スターと復讐者 改訂版   作:官隆

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新しい日常、そして――

〜数ヶ月前〜

『母さん!今度の木曜日なんだけど――』

『ごめんなさい、司今忙しいから後にしてくれる?』

『ぁ、わかった!』

 

父さんと母さんはいつも咲希のことを気にしていた。

休日は病院に行き、遅くまで咲希と一緒にいた。

俺も、咲希のことが心配でよく一緒についていったし、咲希を喜ばせるために色々なことを考えていた。

けどーー

 

『やっぱり、駄目だよな…』

 

授業参観に行く時間よりも、咲希の方が大切に決まってる。

だって、ずっと寂しい思いをしてるんだ。

それに父さんも母さんも咲希のために働いてて忙しいもんな…

…俺なんかにかまってる暇があるわけないよな。

そう思い、『授業参観のお知らせ』と書かれた紙を丸めゴミ箱に捨てた。

俺はお兄ちゃんだし、これくらい我慢しないとな!

…………あぁ、でも……少しだけ――

ーーーーー

目を開けると、朝の光が俺を照らす。

そこには、何時もと違う天井の景色があった。

 

「……嫌な夢だったな」

 

 

そう静かに呟くと、俺は朝の準備を始める。

今の夢の事を忘れるように…

 


 

シャル「司、おはよう」

 

司「おぉ、シャル!おはよう!!」

 

シャル「朝から声が大きいね」

 

司「スターたるもの、どんな時でも声はデカくだからな!!」

 

シャル「そうなんだね」アハハ

 

司「そう言えば、ご飯は何処で食べるんだ?」

「この家、デカくて何処に何があるのか分からなくてな!」

 

はっきり言って、かれこれ10分はここらを彷徨っている。早くご飯を食べたいんだが……

 

シャル「……ご飯か」

 

?…何故だ?ご飯の話をした途端、シャルの目から光が消えたんだが…

 

司「シャル、どうかしたのか?」

 

シャル「……案内するよ。ただ、何が出ても食べてね」

 

司「あ、あぁ」

 

何だ?なんか怖くなってくるんだが――

〜〜〜〜〜〜

食堂に着くと、アヴェンジャーは扉の前で固まっていた。

 

司「どうしたんだよ?アヴェンジャー」

 

アヴェンジャー「……机の上の料理を見ろ」

 

言われた通り、見てみると――

そこには赤い、とにかく赤い何かがあった。

その匂いを鼻で吸い込むだけで、正直キツい。

 

カレン「おや、やっと来ましたか。遅かったですね」

 

カレンさんが話しかけて来るが、それよりも――

 

司「何だこれは!?」

 

カレン「何って、麻婆豆腐ですが。」

 

司「麻婆豆腐!?赤すぎるだろ!激物の間違いじゃないか!?」

 

シャル「…司、諦めて」

 

シャルは死んだ目をしながら食卓に付く。

 

シャル「我が家の朝ごはんは全部、麻婆豆腐なんだ。早めになれないとしんどいよ」

 

司「この激物が……毎日……」

 

嘘だろ…

 

カレン「まさか、食べないなどとは言いませんよね?」

 

司「え、あの、その〜」

 

カレン「未来の"スター"が食べ物を残すなんてそんなことあるわけがありませんよね。」

 

司「あ、当たり前だ!いずれスターになるのだから、この程度の料理、食べきってみせよう!」

 

…どうする!?ついスターという言葉に反応してしまったが、こんなの食べれるのか!?

匂いだけでキツい物を食べて、俺は生きてられるのか!?

シャルやアヴェンジャーに助けを求めようと目線を向けると、二人は目をそらす。

見捨てないでくれ!?お願いだから!?

 

カレン「早く食べなさい。冷めてしまいますよ。」

「あぁ、一人で食べられないのであれば、私が食べさせてあげましょうか」ニヤニヤ

 

コイツ〜〜〜!!

 

司「そんなもの必要ない!…いただきます!」

 

大丈夫、そこまで辛くないかもしれない。

シャルが辛いもの苦手なだけなんだ!

きっとそうだ!!

そう自分に言い聞かせ、麻婆豆腐を口の中に放り込んだ

 

 

 

 

 

 

 

あ〜〜〜〜!?!??!?!?!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


司「」チーン

 

カレン「よく食べました。いい食べっぷりでしたよ。見ていてとても面白かったです。」

 

シャル「ライダぁ〜、水2つお願い〜」

 

ライダー「わかったわ!少し待っててね!」

 

アイツ……きらいだ……

 

 

〜数分後〜

 

司「まだ喉がヒリヒリする……」

 

シャル「大丈夫、その内慣れるよ。僕はそうだから」

 

いや、それもそれでなんかヤダな…

 

『続いてのニュースです』

 

…テレビか?

