魁!!ぼっち・ざ・ろっく!   作:レフリー

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シグルイを見たせいか後藤ひとりを薩摩武士(ぼっけもん)にしたくてたまらない自分がいる。なぜ?


#10 昔のアルバムジャケットは過激で刺激的

「ど、どうか……!どうか切腹で許して下さい!フ、ファラリスの雄牛だけは嫌です!!」

 

「会うなりいきなりどうしたのぼっちちゃん!?」

 

本日、私の一日は土下座から始まった。私の脳裏には検索してはいけない映像が映る。

昨夜寝付けなかった私は予習として世界の処刑動画を見ていた。あらゆる処刑方法の中で私の目を引くものがあった。それこそがファラリスの雄牛である。

 

詳しくは書かないが要は金属の牛の中に人間を入れ、後は火で熱して殺すという残酷な処刑方法だ。

 

まぁそんな事はしないだろう、そもそも金属の牛なんて用意出来ないだろうと思った時にふと、有ることに気付いた。 メカ沢さんで代用できるじゃないか、と。

 

先日は皆さんを怒らせてしまいましたし……特に虹夏ちゃんはマジギレしたらどんな暴挙もやりかねない……。

そう思い私は初手土下座を敢行したのだ。

 

「違うよ!そんな残酷なことはしないよ!!」

 

虹夏ちゃんのツッコミに私は勘違いしていたことを悟る。

 

「な、なるほど……生きたまま苦しめと?あ、あ、あ、優しく殺してください……慈悲を!」

 

バグり始めた私に喜多さんが助け船を出してくれた。

 

「違うよ後藤さん!今回集まったのはね、アー写を撮るためだよ!」

 

「アー……」

 

「アーティスト写真。今ある写真だと後藤さんは居ないから新しく撮り直すことにしたの」

 

「な、なるほど」

 

「そういう訳で今日は天気も良いし予定も空いてたから撮ってしまおうと思ってね」

 

虹夏ちゃんの言葉に私はもしやと思う。

 

「も、もしかして外で撮るんですか?」

 

「スタジオは高いから。ウチは金無いし」

 

これは困りました。下北沢はただでさえ陰キャの適性率が低いのに写真まで撮るなんて……陰キャにはハードルが高過ぎる!

 

「まぁ外じゃなくてSTARRYでも良いんだけどアー写っていうのはバンドの顔、特徴、方向性が出てくる大切な物だからね」

 

「じゃあ気合い入れて撮らないとですね!!」

 

「その通り!ライブハウス告知や雑誌……どこで使われてもインパクトのある写真にしないと!」

 

「だそうだ」

 

虹夏ちゃんのバンドに掛ける情熱に私は恥じた。この期に及んで自分の事しか考えていなかったからだ。そうだ。今の私は一人じゃない。

 

「わ、分かりました……覚悟、決めます」

 

「覚悟?まぁ良いか。じゃあ早速アー写撮影の旅にレッツラゴー!!」

 

「「お~!」」

こうしてアー写を撮るために下北沢の街を歩いていたのだが中々良い感じのが見つからない。

 

「この壁とかどうでしょうか?」

 

「良い感じだけど……うーん何か違うな~」

 

「そうですか……すいません。私なんて意見言わない方が良いですよね……」

 

「いやいや喜多ちゃん!むしろガンガン言ってきてよ。もしかしたら良いのが有るかもだし!」

 

「分かりました伊地知先輩!」

 

喜多さんと虹夏ちゃんが話し合ってるのを見て私は焦る。喜多さんの意見は採用されてないが積極的に発言している。対して私は皆の後ろについているだけで何も発言していない……。

 

これはマズイ……。今はギターの代役が居ないからクビにされることは無いけど、このままではいらない子認定されてしまう。覚悟を決めろ!

 

「あ、あの虹夏ちゃん!」

 

「ん?どうしたのぼっちちゃん!何か良いのあった?」

 

「む、昔のアルバムジャケットって中々過激なのが多かったですよね!そ、それで思い付いたのですが私の切腹写真を載せるのはどうでしょうか?イ、インパクト有って皆さんの記憶に残りますよ!」

 

「ぼっちちゃんは喋らなくていいよ」

 

勇気を振り絞った一度の発言。それは私から発言する権利すら失わせる結果となってしまいました。やっぱり私はダメな陰キャ女子なんだ……。

 

その後、フェンス、植物の前、公園を経て喜多ちゃんが遂に虹夏ちゃんのお眼鏡に敵う、良い感じの壁を見付けたのだった。

 

うぅ……私だって発言したのに一体何がダメだったのでしょうか。陽キャか?陽キャだから良かったのか?陰キャには話す権利すら貰えないのか?

