ハケン・ユーティリティ   作:ジョイン君

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彼女への在り方


とあるラーメン奢られ隊の人間模様

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「オラッオラッオラァァァァッ!!」

 

「…っ!!」

 

 ガギン、ガギン、と

 

 銃撃戦で響くような音ではない重い金属を撃ち鳴らす音が倉庫内に響く。

 

 スザンヌは力任せにハルカに肉薄をしてRLの銃身の質量でハルカを追い詰めていく。

 対するハルカは愛銃の【ブローアウェイ】でいなし、体の流れたスザンヌへと、

 

「…ごっ…!」

 

 鳩尾に銃床を叩き込み、たまらず下がったスザンヌの頭に【ブローアウェイ】を突きつけるハルカ。

 

「アル様の仕事はこの倉庫にあるトランクの回収です、トランクはどこですか?」

 

「ハッ!!どこだと聞かれてそんなにあっさりと答えるヤツが…」

 

 ズガァァァァン!!!

 

 スザンヌが言葉を言い切る前にハルカの【ブローアウェイ】が火を噴く。

 至近距離から放たれた散弾の衝撃にスザンヌはそのまま地面に叩きつけられるように後頭部から倒れ伏す。

 

「そうですか、死んでください」

 

 ズガァァァァン!!!

 

 仰向けに倒れたスザンヌへ向け、ハルカは【ブローアウェイ】を発砲する。

 

「アル様の邪魔をする人は死んでください」

 

 ズガァァァァン!!!

 

「死んでください、死んでください、死んでください!」

 

 ズガァァァァン!!!ズガァァァァン!!!ズガァァァァン!!!

 

 情けも容赦もない散弾の嵐。

 スザンヌは飛んだまま戻ってこれなくなりそうな意識を必死につなぎ止め耐えるが、反撃の糸口はまるで見えない。

 

(なんなんだコイツ…やべぇヤツと当たっちまったな…)

 

 呪詛のような言葉を吐きながら構えていたSG(ショットガン)を撃ち尽くしたハルカがスザンヌから目を離さずにリロードを始める姿を眺めながら、スザンヌはそんなことをぼんやりと考える。

 

「ハルカ!」

 

「あ、社長!障害は排除しました!!」

 

 倉庫の入り口の方からかけられた声にハルカはくるりと振り向き笑顔で答える。

 スザンヌはチャンスだ、と思うも散々に撃ちこまれた散弾によるダメージは大きく、体がまるでいう事を聞かない。

 

「えぇ、こちらもスナイパーは処理できたわ。カヨコも問題なく対処して今はムツキの様子を見に行ってもらっているけれど…あちらも戦闘は終了してるみたいね。不意打ちに即座に対応してみせたのは素晴らしいわ、ハルカ」

 

(あれだけ散弾ぶち込まれりゃこうもなるか…クソが、近接攻撃で不意打ちかましたのに飛び込んできたこいつに全部いなされたのがな…)

 

 スザンヌはなんとか自分の体に力を入れる。

 相手の投げ込んできた爆弾の爆発に乗じて先制攻撃を仕掛けたのに完全に対応をされ、手痛い反撃を受けてしまったが、幸い不意打ちに鈍器として使用したRL(ロケットランチャー)はまだ発砲しておらず弾は装填され、自分の手元に転がっている。

 スザンヌから視線を逸らしたハルカにぶちかましてやればひとたまりもないだろう。

 どうにかしてコイツをぶちこんでからサブウェポンとして背中に担いでいるSGを至近距離からぶちかませれば勝機はある。

 そう思いスザンヌはRLへと手を伸ばし、

 

「は、はい!!アル様にお褒めいただけて光栄の極みです!!そ、それにハジメさんと相対した時に比べれば全然大したことなかったですし…」

 

(…は?)

 

「あら、ハジメと比べるのはさすがに可哀想じゃない?あの子は私たち便利屋68の最高のライバルなんだから!」

 

「おい」

 

 気づけばスザンヌは立ち上がっていた。

 先ほどまで鉛のように重く感じていた体は今では重さを感じることもなく。

 

「銀髪鬼に比べたら大したことがねぇ?比べるのが可哀想?言ってくれるじゃねえかよぉ、えぇ…?」

 

 スザンヌはゆっくりと歩き出す。

 RLを肩に担ぎ、左手にはSGを携えて。

 

「…あなたこそ、私たちの友達(好敵手)に随分な呼び方をしてくれるじゃない?どこの誰とも知らない不良生徒があの子をそんな風に呼んでるの、とても不快だわ」

 

 ズダァァァン!

