邦生徒会からアビドスの自治権を委譲されています』

 

「その通り、アビドス高等学校は現在アビドス自治区の自治権を持っている…だがそのアビドス高等学校の土地権利書を我らカイザーコーポレーションが所有しているとしたら…どうなるかね?」

 

 …?

 どうもならんのでは????

 

「一人か二人残してこちらに来るかと想定していたがまさか全員が雁首揃えてここまで来てくれるとは…ガキどもは後先考えずに動くので思ったより事はスムーズに運びそうで結構!今頃貴様らの校舎には私が放った別動隊が侵入しあの校舎の土地権利書や連邦生徒会発行の自治権委任書に至るまでの公式な書類を手にしていることだろうさ!それさえこちらで押さえてしまえばカイザーの権力でどうとでも出来る!これが大人の戦い方というものだガキどもめ!!」

 

 ??????????

 え、それを全力で自白してるのはなんでなの?

 これ、今言ってることも全部録音されてますよね????????

 

『えぇっと…』

 

ダァンッッッッッ!!!

 

「ぎゃっっっっっ!!!!!」

 

 情けない声をあげてチーフは座っていた椅子ごと後ろに倒れこむ。

 はぁ、とため息をついたホシノおじさんはチーフへと撃ち放った【Eye of Horus】の銃口を下げ、地面に向ける。

 

 シロコちゃんが駆け寄って机の向こうを覗き込み、

 

「ん、気絶してる」

 

 そう言って肩に提げていた鞄から縄を取り出し手早くチーフを縛り上げていく。

 …いやほんとに手早いな!?

 え、何かそういう技能をお持ちでいらっしゃる????????

 

「アヤネちゃん、帰る準備しておいて~」

『わ、わかりました…入り口付近で着陸してすぐに出発できるようにしておきますね』

 

 アヤネちゃんとの通信が切れる。

 ホシノおじさんは盾を鞄に収納しながら、シロコちゃんとセリカちゃんを見てからぼくを指差して、

 

「確保」

 

 ホシノおじさんの言葉にぼくはセリカちゃんとシロコちゃんに両腕を拘束されてしまった!!

 

「えっ、何これは」

 

 ぼくが当然の疑問を抱くがアビドスの皆は誰も答えてくれず、そのままぼくは入り口へと引きずられていく。

 

「は~…ばかばかし。みんな、帰るよ~」

「人騒がせな話でしたね~…」

「ん、何やりたかったのか意味不明」

「あ、ハジメちゃんはアヤネちゃんに絶対に連れてくるように言われてるから強制連行よ」

 

 疲れた雰囲気で、わめくチーフを放置して帰路につくアビドスの皆。

 入口で足を止めたホシノおじさんがスーちゃんの方を振り向く。

 

「あ、終わったらウチの校舎まで来てよ。おじさんたちはちょっと空き巣を処理しないとだからさ~」

「お、おう…なんつーか、悪かったな」

「まぁ、思うところがないわけでもないけど…今回はお互い被害者ってことで。おじさんたちの分までしっかりヤキ(・・)入れておいてよ~」

「あァ、そりゃアタシらの得意分野だ…んじゃまた後でな」

 

 よろしくね~、とひらひら手を振ってまた歩き出すホシノおじさん。

 それに追従するようにノノミさんが続き、その後ろをぼくの両腕をそれぞれ抱えたセリカちゃんとシロコちゃんが続く。

 

「…あの、ぼく普通についていくので離してもらえません?」

 

「ダメ」

「ダメですね~」

「だめ」

「ダメよ」

 

「そんなー(´・ω・`)」

 

 こうしてぼくはそのままアビドスの皆に引きずられて雨雲号とアヤネちゃんの元へと出荷されるのだった…。

 

 

 

 

 

「アビドス校舎方面から煙が上がってます…!」

 

「うへ~…空き巣だけじゃ飽き足らず放火までしていったの?無駄に面倒ばっかり大きくしてくれるなぁ~…」

 

 雨雲号に乗ってアビドス上空を移動するぼくたち。

 操縦者のアヤネちゃんの言葉にホシノおじさんは心底面倒くさそうにため息をついている。

 

「面倒じゃすまないじゃない!?ただでさえここ何日かの襲撃で色々なところにガタがきてたっていうのに…」

 

「セリカちゃん、落ち着きましょう~?」

 

