目が覚める。
携帯電話を確認、通知アリ。
枕元に置いてある手帳を開き予定を確認。
今日のハケンはゲヘナ学園の風紀委員会。
依頼内容は事務作業。
まぁ、書類の仕分けとかそういう類だろう。
携帯電話を操作して通知を確認。
いつもの活力になっているソラ先輩からのモーニングモモトーク。
しかし今日は、というかここ何日かはちょっと普段とは違っていた。
申し訳ないなぁ、と思いつつもモモトークのアプリを開いて内容を確認。
【おはようございます!ここ何日かはとても忙しそうですがちゃんと休めましたか?】
【ごはんはちゃんと食べてますか?エンジェル24もお弁当屋お菓子の新商品も出たのでお仕事が終わったら】
【いえ、無理せずにしっかり休んでください。次に来てくれた時にいろいろ教えますね!】
【…怪我とかしてませんか?それだけが心配です】
まぁ…こんな感じである。
そう、ここ何日か、正確には先日の便利屋とかち合った依頼の日からぼくは一度もシャーレに行っていない。
細々とした依頼をこなしたりなんだり、一応仕事があったのは事実だが、どれも昼過ぎから夕方くらいには終わっているようなものばかり。
行こうと思えば仕事の後にいくらでも顔を出す時間はあった。
なんなら普段なら行ってたと思う。
何しろ数日顔を合わせてないのだ。ソラ先輩成分が枯渇しているのだ。
なんなら今すぐにでも会いに行きたいくらいの気持ちはある。
「んー…まだ残ってるなぁ…傷跡」
あの日に額にできた裂傷はその後のアル社長の適切な処置ですぐに血は止まった。
痛みが尾を引くようなこともなく、傷跡もあと2~3日もすれば綺麗になくなるだろうという目算だが…
最初の頃は当然知名度もない内はお試しのスポット依頼などが多かった時期。
短時間で終わる依頼の内容は主に戦闘系のものが多かった。
まだまだ依頼相手を選べるような状況でもなかったため、まぁ、ハズレを引くこともそこそこあった。
あれはそういう依頼の中のひとつで、特に面倒な事態が重なった時だった。
とある不良生徒集団同士の小競り合いの助っ人と言う名目で参加したぼくだったが、その依頼自体がぼくがヤンチャしてた時に恨みを買った奴らの罠だったことがある。
遊撃と称して指示された通り、開いた敵陣の一角へ突っ込んだぼくはそのまま包囲され四方八方から滅多打ちにされた。
そのへんの不良が使ってるような銃火器はまぁ、そこまで火力のあるようなものは少ない。
少し面食らったぼくだったがその場は多少の被害はあったものの全員返り討ちにしてやった。
依頼人とそのグルだった相手の不良生徒を締め上げてそもそもの目的はぼくだったということを吐かせ、もし次に同じようなことをすればどうなるか、わかるネ?と
人間話せばわかるよ、うん。
まぁ、そういう失敗から学んで今では妙な依頼はたまーにしか引っかからないようになったよ。
たまーにしか、ね。
まぁ、その件に関しては一応ぼくの身から出た錆、という部分もあったので、依頼料だけはきっちりと徴収したがそれ以上の事は求めずにその日のハケンは終了、となったわけだが。
返り討ちにしたとはいっても相手は装備は貧弱なれどそこそこの人数の集団に対しぼくは一人。
まぁそこそこ擦り傷掠り傷のようなものはあったわけだ。
ぼくとしてはほっときゃ治るでしょってレベルの大したこともない傷だった。
だからまぁ、いつものような感じで、そのままその足でシャーレに向かってしまったわけだ。
ぼく的には今日の依頼ハズレだったんですよぉ~ってそんな世間話のネタができたなーくらいの気分で意気揚々とシャーレ内のエンジェル24へ。
「ちわーっす、ソラ先ぱーい」
「あ、ハジメさん!お仕事おつかれさ…ってぇ!?なんでそんなぼろぼろなんですか!?」
そこからはもう大変だった。
主にソラ先輩が。
ぼくはもうすぐさまバックヤードに引きずり込まれて普段ソラ先輩も使わないようにしてる店長用のなんか座り心地のいい椅子に座らされて。
ソラ先輩は先生を呼びにオフィスに行っちゃうし、なんて説明したのやらえらい慌てた様子の先生まで引っ張ってきちゃって。
ソラ先輩は店内据え置きの医療箱をひっくり返すし、先生は何をとち狂ったのか在庫の医薬品を買い占めようとし始めるし。
まぁ、その後はどこからともなく(本当に文字通り)現れた鷲見セリナさんがすごい鮮やかな手際で手当てを施してくれて慌てる二人を落ち着かせてくれた。
日直でもないのになぜいたのかはいまだに謎なんだけど…
怪我をしたときはどんなに軽くてもすぐに消毒と手当てをしないとダメだというありがたいお言葉をいただき、慌てる先生を落ち着かせて、もう大丈夫ですよ、とオフィスへ戻るように促してくれた。
セリナさんカッケーって思った。
先生は買い占めた絆創膏とか包帯とか傷の消毒薬とかを置いて、
"無理しちゃダメだよ!!"