 

 アルのその言葉と共に【ワインレッド・アドマイアー】から放たれた銃弾がスザンヌの眉間を正確に撃ち貫く。

 眉間を撃たれたスザンヌはその勢いで思いっきり反りをしたように体を仰け反らせる。

 が、倒れない。

 

「どこの誰とも知らないねぇ…気にいらねぇなァ…気に入らねぇよ!!!」

 

 前を向いたスザンヌの表情は憤怒に染まっている。

 額から流れる血はそのまま顔を上から下へと伝っており、まるで悪鬼のような表情にさえ見える。

 

「テメェらのことは散々銀髪鬼(あのバカ)から聞いたわ!生半可な事じゃ止まらねえ重戦車伊草ハルカ!何をしてくるかわからねえトリックスター浅黄ムツキ!恐怖を振りまく冷徹な参謀鬼方カヨコ!そしてそんなヤベェ奴らをまとめあげる圧倒的なカリスマ陸八魔アル!!あの銀髪鬼が認める最高のアウトロー集団便利屋68!!気に入らねぇンだよォ!!!!」

 

 倉庫中に響き渡る大音量の叫び。

 

銀髪鬼(アイツ)を倒すのはお前ら便利屋なんかじゃねぇ!!このアタシだ!この淡路島スザンヌだ!!だからアタシはァ!!淡路島スザンヌは!!!!便利屋68(テメぇら)には絶対ェ負けるわけにはいかねぇンだよぉぉぉぉ!!!!」

 

 スザンヌの魂の咆哮と共にRLが天井に向かって放たれる。

 

ズッガァァァァァァン!!!!!

 

「えっ、ちょ!?」

「アル様!」

「アル!!」

 

 スザンヌのRLから放たれたRPG弾頭は天井へと吸い込まれていき

 

「きゃーーーーーーっっ!!!!????」

 

 轟音と共にアルとハルカの頭上へと瓦礫が降り注いだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何なのよぉ…!!!」

 

 降り注ぐ瓦礫からなんとか距離をとって難を逃れたアルは肩で息をしながらそんな言葉を漏らす。

 

「社長、無事?」

 

 アルが顔を上げるとそこには急いで駆けつけたのであろう、こちらも肩で息をしているカヨコが手を差し伸べた。

 

「ハァ、ハァ…なんとかね…まさかあんな手段に出るなんて…美食研究会じゃあるまいし…」

 

「特に瓦礫に巻き込まれたりもしてないみたいでよかった。それにしてもよく通る声だったね。ハジメも厄介なファンがいたもんだ」

 

 カヨコの手を取り立ち上がるアル。

 

「厄介どころじゃないわよ!まったくあの子は妙なところで妙な縁を結ぶんだから…!!」

 

「アル様ー!!ご無事ですかー!!」

 

 その時、うず高く積みあがった瓦礫の向こう側からハルカの声が届く。

 

「ハルカー!!こっちは無事よー!あと、仕事中は社長って呼びなさいー!!」

 

「す、すみませんすみません!ご無事で何よりです社長!!」

 

「えぇ!ただ瓦礫がかなり詰みあがってて不安定だから迂回してそっちに向かうわ!!ハルカは問題ない!?」

 

「…はい!何も問題ありません!こちらは掃除(・・)しておきますので社長たちはゆっくりとお越しください!!それでは!!!」

 

 ハルカからの返答を聞きアルは首を傾げる。

 

「…掃除?」

 

「…ハルカの方には淡路島スザンヌがいるってことでしょ。ハルカなら万が一もないと思うけど、私たちも早めに迂回しよう」

 

「えぇ、わかったわ!…そういえばムツキは?」

 

「今は淡路島スザンヌの方が優先。別に怪我したりしてるわけじゃないから後回しでいいよ。根性に文字通り足を掬われてる最中だから」

 

「いったいどういうことよ!?」

 

