ハケン・ユーティリティ   作:ジョイン君

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彼女が形作るのは


天からふりそそぐもの

 道を走る。

 

 郊外に出たスクーターはスクーターとは思えないような轟音を響かせながら線路沿いの車両の行き来が少ない道路を突き進む。

 

 時刻は夕方、夕日はすでに低く、その仕事を終え、あと半刻もすればその姿を地平へと沈め、世界のシフトは夜へと移行するだろう。

 

 ぼくはスクーターのままトリニティの校区内へと乗り入れ、表通りから少し離れた、お嬢様たちが普段は近寄らないような裏路地の一角にスクーターを停める。

 トリニティ総合学園はハイソなお嬢様方が数多く通う学園ではあるが、総合学園と言われているように全員がそういったお嬢様である、というわけではない。

 

 中には普通の学生たち、お嬢様たち上流階級を支える一般層のような子たちも当然存在する。

 

 つまりそういった層への需要が高い、ゲームセンターとかそういうものはこういった奥まった場所に固まっている傾向にある。

 今回はそういう場所に何食わぬ顔をして違法駐車をした、というわけだ。

 

 トリニティは校区が大きく通っている生徒も色々なタイプがいるため、様々な需要が他の学園とは違う形で満たされる場所である。

 こうした、学風とは少し違うお行儀の悪い場所もあるのでまぁ、今回は有効活用したわけだが。

 

「あァん?なんか見慣れねえヘルメットがいるじゃねえか」

「ここらをアタシらパタパタヘルメット団のシマだってわかっててそんなヘンテコ…え、いやちょっと可愛いな…?…ってちげえ!そんなキュートなヘルメットかぶってるんだろうなぁ!?」

 

 まぁ、そういう場所にはこういう手合いもいる確率がそこそこある。

 

 …とは言え、トリニティから結構近い場所だからこう、すぐさまエンカウントしてしまうのは運が悪いというかなんというか…

 

 まぁ、いい。

 想定はしていた。

 相手の反応を見るにぼくが誰なのか、は少なくとも認識されていない。

 

 ぼくは腰に提げていた愛銃のSMG【best Bond】を抜き、目の前のパタパタヘルメット団を名乗る不良生徒たちに向ける。

 

 悪いが時間がないんだ。

 

「か、カチコミだ!!!!!」

「なんかネコみてぇなヘルメットの奴がカチコミに来やがったぞ、周りの皆も呼べ!」

 

 叫びだすパタパタヘルメット団たちに向かって発砲、一番前にいた不良生徒に命中。

 そのままぼくはパタパタヘルメット団に向かって走り出す。

 降りかかる火の粉はささっと払って、騒ぎが大きくなる前にさっさとこの場から退散してトリニティの模擬戦場となっている校庭へ向かわないといけないのだ。

 

 完全に夕日がその姿を隠し、夜の帳が落ちるその前に。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「はぁ、まったく…ハジメったら普段は有能なのにいっつも忘れ物するんだから…」

 

 下江コハルは、先ほどまで後輩の安納ハジメとクレープを並んで味わっていた公園から寮へと一人帰路についていた。

 

 コハルの後輩のハジメは優秀だ。

 その戦闘能力は言わずもがな、補習授業部で共に行動する前でもその評判は末端の委員であるコハルの耳にも届くほど。

 正式に正義実現委員会に所属した今でもその能力は留まるところを知らない。

 

 自分の事を先輩だと慕って懐いてくれているハジメだが、その能力はすべてにおいてコハルよりも優れていると言っても過言ではない。

 だからコハルは、そんな後輩に恥じぬよう、前より少しだけ、努力に前向きになれた気がする。

 

「まったく、いつも寮長に報告する私の身にもなりなさいよね!先輩って言う割にこうやって便利に扱おうとするんだから…」

 

 口からは文句がこぼれるが、実際のところそこまで不満は持っていない。

 あのなんでもできる後輩がたまに見せる、こうした隙はむしろ親しみが感じられて。

 先輩の自分がフォローできることがあるというのは、コハルにとってはむしろ喜ばしい事でもあった。

 