 

そうして壁の前に立って皆で写真を撮っていたのですが問題が発生しました。

 

「うーん。どうしようかな」

 

「ど、どうしましょう……」

 

「まさかフレディが写真を撮る度に写り込んでくるとは……これは予想してなかった」

 

必要なかったので今まで言ってませんでしたが今回のアー写の旅に荷物持ちとしてフレディさんが同行していましたが……ここにきて問題が発生するとは思いませんでした。

 

「確か伊地知さんとフレディさんは同じ学校なんですよね?何か対処法は有りますか?」

 

「有るには有るんだけど……」

 

喜多さんの問いに虹夏ちゃんが歯切れを悪そうに答える。そして鞄からバナナを取り出すと喜多さんに見せる。

 

「それってバナナですよね、これで一体何を?」

 

「これを、そい!」

 

虹夏ちゃんがバナナを投げるとフレディが一目散にバナナ目掛けて取りに行く。

 

「なるほど!フレディさんがバナナに気を取られている隙にアー写を撮れば良いんですね!」

 

「そうしたいんだけどね……ほら、よく見て」

 

虹夏ちゃんがそう言ってバナナの方を指差すとフレディと一緒に……というよりフレディと争ってバナナを取ろうとするリョウさんの姿が見えた。

 

「リョウまでバナナを取りに向こうに行っちゃうからアー写が撮れないんだよね」

 

「羽交い締めにして無理矢理撮れませんか?私リョウ先輩を抱き締めたいです!」

 

「辞めた方が良いよ。食べ物絡むとリョウは暴走しちゃって身の安全が保証出来なくなっちゃう」

 

「そうですか……」

 

落ち込む喜多さんに私は覚悟を決めて虹夏ちゃんに話しかける。

 

「あ、あの虹夏ちゃん!」

 

「どうしたの?ぼっちちゃんに発言権は無いよ」

 

「い、いえ……あの!わ、私に考えが有ります!」

 

「切腹はダメだよ」

 

「ち、違います!フ、フレディさんと話して説得をするんです」

 

「フレディに説得か……でもねぼっちちゃん。フレディは何も話さないし、そもそも日本語が通じるかは分からないんだよ。上手くいくとは思えないよ」

 

「そ、それでもです!は、話せばきっと分かってもらえる筈です」

 

そう言って私は意を決してフレディさんに話し掛けた。フレディさんは顎を押さえ頷きながら話を聞いてくれた。そして私が話し終わるとフレディさんは壁の前から離れてくれた。

 

「「おお~!」」

 

「は、話せば分かってくれるんです!さ、さぁフレディさんを退かしたことですし写真を撮りましょう!」

 

「OK!……あれ?ところでリョウは?」

 

周りを見ても私達三人以外に居なかった。まさか……!

 

「「「フレディと一緒に帰っちゃってる!?」」」

 

こうしてリョウさんを連れ戻したらフレディさんも一緒に着いてきて写真に写ろうとしたりを繰り返し最終的には喜多さんが画像編集をしてフレディさんを消して完成。

 

加工はされたけど、何はともあれアー写を撮ることが出来た。人気バンドへの夢へ一歩前進したのだった。

何とかアー写の旅を無事に過ごせれたけど問題の解決はしていなかった。そう。この期に及んで私は歌詞を書けていなかったからだ。

 

いや訂正、一応は歌詞は書いたのだが、それはあくまで売れてるバンドを参考にして書いた薄っぺらな歌詞で満足のいくものではなかった。

 

「はぁ。どうしようかな……。家には帰りづらいし……」

 


回想

先日、歌詞を考えていた時に私は思った。喜多さんが歌うのだから陽キャの様な歌詞じゃないといけない。だけど陰キャな私じゃ気持ちが分からないので形から入ることにした。

 