「これが落ち着いてられますか!?修繕費用だってタダじゃないのに…!そうだ!この間SNSのDMで簡単にはじめられる副業の紹介が知らないアカウントから来てたの!これをみんなではじめれば!」

 

「確かに修繕費用もタダじゃない。これはもうカイザーに関係する施設を襲って補填すべき」

 

 暴走を始めたセリカちゃんをノノミさんが宥めるも、セリカちゃんは止まらない。

 シロコちゃんはシロコちゃんでなんか物騒な解決手段を提案してるし。

 

「…セリカちゃん、それは最近よくある高額商材を売りつけてお金をだまし取る詐欺だよ…」

 

「えっ!?でもSNSアカウントで毎日ちょっと作業するだけで毎日安定して数千円稼げるって…」

 

「セリカちゃんのいつものやつはスルーで~、シロコちゃんも気持ちはわかるけど落ち着いてね~。今回の件はあのチーフとかいう大人のやり方があまりにも杜撰だったから、きちんと連邦生徒会に報告をあげれば形はどうあれそれなりの賠償金がきちんと下りると思うからそれを補填にあてればいいんじゃないかな~。は~よっこいせ…」

 

 掛け声と共に、ぼくの膝にホシノおじさんの頭が乗せられた。

 

「あの~…」

 

「おぉ?ハジメちゃんの膝枕、結構寝心地いいねぇ~?むっちりしてておじさんにちょうどいい質感だねぇ~」

 

 むっちりしてとか言うのやめてもらっていい?

 いや、そうじゃなくて。

 

「あの~、えっと、アビドスの皆様…その…なんでぼく、縛られて正座させられてるんですかね…?」

 

 そう、ぼくは今雨雲号の床に敷かれた座布団の上に正座させられている。

 ご丁寧に上半身はあのシロコちゃんの手際が良すぎる捕縛術でしっかりぐるぐる巻きにされている。

 

「ん、ハジメの上半身は起伏がなかったから縛りやすかった」

 

「ころちゅ」

 

「ホシノ先輩、もう少しそっち側に寄って…ん、確かにあの平たい上半身に対して下半身はしっかりと詰まってる。これはいい寝心地だね」

 

「でしょ~?」

 

 誰がナイチチデカシリだ!!!!!

 しまいにゃ泣くぞ!!!!

 というかぼくの疑問はスルーですか!!!!!!!!!

 

「これは無茶をしたハジメちゃんへのお仕置きだからですよ~☆」

 

 ぎゅむっ、と正座をしているぼくの後ろから抱き着いてくるノノミさん。

 クッソ柔らかい物体が背中に押し付けられてるんですけど、これってぼくに対する当てつけっすかねぇ!?

 

「あら?あの煙…校舎からじゃなくて校庭から上ってない?」

 

 ぼくがひどい辱めを受けていたその時、ヘリの前面から双眼鏡で校舎の方を見ていたセリカちゃんが声を上げる。

 

「セリカちゃん、屋上のヘリポートは普通に着陸できそう?」

 

「えーっと…うん、煙は校舎から上ってる箇所は見えないから大丈夫そう…近づいてきてだいぶ見えるようになってきたわね…えーっとオートマタにカイザーの職員に…戦車とかヘリとかドローンの残骸まで見えるわよ!?別動隊って相当な規模だったんじゃない!?」

 

 アヤネちゃんの問いにセリカちゃんは双眼鏡を覗きながら返答している。

 

「思ったよりもしっかり襲撃を画策してたんですね…でもそれなら一体誰が迎撃を…」

 

「まぁ、とりあえず大丈夫そうなら今は気にしないでいいんじゃないかな~?とりあえず屋上に着陸して、校庭に行ってみよ~」

 

「そうですね…もう間もなく到着します!」

 

 なおこの会話中にぼくはノノミさんには立派なおもちを押し付けられてなんか頭撫でられてるしホシノおじさんはめっちゃ寝返りしまくってごろごろしてるしシロコちゃんはぼくのふとももに寝そべりながら一生むにむに掴んで質感を確認してる。

 なんだこれは。

 地獄か?

 いや美人さんに囲まれて好き放題されてるこの状況は逆に天国だったりするのか?