 

『昨夜、小学5年生の天馬司くん、十一歳が行方不明になりました。』

 

!?

驚いてテレビを見ると、そこには俺の写真が貼られている。

 

『ご両親の話では、深夜頃に帰宅して部屋を見てみると、すでに司くんの姿はなく、また、衣類なども無くなっていることから、誘拐事件として調査する予定です。』

『また一週間前、この付近で行方不明になった少年がいるとのことで、事件と関連がないか調査する模様です。』

 

そっか…俺、何も言わずに家飛び出したんだもんな。

そりゃ、事件にもなるか…

すると画面が切り替わると、そこには涙を流す二人の姿が

……ッ!

父さんが何かを話すタイミングで、アヴェンジャーがテレビの電源を消す

 

司「ッ!何消してんだ!」

 

アヴェンジャー「これを見て何になる?お前のやるべきことはバーサークを倒すこと。そうしなければ、お前はあそこに帰れない」

 

司「…わかってるよ。」

 

シャル「司…」

 

わかってる、これを見たって俺は帰れない。

逆に、焦りが募るばかりだ。

 

カレン「…天馬司、貴方に渡すものがあります。」

 

すると、突如カレンさんが俺に手袋を渡してくる。

色は黒く、右手だけ

 

カレン「それで令呪を隠しなさい。サーヴァントに見つかったらただではすみません。」

「そして貴方は今や行方不明の子供、それが街中を歩き回れば、一瞬で捕まります。」

「そこで貴方の手袋には認識阻害の魔術を貼ってあります。それをつけている限り、貴方が天馬司と見られることはありません。別人に見えます。」

 

司「へぇ~、魔法みたいだな!」

 

するとカレンさんは顔を顰める

なんかおかしいこと言ったか、俺?

 

カレン「…貴方は魔術師ではありませんでしたね。ではここで魔術と魔法の違いを話しておきますか。」

 

?…違い?

…曰く、魔法とは奇跡なのだそうだ。

魔術は科学の力で再現が可能なのに対し、魔法はその時代で、どんなに時間や資金を使っても実現できないもの、魔術師が目指す『根源』から引き出された力

故に、魔術師達は魔法に辿り着こうとする。

『根源』に辿り着つき、一族の悲願を果たすために…

 

カレン「だから、魔法という言葉を魔術師の前ではあまり言わないでください。下手すれば殺されます。」

 

司「…わかった」

 

カレン「…それとこちらを」

 

司「これって…服か?」

 

それはあの日シャルが着ていた白をベースにした制服のようなものだった

 

カレン「それは魔術礼装と言うものです。それを使えば、一部ですが、魔術を使うことができます。」

 

司「へぇ~」

 

カレン「…さて、渡したところで本題に入りましょう。皆さん、これを知っていますか?」

 

そう言って見せてきたものは、新聞の記事だ。

内容は『女性連続誘拐事件』と言うものだった。

 

司「これって……サーヴァントの仕業なのか?」

 

カレン「えぇ、目撃者は多数います。証言では、海賊のような格好をし、超人的な身体能力を持ち、女性を攫っていくらしいですよ。」

 

司「超人的な身体能力……」

 

アヴェンジャー「可能性は高いな。マスターを持たんサーヴァントが何をするかなど、想像もできんからな。」

 

シャル「…それにもし本当にサーヴァントの仕業なら攫われた人達のことも心配だよ」

 

カレン「主な犯行場所は●●区●●市です。ここらには港があります。海賊の姿ということから、海にいるかもしれませんね。」

 

司「…よし!では行こう!もしかしたらそこに、バーサーカーの手掛かりがあるかもしれんからな!!」

 

絶対に見つけ出してみせる!家に帰るためにもな!!

 


 

と飛び出したはいいものの…

 

司「全く手掛かりが見つからない!!」

 

一時間、事件現場に行って調べてみたが何も見つからない。証言を聞いても、

『遠くから見ていたからいまいち分からなかった。』

『見たことない』というものや『デマ』しかない!