星形のサングラスを着けて腕と腰を振って踊り、ナイトプールに居そうな陽キャのそれっぽい台詞を吐く。

 

『イエーイ!お姉さんテキーラ追加で!!』

 

その様子を襖の隙間から家族全員が覗いていることに気付いた時には私は悪霊にとりつかれてると思われてしまった。何とか神社に連行されるのだけは防いだが家族の生暖かい目に耐えきれず家に帰りたくなくなってしまった。

回想終わり


 

「悩みすぎてどんな歌詞が良いのか分からなくなっちゃった。とりあえず書いた歌詞を誰かに見せて批評されたい……」

 

そう思った私はリョウさんに連絡をすることにした。作曲担当だからというのもあるがなにより気を遣わなくても良さそうだからである。

 

ロインを打つと早速既読が付いて返信が来た。了承の言葉と一緒に待ち合わせの場所として地図のURLが付いていたので私はそこに向かうことにした。

「えーと……あれ?ホントにここで合ってる?」

 

地図に示された場所に到着したのだが私の目に映るのは一般的な民家だ。というよりも見覚えのある民家が映る。

 

「これって前田さんの家ですよね?」

 

ここにリョウさんが居るっていうことでしょうか?てっきりイケてるカフェかなんかに居ると思ったのですが……すいません調子に乗ってました!私はそんなカフェに入ったことすらありません。

 

本当にこの場所で合ってるのか不安にスマホを片手に前田さんの家をグルグル回る。しかし矢印の指し示す方向は前田さん家から離れない。

 

そろそろ集合時間。遅刻は無礼になる。覚悟を決めて前田さんの家のインターフォンを押した。出てきたのは意外というか案の定というか、リョウさんだった。

 

「来たか」

 

「リ、リョウさん!」

 

「まぁ立ち話もなんだし中に入って」

 

「わ、分かりました……お邪魔しまーす……」

 

そうしてリビングに通されたが私はどうすれば良いのか分からず隅っこに立ちすくむ。おろおろとしている私にリョウさんは自身が座る席の横を叩く。

 

「座りなよ」

 

「は、はい!」

 

「そんな緊張しないで。自分の家だと思って寛いでよ」

 

「山田さんはもう少し緊張した方が良いっすよ」

 

そう言って前田さんが扉を開けて現れた。少し驚いたがここは前田さんの家なので当たり前である。

 

「まったく、何で俺の家に来るんですか?祝賀会の時ならともかく今日は何にも無いじゃないですか!俺に何か用でも有るんですか?」

 

「前田に用は無い。だけど前田の母親に用がある」

 

「は?お袋に?」

 

「今日の昼にスーパーの試食品コーナーで食事をしていた時なんだけど前田の母親にばったり会ったんだ」

 

「はぁ」

 

「買い物カゴを見るとカレールーにジャガイモ人参豚肉玉ねぎ……それらの食材を見て思ったんだ。今日の夕飯はカレーだって」

 

「ま、まさかリョウさん……!」

 

「前田。カレー食べさせて下さい」

 

「帰ってくれませんか?」

 

タダ飯を食いに来るとは!リョウさんのお願いに前田さんがクロマティにいた時と同じ飢えた狼の様な目で凄むがリョウさんは怯まない!リョウさんは流れるように土下座へ移行し前田さんに頼み込む。

 

「お願いだ。最近ずっと雑草ばっかで……そろそろ限界」

 

「知らねぇよそんなの!試食品食ってこいよ!!」

 

「出禁になったんだ!」

 

とうとう前田さんの足元にまで近づきズボンの裾を掴むリョウさん。不退転の覚悟を見せるリョウさんに前田さんは語気を強くするが勢いが無い。

 

そんな時だった。襖が開くと前田さんにそっくりの女性。前田の母親がトレーを持って部屋に入った。

 

「…………」

 

前田の母親がテーブルの上にカレーライスを三人分置くと、そのまま何も言わず部屋から去った。

 

「「ありがとうございます!!」」

 

「……やれやれ」

 

私達は前田の母親にお礼を言ってカレーライスを食すことにした。前田さんも先ほどの険しい顔が嘘のように穏やかな(半ば呆れた)顔をして席に着いた。

 

そうして私はカレーを食べようとしたがリョウさんは食べようとせずカレー皿を見つめていた。いや、正確に言えばカレー皿の横にある水の入ったコップと、そこに入れてあるスプーンを見ていた。

 

「なぁ前田。コップにスプーンが入ってるんだけど……」

 

「えっ?ああそうですね」

 

「これって何か意味が有るの?」

 

「さぁ知りません。家だと前からこうだったので疑問にも思いませんでしたよ」

 

「これをやったところでカレーが旨くなる訳じゃないし意味無いように思えるから止めた方が良いんじゃない?」

 

「カレーが冷めるから黙ってさっさと食え」

 

こうして私達は黙々とカレーを食べ始めた。

カレーを食べ終わるとリョウさんは私に歌詞を見せるように言ってきた。そういえばそうでした……その為に私はここに来たんだった。慌ててノートを取り出してリョウさんに差し出した。

 

リョウさんが読み進めるととあるページに指を指した。

 

「これはロックというより子供っぽい」

 

「す、すいませんそれはサインなんですが……」

 

「歌詞なんだけど……ぼっち的にはこれで満足?」

 

「ま、満足?」

 

「傑作なの?」

 

「け、傑作というものではないです……。た、ただ売れてるバンドを参考にして書いたのでこう書けば良いのかな~売れるかな~と……」

 

「……ぼっち。前にも言ったっけ?私が結束バンドの前に別のバンドに入っていた話」

 

「アッハイ言っていたと思います」

 

本小説の中では言われてませんが。

 

「私はそのバンドの青臭いけど味のある歌が好きだった。だけど次第に売れる為に売れ線の曲ばかり作るようになって……個性が無くなって……それが嫌でそのバンドを辞めたんだ」

 

「へーそうなんだ。でも山田さん程の実力者が辞めたらバンド内で揉めません?」

 

何も知らない前田さんが私では聞けなかった深い部分を突いてくる。

 

「うん。ちょっと揉めた。そのせいでバンドも音楽も嫌になった。そんな時だった。虹夏に言われたのは……」

 

『一緒にバンドしない?ベースやってよ!』

 

『何で私が?』

 

『だって私、リョウのベースが好きだもん』

 

リョウさんはどこか遠くを見つめながら語った。この時、失礼ではあるが私は初めてリョウさんのちゃんとした部分を見た。

 

「個性の無い音楽なんて死んだも同じ。だからさぼっち。ぼっちも人の事を気にせず自分の音楽を、自分の好きな歌詞を書いてよ」

 

「で、でも私の様な陰キャが歌詞を書いたら暗めな歌に……」

 

「良いじゃんそれで。というかむしろ陰キャな歌をリア充っ子が歌うって面白くない?」

 

『♪正月は~お芋しか~食べてない~♪』

 

「た、確かに!」

 

喜多さんが私の書いた暗い歌詞をキターンと歌う所を想像し納得した。確かに面白そうである。

 

「様々な個性が混ざって一つになる。それが結束バンドだと思うからさ」

 

今日のリョウさん……何だかとってもカッコいい!

 

「じゃあそろそろ帰ろうか」

 

「は、はい!リ、リョウさん!」

 

「わ、私……頑張って自分の音楽を書きます!」

 

「そう。頑張って」

 

意気込む私にリョウさんは薄く笑みを浮かべる。

 

帰り支度を終えて、リョウさんが玄関のドアノブに手を掛けると何かを思い出したかのように振り返り前田さんに話しかける。

 

「前田。明日はコロッケが良い」

 

「一回ぶっ殺して良いですか?」

 

前言撤回。やっぱりリョウさんはおかしいです。

この日、私は寝食を忘れて歌詞を書いた。自虐的であると思われるかもしれないがこの歌詞は暗めだ。間違いなく万人受けはしないだろう。

 

それでも……この歌を聴いた人の中に、ごく少数ではあると思うが深く刺さってくれる人もいると確信している。

 

それは自惚れでもなければ自嘲でもない。

 

完成しました。私の音楽が。私の自信作が!

 

 

初めてのアンケートにちょっとワクワクしている自分がいます。

  • 後藤ひとりを停学処分にさせたい
  • 結束バンドを停学処分にさせたい
  • 後藤ひとりを留置場に送りたい
  • 結束バンドを留置場に送りたい
  • 原作通り
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