 

 あっ、ノノミさん顎下くすぐるのやめて、耳元こしょこしょしないで、ぼくそこよわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 破壊された残骸がそこかしこに広がるアビドス高校の校庭。

 その惨劇の中央、まだ燃えている戦車や車両に囲まれた中で、完全に破壊しつくされ、辛うじて戦車であったとわかる鉄の塊と化したソレに腰掛け膝を組む狐面の少女。

 

「…遅すぎる。この程度の数しか能のない塵芥しか用意できない虫どもを駆除するのにどれだけ時間をかけているのですか」

 

 ひらりと残骸から飛び降りて辛辣な言葉を吐き出す狐坂。

 

「…随分と無様な姿ですこと…いえ、あなたにはお似合いの姿かもしれませんわね」

 

 そう言って狐坂は鼻で笑いやがった。

 …ちなみに現在、ぼくは縛られた状態のままノノミさんに抱きかかえられてこの場まで運ばれてそのままぬいぐるみを抱く少女のような様相でノノミさんに抱き上げられている。

 すっげえフィジカル、確かにぼくよりノノミさんの方が身長高いけどさぁ。

 え?普段から携行してる【リトルマシンガンⅤ】に比べたら軽い?そっかぁ…。

 

「狐坂ー、へるぷー」

 

「車はどうしたのです?」

 

「無視かい。あートラックはその…いい奴だったよ…」

 

 明後日の方向を見つめながらトラックくんの最後の雄姿を告げるぼく。

 アビドスのみんなの視線が妙に痛い気がするんだけど、なんでやろなぁ…(すっとぼけ)

 

「あのトラックなら敵陣に突っ込むのに使ってそのまま反撃で爆発炎上した」

 

 シロコちゃん!?

 

「それで敵からの反撃で本人もその爆風でぽ~んって飛んできたよ~。あれはおじさんも肝を冷やしたなぁ」

 

 ホシノおじさん!?

 

「せめて前もって相談してくれればまだやりようがあったっていうのに…突然私たちの横をそのまま突っ込んでいったからね…」

「セリカちゃんたちの位置は教えておいたのにそのまま突っ込んでいくなんて私も想定してなくて…」

 

 セリカちゃんとアヤネちゃんまで!?

 

「そういうわけで今はこうしてお仕置き中なんです~☆」

 

 ぎゅーとなぜか余計に強く抱きしめてくるノノミさん。

 

「…なるほど、いつもの馬鹿ですか」

 

「ん、はじめはばか」

 

「ひどくない?」

 

 ぼくの怨嗟の呟きもまるっとスルーして狐坂は校門の方へと踵を返して歩き出す。

 

「馬鹿には付き合ってられません…車もないならここで無駄に待つ必要もありませんでした。私は一足先に先生の元へ戻ります」

 

「ありゃ?忙しないねぇ~。でも校舎を守ってくれて助かっちゃった。ありがとね~狐ちゃん」

 

「その馬鹿を待つ間に拝借した茶菓子の分です、礼には及びません」

 

 そう言って狐坂はそのままこちらを振り向きもせずに去っていった。

 …本当に一度も振り向きもしなかったぞアイツ!!!

 

「さて、おじさんたちも中に戻ろっか?ハジメちゃんにはお説教もしないとだからね~」

 

「えっ」

 

 お説教?なんで?今ぼく絶賛お仕置き受けてると思うんですが?????????

 

「あっ、ハジメちゃんもしかしてお仕置き受けてるからってそれで済むと思ってる?」

 

「お仕置きとお説教は別ですよ~?」

 

「ん、ハジメは浅はか」

 

 セリカちゃんが呆れ顔で、ノノミさんが恐ろしい事を、シロコちゃんが辛辣なことを言う。

 いやシロコちゃんさっきからぼくに対してなんかめっちゃ雑に辛辣じゃない!?

 

「ハジメさん…いえ、ハジメちゃん。教室に戻ったらきちんとお話させていただきますからね…?」

 

 アヤネちゃんがこれ以上ない笑顔でぼくに告げる。

 あっ、あのメガネの光り方はヤバい。

 あれはただでは済まされない光り方だ…ぼくもメガネっ娘だから詳しいんだ!!

 

 こうしてぼくはノノミさんに運ばれたまま教室まで運ばれ、また正座をさせられてアヤネちゃんだけではなくアビドスのみんなからぼく自身の身を顧みない事によるみんなへの心への影響とか報連相の大切さとかをじっくりたっぷりとお説教された…。

 夕方くらいからはじまったお説教は暗くなるまで続いて、流石にぼくも反省しました…。

 というか途中からいつの間にか合流していたスーちゃんとそのお友達にも結構刺さる事言われて余計へこんだ。

 そうだよね、君たち不良生徒はそういう立場だからこそ友達意識強いよね…うん…。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~食べた食べた。ハジメちゃん、ご馳走様~」

 

「ははは…ウッス、お粗末様です…」

 

 あの後、約束通り柴関ラーメンへと繰り出したぼくたちはそれはもう飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。

 それはもう食べて食べて食べまくった。

 主にスーちゃんたちスケバン4人組が!!!!!