 カヨコはアルの疑問をスルーして瓦礫の山を迂回するルートを探し始めた。

 アルは疑問を持ちながらもハルカと合流するためにカヨコと共に行動を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お話は終わったかァ?伊草ハルカよぅ…」

 

 肩に担いでいたRLをその場に落とし、スザンヌが問う。

 振り向いたハルカは無言で【ブローアウェイ】を構える。

 

「お前の話は特に聞いてるよ…タフでセンスがよくて勘もいい、一番相手にしたくねぇタイプだってなぁ…だったらよぉ…テメェに勝てなきゃ話は始まんねぇよなぁ!あァ!?」

 

「…許さない」

 

「…あァ?」

 

 悪鬼のような笑顔を浮かべて吠えるスザンヌに一言だけ返すハルカ。

 その表情はすべてを射殺すような獰猛な獣のようで。

 

「一度倒れたのにすぐに立ち上がって邪魔をしたのもアル様を危険に晒したのも…ハジメさんを目の敵にしているのも!許さない許さない許さない!!」

 

 スザンヌが駆け出す。

 ハルカが駆け出す。

 お互いが持っている得物がSGであるとは言え、そんなことは関係ないと言うように、お互いが真っすぐ最短距離で相手へと突き進む。

 

「ハジメさんは便利屋68のライバルです!アル様の好敵手です!…私の(お友達)です!!!あなたなんかの敵じゃない!!」

「銀髪鬼はアタシの敵だ!アタシの好敵手だ!淡路島スザンヌの獲物(喧嘩友達)だ!!そもそもなァ!!」

 

 超至近距離(クロスレンジ)

 

 ハルカが銃を振りかぶる(・・・・・)

 スザンヌが銃を振りかぶる(・・・・・)

 

 

 

「誰がそこ(ハジメの敵)にいていいと言ったんですか!?」

「誰がテメェに許しを請うた!?」

 

 

 

 お互いの譲れないモノのため。

 伊草ハルカと淡路島スザンヌの喧嘩の火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~あ、もうお空明るくなってるじゃん」

 

 上を見上げれば目に入る青空。

 横でいびきをかいているバンビの頬をつんつんとつつきながらムツキはそう独り言ちる。

 スザンヌが天井を撃ち抜いたあの時。

 これはマズいとなんとかバンビからの拘束を解いたムツキだったが瓦礫に潰されぬように避難をしようと思った時、倒れたままのバンビを置いていく気になれず、そのまま引き摺って二人で退避していた。

 瓦礫の影響がなさそうな場所まで避難をしたがなぜかそのままバンビを置いていく気にもならずに隣に座っている。

 

 何より、足一本分負けてしまった自分がアレ(・・)に混ざるのもなんだか無粋に感じたというのもある。

 

 

「ああああああぁぁぁぁ!!!!」

「ウラァァァァァァアあああああ!!!」

 

 アレ、というのはアレである。

 今少し離れた場所でハルカとスザンヌがお互いに雄たけびを上げながらがっぷり手四つでなぜか交互に頭突きを繰り出しあっているアレである。

 ムツキがここまで避難をした時はまだキヴォトスの生徒らしくお互い散弾銃で撃ちあっていた。

 

 ムツキも加勢をしようかな、と迷っていると、二人の銃からはガキン、と弾切れを伝える音が響く。

 同時に弾切れなんてなかなか珍しいな、と思いながら様子を見ていると、ハルカが強い衝撃を額に受け、【ブローアウェイ】を取り落とす。

 

 スザンヌが自分の銃をハルカへと投げつけたのだ。

 リロードをしようと視線を切った瞬間だった。

 ハルカはもろにその投擲を受け、そのまま走ってきたスザンヌの拳を受けた。

 

 そのまま畳みかけようとしたスザンヌに対しハルカもその拳で対抗。

 

 お互いがお互いを殴り合う原始的な戦いをはじめてしまった。

 

 なんだろう、こう、世界観違わない?女の子としてどうなのかな?と思わないでもない意地の張り合いが続き、お互いが荒い息をついて足元がふらついているように見える状態になり…

 

 そしてお互いがお互いの手を封じるように握り合って、手四つ。

 そして今は交互に頭突きをし合っている。

 

「あれ絶対ハジメちゃんの悪い影響だよねぇ...」

 

「ムツキ!無事だったのね!」

「あれ、足は抜けたんだ」

 

