魁!!ぼっち・ざ・ろっく!   作:レフリー

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天地神明に誓い必ずや後藤ひとりを留置場に叩き込みますので暫しお待ちを……!


#12 良い子の諸君!酒は百薬の長とも言うが命を削る鉋とも言われてるぞ。飲酒は程々にな!

後藤ひとりは夢を見た。古い記憶だ。

自分の目の前に幼稚園の制服を着た女の子がいる。

……私だ。

 

幼い私は泣いている。

自分とはいえ泣いてる子を見過ごせなかった私は声を掛けたが反応は無かった。

恐らくこの子に私の姿は見えないのだろう。

 

幼い私は駆け出した。両親の元へ。

リビングを開けると懐かしい姿の両親がいた。

 

「ひとり、どうしたの?」

胸元を開けた黒いレオタードに赤いマントを着けた母親が優しく尋ねる。

 

「おかーさんおとーさん!みんなにはいるのにどうしてわたしにはともだちができないの?」

泣きじゃくる私を両親は優しく抱き締めてくれた。

 

「ひとり。心配しなくても良いんだよ。友達が居なくてもお父さんとお母さんが居るから。だから大丈夫だよ」

軍服を着てツタンカーメンのお面を着けた父親が優しく慰めてくれた。

 

そんな両親に安心して幼い私は泣くのを止めた。そして何かを呟いた。なんて言ったのか聞き取れなかった私は近づこうとしたが体は家族から離れていった。

 

もがいても近づけない。そんな時、私は目覚めた。

陽も未だ登らぬ朝4時。体は汗にまみれていた。

私は恐ろしい事実に気がついた。

 

「私に友達が出来なかったのは両親のせい?」

信じたくなかった私は二度寝に勤しむことにした。


 

オーディションに合格したのも束の間……私は再び窮地に立たされていた。私の手元には三枚のチケット。そう……チケットノルマである!

 

五枚の内、二枚はお母さんとお父さんに売ったので良かったのだが残り三枚をどうすべきか決めあぐねていた。

 

お母さんの友達に売るという方法を提案されたが家族の前ということもあり私のちっぽけなプライドが邪魔をして断ってしまった。

 

「どうしようこれ……」

 

神社の境内の隅っこで私は呟く。当初は残り三枚をクロ高からの友達である林田さん、神山さん、前田さんの母親に売ろうと思っていた。

 

しかし林田さんはその日ボクシングの試合が有り神山さんはその応援に行くとの事で断られました。前田さんの母親は町内会があるとの事……つまり全員から断られました。

 

今まで何の役にも立っていない後藤軍団とやらに売ろうとも考えたんですがそれをすると一線を越えてしまいそうなので止めておきました。黒田さんは論外です。音楽知らなそうだし……。

 

クラスメイトも無理です。いまだに話し掛けられないし、売ろうと思えば売れると思いますが間違いなく恐喝に間違われ退学。ヒキニートまっしぐらです。

 

ということを考えると今の私が売れそうなのはゴリラしかいません。ちょうど三頭いるし丁度ええやんと思った所で正気に戻り私は頭を抱えました。

 

「ゴリラって……」

 

いくら今日の目覚めが最悪だったとはいえ頭が回っていませんでした。そうです。しっかりと睡眠がとれていればあんな悪夢を本当と思うことも無いのです。

 

「今日は帰ろう……。しっかりと寝れば良い考えも思い付くはず……」

 

そう立ち上がろうとした時、スマホから通知音がしました。画面には結束バンドのグループロインの通知が表示されていました。見るとどうやら私以外のメンバーはチケット完売出来たそうです。

 

「はぁ、なんで私だけ上手くいかないんでしょう……嫌になりますよ~人生~」

 

そう悶えていると私の影からイマジナリーフレンド、ブラックホールさんが飛び出して来ました。

      r ‐、

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『カ~カッカッカ!ひとりよ困っているようだな!』

 

「ブラックホールさん!そうなんです……私どうすればいいのか分からなくて……」

 

『そうか。ならばお前が昨夜書いたコレを使う時が来たようだな』

 

そう言ってブラックホールさんは闇から紙の束を取り出しました。

 

「ま、まさかこれは!?」

 

『ビラだ。しかも今の時代には逆に珍しい手書きのビラだ』

 

「ネットが言うにはこっちの方が伝わりやすいと聞いたので……。でも私のような陰キャが見知らぬ人にビラを渡すなんて出来るのでしょうか……」

 

『知らん!』

 

「えっ!?」

 

『じゃあなひとり。ペンタゴンに交代を頼まれたから帰らせてもらう!』

 