 あの子たち確かになんでもいいって言ったけどラーメンに餃子はまだしもチャーハンに唐揚げに春巻きまで頼んでしかもアイスも頼んでやがった!!!

 ってかスーちゃんが一番デザート頼んでたわ!!ほぼコンプしてたし!!ツッパってても甘い物は美味しいか!!女の子だもんな!!!!!!!

 

 途中でなぜかビンゴ大会が始まった時はなんでやねんって思ってたけどなんかみんなノリノリで参加してるし。

 

 …楽しかったなぁ。

 

 …お財布、軽くなったなぁ…(遠い目)

 

「それじゃ、おじさんたちは帰るね~。またいつでも遊びにおいで~、と言ってもな~んにもないけどね、アビドスには」

 

 眠そうな顔でお腹を抑えながらそんなことを言うホシノおじさん。

 あのお説教の場で多分一番ぼくに真剣に怒ってくれた人。

 

「逆に何も考えずにゆっくりしたい時とかはちょうどいいかもしれませんよ~?」

 

 小首をかしげてそんなことを言うノノミさん。

 多分ぼくを一番心配してくれた人。

 

「いやアビドスだって探せばほら…柴関ラーメンとかあるから!!」

 

 まさに今最高の時間を過ごした場所を言うセリカちゃん。

 多分ぼくを一番かばってくれた人。

 きちんと悪い事をしたから反省もしなさいと言ってくれたが。

 

「うーん、ハジメちゃんは機器の補修作業なんかもできると言ってましたしそういう校内の作業なら今後は依頼としてお願いしてもいいかもしれませんね…後回しにしている部分も結構ありますし…」

 

 お仕事のお誘いをしてくれるのはアヤネちゃん。

 多分ぼくに一番言葉を送ってくれた人。

 呼び方もお説教の時からちゃん付けにしてくれた。

 

「ん、ツーリング用にハジメの装備一式は明日にでも用意しておく」

 

 気の早い事を言うのはシロコちゃん。

 多分ぼくに一番辛辣だった人。

 ぼくがした言い訳は全部「ばか」と切って捨ててきやがった。

 …ぼくがどれだけばかだったかを非常によくわからされた。

 

「えーと…ほんと今日はお騒がせしました…」

 

「うんうん、反省できるのは若さだねぇ~。もしまた同じようなことをするようだったらおじさんたちが殴ってでも止めに行くからね~?」

 

 ホシノおじさんは茶化すように言うが目が笑ってない。

 ノノミさんも、シロコちゃんも、セリカちゃんも、アヤネちゃんも。

 みんな真剣な目でこちらをじっと見つめてる。

 

「…わかってます、ほんとじゅーぶん、わかりました…友達が痛そうなのはヤダし、それを止めるために友達に嫌な思いをさせて自分を殴らせるのもヤダし…もっと自分を大事にします…友達のためにも」

 

 ぼくの答えにアビドスのみんなは笑顔で頷いてくれた。

 いやぁ、ほんと。

 なんでこんな簡単な事に気づかなかったんだろうね。

 ぼくが無茶をするとぼくを友達だと思ってるみんながぼくより傷つくとかさ。

 逆の立場だったらぼくだって傷つくじゃんねぇ?

 そしてそれに気づかず突っ走ってたのがぼくであったわけで。

 

 狐坂の言う通り、ぼくってば正しく愚者だったなぁ…って反省しました…。

 

 

 

 アビドスのみんなを見送って。

 

「あれ、スーちゃん待っててくれたん?」

 

「流石に奢らせておいてなんも言わずに帰ったりしねぇよ。オイ」

 

 スーちゃんは一緒に待っていた3人に声をかけ、

 

「ハジメさん!ゴチになりやした!」

「めっちゃ美味かったっす!ハジメさんの金で腹イッパイ食うの最高でした!」

「ここのアイス他の店よりは安かったけどそれでもコスパ悪かったっすね!でも杏仁豆腐最高でした!!」

 

 うんうん、おおむね満足してくれたようだ。

 とりあえず3人目の子、やっぱアクが強くない?

