幼馴染の力がヘタれたので回避盾にする(決意)   作:あらい

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クッソ安直な名前ですが、被らなそうだったんで


吟味、できません。

 それは日常の合間に起きた出来事だった。

 畑を荒らしに来た熊を村の皆で寄ってたかって袋叩きにしていたところ、突如として俺の目の前に謎の物体が現れたのだ。

 

LEVEL UP!

Lv.1 → Lv.2

村人 Lv.2

 

HP 22

力 6

魔力 6

技 9

速さ 10+1

守備 5

魔防 6

幸運 5+1

体格 4

オウヨ!

 

 なんだろうこれは、いったい。

 

「どうしたの、ぼーっと突っ立っちゃって」

 

 今夜は熊鍋だー!と、はしゃいでいる大人達を横目に不可思議な現象に戸惑っていれば、顔見知りがやってきた。少し気怠げにしながら、こちらを胡散臭そうに眺めている。いつもの事ではあるが、そうされると割と傷付くというものである。

 

「解体用のナイフ、あなたの分も持ってきたから早く」

「あ、ああ……」

 

 目の前を遮る様にして大きく広がる看板の様なモノ。その中には規則的な数字の羅列が成されており、まるで何かの成果を謳っている様な感じだった。ここ最近、褒められる様な事をした憶えは全く無いのだが。

 

「な、なあ。なんか目の前に変なモノ見えないか……?」

「……? 何のこと? 熊の死体の事を言ってるの? それなら見慣れたものじゃない」

 

 違う、そうじゃない。

 先程息の根を止めた熊よりも遥かに存在感を示しているソレに対して、どうにか異常性を指摘しようとするも、全く気にしていない様子だった。

 

「ほら、さっさと皮を剥いで」

 

 半ば押し付けられる様な形でナイフを受け取る。すると、覚束ない手の中にひんやりとした特有の感触が広がっていった。

 

「ど、どういう事だ……?」

「私達の仕事でしょ。……もう、先にやっちゃうよ?」

 

 要領を得ない返しにうんざりとしたのか、もう一つのナイフを器用に右手へと持ち替えてさっさと熊の元へ行ってしまう。

 

 障害物の様に設置されているソレを。

 どういうわけか、何事も無かったかの様にすり抜けて。

 

 

「……え? これは、もしかして……」

 

 その事象を認識したら──

 

 思考を脳内でこねくり回す間も無く、目の前が真っ白になっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ピンピン、オウヨ!

 

 どこか心地よいフレーズと共に、サムライの幻聴がした。

 

 HP、力、魔力、技、その他色々。 

 

 とても既視感のあるステータスの上昇画面。

 そこには様々な要素が羅列されていて、様々な可能性が眠っていた。

 

 比較的普通なものから、愛されキャラの要素を担う『強さ』を存分に表すものまで。

 全てが運という抗えぬ存在に左右されていて。

 誰しもが強くなれるし、誰しもが無音(ジェイガン)になる可能性だって有った。

 

 

 それは乱数という奇跡が織りなす物語。

 

 

 

 

 俺はひとり思う。

 あっ、これFEやんけ! と──

 

 

 そう分かれば、何か精神が融合する様な気がして……一気に思考がクリアになっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 未だ僅かに頭痛が残る頭を、最大限に動かしながら考える。

 どうやら俺は『ファイアーエムブレム』の世界に転生したらしい。まだ憶測に過ぎないのだが、何となくそれ以外は有り得ない様に思える。

 あの謎の看板がFEの『レベルアップ』画面である事を本能で受け入れてしまったのだろうか。親の顔までとはいかなくても、それ相応には見覚えのある演出だし。多分そうだ。いや、絶対そうだ。久しぶりに見た体格という値に少し戸惑ったが、そうに違いない。

 ……とりあえず、あの場で経験値を得た事でレベルアップし、能力が上がったとみて間違いないだろう。

 

 いざ上がったと言われても、いまいちピンと来ないが……まあいいか、今は成長を喜んでおこう。

 先程の成長結果は、速さと幸運の2ピンだ。

 

 

 

 

 

 ……んん、2ピン?

 ちょっと、渋くないですか……?

 

 ……ま、まあ速さ伸びたしええか。今は、現状の整理に努めよう……。

 まずは、なぜ転生したかだ。

 

 こういうのは大抵、何か生前のしがらみに影響されて生まれ変わるものである。しかし、いつ死んだのか、どうやって死んだのかさえも今の自分は覚えていなかった。

 どうしようも無いじゃん……。

 

 という訳で、それは一旦諦めた。ここは別方向から攻めていこう。

 この世界がもし『ファイアーエムブレム』の世界であるならば、聞いた事のある地名が浮かんでくるに違いない。これでも一応シリーズは初代から()()()()まで全部通しでやっているのだ、少しでも記憶に残っていればすぐに分かる。

 そう思って、俺は生まれの地を想起して置かれている状況の把握を試みようとした。

 

 しようとした。

 

 

「ブロディアってどこだよ……」

 

 そして失敗した。

 

 

 

 悩んでいても仕方ないので、次に自身の生まれを整理してみる。

 ブロディア王国領という領土内に位置する貧しい村。そこに住むとある家族の一人息子として産まれ、芋の栽培や狩りなどをして村の皆と助け合いながら日々を生き抜いている。

 『ラズリ』という名であり、これといった家名は存在しない。この世界の暦がどういう仕組みなのかは分からないが、親によるとまだまだ十にも満たない子供だとか。

 

 以上。多分モブだ。

 

 分からん、どのシリーズなのかさっぱり分からん!

 どこか辺境の国の名を冠しているのならゲームの舞台に上がらない裏の要素だと納得できたが、ブロディア王国はかなりデカい国らしく、聞いた事が無いとなれば……それはもう、新作以外の何物でもない。

 こりゃ無理だ、諦めました。

 マジか、いつの間にか新作出てたのか。これじゃ、既存の知識が役に立たないやん……。

 

「どうしよう……」

 

 掛けられていた薄布を少しどける様にしながらゴロゴロと現実逃避する。何とも寝心地の悪いゴザみたいな物が床に敷かれていた。その上に仰向けになって寝ている形となっている。

 今しがた気が付いたが、どうやら誰かに介抱してもらったみたいである。

 場所はどこかの掘立て小屋の中。時間はおそらく、日が沈んだ頃だろうか。窓から差し込んでくる何かの灯りが、どうしてか心をとても落ち着かせてくれる。

 

「あー、やっと起きた」

 

 そうしていたらいつの間にか小屋の扉が開かれた。同時に、馴染み深い声が聴こえてくる。

 

「ラピス、か……」

「他に誰がいるって言うの?」

 

 ボブカットにした薄桃色の髪を少し煩わしげに靡かせながら、ソイツは呆れた様にして入ってきた。いつもの癖か、気を紛らわす様に弄っている。

 簡易的な割烹着を身に纏っていたので、少し前まで何か料理でも行っていたのだろうか。

 

「突然倒れてびっくりしたんだから。運んでくるの大変だったわ」

「いやあ、すまん……」

「今は元気そうね。体調不良?」

「あー、多分……。野に狩り出た時、間違えて毒草を摂ったのかもしれん」

「もう……気を付けてよね」

 

 突然前世の情報が脳内に入ってきて、処理できずに倒れてしまいました──なんて言おうものなら変人扱いは免れないので、とりあえず適当に理由をでっち上げてみる。

 そうしてみれば一応納得してくれたのか、更に呆れた様な表情に変化した。

 

「食べられる薬草と食べられない毒草の区別、忘れちゃったの? はぁ……しょうがないわね。今度私が教えてあげるわ」

「……恩に着る。……それはそれとして、その格好どうしたんだ?」

「ああ、これ? 熊汁作ってたの」

「ほんとか?!」

「ええ。村のみんなはもう食べてるわよ」

 

 熊汁。それは名前の通り、熊の肉を使って作る汁料理である。畑で採れた野菜を突っ込んだ後、適当に調味料を入れれば完成するとても簡単な料理だ。しかし当然の事ながら、貧しい地においては貴重な栄養源となっている。他の野生動物も居るには居るが、熊ほどの量の肉を取る事はできないのだ。

 それ故に、一度熊を仕留める事ができれば村はお祭り状態になる。村の皆で野の恵みに感謝しながら明けない夜を明かすのだ。

 もちろん、その日に肉は食べきる。これといった冷蔵技術がどうやらこの世界には無いみたいなので、取った肉を放っておいても腐る一方である。

 

 熊肉はね、とっても美味しいんだ……!

 香ばしい匂いだけでライス一杯は余裕でいけるね。

 

 ……なんか、腹が減ってきたな。

 

「さっそく頂くことにしよう……!」

「早くしないと無くなっちゃうわよ?」

「なんだって?!」

 

 こうはしていられない。争奪戦が始まる前に早く駆けつけなければ。

 

 この世界における生活水準は……いやこの村だけかもしれないが、それはもう低い。低いなんてもんじゃない。娯楽なんてものは存在しないし、そもそも生きる為において必要不可欠な供給源が足りないのが辛い。食料はほぼ作物に頼っているので、不作に見舞われようものなら割と死がすぐ近くに見えるし、田畑を動物に荒らされようものなら本気で殺意が湧く。畑を荒らす奴は絶対に許さんぞ。

 見つけたら殺す、必ず殺す。皮を剥いで、身体の隅々まで食い尽くしてやる。おい聞いてるか熊さん、お前の事だぞ。

 

 話は逸れたが……熊のお肉は美味しいという事が俺は言いたいのだ。うん。

 

「もう……今日できなかった分を合わせて、次からは連続であなたが当番なんだからね?」

「分かってる!」

 

 俺は腹の虫に突き動かされるまま、美味しそうな匂いが漂ってくる村の中央へと走っていった。

 

 熊肉♪ 熊肉~♪

 

 

 

 

 

 

 ラピス。

 

 同じ村に住んでいる女の子で、お隣さんである。

 畑仕事やら狩りやらで毎日が忙しい習慣にて、顔を合わせない日は存在せず、いわゆる腐れ縁という奴になるのだろう。気付いたらいつの間にかそこに居た、幼馴染とも言える存在である。他に歳の近い子供が村に居ないので、小さい頃はよく一緒になって遊んでいた憶えが有った。

 

 ファイアーエムブレムといえば、やはりそういう要素が有るゲーム。

 

 どこか儚げな雰囲気を纏う彼女は庇護欲をかき立てる様な可憐さを内包していて、端的に言えばとても可愛い容姿をしていた。

 自分はそんな可愛い子の幼馴染である。もしかして……と一瞬勘違いしそうになった事は割と有ったが、しかしこれは手強いシミュレーション。いかんせんそう言った事へとうつつを抜かしている暇は無かったのだ。

 

 だって、毎日を生き抜くだけで精一杯なんだもの……!

 

 昨日は確か、その変に生えてる雑草を彼女と食べたのだったか。雑草を澄んだ水でといた後、少量のお酒を入れて茹で、最後に味を付ければ美味しいスープの完成だ。

 この村では一般的な食事メニューであり、芋以外では大体いつもこれを食べている。幸いな事にブロディアでは採れる調味料の種類がそこそこ優れているようであり、味に飽きても多分困らない。最高かな。

 まあ土台となる食料が結構枯渇しているせいで、いつも困っているのだけれども。スパイスだけで腹が満足に膨らむのなら、誰も苦労はしていない。

 

 ……途中から料理の話に脱線してしまったので、ここで戻しておこう。

 

 彼女の特筆すべき点としては、ちょっと……いや、だいぶ力が強い事ぐらいだろうか。本人は少し恥ずかしがっているが、子供の身でありながら既にもう村一番の怪力の持ち主となっている。流石年端も行かぬ少女が大剣を振り回すシミュレーションRPGだ、面構えが違う。

 

 他には料理が得意だったり、手先が器用な事があげられるだろう。まあでも、これは村の皆にも言える事か。サバイバルのノウハウとでも言おうか、村では古くから受け継がれてきた生きる為の様々な技術が教えとして普及されていて、彼女もその一員として手腕を振るっている。

 料理共々今の彼女の技術には負けるが、いずれは俺も追い付くつもりだ。

 

 

 ラピスの事については、だいたいこんな感じだろうか。




ペアエンド捏造します(決意)
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