彗星の如く輝く陽キャ、喜多さんがキターンと結束バンドに再加入して数日。仕事の上達具合はあっという間に私を超えて、新人にも関わらず私の知らない仕事を虹夏ちゃんから教わっている。
仕事も出来ず、ライブでは満足にギターも弾けない。そんなクソザコツチノコな私に更なる追い討ちが虹夏ちゃんのお姉さんである店長さんから掛けられました。
バイト終わりに結束バンドを集めて曰く、『明日は機材の置き場を変更するから人手がほしい。時給分の金は出すから一人ずつ誰か連れてきてくれ』と言い出してきた。
家に帰った私は困り果てました……。日が経った今でも私はクラスメートから避けられてる状態。そうでなくても誰かを誘うなんて……。しかも遊びならまだしも労働をさせるなんて私にはハードルが高すぎて無理です。
こうなったら仕方ありません。中学生の時に二人組になれと言われ生み出した技術、細胞分裂でこの状況を打開するしかありません。
コツを掴めば根暗な私でも簡単に出来るので中学時代は重宝しました。最近はなんだかんだ誰かと一緒にいる機会が多くて使っていませんでしたが久しぶりにやってみようと思います。
まず右半身を右に向かわせ、左半身を左に向かわせます。すると頭部に亀裂が入りますので両手でその亀裂を広げます。すると断面から新しいひとりが現れますので頭部と同じように胴体も広げて完成です。
「「にしても何で皆は同じ事をしないのかな?自分よりもやっぱり他人の友達の方が良いのかな?」」
そう思っていると突然スマホから電話がなりました。突然の電話に驚いた私はスマホをもう一人の私に押し付け合うという意味の無いことをやった後、二人でスマホを手に持って発信者を確認します。液晶に書かれた名前は林田さんだったので私達は安心して通話ボタンを押すことにしました。
「「ごご後藤ですこんばんは!」」
『おうこんばんは……あれ?後藤、もしかして今風呂にでも入っていたか?声が二重に聞こえるんだが』
「「い、いえお風呂には入っていませんが……声に関してはお構い無くでお願いします……」」
『お、おうそうか……。所でな、お前に相談したのには頼みたいことが有ってな……』
「「な、何でしょうか?も、もしかして臓器の提供ですか?わ、私ので良ければどうぞ!」」
『それは要らねぇ。お前ってさ今ライブハウスで働いているんだろ?神山から聞いたんだけどさ、明日人手が欲しいんだって?それでさ、俺を連れていってくれないか?ボクシングのグローブが破れちまってな……新しいのを買うのに金が足りないんだ!頼む!!』
「「わ、分かりました!あ、ありがとうございます!!」」
『ハハハ。何でお前が礼を言うんだよ!ホントありがとな!じゃあまた明日放課後に!』
「「アッハイ。ほ、放課後に……」」
待ち合わせの約束をして林田さんとの電話は終わった。さて……。私はもう一人の私と向き合う。こうなってしまってはもう一人の私は必要有りません。そしてそれは相手も同じ事を思っている。
補食した方が次の後藤の主人格となる為に互いに譲れない。一応記憶とかは受け継がれるので、どっちが主人格になったとてこれから先の人生に支障は無いがそれでも私は私を失いたくない。
私を補食しようと後藤2号の頭部の輪郭が揺れ動く。私、後藤1号も胴体を開いて補食体勢に入る。この戦い、絶対に譲れません!