「ちょ!?おまっ!」

 

そう言うとブラックホールさんは私の影に潜り込んで帰ろうとしました。私はすかさずブラックホールさんの肩を掴むと彼は影から飛び出る勢いを使って私を空高く放り投げました。

 

「うわぁっ!?」

 

『喰らえっ!フォーディメンションキル!!』

 

ブラックホールさんは私の背後に現れ、逆さに掴んだ私の両腕を交差させて掴み、私の両脚も自分の足でフック。その状態で落下し私の脳天を地面に叩きつけました。

 

「ぐわぁっ!!」

 

『さらばだ!カ~カッカッカ!!』

 

笑い声をあげながらブラックホールさんは私の影に沈み姿を消しました。

 

うぅあの野郎め……イマジナリーフレンドのクセに私に本気で攻撃をしてきました。お陰でビラを配るという苦行の前に体がボロボロです。

 

しかし不思議です。私は脳天から地面に叩きつけられた筈なのに思ったよりも痛みが少ないです。手加減してくれたのでしょうか?

 

そう思いながら立ち上がろうとすると違和感を感じます。やけに地面が柔らかい……。もしかして下が泥だったから軽症だったのかな?思わず下を見ると……。

 

スカジャンを羽織った女性がいました!なるほどこの女性が盾となってくれたんだな……ってそうじゃありません!!

 

これは不味いです!イマフレの存在を見せれない以上、端から見ればまるで私が殺ったかのように見えてしまいます。……周りには誰もいません。今後のロック人生の為です。かくなる上は……。

 

「う"う"う"……」

 

スカジャンの女性が呻き声をあげました。良かった~生きてた~。危うく証拠隠滅するところでした。

 

「あ、あの大丈夫ですか?た倒れる前の事を覚えてますか?見ましたか?」

 

「う"う"……み……」

 

「み、見てしまったのですか……?」

 

仕方ない……ですね……。きっとこの人の運命は遅かれ早かれ終わっていたのです。なので仕方ないのです……。

 

「水を……くれ……!」

 

水!?なんだそっちだったのですか。私ったら早とちりをしてしまいました。反省。

「いや~ありがとね~水だけでも有り難いのに蜆の味噌汁も買ってくれて~」

 

「アッハイ。そ、その……罪悪感で……」

 

「?まぁいいや。にしても飲み過ぎはダメだね~酔い冷ましで境内歩いてたらいきなり気を失うんだもの!体中も痛いし……ん?なんで土下座してるの?」

 

「き気にしないで下さい私のルーティーンみたいなものです他意は有りません」

 

「ん~君面白いね!名前は何て言うの?私は廣井きくり!よろしくねぇ!」

 

「ご、後藤ひとりです。よ、よろしくお願いします。き、きくり様」

 

「そんな堅苦しい言い方は良いよ~気軽にお姉さんって呼んでよ!ひとりちゃんは酒飲める?未成年?」

 

そう言ってお姉さんは狛犬の肩に抱きついていました。私が言うのもあれですがヤバい人です。いや、状況的にいえばブラックホールさんの技の影響も少なからず有るかもしれませんが……。

 

お姉さんが狛犬におにころを持たせようとしてる……厄介はごめんです。この隙に逃げよう……三、二、一今だ!

 

「あれこれってギター?もしかしてバンドやってるの?」

 

お姉さんにギターを掴まれ逃げることに失敗しました。

 

「……え?」

 

「実は私バンドやってるんだよね~ベースボーカルやってるんだ~。ひとりちゃんはどうなの?」

 

これは不味いです。本物のバンドマンと話すのは生まれて初めて。ここで下手な対応をすれば……。

 

~以下後藤ひとりの妄想~

演奏した場合

 

「それが君の実力か……」

 

「アッハイ……そうです」

 

「処す」

 

後藤ひとりは打ち首となり下北沢に首を晒したのでした。

 

or

 

演奏しなかった場合

 

「処す」

 

先輩バンドマンの命に背いた後藤ひとりは死をもって大罪を償い切腹からの打ち首。

~以上後藤ひとりの妄想~

 

だ、ダメだ……弾いても弾かなくても死は免れない……!!後藤ひとり¨詰み¨である。もはや私に打つ手無し!

 

こうなれば仕方有りません。テキトーな事を言って誤魔化して逃げるしか有りません。よし、頑張れひとり。

 

「じ、実は昨日から弾き語りをしているんですが一向に上手くならなくてこれからこのギターを質屋に売りにいこうと思っていたんです。わ私はこのギターに相応しくないカスです。よよーし売ったお金で何を買おうかな~ビックリチャンチョコ大人買いしようシール全部集めるぞ~」

 

「待って!!」

 

「ヒャッハイ!」

 

腕を掴まれた……おしまいだ……!