って言いながらセリナさんとオフィスに戻っていった。
両手になぜか一緒に買い占めた栄養ドリンク*1の入ったビニール袋を持って。
いやウケる。
でまぁ、その時にソラ先輩から滅茶苦茶叱られたわけですね。
まぁ、その…尊敬してる先輩からのガチの心配と説教はね、結構心にクる。
なのでまぁ、ちょっとした怪我などを負ったときはなんだかんだでこう、余計な心配をかけないように顔を出さないようにしていたのだが…
まぁ、今回の額の傷はまぁ、肉を切らせて骨を断つ感じだったので相応に深かったのだ。
そんなわけで仕事詰まっちゃって何日か顔出せそうにないですっ、て伝えてはおいた。
…んだけど、これは感づかれてますねぇ…ほんとソラ先輩のそういうところマジリスペクトなんだけどぉ…
「【ちょっと仕事が立て込んでるだけでぜんぜん元気ですよ】っと…」
なのでぼくは今日もこうやってソラ先輩に返信する。
「ん?先生からもモモトークが来てる、めずらし…」
こちらから何かを送ったわけでもないのに先生から連絡があるのはあまりないことだ。
大抵は急な依頼とか、そういう内容なのだが今日緊急の依頼とかじゃないだろうな…
そんなことを考えながらモモトークの画面を開く。
"【最近あまりシャーレに来れていないようだけど無理はしてない?】"
"【困った依頼とか、何かに巻き込まれたりしたらすぐに相談してね】"
"【君たちが困ってるときに手を差し伸べるのが「大人」の役目だから】"
"【あと、ソラが心配していたから】"
"【落ち着いたら元気な顔を見せてあげるんだよ】"
───あぁ、もう。
ソラ先輩も先生も、ぼくなんかに優しすぎる。
ぼくは
廃墟で目覚めた
だというのに、ソラ先輩も先生も、ぼくのこと
もっと頑張ってソラ先輩と先生に
先生には【たまたま仕事が詰まってただけで問題なし。何かあったら存分に利用させてもらいますぜ、先生】と眼鏡の絵文字を合わせて返信する。
眼鏡の絵文字は、ちょっとした申し訳なさを隠すため。
ぼくは普段から眼鏡をかけてるので絵文字にもつけてもそんなに違和感はないだろう。
廃墟で目覚めた時から着けていた眼鏡。
とても頑丈で、目覚める前の記憶がまったくないぼくの過去の数少ない手がかりの一つ。
寝る時以外にほぼ外さないそれはぼくのトレードマークみたいなものだ。
だからその絵文字に意味なんてないと思うに違いない。
ちなみに視力は悪くない。
伊達
ぶんぶんと頭を振って
今日のハケン先はゲヘナ学園の風紀委員会。
ぼくはクローゼットから紺色の軍服を思い起こす意匠のブレザーの制服を取り出す。
朝ごはん…はいいか。
洗面台で軽く身支度を整えて制服を着用。
この時間から出ればハケン開始の時間には余裕をもって到着できるだろう。
…
妙なトラブルに巻き込まれて遅刻したとあってはあの行政官に何を言われるかわかったものではないし。
そんなことを考えながらぼくは家を出て駅へと向かったのだった。
プロット段階では短めの話で済みそうだなって思ってたのにまだプロットの一行目しか終わってないのはなんでなんですかねぇ。
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