 そんな血なまぐさい泥仕合を観戦しているムツキの元へアルとカヨコがやってくる。

 

「あ、アルちゃんとカヨコっち」

 

「瓦礫で分断されて思いっきり迂回する羽目になったわ...ハルカと分断されちゃったんだけどムツキは無事でよかったわ!」

 

「あぁ~…ハルカちゃん…ね」

 

 ムツキはそう言いながらす~っと視線を現場の方へと向ける。

 それにつられてアルとカヨコもそちらに視線を向ける。

 

「なっ…なっ…!」

「うわ...今日日映画でもあんなのはなかなか見れないかな」

 

「何してるのよハルカーーーーっっっ!!!????」

 

 それはちょうどスザンヌがハルカに向かって頭突きを叩きこんでいる瞬間だった。

 繰り広げられているあまりの惨状に思わず声をあげるアル。

 

「あ、アル様!?す、すみませんすみません!?思ったより掃除に時間がかかってしまって…!!」

 

「掃除ってそういう意味!?というかどうして銃も持たずに殴り合ってるのよ!?いくらハードボイルドって言ってもバイオレンスに振り切れすぎてるわよ!?」

 

「あぁぁ!?すみませんすみません!」

 

 アルから声をかけられたハルカはスザンヌと手四つの状態のまま先ほどまでの羅刹のような表情からは打って変わりオドオドとした視線を彷徨わせる。

 その時スザンヌがハルカに向かい口を開く。

 

「…おンやぁ~????攻撃が来ねぇなァ…?いいんだぜ?アタシの勝ちってことでもよぉ~????」

 

 ニィ、と最早顔の半分以上が自らが額から流す血で染まったスザンヌがまさに悪鬼のような表情で微笑む。

 ハッとしたハルカはアルの方を向いてからぐっと目を閉じて、

 

「…うぅ、うぁぁぁぁああああああ!!!!!!」

 

 思いっきり頭を振りかぶり、スザンヌへと頭突きを繰り出す。

 ぐしゃ、というおよそ人体同士のぶつかり合いとは思えぬ音が響いてくるかのような光景。

 

「ハルカーーーーー!!!????」

 

 これにはアルもたまらず再度声を上げる。

 

「うは、スーちゃんのアレ久々に見たなぁ」

 

「あれ?バンビちゃん起きたの~?」

 

「ハァ?何気安くちゃん付けしてんだクソガキ…体中痛ぇ!!」

 

「クソガキじゃないよ~、私は浅黄ムツキ!いつかバンビちゃんに泣かされる予定なんだからちゃんと名前で呼んでよ~?バ・ン・ビ・ちゃ・ん?」

 

「クソうぜぇ…」

 

 むくりと体を起こしたバンビに楽しそうに声をかけるムツキ。

 バンビはそれにうざったそうにしながら体を伸ばしたりしつつ、おぉ…とかうぅ…とか呻くような声をあげている。

 

「っつかもう朝じゃん。ウケる」

 

「サンゴじゃん、お前もヤられたん?」

 

 バンビの後ろからスカートのポケットに手を突っ込みながら近づいて来たのはサンゴ。

 

「そこの目つきの悪いのにココぶち抜かれたわ」

 

 カヨコを顎で指しながらココ、と自分の眉間を指差すサンゴ。

 うっすらと赤く腫れている眉間が痛々しい。

 

「目つきが悪いってあんたらに言われたくないんだけど」

 

「おうこええ、そう睨むなって」

 

「睨んでない、これは生まれつき」

 

 そう言いつつも明らかに先ほどよりも鋭い視線でサンゴを見るカヨコ。

 

「気にしてたんなら謝るって。ところでバンビ、カレンは?」

「え?カレンいねぇの?」

 

 スザンヌとハルカの泥仕合はすでにお互い立っていられず膝を地面についているが、未だにお互いの手を解かずにターン制頭突き勝負は続いている。

 それを見ているアルはもはや白目を剥いている。

 

「ね、ね、バンビちゃん。あの我慢比べって何か意味あるの?」

 

「だから気安くちゃん付けしてんじゃねぇっての…ありゃスーちゃんの最後の切り札っつーか…悪あがきっつーか…」

「スーちゃんマジで石頭だからあの形に持ち込んで相手に先に音を上げさせる必勝法だべ」

 