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死闘を制し、2号こと後藤ひとりである私は林田さんと待ち合わせ場所から歩いてSTARRYへと向かった。中に入ると懐かしい人物達と出会った。
「ま、前田さん、神山さん!ひ、久しぶりです!」
「おう」
「やぁ後藤さん。久しぶり。元気だった?」
「アッハイ。げ、元気……です」
番長の件が頭をよぎる。
「ハハハ。まぁ無事で何よりだよ」
「と、所で神山さんと前田さんは誰の紹介でここに?」
「僕は山田さんだよ。まぁ肝心の山田さんは補習で来るのが遅れちゃうけどね。前田君は伊地知さんだよ」
「神山の友達だからって理由でな。まったく友達でも何でもないっていうのに……」
「だ、駄目ですよ前田さんそういうことを言っちゃ!」
「そうだよ前田君!そんな態度だから友達が出来ないんだよ!」
「仲間がいた方が人生楽しいぞ」
「ここまで言われちゃいけねぇくらいまで俺は悪いことを言ったか……?」
前田さんが額を手で覆うと虹夏ちゃんに呼ばれ倉庫の方に行きました。そろそろ私達も始めますかと、そんな会話をすると後ろから扉が開いた音がしました。
「ごめんなさい!委員会の仕事で遅れちゃいました!」
「よう」
喜多さんとメカ沢さんが入ってきました。まぁ予想は付いていましたが順当な組み合わせですね。ふと神山さんの方を見ると驚愕の表情でメカ沢さんを見ていました。もしかするとこれは。
「は、林田さん……もしかして神山さんはメカ沢さんのことを……」
「確認しねぇとな……」
私は林田さんと一緒に神山さんを店の奥の方に連れていき掃除をしながら確認をします。
「か、神山さん。さ、先程驚いていましたけどもしかしてそれって……」
「えっ!?あんなのを見たら普通は驚くでしょ」
神山さんがメカ沢さんを指差し、私達は確信する。仲間だ……。ようやく新しい仲間が入りました。しかしここで林田さんが水を差すような言葉を吐く。
「なぁ。ふと思ったんだけどよ。もしかしたらメカ沢って俺らが間違えてるだけで実は普通の人間のワルかもしれねぇよ」
「いやいや林田君。あんな形の人間なんているわけないじゃないか」
「そ、そうですよ鼻も口も無いんですよ」
「だけどなよく考えろよ。今のところメカ沢が人間ではないかもと疑ってるのは俺ら三人だけなんだ。おかしいだろ!?」
「た、確かに……」
私達三人がメカ沢さんの方を見ると喜多さんと資材を分別して段ボールに入れている。周りにいる店長さんやPAさんも特段変わった様子はない。神山さんが頭を抱えだした。
「あれ?もしかして僕達の感覚が間違ってるのか!?」
「その可能性も視野に入れた方が良い……世の中には後藤みたいな存在もいることだし無機物の人間がいたって不思議じゃねぇ」
「そ、そうですね……ん?は、林田さん今なんて?」
「確かに後藤さんという存在をふまえるとあんな感じの人なんて都内の路地裏探せば二人三人いそうな気がしてきた」
「ち、ちょっと二人とも何言ってるんですか!?」
神山さんと林田さんが私のことをまるで人間じゃない前提で話をし始めたので私は二人の間に入って会話を止めようします。その時でした。
「危ない!!」
「キャッ!!?」
メカ沢さんの怒声と喜多さんの悲鳴が聞こえ、私達は思わず声のした方を振り向く。見ると喜多さんの頭上には鉄パイプ群が。そして喜多さんを助けようと突き飛ばすメカ沢さんの姿が見えました。
喜多さんを安全地帯に突き飛ばした刹那、メカ沢さんの頭に鉄パイプ群が降り注ぐ。甲高い金属音が響いた後、倒れるメカ沢さんに喜多さんが駆け寄る。
「メカ沢君!」
「おう喜多……大丈夫か?」
「私は大丈夫よ!メカ沢君は!?」
「俺は大丈夫だ。見ろ、かすり傷一つ無い」
(((やっぱり人間じゃないって!)))
私達が内心そんなツッコミをしていると虹夏ちゃんが怪訝な目でメカ沢さんを見ている。メカ沢さんじゃなくて鉄パイプの方が折れ曲がってることから分かったのかもしれない。
「ねぇ喜多ちゃん。私達メカ沢君のことを普通の高校生だと思っていたんだけどもしかして……」
(((さすが常識枠!早くツッコんでくれ!!)))
「もしかして体が異常に硬い高校生なんじゃない!?」
「そうか!体が異常に硬かったのね!」
(((お前らワザと言ってんのか!?)))
「そんな所で集まって何してんの?」
振り返るとリョウさんが立っていた。リョウさんが私達を押し退けて前に出ると当然その先にいるメカ沢さんと鉢合う。
「ん?」
「え?」
リョウさんとメカ沢さんの目が合い、空気が一瞬静かになった後、STARRYにリョウさんの悲鳴が上がる。
「え……え"え"え"ぇ!!?」
普段は物静かでマイペースなリョウさんの豹変ぶりに喜多さんだけでなく虹夏ちゃんでさえ唖然としている。正直リョウさんには期待していませんでしたがようやくツッコンでくれそうです。
「コ、コイツは……もしかしてロ、ロ……!」
(((あともう一息!ロボッ……!!)))