 

「まぁ君らのはぼくが掲示した正当な報酬だしねぇ。満足してくれたなら何よりだよ」

 

「おう、マジで味は最高だったわ。普通に通ってもいい候補になるくらいな」

 

「スーちゃんめっちゃデザート食ってたもんね」

「一個ずつ頼んで誤魔化してたけど結局フルコンプしたもんね」

「スイーツめっちゃ好きなのに普段あんま食えないからってここぞとばかりに全力だったもんね」

 

「うるせぇ!甘いモンは心が豊かになンだよ!!!っつーかアタシが甘いモン好きで何が悪いってンだよ!!しばくぞ!!」

 

 怒鳴るスーちゃんにわーっと逃げていく3人。

 スーちゃんたちはお説教されてるぼくを見て最初は指差して笑ってたんだけど、ぼくが自分を顧みなさ過ぎて途中からドン引きしてた。

 彼女たちのその反応はある意味で非常にぼくにもわかりやすいもので。

 やられたらやり返す。それは自分だけでなく友達も含めてだってことだ。

 不良生徒なんてやってる彼女たちだが、彼女たちなりの美学や矜持があるってことだ。

 

 

 

「チッ、んじゃアタシらはフケっ(帰る)ぞ」

 

「ほいほい。今日は助かったよ、また今度ご飯でも食べよー」

 

「あァ?必要以上に馴れ合うつもりはねぇよ。そもそもオメーとアタシらじゃ会う時ゃほぼ鉄火場で敵同士だろォがよ」

 

「そっかぁ…あ、連絡先の交換とか…」

 

「するかボケ」

 

 短く答えてスーちゃんはそのままぼくに背を向けて歩き出してしまう。

 んー、ちょっと残念。

 少なくともスーちゃんたちはぼくは結構嫌いじゃないんだけどな。

 

 少し名残惜しさを感じながら歩いていくスーちゃんの背中を眺めていると。

 

 

 

 

「おいハジメ(・・・)。次()る時はぜってーぶちのめす」

 

「…っ!!スーちゃんこそ、次にお仕事で会っても手加減してあげられないからねっ!」

 

「言ってろバーカ。そもそも手加減なんぞしたことねぇだろテメーは」

 

 そう言いながらぼくに中指を突き立てつつそのまま歩き去っていくスーちゃん。

 あらやだ、はしたなくってよ。

 

 ま、こういう関係も悪くない、か…。

 最終的にぼくのスーちゃん呼びを訂正せずにハジメと呼んだ。

 つまりそういう事(喧嘩友達)だろう。

 

 

 

 スーちゃんとその友達が合流して曲がり角を曲がって見えなくなったのを確認して、ぼくも駅へと歩き出す。

 

 しっかし…周りのためにも自分を大事にしろ、かぁ。

 これはちょっと、そもそもぼくの戦闘スタイルから見直す必要があるのではなかろうか。

 

 何しろこれまでは体力差に余裕があるから昇竜一回パナしとこ、とか。

 このままだと負けるからいちかばちかで昇竜パナしとこ、みたいな部分あったしな…。

 

 とりあえずキヴォトスのつよつよ生徒たちの皆に色々相談したりしてみるかぁ…。

 

 …あと、多分ぼくがそういう戦闘スタイルだってみんな気づいてるよなぁ…。

 道理で最近意識を落とされて終了する模擬戦が多いわけだ。

 気絶させなきゃ止まらないもんな!ちょっとくらい当たってもヘーキヘーキ!*1で突っ込み続ける…うん、ちょっと引くわ...。

 

 …相談ついでにみんなに一応謝っとこ…、うん…

 

 

 

 

 

 

 こうしてぼくはやらかし続けてた過去の自分と軽くなったサイフに心を苛まれながらシャーレへと帰るのだった。 

 

 

 …トラックの件、マジどうしよ…。

*1
普通に痛い




トラックの件はシャーレの先生がなんとかしてくれました。
なお、トラックで突っ込んだ件はワカモからしっかりと報告をされており、大好きな先生からその件についてこってり絞られて二重の意味でへこんだ模様。
ちなみにご飯代は実は柴大将の心意気でかなりお安くしてくれてたりする。柴大将は神的にいい犬だから。

アビドス編、これにて終了です。
やっと一般的なメンタルと行動になりましたね!ハジメちゃん!!

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