 

シャル「新聞にもなってるからすぐ見つかると思ったんだけどな…」

 

アヴェンジャー「それだけ用意周到だったということだ。」

 

ライダー「それに犯行時間は深夜、見てる人も少ないわ」

 

もうあらかた調べたし、手掛かりなんて他には…

 

シャル「…二手に別れて調査してみよう。まだ犯行時間までまだまだ余裕があるし、そっちの方が効率がいい。」

 

司「…そうだな、では3時間後ここで!」

 

シャル「うん!」

 

〜数時間後〜

 

司「ないなぁ〜」

 

約束の時間まで、後三十分。

なんの成果もない…それはスターとして避けなければ!

今度はあっちの方に「ひくっ」…ん?泣き声?

 

司「こっちか?」

 

少し歩いていくと小さな公園があり、ベンチで少年が一人泣いていた。

はっきり言えば、構っている時間もそんなにない…

だけど…スターとして放っておくわけにはいかない!

 

司「…どうしたんだ?」

 

「ヒグっ、…お兄ちゃん誰?」

 

司「ふっふっふっ!天翔けるペガサスと書き天馬!世界を司ると書き司!その名も天馬司!!いずれスターになる男だ!!」

 

「天馬……司?」

 

司「あぁ!この名前、よく覚えておくと――」

 

「なんか、聞いたことある」

 

司「あっ」

 

…そういえば、俺って行方不明でテレビに……

泣いている子供を放っておくのはスターとしてだめだと思ったから話しかけたが、俺のバカ!

 

司「き、気の所為じゃないか?…それよりもお前はなんで泣いてるんだ?もうそろそろ帰らないとお前のお母さんも心配するぞ!」

 

あからさまに話を逸らす。

すると少年は顔を俯かせる。

 

「来ないよ。今姉ちゃんの事で忙しいから…」

 

司「?…なにかあったのか?」

 

「…攫われたんだ。目の前で変な海賊みたいな奴に…」

 

司「!、その話、詳しく聞かせてくれ!」

 

〜〜〜

 

少年――拓也が言うには数日前、高校生の姉と一緒に帰っている途中、海賊の格好をした男に出会ったのだそうだ。

 

拓也「最初は変な格好のおじさんがいるって思ったんだ。けど――」

 

『ほぉ、そこの餓鬼はいいとして、お前さんは使えそうだな。』

 

『はっ?あのなんですか。警察呼びますよ?』

 

おじさんが急に話し掛けてきて、それを姉ちゃんが追い払おうとしてたんだ。

そしたら急に、おじさんが鎖を投げて姉ちゃんのことを縛って…

 

『きゃ!?』

 

『姉ちゃん!?』

 

『商品ゲットだ!』

 

『止めろよ!姉ちゃんに何するつもりだ!』

 

『あっ?奴隷として売るんだよ!今の世になっても奴隷を欲しがってる奴は結構いるんでな!…それはそれとして、お前さんは邪魔だな。』

 

殺されるかと思った。

銃をこっちに向けて、怖い笑顔を浮かべていたから。

けどね――

 

拓也「白い騎士さんが助けてくれたんだ」

 

司「白い…騎士?」

 

拓也「うん!…その後はおじさんは姉ちゃんをさらって逃げちゃって、白い騎士さんもそれを追って…」

 

司「……」

 

拓也「…ただ思うんだ。姉ちゃんが死んでたらどうしようって、ひどい目に遭ってたらどうしようって…考えただけで僕…」

 

拓也の顔は不安、後悔、悲しみといった負の感情で包まれていた。

…あぁ、駄目だな、その顔は。こういう時は――

 

司「…はーはっはっは!!」

 

拓也「え、兄ちゃん?」

 

司「安心しろ、拓也!お前の姉は俺が必ず助けて見せる!」

 

拓也「…本当に?」

 

司「あぁ!俺はスターになる男だからな!お前の笑顔を取り戻すため、必ずや助けてみせよう!…約束だ」

 

『………』

 


 

司「――というのが俺の手に入れた情報だ!」

 

拓也からの情報をシャルに伝えると、ブツブツと何かを言い始める。

 

司「シャ、シャル〜〜?」

 

シャル「…海賊、奴隷……………わかった!」

 

司「何が!?」

 

シャル「そのサーヴァントの真名!」

 

司「…何!本当か!」

 

シャル「うん!そいつの真名は――」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

シャル「じゃあ、発見次第お互い連絡ね!」

 

司「あぁ、任せろ!」

 

まさか、誘拐犯の正体があの英雄だったとは…案外わからない「おい」!?

突然背後から聞こえた声に驚き、振り返るとそこには見慣れた顔が…

 

司「…なんだ、アヴェンジャーか…びっくりさせるなよ…」

 

アヴェンジャー「何故あんな約束をした?」

 

司「…約束って?」

 

アