初ライブは台風が直撃ということもありSTARRYは閑散。お客さんも私達目当ての人では無かったので注目されず、誰にも見られない中の演奏は調子が出ず最初は良い演奏は出来ませんでした。
しかし、と私は観客を見る。中には私の路上ライブを見て、台風にも係わらず来てくれたファンの人もいる。こんな演奏で終わらせたくない!路上ライブの時の様に楽しんでもらいたい!!
そうして始まった二曲目。一生懸命に弾く私のギターに呼応するかのように皆の動きも良くなる。この時、結束バンドは心から結束出来たんだなと後々感じました。
最終的に三曲目も上手くいきお客さんも盛り上がってくれました!!結束バンド初めてのライブは成功と言っても過言ではないでしょう(十人位しかいないという所には目をつむりますが)!!
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翌日。ライブの興奮が未だ冷めやらぬ私は秀華高校に向かっていた。理由はそう……補習である。うぅ折角の夏休みになんで学校に行かないと行けないんでしょうか?
進学するつもりは無いのですからテストの成績が悪いことくらい見逃してほしいです。
そうネガティブになりながら歩いていると後ろから声を掛けられました。
「おーい!」
「ひゃっ!?は、林田さん!」
「すまんすまん。驚かせちまったか」
「い、いえ……林田さんも補習ですか?」
「まぁな。まったく折角ボクシングの試合に勝って気分が良いのにテンション下がっちまうぜ」
「か、勝ったんですね……おめでとうございます」
「おう!サンキューな!後藤も初ライブ盛り上がったそうじゃねえか。見たかったな~。次のライブは絶対に見に行くから優先してチケット売ってくれよな!」
「アッハイありがとうございます!」
そうして歩いていると林田さんがあくびをした。
「にしても退屈だな~」
「すすいません!お、面白い話が言えなくて……」
「別に後藤がって訳じゃねぇよ。……学校ってこんな退屈でつまらないトコだったっけか?」
「アッハイ……まぁそれが学校という所ですので……」
「折角の夏休みにこんな退屈な思いをしているのはある意味拷問に近いぞ」
「ま、まぁテストの点数が悪かったのですから仕方ないといえば仕方ないといいますか……」
「とにかくよ!折角の夏休みにこんな見慣れた風景はウンザリなんだよ!」
「で、でも退屈ということは平和ということでもありますし……友達と話すだけでも楽しくなります」
「まぁそうだけどよ……なんかこう……アッと驚くことはねぇかな……それを思うとクロマティが有ればな……って思うよ。絶対に飽きねぇだろうし」
フレディさんが黒龍号乗ってるのを横目にしつつ私は持論を話す。
「そ、それは錯覚だと思います。隣の芝生はなんとやらというのと一緒です。そ、それに正直、飽きっぽい林田さんならクロマティでも飽きると思うので意味ないですよ」
「そうかも知れねーけどよ俺は刺激が欲しいんだよ!!」
「ハ、ハッキリ言いますけど学校に刺激的な物なんて一つも有りません。だ、断言できます!」
フレディの乗る黒龍号が公道から歩道に乗りだし走り出した。目の前にいた他校の不良が何人か吹き飛ばされたが私は話を続けた。
「ク、クロマティでも秀華でもどこの学校も退屈だと思います。が、学校が面白いと言う人なんてつまらないことでも面白いと思える人か、自分の居場所は面白いと思い込んでるだけです」
「つまり……退屈なものにわざわざ退屈と文句をつけるなということか……でも秀華は普通でつまらねぇぜ」
「ふ、普通で良いじゃないですか。ど、どこが不満なんですか?」
「俺だってそんなスゴいことは望んじゃいねーよ!!ちょっと面白いことがあればそれだけで良いんだ。なんなら学校関係無くて良い!」
「お、面白いことですか?う~ん……メカ沢さんと喜多さんがバイクにまたがって疾走してたら面白いと思いますけど……そんな事あるわけ……」
そう言った時でした。後ろからバイクのエンジン音が聴こえたので私達は思わず音のする方を見る。見るとメカ沢さんと喜多さんがバイクにまたがっていた。
「「……乗ってる……」」
面白さよりも驚きの方が気持ち的には強かった。
二人の乗ったバイクを目で追い掛けるとメカ沢さん達は路地裏へと入っていった。姿が見えなくなったので改めて学校に向かおうとしたその時だった。
キーーッ!!ガッシャン!!