「でもあのスーちゃん?ハルカちゃんとサシで殴り合うなんてすごいねぇ。あの子1年生とは言えウチじゃタフさは折り紙付きだよ?」

 

 ムツキの言葉にカヨコも頷く。

 

「もしハルカ以外があの形に持ち込まれてたらもうとっくに勝負はついてただろうね」

 

「おいクソガキ、スーちゃんの名前はスザンヌだからマジで呼び方気をつけねぇとあの頭突き食らうぞ」

 

「クソガキじゃないって言ってるじゃんクソザコ♥」

 

「出来るだけ早く泣かすわ...!!!首洗って待っとけよ浅黄ィ…!!」

 

「くふふ♥綺麗にしておくね♪」

 

「ところで…そっちのもう一人は無事?瓦礫に埋まってたりしてない?」

 

 バンビがムツキに煽られるのを尻目にカヨコは当たりを見渡しつつ、バンビとサンゴに問いかける。

 

「そっちで確保してもいねーの?」

 

「私たちもさっき合流したばっかりだからね。そっちのスザンヌに見事に分断されたからね」

 

「あっ、そうなん?んじゃアタシらの勝ちだべ」

 

 サンゴがあっけらかんとそう言い放つとカヨコは少し目を見開き、

 

「やられた、そういうこと…」

 

 額に手を当て、天を見上げてはぁと息をつく。

 

「えっ!?ど、どういうことよカヨコ!?」

 

 先ほどまで真っ白になっていたアルはカヨコの呟きに思わず聞き返す。

 

「トランクは守り切られた(・・・・・・)。今頃は彼女たちの依頼主の元まで運び込まれてる、ってこと」

 

「アイツこーいう時はマジでちゃっかりしてんだよなぁ」

「んだんだ」

 

 バンビとサンゴがうんうん、と頷いていると、

 

「ウェーイ、トランク返却してきたぜー」

 

「お、カレンおかえりー」

「いやぁ一回気絶してからこっそり抜け出すだけとは楽な仕事だったぜぇ」

「は?アタシはこのクソガキにボコボコにされていまだに全身痛ぇんだが?????」

「えぇ~?クソザコちゃんがクソザコだからでしょ~?」

「クソうぜぇ!!でも今回は浅黄の言う通りだからなんも言えねぇわクソが!!」

「ムツキちゃんでい~よ~?」

「ぜってぇ呼ばねぇ!!」

 

 カレンの帰宅にサンゴが応え、バンビの憤りにムツキがバンビの怒りの火に油を注ぐ。

 そしてカヨコの話を聞いてすべてを理解したアルは…

 

 

 

「なななな、なっ、なんですってーーーーーー!!!???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハルカ!ハルカ!!もういいのよハルカ!!勝負はついたの!!」

 

「スーちゃんウェイト、ウェーイト」

「終わったから、もう終わったから」

「スーちゃんの顔デビルマンみたいになってんじゃんウケる」

 

 アルの叫びを経てなお意地の張り合い(頭突き合戦)をやめない二人をアルとサンゴ、バンビ、カレンが止めに入る。

 

「ア、アル様!?勝負はまだ…!!」

 

「いいえハルカ…残念ながら勝負はついたわ。私たちの…負けよ」

 

「…そ…んな…!!」

 

 スザンヌとの取っ組み合いから無理やり剥がされたハルカはアルの言葉に目を見開きその場に座り込む。

 

「おいテメェら…離せや…次はアイツの番で…それ耐え切りゃその次でトドメだっつうの…」

 

「いや順番とかもういらねーから」

「そもそも勝利条件見失うなし」

「ダッツ食いてぇ」

 

 もはやまともに立つことすらままならず舎弟たち3人に体を預けながらもスザンヌはそう毒づく。

 

 二人を見れば、このまま続ければどちらが勝つかは一目瞭然のような状況。

 それでもスザンヌはギラついた瞳を便利屋の面々へと向けていた。

 

 その視線を受けたアルは腰に手を当て、スザンヌたち4人へと言葉を紡ぐ。

 

「…淡路島スザンヌ。撤回するわ。あなたは…いいえ、あなたたちは安納ハジメ…さかまんじハケンサービスに並び立つ強敵だわ。次はこうはいかない。首を洗って待ってるといいわ!…便利屋68、帰るわよ!」

 

 そう言って踵を返すアル。

 カヨコはそれに続き、ムツキはバンビへと手を振って続く。

 

「…アル様、すみません。少しだけ、お待ちください」

 

「ハルカ?」

 

 いつもならそのまま続くハルカが、珍しくアルへ一言声をかけてから3人に抱えられたスザンヌの元へと歩いてくる。

 

「…お前ら少し離れろ」

 

 スザンヌの言葉に3人は顔を見合わせてからお互いに首を振ったり肩をすくめたりため息をついて、スザンヌを支えていた腕を各々離す。

 足を肩幅まで広げ、ゼェゼェと荒い息をつきながら、それでも立つスザンヌ。

 

「…オラ、来いよ…最後に一発、やり損ねたもんなぁ…!?」

 

 スザンヌの前に立ったハルカはぎり、と歯を食いしばり、スザンヌの胸倉を掴む。

 そのままぐい、とスザンヌを引き寄せ、

 

 

 

ゴッシャアアァァ!!!

 

 

 

 満身創痍のスザンヌの顔面へと、渾身のパチキ(頭突き)をお見舞いした。

 

 ズル…ドシャ…

 

 なんとか自分の足で立っていたスザンヌはハルカに掴まれていた胸倉から手を離されると、そのまま立っていられず地面に倒れ伏した。

 

「…勘違いしないでください、淡路島スザンヌ」

 

 倒れ伏すスザンヌを全てを凍らせるような冷たい目線で見下ろすハルカ。

 

「今ので、私とあなたの頭突きの回数は対等です。ですが、最後に立っていたのは私だけ…っ!?」

 

 ハルカの言葉が言い終わる前にスザンヌは立った。

 足は生まれたての子鹿のようにぶるぶると震え、呼吸は整わず、最後の一撃に鼻からぼたぼたと血を垂らしてはいたが。

 

 ハルカは再度ぎり、と歯を噛みしめ、 

 

「…私も撤回します…死んでくださいと言いましたが。次は…消します」

 

 それだけ言って、ハルカは踵を返し、アルたちの元へと戻っていく。

 

「すみませんアル様、皆さん。お待たせしました」

 

「え、えぇ。ハルカもその…よくがんばったわね?」

 

「いいえアル様、次は勝ちます」

 

「そ、そう?そうね、期待してるわね?」

 

「はいアル様、次は、勝ちますから」

 

 常とは違う、何かを決意したかのようなハルカに困惑するアル。

 ふと後ろを見ればスザンヌはサンゴ、バンビ、カレンに支えられながらもまだ立っていた。

 

「ねーねーカヨコっち。あれも青春ってヤツなのかな?」

 

「…随分と赤いのが飛び交ってたけどね。ムツキがそう見えたならそうなんじゃない?」

 

「くふふ、ハルカちゃんが最後にあんなことしちゃうなんて面白いね~♪」

 

「冗談、あんなに狂暴なのを相手にしないといけないなんて勘弁してほしい」

 

「すみませんムツキ室長、カヨコ課長。次は勝ちますから」

 

「…これ、ハジメちゃんに負けた時の反省モードじゃない?」

 

「だから言ったでしょ…勘弁してって」

 

(…空気が、空気が重いわぁ!!)

 

 こうして便利屋68の面々はもはや廃墟と化した元廃倉庫から颯爽と去っていった。

 社長の内心は依頼の失敗と後輩の豹変ぶりに恐々としていたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

「行ったか?」

「行ったべ」

 

 サンゴとバンビの確認の事を聞くやその場に崩れ落ちるスザンヌ。

 

「へ、へへ…して…やったぜ…!」

 

「…いや今回は流石にスーちゃんがんばったわ...」

「あれハジメさんもやべーっつってた伊草ハルカだべ?マジでよーやるわ…」

 

「不戦勝みてぇな…もんだがよぉ…へっへへ…お前らも…先に…トランク渡しに…行くとは…お手柄…じゃねえか…」

 

「お、おう。スーちゃんが踏ん張ったおかげだべ」

「て、っていうかあんま無理してしゃべんなって、キツかったべさっきのは」

 

「ホンットに…キツかったわ...だが負けなかったぜぇ…アタシたちはよぉ…」

 

 息も絶え絶えなスザンヌはそのままその場に寝転がり、

 

「少し!寝る!!!!!!!」

 

 そう叫び、そのまま大きないびきをかきながら眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

「…いやぁ、やばかったなぁ」

「いや、ある意味やべえのこれからだろ…」

 

 サンゴの呟きにバンビはスザンヌがRLを撃ちこんで作った瓦礫の山を見上げ、ため息をつく。

 

「言うてしゃーねぇべ…さすがにこんだけ魂削ったスーちゃんにこれ以上やらせるのはよぉ…」

 

「いやわかるべ?わかっちゃいるんだけどよぉ…」

 

 

 サンゴ、バンビ、カレンの3人は自分たちの身長よりも高く詰みあがった瓦礫の山を見て天を仰ぐ。

 

 

「「「この瓦礫からトランク掘りだすのは流石にしんどいべ…」」」

 

 

 そう、トランクをすでに届けたなどというのはただのハッタリだったのである!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…んぁ」

 

 スザンヌが目を覚ます。

 

「お、スーちゃん目が覚めたべ?」

 

 スザンヌが軽く自分の姿を確認すればいつの間にか軽い手当てが施されていた。

 

「なんだ、寝てる間に手当までしてあるとは気が利くじゃねーかオメーら」

 

「お、おう!今日の功労者のスーちゃんそのまま転がしとくとかさ、流石にな!!」

 

 サンゴが慌てたようにそう答える。

 

「…いや、お前らにこんな手当の心得ある奴いたか?アタシらなんて基本ツバつけときゃ治るみたいなタイプじゃねえか?」

 

「ち、近くを通った救護騎士団の奴に頼んだんだよ!スーちゃんの言う通りアタシらじゃ治るもんも治せねえしな!!」

 

 バンビがサンゴの言葉の補足をするがその説明も何かあやしい。

 

「…いや、こんなブラックマーケットのすぐ近くにトリニティの救護騎士団が出歩いてるか?」

 

「スーちゃんも起きたしメシ行こうぜメシ!流石に昨日の夜からなんも食ってねぇから腹減った!!」

 

 カレンの唐突な話題変換を不審には感じたもののスザンヌもそれを言われると非常に強い空腹感を覚えた。

 

「…まぁいい、依頼も成功したし金はあるんだべ?適当にどっか食ってからヤサ帰るべ」

 

「おー、クソまずいレーションじゃねえ外食とか結構久々じゃね!?」

「何食う?焼肉とか?」

「いや便利屋に勝ったらラーメンがいいって聞いたべ?」

 

「「おいバカカレン!!!」」

 

「あァ?結局何食うんだよ」

 

「ラ、ラーメン!ラーメンでいいべ!柴関ほどじゃないにしろどっか美味いとことかあるっしょ!!」

「だな!なんならその辺の屋台とかワンチャン美味いかもしれねぇし!!」

「食後にコンビニ寄ってダッツも食おうぜ、ラーメン屋でオーダーするのと値段変わんないだろうし」

 

 

 

 廃墟と化した元廃倉庫をスザンヌたち4人は後にする。

 必死に話題を逸らす舎弟3人を見て、スザンヌも流石に察しはついたが、それについては口を噤んだ。

 

 大方どこかのお節介(銀髪鬼)が絡んでいるのだろうが、それをわざわざ確認するのも癪だった。

 今は借りばかりで忸怩たる思いを持ってはいるが、基本的にはそのお節介はいつか倒すべき敵である。

 向こうはそんなことを言われてもきょとんとした顔をするであろうことが想像できるのは憤懣やるかたないが。

 だからスザンヌは改めて心に誓う。

 

 鬼退治を果たす(銀髪鬼を倒す)のは己なのだ、と。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




次回から最終章を開始する予定ですがその前にスザンヌというキャラの掘り下げをしたくて今回の話を書いたのですが思ったより長くなりました…
ハッタリについてはカヨコはなんだかんだでわかってて騙されてくれたような気がします
ムツキはどうだろう、正直バンビにここまで絡むと思ってなかったので筆者にもわからぬ…
アル社長にはいつものBGMのシーンのために犠牲になってもらった感が否めない…
あとハルカに関しては独自解釈タグを盾にしたいと思います!(必死に目を反らしながら)

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