「六年前に引っ越していった幼馴染のメカ沢ちゃんじゃないかー!!?」
「えっ?もしかしてリョウ姉ちゃん!?」
「「「ええっ!?うっそぉ~!!?」」」
メカ沢さんの謎がますます深まっただけでした。
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色々と騒動は有りましたが無事にバイトは終わり、神山さん達は店長さんからお給料を貰いました。それでは解散という場面で神山さんが言いました。
「そういえば結束バンドの皆さんは結成祝いとかってやりましたか?」
虹夏ちゃんが答える。
「あーそういえばやってないね」
私が入った時もライブの打ち上げを兼ねてやる予定でしたが疲れすぎて帰ってしまい、結局のところ今日に至るまでやっていませんでした。
「バンドの結成なんて滅多に有りませんし、こういう節目は大切にした方が良いと思います。ぜひ祝わせてください!!」
「えっ!?そんな悪いよ~」
「伊地知さんと山田さんには下北沢でお世話になりましたし、友人である後藤さんの新しい門出を祝いたいんです!」
虹夏ちゃんが困り顔をしつつも嬉しそうな笑みを浮かべている。そうして神山さんのゴリ押しに押されて来週の休みに前田さん家で祝賀会が開かれることになりました。
事前に計画を立てるのが得意な神山さんらしくない、突拍子もない提案に驚きましたが家族以外の人とパーティーなんて生まれて初めてなので祝賀会が今から楽しみです!
「…………」
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数日前。神山はある男に呼ばれて喫茶店に居た。
「来てくれたか」
「正直、あなたから連絡が来るとは思いませんでしたよ……黒田さん」
関係性の無い二人がなぜ集まったのか、因果関係は作者でさえ知らない……というか考えてないので書かないが黒田は神山に相談が有って呼び出した。
「実はな……本編で俺の影が薄いのが悩みなんだ」
「へぇー」
神山は興味無さそうにオレンジジュースを飲む。
「なに無関心気取ってるんだ。俺にとっちゃ死活問題なんだぞ!」
「えーいやだって。実際僕には関係無いじゃないですか」
「お前な明日は我が身なんだぞ!もっと真剣になって考えないと寂しい思いをするぞ!」
「そう言われても僕は僕で中学からの親友、タバタ君とかヨシオ君と遊んでいるから別に寂しいなんて思いはないよ」
「なっ!?」
「だいたい前回の外伝でガッツリ役目が有ったから良いじゃないですか。それで満足しましょうよ」
神山の物言いに腹が立ちつつも黒田は食い下がる。
「そんなんじゃ満足出来ねぇんだよ!これでも俺は原作のエンジェル伝説では主役とは言わないにしろ、レギュラーメンバーだったんだ!そんな俺が脇役なんて許されねぇだろうが!」
神山はため息をする。
さながらワガママを言う子供に手を焼く親のようだ。
「この際だから言いますけど、今後黒田さんがこの作品の本編で推されることはありませんよ」
「えっ!?」
「そもそも黒田さんの登場自体、作者の想定外だったんです。途中から作者が後藤さんを秀華でも番長に、と考えた時にクロ高とは被らないエンジェル伝説ネタで黒田さんを使うと決めたのキッカケなんですから」
「完全に当て馬じゃないか俺って……」
黒田はもはや自分に未来が無いことを悟り俯く。しかしここで作者の代理人たる神山がフォローをする。
「でもね黒田さん。作者からしても黒田さんの存在は実は有り難かったりするんですよ」
「……えっ?」
「黒田さんはぼざろとクロ高の本編&ギャグパートじゃ使いづらいのですが、前回の外伝のように喧嘩のシーンを書くとなると書き易いんですよ。ほら僕達はギャグ漫画の人間なんで……」
「なるほどな……。まぁとにかく俺にも道が有るのはよく分かった。だけどなやっぱり俺も本編で活躍したいんだよ」
黒田の静かな本心の暴露に神山は考える。そして何かを思い付いたかのように顔を上げて黒田の方を向くと尋ねる。
「……黒田さん。もし黒田さんがギャグ寄りのキャラになっても良いというなら僕に腹案が有ります。どうします受けますか?」
「自慢じゃ無いがエンジェル伝説では俺はギャグ寄りの人間だった。今さら皆に笑われた所で痛くも痒くもねぇよ」
「では提案が有ります。それは……」
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(神山の腹案。それは結束バンドの結成祝いにドッキリを仕掛けること)
神山の考えた作戦はこうだ。
①祝賀会の最後にロウソクに火の付いた巨大なケーキを結束バンドに贈る。
②結束バンドが火を消したその瞬間にケーキから飛び出して驚かせる。
③黒田が「結成おめでとう!」と叫ぶ。
シンプルだがインパクトの有る作戦に黒田は二つ返事で了承した。そして祝賀会が開かれている現在、黒田はケーキの中に入って神山からの連絡が来るまでスタンバイをしていた。
(まぁしかしあれだな。今、大地震か何かで死んじまったらとてつもなく恥ずかしい状態なんだろうな俺って……)
ケーキの中という暗闇で閉塞的な空間、更には生クリームが一面に塗られてることによって外の音が何一つ聴こえない。暗く狭く何も聴こえない環境に、次第に心を曇らせた黒田は神山に電話を掛けた。
「もしもし」
『おう俺だ。祝賀会の進行はどうだ?』
「問題無く進んでいるよ」
『そうか……なぁ神山。提案が有るんだが……』
「なんだい?」
『作戦では俺が最後に飛び出す、ということになっているが俺は別にそこに拘らなくても良いと思うんだ』
「なるほど。つまりオイシイ場面が来たら臨機応変に飛び出した方が良いということだね。良いアイデアだけど今は駄目だ」
『何でだ?なぜ今は駄目なんだ!?』
この空間から早く飛び出したくて堪らない黒田は尋ねる。
「今、皆で隠し芸を披露してるんだけどさ……フレディが歌ってるんだ……」
『なっアイツ歌えたのか!?』
「僕の言ってる意味が分かるよね?」
『あぁ分かる。フレディが歌ってるだけで反則だ……というか俺も見たいくらいだし……』
「それに歌がとても上手で皆大盛り上がりなんだ……」
もっとも皆の雰囲気と反比例するかの如くボーカルの喜多の目が死んでいっているが今回の作戦に関係ないので神山は見て見ぬ振りをした。
「ともかく……失礼だけど今の黒田さんの技量ではどんなギャグを持ってきてもスルーされる恐れが有るよ」
『あ、ああそうだな。というか俺だって聴きたいくらいだ。こう考えると思わぬ伏兵が多くて成功するか不安になってきたよ』
「気をしっかり持つんだ。大丈夫だ!今回の為に用意はした。ゴリラがケーキに近づかないようにバナナゾーンも作った。ここまで頑張ったんだ!必ず光が見えてくるよ!!」
『ありがとう神山……ん?ちょっと待て!!神山ケーキを見るんだ!!』
「え?……あっ!!?」
神山が振り向くと山田が物凄い勢いでケーキにかぶり付いていた。
『まさかケーキに穴が空くペースで食われるとは……こんな形で光を見たくなかった……っておい!山田と目が合ったぞ!』
「これは想定外だった……分かった僕がプリンを持ってきて誘き寄せる!何とか持ちこたえてくれ!!」
『頼むぞホント……』
そうして神山は山田をケーキから引き離すことに成功し祝賀会は無事に進められ終わりを迎えようとしていた。このままではケーキを披露する場面が無くなると感じた神山は皆に尋ねた。
「み、皆さん!何か忘れていませんか?」
「何か?」
「そうです。ケー「け、結束バンドの演奏ですよね!」キ……え?」
神山の言葉を遮って後藤が話し始めた。
「こ、ここまでしてもらったのに私達はまだ何もしていません!み、皆さんに私達の演奏を聞いてもらいたいです!」
普段消極的な後藤からは考えられない主張に神山は思わず言葉を失う。そんな神山の様子から後藤は察して演奏を望んでいると感じた。
「でもぼっちちゃん。楽器は有るけどアンプとかの機材無いよ」
「あ……」
後藤が頭を抱えていると突然襖が開いた。
「…………」
前田にそっくりの顔をした女。前田の母親が現れた。
「「「うるさくしてスイマセンッした!!!」」」
一同は土下座をして謝ったが前田の母親は何も言わずアンプとかの機材を部屋に置いてそのまま襖を閉めた。
「何でウチにアンプが有るんだ?」
前田の疑問に誰も答えなかったが分かることはただ一つ。皆の前で結束バンドが演奏出来るということである。
こうして祝賀会は結束バンドの生演奏で幕を閉じた。後藤……いや結束バンドメンバーは思った。
次に人前で演奏をする時はオリジナルソングで演奏をしよう。曲も歌詞も自分達で作って自分達の音楽を皆に聴いてほしいと感じたのだった。
オリジナルソングの部分なんて原作が至高。はっきり分かるんだね。
初めてのアンケートにちょっとワクワクしている自分がいます。
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後藤ひとりを停学処分にさせたい
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結束バンドを停学処分にさせたい
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後藤ひとりを留置場に送りたい
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結束バンドを留置場に送りたい
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原作通り