スキール音と衝突音が聴こえた。
「「まさか!!」」
私達は思わず路地裏へと駆け出した。路地裏に入ると案の定というか想像通りの光景が広がっていた。倒れている喜多さんとバイクごとバラバラになったメカ沢さんだった。
「き、喜多さん!メ、メカ沢さん!」
「またバラバラだ~!!」
気は失っていたもののヘルメットを被っていたお陰で軽症だった喜多さんを救急車に乗せると私達は残った残骸の方を見る。
「へ、ヘルメットを被ってないからこんな目に……」
「いや、そういう問題じゃねーだろ……」
「ど、どうしましょう?ぜ、前回はいつの間にか直ってましたが今回はそんな事を言ってられないくらいバラバラです……もはや原型無さすぎてバイクのパーツと区別出来ません」
「コレは俺らの力でどうにかしねーとダメだろうな」
「そ、そうですね一刻も早く何とかしないとゴミと間違えられて回収されてしまいます」
「でも俺らに出来るかな……?」
「で、出来ないと思ったら何も出来ない……挑戦する心が大事です。メ、メカ沢さんは私達にとって大切な友達の友達なんです」
「そうだな……友達の友達だもんな……」
こうして私達は修理に着手した。バイクとメカ沢さんの体を分けてそれぞれ組み立てる。補習が有ることも忘れ一心不乱に組み立てた。
そして日が傾き掛けた頃。バラバラだった部品が二つの物体に組上がった。しかし……。
「「こんな人知らないよ~!!」」
出来上がったそれはメカ沢さんの顔が付いたバイクと、同じくメカ沢さんの顔が付いたギターだった。
漢らしいエンジン音とこれまた漢らしい演奏が出来そうな物品だ。
「バイクはともかく何でギターに!?」
「お、恐らくバラバラになったのはバイクだけでなく喜多さんのギターも含まれていたのでしょう……」
「どうするんだよコレ……」
「ど、どうしましょう……?」
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「た、ただいま戻りました」
「お疲れ~喜多の様子はどうだった?」
「アッハイ……明日には退院出来そうです。メ、メカ沢さんの方はどうでしたか?」
「サトウ電器のおっちゃんが言うにはバイクもギターも直せれるから復元は出来るが二日は掛かるそうだ」
「ふ、二日ですか……だいぶ早いのですけど喜多さんの退院には間に合いそうにないですね」
「まぁ仕方ねぇよ」
「ところで何でお前ら俺の家に集まるんだ?」
前田さんが麦茶を持って会話に入ってきた。
「す、すいません……家からちょうど良い距離で……」
「まぁ固いこと言うなよ」
「言うに決まってるだろ!俺の家だぞ!!」
「じゃあその女はどうなんだよ」
そう言って林田さんは指を指す。その指の示す先にはアイマスクを付けて座布団を枕代わりに寝ているリョウさんの姿があった。
「コレはもういい……」
「と、ところでどうしましょうか……喜多さん退院した後まっすぐこっちにくるそうです。メ、メカ沢さんがいないことを知ったら悲しんでしまいます」
「俺に名案がある」
「め、名案……ですか?」
「そうだ。前田、そこの茶筒を取ってくれ」
「えっ?コレか?」
そう言って林田さんは前田さんから茶筒を受け取ると外側の包装を外し銀のカバーを露出させた。そしてその上にマジックペンでメカ沢さんの顔を書いた。
「コレで誤魔化せれるだろ」
「雑すぎるだろ……」
「大丈夫だ。遠近法でちょっと遠ざければ分かりゃしねぇよ」
「う、上手くいきますかね……」
「良いな皆。二日耐えればメカ沢は戻ってくるんだ。それまで喜多のヤツがメカ沢の話題を出してきても全力でかわすんだ」
「わ、分かりました……」
「大丈夫かよ……」
そして迎えた翌日。前田さんの家のインターホンが鳴る。
「こんにちは!ここに集まるって聞いたんだけど……メカ沢君は元気かしら?」