「とはいえこうも忘れ物が多いのも考え物よね…報告さえすればそこまで厳しくないとはいえこう毎日だと門限破りの回数にカウントされちゃって寮の庭の草むしりはしなきゃいけないはずだし…えっと、確か報告あり5回で無断1回扱いだったから今日で…」

 

 コハルはハジメの毎日のような忘れ物に頭を抱えながら寮長への報告が何度目なのかを考える。

 

「昨日も一昨日もその前も…5回程度じゃ済まないじゃない!?もう、ハジメったらいったい草むしり何日分重なってるのよ!?これはクレープとか食べてる場合じゃないわ、明日からは寮に直帰して草むしりを手伝わないと!!」

 

 コハルは頭を抱えながら、とりあえず思い出せる限りで累計何日分の罰則奉仕が溜まっているのかを計算する。

 

「ぐぬぬ…いっつもこうして帰りにクレープ食べに行ってたからいつだったか思い出せない…そうだ!寮長への報告が何回だったかを思い出せばいいんだわ!えっと…」

 

 コハルはそこで、ふと気づく。

 

「…あれ?寮長への報告は…今日がはじめて…?」

 

 先ほどまでの自分の考えに対してのこれ以上ない違和感に。

 思考の海に溺れそうになったその時、コハルのスマホが振動する。

 

 画面に表示される名前は、コハルが敬愛する羽川ハスミ。

 

 コハルは感じていた違和感をすぐに頭から振り払い、着信をタップする。

 

「はいもしもし!ハスミ先輩、何かありましたか!?」

 

『コハル、ごめんなさい。今、そちらにハジメはいますか?』

 

「ハジメですか?ハジメならたった今忘れ物があったからって学校に戻りましたけど…」

 

『…つい先ほどまで、一緒だったんですね?』

 

「???…はい、そうですけど…」

 

『…わかりました。手間を取らせましたね』

 

「あの…ハジメに何かあったんですか?」

 

 少しの間。時間にして数秒、その数秒がコハルにとっては永劫の時間に感じられてしまう。

 先ほどまでの思考など彼方に追いやられてしまう。

 

『…いいえ、この電話に関しての件はハジメは何も関係はありません。この時間に戻ったということは寮長へ門限の報告もしなければいけないのでしょう?それではコハル、また明日』

 

「あっ、ハスミ先輩!?」

 

 ハスミはそれだけ言って、通話を切ってしまう。

 コハルは逡巡する。

 確かにハジメはつい先ほどまでコハルと一緒にいたが、常ならそうはないハスミからの直接の連絡。

 気になってハジメへと連絡を試みるも、ハジメが着信を取る気配はない。

 

 つい先ほど、別れたばかりなのに。

 

「…あぁもう!世話のかかる後輩なんだから!!」

 

 コハルはスマホをしまい、走り出す。

 常とは明らかに違う状況を打破するため。

 まずは寮へと走り出す。

 なんとか寮長に頭を下げて、自分と後輩の夜間外出許可を勝ち取るために。

 

 下江コハルはなんだかんだで筋を通す良い子なのであった。

 

 

 

 

 

 

「どうっすか?ハスミ先輩」

 

「本人には連絡が取れませんでしたが…コハルとはつい先ほどまで同行していたようです」

 

 トリニティの中心地から少しだけ距離のある盛り場。

 委員会の仕事が終わるタイミングで通報があり、業務終了の準備をしていた時に残っていた正義実現委員会の生徒たちで駆け付けたその場所には、通報にあった通り、十数人の不良生徒、パタパタヘルメット団がそこかしこで倒れ伏していた。

 

 このパタパタヘルメット団は近頃台頭してきた不良生徒たちでそこそこ被害が広がっており、対策を何か講じようと思っていたところ、なぜかこうして一網打尽にされていることを通報されたのだ。

 

 転がっている生徒たちは全員気絶しており、話は聞けていないが、何人かが意識を落としながらも呻いている言葉で聞こえてきたのは「銀髪鬼」。

 