 

「一日だけで諦めるの?」

 

「……え?」

 

「もう少し頑張ってみようよ。そうすればさギターに相応しい人間になれるかもしれないよ」

 

あれ?もしかしてこの人もリョウさんと同じで音楽に対してはマトモなタイプの人?

 

「えへへ。何だったらお姉さんが手取り足取り教えてあげるからさ。頑張ってみない?」

 

「あ、あの……!」

 

「ん?」

 

「い、今の話しは全部嘘です」

 

「えっ今の全部ウソなの?逆にスゴいね!?」

 

そうして私はお姉さんに本当のことを洗いざらい話した。チケットノルマの事やビラ配りの事を。そうするとお姉さんは急に泣き出し自分の胸を叩いた。

 

「よし!手伝ってあげよう!」

 

そう言ってお姉さんは私を掴むとどこかへと連れてこうとした。

 

「い、一体どちらに!?」

 

「まあまあお姉さんに任せなさい!」

 

判断が早い!

ひとりが廣井きくりに連れ去られた時、STARRYではひとりを除いた結束バンドの面々が自主練習をしていた。

 

一通りの演奏が終わると虹夏が喜多に尋ねた。

 

「そういえばぼっちちゃんから返信来た?」

 

「いえ……まだ来てないです」

 

「既読スルー」

 

「もしかしてプレッシャー与えちゃったかな?」

 

「かもしれないですね……」

 

「……そういえば喜多ちゃん。ぼっちちゃんって学校だとどうなの?やっぱり番長してる?」

 

「……正直よく分からないんです。クラスメイトからは話し掛けられていないと思えば林田さんみたいな友達が周りに集まっていたり、私と一緒に弁当食べるのは無理だけど友達の為に他校に襲撃をしたり……行動が両極端でよく分からないんです」

 

「確かによく分からないね」

 

「まるでジキルとハイドだな……」

「じゃーん!私のスーパーウルトラ酒呑童子EX!!居酒屋から戻って参りましたっ!なんつってハハ!かっこいいでしょ!」

 

「アッハイかっこいいです……」

 

あれから連れ去られた私は神社から街中に移動していました。しかもチケット販売の為に今からここで路上ライブをすることになりました。

 

「よし!機材も来たしいつでもいけるね……ひとりちゃん景気付けにどう?一杯やっとく?って未成年だったか!」

 

そう笑いながらお姉さんはおにころを飲んだ。にしても……さっきからこの人お酒ばっかり飲んでるな。あんなに気持ち悪そうにしていたのに……。

 

「お、お酒、好きなんですね」

 

「うん!お酒を飲むと全部忘れられるからね」

 

「わ、忘れる……?」

 

「そう!年金問題、地方格差、少子高齢、晩婚化、若者の貧困……そんな現実を忘れさせてくれるんだ!私はこれを幸せスパイラルと呼んでいる!真似していいよ」

 

なんだその不幸にしかならなそうなスパイラルはっ!

 

「というかひとりちゃんも大人になったら酒キメそうだよね~闇抱えてそうだし、間違いない!」

 

「ええ……」

 

「ひとりちゃんは将来の不安とか無いの?」

 

「し、将来の不安ですか……」

 

私はふと考える。そういえば最近色々有りすぎて特に考えていなかったな……。

 

「うーん……特に無いですね。き、今日一日を生きるのに精一杯です……」

 

「へぇ意外だねぇ。色々考えてドツボにハマりそうなタイプに見えるんだけど」

 

「む、昔はそうでしたけどクr……高校に入ってからはそんな考えは捨てました。バ、バンドとかをやってからは色々なことにふっ切れました」

 

「へー」

 

「ズ、ズバリ言ってどうでもいいと思えるようになりました。ち、ちょっとあっちを見てください」

 

「……え?」

 

そう言って私は交差点近くの少し広い場所に指を指した。その方向にはフレディさんとメカ沢さん、そしてゴリラが三頭横並びで歩いていました。

 

「あ、あれは私の知り合いなんですが考えて見てください。じ、自分の将来より彼らの将来の方が数百倍興味有ると思いませんか?」

 

「た、確かに……就職とかどうするんだろうね」

 

「そ、そりゃ私にも悩みはあります。だ、だけどゴリラが学校に来ていることに比べたらどんな悩みも小さく思えてくるんです!!」

 

「なるほどねぇ……悩んでいるのが馬鹿馬鹿しくなってくるね」

 