「よ、ようこそ喜多さん。ど、どうぞ上がって下さい……」
「おじゃまします!メカ沢君は来てる?」
「あぁ来てるぜ!ほらここに!」
そう言って喜多さんのいる机の真反対側にメカ沢さん(茶筒)を指差す。
「メカ沢君心配したわ!元気そうで良かった!」
「…………」
「メカ沢君?」
「メカ沢は退院したばっかだからよまだ少し辛いらしい。喜多、お前も軽症とはいえ退院したばっかなんだ。無理すんなよ」
「そうだったのね……私も気をつけるわ」
林田さんの言葉に納得する喜多さん。今にして思うが茶筒なのによく気付かれないものである。
「いやあ元気になってくれて何よりだ」
「ホントごめんなさい心配掛けちゃって……」
「まぁあれだ。せっかく来たんだくつろいでいけよ。何にもねぇけどな」
「何にもねぇとか言うな俺んちだぞ」
「にしても林田さんって気が利くのね……。初めて見た時はなんて怖そうな人って思ったから……」
「おいおいそんなに俺を褒めるなよ~そこまで言われたらさらに気ィ利かせたくなっちまうぜ!」
そう言って林田さんは座布団を敷いて座るよう促す。座布団はちゃっかりとメカ沢さんから一番離れた所に置いてある。
「そういえば後藤から聞いたんだがライブ成功したんだっけ?その時の話を聞かせてくれよ」
「良いわよ!」
なるほどライブの話をして時間を稼ぐようですね。それに結束バンドのことならメカ沢さんを出さなくても良い。林田さん上手いです。
「にしてもこんな炎天下の中よく来てくれた。お茶でもいれるからよ」
そう言ってメカ沢さん(茶筒)の蓋を開けて茶葉を入れる。
「…………」
「「「ああ~~ッ!!」」」
喜多さんが絶句。私達は思わず叫んでしまった。
こうしてメカ沢茶筒事件が発覚してしまった訳で普段の喜多さんからは想像出来ない程の激しい憤慨を見せた。
「メカ沢君はどうしたの!?」
「今、入院中だよ……」
サトウ電器にですが……。
「茶筒とすり替えるなんてふざけたマネするなんて!!」
「茶筒と変わりねーだろうが」
「は、林田さん言い過ぎです」
「人をナメるのもいい加減にして下さい!!」
「グダグダとうっせーんだよ!!後藤!口開けろ!!」
「えっ?アッハイ」
そうして私が口を開けると林田さんは激昂している喜多さんの方に顔を向けさせました。
口の中を覗いた喜多郁代は後藤ひとりの口の中に得体の知れない生物がいることを知ってしまいました。頭が理解するのを拒み頭痛が起こります。
SAN値チェックの時間です。
……失敗。
……大きく減少。
……喜多郁代は理解不可能な現実についていくことが出来ず胎児化します。
これにてフェーズ終了。お疲れ様でした。
「ばぶー」
「コレで良し……と」
「やりすぎだ林田!!」
気が付くと目の前にいた喜多さんが赤ん坊になっていました。何で!?そんな異常事態に普段はマイペースな姿勢を崩さないリョウさんも慌てて声を荒げています。
「どうすんだよ赤ん坊の世話なんて出来ねぇぞ」
前田さんも額に汗を流しています。それとは対照的に林田さんが涼しい顔で宣います。
「大丈夫だ。アテがある」
「あ、アテですか?」
私が尋ねると林田さんが頷いた。
「下北沢の天使。ニジカエルに託すんだ」
「に、虹夏ちゃんにですか!?」
「そうだ。アイツは面倒見が良いからな。アイツになら喜多のやつを立派に育ててくれるだろう……」
確かに!林田さんにしては名案です。
「残念だが林田。それは無理だろう……」
「り、リョウさん!」
「虹夏達は今、家族旅行でいない。したがって預けることが出来ない。それにだ……仮にいたとしても虹夏には店長と私の世話という大任を背負っている……これ以上の負担は掛けたくない」
うっ……よくよく考えてみればそうでした。リョウさんが今日まで生きてこられたのも全ては虹夏ちゃんのお陰……こんなことに負担を掛けさせたくはありません。……ヨシ!
