幼馴染の力がヘタれたので回避盾にする(決意) 作:あらい
あれから色々頑張ってはみたが、自身の成長率を見る事は叶わなかった。ファイアーエムブレムの職種は、やはり物理系と魔法系の二つに必ず分かれるもの。成長率が分かれば適した職を目指せるのだが……そうはうまくいかないらしい。
しかし、あれこれ試行錯誤していくうちに大きな進展が有った。
代わりと言っていいのか、なんと他人のステータス及び成長率を覗く事が可能になっていたのである。いつやれるようになったかは正直分からない。もちろん無許可であるし、どういう原理なのかも分からない。分からん事ばっかだなこの世界。
ただ、ぽわ~ん……といった感じで念じれば脳内に浮かび上がって来るのだ。
「どうしたラズリ。村に重症人でも出たか?」
「いえ、特には」
畑の見回りが終わって暇な時間。村に居る適当な人を選んで、その成長率を覗かせてもらっていた。不躾では有るが、どうしても知りたい実験データなのだ。許してくれや……後でバレたら土下座します。
して、現在の相手は村の村長である。古くから村と共に過ごしてきた人なだけあって、かなりのご高齢だ。
ジェイガン並びにファイアーエムブレムの老人キャラはあまり伸びないというジンクスが有るが、果たしてどうだろう。
軽く念じてみれば、すぐに結果が浮かび上がってきた。
左が能力値、右のカッコ内が成長率となっている。パーセンテージ表記が二つ有るが、おそらく左がキャラ固有の成長率、そして右が職種毎の成長率だと思われる。村長がちょくちょく遠出する時に馬を使っていたのは知っていたが、まさかパラディンだったとは。
序盤ならば結構な能力値をしているが、成長率は全体的に見ればそれほど高くはないようだ。やはり、成長率には歳が大きな要素として関わってくるのだろうか。
まあ、まだこの世界の成長率の指標がよく分かってないから適当に言ってるだけではあるが……。
それにしても、やたらと幸運が高いですね……。
もしかしてこの村が今まで平和だったのは、村長の幸運のおかげ……ってコト?!
「ふむふむ。なるほど」
「どうしたんだ、途端にこちらを凝視して……」
「いえ、何でもありません」
「……そうか」
「ではこれで」
「一体何だったんだ……」
やるべき用事は全て終わったので、そそくさと村長の家から退出する。何か変な物を見るかの様な目をされていた気がしたが……まあ、いいだろう。
これで村人達のステータスはあらかた把握する事ができた。
「ふぅ……」
午後の昼下がり。
何となく暇なんで、村の外れにある高台に来た。理由は特に無いが、目に見える形での娯楽が存在しないこの世界では十分な気晴らしとなるだろう。
切り立った場所にあるここは都市部へ続く村の道とは反対側に有るので、薬草を取りに来る村人でもあまり訪れない場所だ。俺だけのお気に入りスポットである。高台から景色を一望できるのがおすすめポイントだ。
何というか、秘密基地感があってイイね。心沸き立つモノがある。
「やっぱこの時期はいいな……」
遠くに見えるブロディア城……その周りを取り囲む様に並立つ秋の兆しが美しい。
この大陸──後でエレオスという名前だと聞いた──ではブロディアの地は北側に位置するらしく、四季の影響なのかは分からないが、毎年秋という季節が色濃く現れる。
特に、このブロディア城周辺の景色がそうだろう。確かちょっと前までは少しくすんだ緑の野原が広がっていた筈なのに、今では雪崩が起こった後かの様に山肌が紅葉色に染まっている。
やっぱこの季節が一番好きだわ……一年の集大成である収穫という時期でもあるし、何かと良い印象が多い。
う~ん、秋は最高ですな。
冬はクソですぞ……。
「あ、みつけた」
「……ん?」
緋色に澄んだ木漏れ日の下、錦の様に彩られた野の山を踏み締める音がひとつ。ソイツはいつも通りの身軽さを重視した服装に、愛用の剣を腰にしっかりと帯刀していた。今すぐにでも抜刀できそうな準備の良さは、日頃の訓練の賜とでも言おうか。
ふむ、剣士と紅葉の組み合わせですか……。こうして見ると、流浪の侍っぽさが出ていてとてもいいな。
「こんな所にいたんだ」
「ああ。畑仕事の当番が終わって暇なんでね」
「ふーん」
「なんだその反応。お前も暇になってこんな所まで来たんじゃないのか? ……あ、もしかして俺の事探してたとか?」
「ふっ。自意識過剰ね」
「言ってくれるな」
「別にどっちでも良いじゃない」
軽口を適当に叩き合っていれば、いつの間にか隣に来ていた。
淡い色の髪が秋風にそよいですらりと靡いている。
「いい景色だろう。自慢の場所なんだ」
「ええ、そうね……」
「ん……」
「……」
会話が途切れる。
普段のコイツはあまり饒舌なタイプでは無い。動物に語りかける時と一人ごとを言う時以外は違うが、大抵はいつもこんな感じだ。必要不可欠な会話以外を省くその性質は無愛想とも取れるが、美少女はそれでも似合っているというのだから何か腹が立つ。
「……ねえ」
「なんだ」
「あれってブロディア城?」
「そうだけど」
「随分と兵隊さんが集まってるわね」
示す先を見てみれば、胡麻粒程度でしか視認できなかったが、確かに城の兵隊達を思われる者が城の門付近に集まっていた。
よく見えるな。日頃から動体視力とか鍛えていれば、こういった部分も洗練されていくのだろうか。
しばらく眺めていれば、兵隊達は門を出て東の方角へと隊を成して進行していった。
「かなりの量……何するんだろう」
「分からん……」
「戦争とか?」
「んー、違うんじゃないか?」
ここからでは雪が被った山々しか見えないが、ブロディアの東には別の国が存在していると聞く。それがどういう国なのかは名前すらも分からないが、気候的に相当厳しい環境に置かれてそうである。
戦争とは、ほとんどに利益を求める軍需産業的な要素が関わってくるものだ。ブロディアより南に位置するフィレネ?という国を襲うならまだしも、あんな痩せた土地に侵攻するメリットは多分無いと思う。
多分、国境の警備か何かだろう。
そんな事を言ってみた。
「そうなんだ」
「まあ、適当に理由を考えてみただけだが」
「適当なのね……でも、
「だろう?」
「はいはい」
ふふんと、胸を張って見れば呆れた様な顔をされた。
可愛く無い奴め……。
「大変そうだね、兵隊さんも」
「そうだな……」
ブロディアの地にならず者が湧き辛いと言えど、やはり痩せた土地故に賊へと身を落とす人間が居ないとは限らない。おそらく、ブロディア城の兵隊達はそんな溢れた者の討伐を一心に行っているのだろう。そこに命の有無は関係していない。
ううむ……。
ファイアーエムブレムの世界に生まれたからには、やはり無双プレイもしてみたかったのだが、現実は中々に厳しそうである。
領民をいつも守ってくれている兵隊さんには感謝しなければなりませんね……。
「……少しいい?」
「ん?」
「あなたは今の生活、どう思ってる?」
そんな事を考えていれば、横から問いを投げかけられた。
今の生活、というと……村での暮らしの事を言っているのだろうか。
「まあ、貧しい暮らしだな」
「そうね……」
「日々を生き抜くだけでも精一杯だし、忙しない。今でもこうなのに、これから冬が来ると思うと今にも身が震えてきそうだ」
「……」
分かっていた事だけど、貧しいってのはやっぱつれぇわ……。
健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がおおよそ王族にしか保証されていなさそうなこの世界では、どうしても前世の生活が思い出されてしまう。
あ~こたつに入ってミカン食いてえ……。
カップ○ーメン食いてえ……。
ついでに、アイスも食べてえ……。
寒い冬にコタツに入りながら食べるアイス、最高なんだよな……。
なんか、食べ物に関する思いばっかりだ。
それほどまでに、食料の確保が厳しいという事である。
「私ね、お父ちゃんとお母ちゃんにいつも感謝してるの。育ててくれてありがとう、って」
「……」
「感謝しているのは二人だけじゃないわ、いつも助けてくれる村の人だって同じ」
「そうなのか……」
「もちろん、あなたにもよ」
「……!」
そう、面と向かって言われた。
んん……。
な、なんか恥ずかしいな……。
特に感謝される様な事をやった憶えは無いのだが。
「ふふ、分からないのね。まあ、いいわ。……それでね、みんなにはもっと良い暮らしをして欲しいってずっと思ってたの」
「良い暮らし……? そんな事を言われても、今のままじゃどうやって?」
「出稼ぎって言うのかな。村を出て、良いとこに就くの。それで、村に仕送り」
「うーん、難しそうだが……。どこか有るかな?」
考えてみたが、あまり思い付かなかった。
出稼ぎって……痩せたブロディアの地では儲かる仕事なんてほとんど見つからないぞ。
それこそ、王都にでも行かなきゃどうしようも無さそうだが……。
「例えば、王城兵とかどう?」
「……! 確かに良さそうではあるが……」
「だよね! お給金もそこなら良いだろうって、私も思ってるんだ~」
「凄い事言うな……」
王城兵ってのは大抵、城下町の住人から選定されるものだろう。実力主義な世界とはいえ、割と世襲制が強い場所である。
そんな中に単身乗り込んで行くなんて、相当大変な話なんですが……。
というか、そもそも王城兵募集しているのかどうかも分からない。
「そこは何というか、気合で」
「気合って、お前……」
「でも見当は付いてるよ?」
「どうするんだよ……」
「ブロディアの王都ではね、毎年いつも武術大会をやってるらしいの」
「ほう」
それに出て自身の強さをアピールする事ができれば、確かに王城兵へと採用される可能性は有るな。腕っぷしは重要だし。
しかし、場所は王都。そうなると、強者でひしめき合う事間違いないだろう。
少し勝ち進んだ程度では王城兵にたり得ないと評されるかもしれない。
優勝……最低でも準優勝か。それぐらいしないと難しい話だ。
「そこで私が優勝すれば、王城兵にして貰える。そんな算段よ」
「随分と大きく出たな」
「狩りで鍛えたこの力が有れば余裕だわ」
う~ん……そうかな?
そうかも……。
「でも年齢制限は有るんじゃないか?」
「うん、そうみたい。参加できる様になるのは数年後ね」
そう言って、未来への意気込みを存分に表すは隣に居る幼馴染である。
ふむ……思い付きで言っているのなら囃し立ててやろうと思ったが、どうやら覚悟は本物のようだ。
確かにいけるかもしれないな……。
コイツの怪力は既に村一番とまで言われている。
バッタバタと立ち向かう相手を簡単に粉砕し、難なく優勝まで行ってしてしまうかもしれない。
「そうか……お前ならいけるかもしれないな」
「ふふん、あなたもそう思ってくれるのね!」
「あれ。もう村の奴らに言ったのか?」
「いや、まだだけど」
「うん……?」
どういう事だ……?
よく分からんが、まあいいか。
「これから毎日、武術大会の為に鍛錬するわ!」
「おお、今日からか。中々に気合が入ってるな」
今にも剣を抜いて素振りでもし始めそうな勢いである。
ここではちょっと危ないからやめてください。
……しかし、数年後か。もしも優勝したら本当に王城兵になって村を出ていってしまうんだな。そう考えると、寂しくなってくるというものだ……。
でも、今はその意志を尊重すべき時だろう。
よし、ここは涙を飲んで誠心誠意応援するか。
「できることが有るのならば、助けになろう」
「本当?! ありがとう~!」
鍛錬に関しては少し難しいが、どこをどう伸ばしたら良いのかという感覚には自信が有る。だって人の成長率、何故か分かるもん。
……そういえば、すっかり忘れていたがコイツだけ成長率を覗いていないな。
ふふふ……!
では早速その成長率、存分見せて貰おうかッ!