 通報を受けたのが十数分前、その時点では戦闘行為が発生しているという内容で、現場の到着まではそこまで距離が離れていなかったこともあり、十分ほど。

 その短い時間でこれだけの人数の武装した生徒たちを一方的に制圧をして、この場から離れる手腕。

 目撃証言によればこのパタパタヘルメット団に相対していた生徒は一人。

 見たことのない制服に、特徴的なヘルメットをかぶった生徒。

 

 それだけ見ればヘルメット団同士の抗争かとも考えられる。

 

 しかし目撃証言を集める内に浮かび上がる人物像があった。

 

 その特徴的なヘルメットをかぶっていた生徒は、複数の銃を使い、この戦場を跳ねまわり、時にはパタパタヘルメット団員の銃を打ち払い、この十数人を一人で制圧したそうだ。

 

 そう、まるでつい最近、正義実現委員会に新たに加わった、安納ハジメのような戦闘スタイル。

 

「…考えても埒が明きませんね…とりあえずこのパタパタヘルメット団員たちを一度正義実現委員会の拘留所まで運びましょう。尋問は…明日以降でいいでしょう」

 

「了解っす。宿直の生徒がもう何人か増やせないかちょっと連絡を回しておくっす」

 

「お願いします、イチカ」

 

 スマホを取り出しながら現在一緒に通報を受けてきた委員の生徒たちに指示を出すイチカの背を目にしながらハスミは久しぶりに泊まり込みの残業になるかもしれないな、と考える。

 

 正義実現委員会の性質上、そういった事もままある事ではあるが…

 

「…久しぶり…?本当に…?」

 

 ふと感じた違和感。

 泊まり込むまではなくとも、残業などはよくあることであった。

 この広大なトリニティ総合学園で治安業務を受け持つ組織としてはむしろ定刻通りに帰れることが稀ではなかったか。

 ハジメが編入してくれたおかげでそのあたりの問題はかなり解決したのは確かだが…

 

 

 ハジメはまだ加入して日が浅い。

 つい先日だ、と認識している。

 

「ハスミ先輩!連行する準備も整いましたし宿直できる生徒も二人ほどゲットできたっすよ!」

 

 イチカの言葉にふと我に返る。

 

「…それでは私たちも戻りましょう。こうして残業するのもなんだか…久しぶりな気がしますね」

 

「何言ってるっすかハスミ先輩。私たち正義実現委員会は残業上等で、むしろここ最近が異常なほどスムーズだっただけで…」

 

 そこまで言って、ふとイチカは細めていた瞳を薄く開く。

 

「…確かに、すごく久しぶりな気がするっす…」

 

「…戻りましょう、イチカ。もしかすると私たちには気づいてない何かが起こっているのかもしれません」

 

 ハスミが歩き出す。

 イチカもその後ろに続く。

 

「今日は長い夜になるかもしれませんね、イチカ」

 

「…うぇっ、流石にカンベンしてほしいっすよハスミ先輩。私は平和な方が好みなんで」

 

「むしろトラブルメーカーが増えたのにトラブルらしいトラブルが起こっていない今までの方が異常だったのかもしれないですよ?」

 

「言われてみれば納得しそうなんでやめてほしいっすー!!」

 

 ハスミの言葉にイチカは頭を抱えながら叫ぶ。

 すっかり夕日が落ち、夜の帳が落ちるトリニティ市街。

 

 いつもの日常と変わらぬはずの、いつもとは違う異常で正常な正義実現委員会の二人は、お互いに何かに対しての違和感を感じながらいつもの居場所(いつもとは違う場所)へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 絡んできたパタパタヘルメット団員を適当にのして、そのままトリニティ総合学園へと走る。

 

 戦闘中に通報をしているトリニティ生徒の姿も見えたので、学園から駆け付ける正義実現委員会の子たちと鉢合わせないように少しだけ遠回りをする。

 

 すでに日は沈み、もう夜になり時間が少し経つ。

 リミットと思われる時刻まではあと30分ほど、間に合ってほしい、間に合ってくれ!

 

 

 

 トリニティ校舎の敷地内、ぼくは足を止めずに件の校庭へと突き進む。

 

 特異現象調査部の部室でハッキングされていた、校舎の昇降口を映す監視カメラを尻目に、なぜか校庭を照らす街灯も灯らぬ暗闇に閉ざされた校庭では散発的にチカチカとマズルフラッシュが見える。

 

 走る。

 

 走って、その光へと近づく。

 

 その先には…

 

 

「もーっ!なんで当たらないの!!」

 

「当たったら痛いからなんだよなぁ…」

 

 

 

 

 真っ暗な校庭、その暗闇が広がる闇深き模擬戦場を二つの人影が、飛ぶ、跳ねる、暗闇の中で交差する二つの影が形作る、銃口から暗闇を彩るマズルフラッシュとその残光で描かれた光の線で踊り狂う様に彩られた空間はまるで煌びやかなダンスホールのようにも見えて。

 

 ぼくはその二つの影へ向かいさらに前へ進もうと、

 

「う、動かないで!!」

 

 背後から聞こえた、その声に足が完全に止まってしまう。

 

「せ、正義実現委員会よ!そのヘルメットを脱いで地面に置いて両手をあげなさい!!へ、変な動きを見せたら制圧するんだから!」

 

 だってその声は、ぼくには絶対に逆らえない人の声で。

 だからぼくは、ヘルメットを外す。

 フルフェイスのヘルメットに収められていた髪が抵抗をなくしてふわっと広がり、背へと流れる。

 

「…へ?…違う、ハジメじゃ…ない!あなたは…誰なの?」

 

 コハル先輩は愛銃の【ジャスティス・ブラック】を向けながら困惑したような震える声音でぼくに問いかける。 

 ぼくは答えない。

 

「だって、ハジメは今、忘れ物を取りに行くなんて言ってたのに、なぜかあそこでミカ様と模擬戦をしてる…その制服はハジメが着てたものだけど、今は寮のクローゼットにしまってある、はず…それに!見ただけでも私はわかる!あなたは偽物だって!!」

 

 ぼくは応えない。

 

 膝から崩れ落ちたくなる気持ちを歯を食いしばって堪える。

 ゲヘナとミレニアムに行った時点でわかっていたことじゃないか。

 

 ぼくには今この言葉に苦しむ資格なんてこれっぽっちもないのだ。

 

 

 それにぼくは今ハケンとしてここに立っている。

 ぼくは今、何がなんでもあの二人の争いに介入して何か耽溺の打開策となる情報を持ち帰らなければいけないのだ。

 

 コハル先輩には申し訳ないがここで正義実現委員会に捕まるわけにはいかない。

 手持ちの装備を思い出す。

 

 ヘルメット…地面に置いたし鈍器として使うとコハル先輩が痛い、却下。

 愛銃たち…撃たれれば当然痛いしコハル先輩に銃を向けるなんてぼくのハケンの完遂のためだなんてうっすぅぅぅぅい理由でできるわけがない、却下。

 護身用防犯撃退用刺激物スプレー…昔ミレニアムでメガネと一緒にエンジニア部にもらってから持ち歩いてるけど使ったことはない。威力は未知だがエンジニア部の子たちが言うには顔に吹きかければかゆさで小一時間悶え苦しむとかおっそろしい事言ってたので却下。

 …護身用?護身用と言えば…エイミちゃんから預かった小型扇風機。

 いや扇風機で護身ってどういうことやねんって思ってたけどなるほど、エイミちゃんほどの超効率的エージェント技能を持っているとこういう手が出せない相手に銃を向けられるという状況も想定して相手にダメージがなくて気を逸らせる手段を想定して渡してくれた、ということか…。

 

 え、ミレニアム、層が厚すぎでは?

 

 いや、ここはありがたく使わせてもらおう。

 この小型扇風機で気を逸らして、なるべく苦しくないようにすぐさま眠っ(意識を落とし)てもらおう。

 

 この手段ですら吐き気がするほど嫌だけど、これ以上の策はぼくには現状思いつけない。

 不出来な後輩で本当にごめん、コハル先輩…。

 ぼくは肩まで上げていた右手を下ろしてポケットから小型扇風機の最強のスイッチに指を添えて取り出す。

 

「…っ!?動かないで!!」

 

「…鞄から変な本がはみ出てますよ、正義実現委員会のエリートさん」

 

「へっ!?…嘘!?今日は持ち歩いてないはずなのに!?」

 

 ぼくはコハル先輩が視線をぼくから外して鞄の方へと注意を向ける隙を狙って振り向き、右手に持った小型扇風機をコハル先輩の至近距離でスイッチを入れる。

 至近距離で小型扇風機の風が瞳に当たれば少し隙ができるはず。

 その一瞬の隙をついてぼくはコハル先輩を締め落とすために手を伸ばしたのだが…

 

 

 

 

「ひょ、ひょわぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 

 

 コハル先輩を一度捕縛しようと伸ばしたぼくの手は、勢いよく校舎脇の草むらに頭から突っ込んでいくコハル先輩に届くことはなかった。

 それはもう景気よく吹っ飛んでいった。

 

 …えぇ(困惑)。

 

 え、いやぼく何もしてないよ?????????

 小型扇風機の風を当てただけだよ?????

 なんで?????????

 

 困惑するぼくはふと、エイミちゃんが言っていた言葉を思い出す。

 確かにエイミちゃんは言っていた。

 飛ぶよ、と。

 

 …いや物理的に人が飛んでくのはもう扇風機じゃなくない???????????

 

 というか想定とはまったく違う方向で危害を加えてしまった!!

 ぼくは慌ててコハル先輩が吹っ飛んでいった方向を確認すると、草むらからがばっと顔を出すコハル先輩が確認できた。

 顔をぶんぶんと振って頭や顔についた草を振り落としている姿を見るに大きな怪我などはないようだ。

 よかった…

 

 ぼくはちょっと想定とは違うけど訪れたこの好機を利用して、地面に置いたヘルメットを拾い上げて校庭へと駆け出す。

 

 トリニティにたどり着いてから結構色々な障害があったせいで介入までに時間をかけてしまった。

 

 急がなければ。

 

 

 

 

 

 

 

「それにしたってちょこまかちょこまかぜーんぶ紙一重で避けてくれちゃってさぁ…でもそろそろ限界でしょ!!」

 

 ミカはそう声をあげながら、安納ハジメ(彼女)の銃撃をいなし、拳を、蹴りを、すべて躱し、受け止めながら追い詰めていく。

 その様はまるで情熱的なダンスのようで。

 

「それは…どうかな!!」

 

 打ち払う、交差する、追い詰められたかに見えた安納ハジメ(彼女)()()()()体を捻り、ミカが突き出した手を掻い潜り距離をとる。

 

 体の内の歯車が脈動する感覚がぼくの体を駆け巡る。

 

 距離を取った安納ハジメ(彼女)が連続で歯車を廻し、一定の距離を保ちながら一丁づつ、両手に構えたSMGとHGをミカへと撃ち放つ。

 

「わっわっ!?何コレ!?弾が素直に飛んでこない!?気持ち悪っ!!」

 

 ミカはどことなく楽し気な声をあげながら、多方向から飛んでくる銃弾をほぼ全て避ける。

 回避行動を取りながら、【Quis ut Deus】で応戦する。

 安納ハジメ(彼女)の移動先に牽制射撃を放ち、安納ハジメ(彼女)の動きを阻害する。

 

「気持ち悪いで済ませされるこっちの気持ちも考えてよ!反射神経だけで避けやがって!!」

 

「あっ、ごめんね?私ってばつよつよらしいから、よわっちい子の気持ちなんて考えてもわかんないや☆」

 

「キレそう!!」

 

「あっはは☆それじゃ反射神経テスト~☆これはどうかな?」

 

 ミカが両手で構えていた【Quis ut Deus】を片手に持ち替え、安納ハジメ(彼女)を狙うように前に突き出し、引き金を引く。

 【Quis ut Deus】から放たれた銃弾は安納ハジメ(彼女)のいた位置へと真っすぐ飛んでいく。

 安納ハジメ(彼女)はそれに対して、それまでの最低限の動きではなく、一気に大きく横に飛びのく。

 

 その瞬間、狙われていた位置へと天から降り注いだのはミカの神秘によって顕現した隕石。

 そのままそこにいれば質量と衝撃で勝負は決まっていただろう。

 

 隕石が校庭の地面に着弾した衝撃を深い姿勢でやり過ごす安納ハジメ(彼女)

 

「さっすが~!アナタだったら避けると思ってた!!でも、これで終わり…ここ(トリニティ)私たち(ティーパーティー)が守るから」

 

 ミカは【Quis ut Deus】を両手で構え直し、狙い穿つように連射する。

 安納ハジメ(彼女)を狙われて放たれた、そのすべてに会心の威力を秘めた銃弾。

 

 しかし安納ハジメ(彼女)はそれよりも一手早く先ほど校庭を穿った隕石を遮蔽物にしてその射線を切ってやり過ごす。

 【Quis ut Deus】から放たれる致命的な火力の豪雨、それは魔女の暴虐か、或いは神の祝福か。

 しかしその無慈悲な神の憐れみがごとき銃弾の嵐もミカが齎した神秘の権限によって防がれた。

 

「ありゃ?避けられちゃった。ま、いっか」

 

 ミカは【Quis ut Deus】から撃ち尽くしたマガジンを抜き、ぽいとそのへんに放り投げてポケットから新たなマガジンを取り出す。

 安納ハジメ(彼女)は遮蔽物にしていた隕石を飛び越え、その場で跳躍を試み、

 

「岩なんて降らせたらちゃんと後始末もしないとだからね☆」

 

 ミカの神秘によって地面を穿った隕石は、爆発し、跡形もなく消滅した。

 轟音と、爆発による衝撃波を周囲へと放ちながら。

 

 跳躍をはじめていた安納ハジメ(彼女)の両足はすでに地面から離れ、もろにその衝撃を背に空高く、上空へと弾丸のように跳ね上がる。

 

「ふーっ…間に合ったかな?」

 

 取り出したマガジンを【Quis ut Deus】へと差し込み、手元でくるりと回して曲芸じみたリロードを行いながらミカは先ほどまで自らの神秘で顕現させた隕石の後始末が滞りなく完了したことを確認しながらそう呟く。

 

 

 

 ぼくは走る。

 

 近寄ってくるぼくの足音に気づいたミカがはっ、と顔を上げ反射的にぼくへと【Quis ut Deus】の銃口を向け、

 

「…っ。なるほど、セイアちゃんが言ってたのはこういう事…」

 

 そう呟いて銃口を下ろしたミカはなぜかぼくに向かって両手を広げて、

 

「…ハっジーメちゃ~ん!!会いたかったよ~!!」

 

 なぜか満面の笑みを浮かべているミカに一瞬足が止まりかけるが、そのままミカのいる場所から少し手前から、ミカを飛び越えるように跳躍する。

 

「へ?あれ?」

 

 跳躍したぼくは両手をクロスさせて、来るであろう衝撃に備える。

 まぁ、空中にいる状態でこんな風にガードしたところで焼け石に水なのだが。

 

 

 

 

 そして空から降り注ぐ衝撃。

 

 天高く飛び上がり、一発の超ド級の弾丸と化した安納ハジメ(彼女)はまっすぐにミカへとその勢いのまま飛び蹴りの体勢で空を裂き。

 

 その間に飛び込んだぼく(薄っぺらい障害物)ごとミカへとさながら隕石のごとく降り注いだのだった。

 




書いている間戦闘描写のためとあるゲームのボスBGMを流しながら書いていたのですがトリニティ総合学園の彼女戦として流していたBGMがミカが強すぎてミカ戦のBGMなんじゃないかと錯覚しはじめて困りました
ミカが強すぎるのが悪いんだよ…

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