「ひ、人は自分中心に物事を考えがちですけど……世の中は広いです。た、例えば……ペットの犬の世話が大変と愚痴をこぼす人がいたとして、そこにムツゴロウさんが『どうってこと無いよ』と言ってきたら謝るしかありません」

 

「つまり……私達はまだまだ悩みのスケールが小さいって事か」

 

「アッハイ……国籍不明の高校生や人間かどうかすら疑わしい高校生の身にもなってください」

 

「だけどひとりちゃん……」

 

「なんでしょうか?」

 

「ひとりちゃんは高校生だからともかく……私はいい年したバンドマンだよ。将来が心配になるのは仕方ないと思うけど……」

 

「お、お姉さん……私の言いたいことが伝わってないようですね。だ、だったらもう一度フレディさん達を見てください」

 

そう言って指を指すとフレディさん達はメカ沢さんを胴上げしていた。

 

「何あれ?」

 

「わ、分かりませんか……胴上げをしています……」

 

「い、いや……それは分かるんだけど……何で胴上げしているの?」

 

「そ、それは知りません。た、ただ一つ分かるのはあんな人たちでさえ将来の心配なんてしていないという事です……間違いありません」

 

「まぁ彼らの前ではどんな悩みも通用しないだろうね……。だけどねやっぱり心配なんだよ。将来の心配が……このままバンドやってていいのかなって……」

 

私はため息をついた。

 

「し、しつこい程に心配症ですね……幸せスパイラル切れたんですか……だいたいバンドマンに将来なんかあったもんじゃないですから」

 

「ひとりちゃん結構毒吐くね……心にくるよ……」

 

「ほ、ホントにどーってこと無いんです!こ、ここまで言っても分からないなら仕方ありません……。も、もう一度彼らを見てください……これで安心……」

 

そう言ってフレディさん達を見ると焦った表情をしてうつ向いている。何か有ったのかと思い視線の先を追ってみるとそこには頭部に穴が開き部品を露出させ動かなくなったメカ沢さんがいた。

 

「「た、大変だぁ~!!」」

とりあえずメカ沢さんが廃品回収されないようにゴリラに持っていかせるとお姉さんが機材のセットをしていた。

 

「じゃあひとりちゃんやろうか!」

 

「え"え"っ!?こ、この状況でですか?」

 

「そう!メカ沢君の騒動で人が集まっているでしょ。このチャンスを逃す手は無いよ!」

 

「た、確かにそうですけど……」

 

「よし……じゃあ早速やろうか!ええーご通行の皆さん!!今から路上ライブをやります!!今から演奏をしますのでよろしければ聴いてください!!!」

 

「こ、心の準備が……!?」

 

「いくよひとりちゃん。魅せてあげて」

 

こうして私は生まれて初めての路上ライブをしました。最初は自分の不安を観客に察せられてしまい心配させてしまいました。

 

でもお姉さんの言葉が頭に過ってからはまともに弾くことが出来ました。(片目しか開けていませんが……まぁここら辺は原作を見てください)

 

何はともあれライブは成功し、私の音楽を聴いてチケットを買うお客さんが現れたお陰でノルマの内二枚を達成。あと一枚というところまでいけれました。

 

そしてその最後の一枚はというと……。

 

「最後の一枚、私が買うよ」

 

「ええっ?い、良いんですか!?こ、後悔してもしりませんよ!返金はききませんよ!」

 

「ひとりちゃんもしつこいね……私は普段、新宿を拠点にしていて近いし、STARRYも知ってる……まぁお酒以上の幸せスパイラルをキメさせてね!」

 

「は、はい!!」

 

「じゃあもう遅いし帰るね。ライブ楽しみにしてるよ!」

 

私は手を振ってお姉さんと別れた。

 

ちなみにお姉さんはチケットを買ったはいいものの電車賃が無くなったのでフレディさんの愛馬・黒龍号に乗って帰っていきました。

 

フレディさんの後ろで馬にまたがるお姉さんを通行人は写真を撮っていましたしたがお姉さんはVサインをしたり中指を立てたりしてファンサービスをしていました。

 

私もいつかはあれくらいの度胸ご身に付けれるように努力しないと!ですね。

 

 

補記

ちなみにその後お姉さんはイソスタで馬に乗ってる姿がトレンドとなり周囲から色々言われ頭を抱えたそうですが……人気者は大変そうだなと思いました(小並感)。

 




後藤ひとりのイマジナリーフレンドのギタ男君はブラックホールに吸い込まれ宇宙の彼方にすっ飛ばされました。なので本編には現れませんのであしからず。
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