「しかしどうしようか。他にアテなんて……」
「あ、あの!わ、私にアテがあります!」
「な、なにッ!?後藤にアテがッ!?」
「た、多少荒業ですが……押し付けることが出来ます」
「よし……やってみるか」
「は、林田!良いのか本当に……」
「他に方法が無いんだ……賭けてみようじゃないか!教えてくれ後藤!お前のアイデアを!」
「アッハイ……まずは……」
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この日、廣井きくりは珍しく朝方に帰宅の途に着いていた。といっても先程まで居酒屋で飲んでいてオールしていただけだが……。
「う~ん?何だこれは?」
きくりがアパートに辿り着くと玄関に布が掛けられた籠が置いてあった。
「メンバーのプレゼントか?いや、でもさっきまで皆と飲んでたし……もしかしてファンの差し入れ?マジか住所知られたのか?」
きくりは恐る恐る掛けられた布を取ってみると中には赤い髪をした赤ん坊が入っていた。
「……えっ?」
「ばぶー」
籠の中には赤ん坊と一緒に紙が一枚入っていた。どうやら手紙のようだ。紙を広げると一文が添えられていた。
『あなたの子です』
きくりは頭が真っ白になった。
「い、いやいやいや……違う違う……いやでももしかしてあの時……?いや違う……よな?昔も今も酔ってて分からないよ!?」
きくりが慌てふためいているとフレディと共に『偶然にも』後藤達が現れた。
「お、お姉さんこんにちは!」
「ぼ、ぼっちちゃん……こんにちは……」
きくりは何とか挨拶を返したが体から汗が噴き出していた。自分を慕っている子達がこの現状を見ればどう思うのか……酔ってボヤけた頭でも理解できた。
「お、お姉さん……その子は?」
「えっ!?この子!?あぁ~その~玄関に落ちていたんだよ!いや~困ったもんだね!」
「普通は赤ん坊が玄関に落ちてるわけ無いでしょ」
きくりは本当のことを話したが皆は怪訝な顔をして何も答えず前田が目を伏せつつきくりに皆の意見を代弁した。
「だ、だよね……」
きくりは明らかに自分が信じられていないのを皆から感じた。
「あ、あれ?お、お姉さん……これ」
「どうした後藤……ッ!これは」
後藤と林田は籠に有った紙を見つける。
「あ、あの!それはッ!」
「ま、まさかお姉さん……自分の子を捨てるんですか?」
「いや……そうじゃなくてね……えーと」
「ベーシストだからクズっていうのは古事記にも書かれる程の常識っていうのは分かりますが子捨ては許されません」
山田が正論を吐く。
「私の子じゃないんだよ!私は知らない!」
「でもその紙には『あなたの子です』って書いてますけど」
「そうだけど……そうじゃないんだ!」
「お、お姉さん!」
「えっ?ぶふっ!?」
後藤がきくりにビンタをする。思いも寄らぬ後藤の行動にきくりはもちろん一同動くことが出来なかった。
「お、お姉さん……私が誰かに暴力を振るったのはコレが初めてです……意味……分かりますか?」
「えっ?」
「つ、つまり私はそれだけ怒っているということです」
「ぼ、ぼっちちゃん……」
「わ、私達は絶対にお姉さんを見捨てたりはしません!な、なのでお姉さんも赤ちゃんを捨てないで下さい!」
後藤の目に涙の訴えにきくりは思わず連れて涙を流した。酔ってる人間は感情的になりやすいのだ。
「ぼ、ぼっちちゃん……!私、頑張るよ~!この子を立派なベーシストに育ててみせるよォ!」
「い、いえ……出来ればボーカルかギタリスト、あるいは両方でお願いします」
「欲張りだねぇ!お姉さん頑張るよォ!」
「何を頑張るんですか?」
突然の声にきくりはもちろん後藤らも声のする方を見る。美しい赤い髪を纏い、人を元気にする笑顔を見せる女。喜多郁代だった。
「き、喜多さん!な、なんで!?」
「後藤さんの口の中を見てからの記憶が無いんだけど……説明してくれるわよね?」
喜多は笑顔を崩さず後藤に詰め寄った。後藤は感じた。笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙をむく行為が原点である……と。
「私にも説明してほしいな~」
きくりが一升瓶を担いで後藤に詰め寄る。この時きくりは普段の糸目から開眼。強キャラ感を醸している。後藤が周りを見渡すと山田はもちろん林田や前田、フレディさえ既に姿を消していた。
「あ、あああの……!そのッ!」
「「さぁっ!!」」
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結果だけを述べるとすれば後藤は喜多ときくりと仲直りをすることは出来た。それまでの過程を述べることはしなかったが……。
次回は江ノ島。ぶっ飛んでいこうと思います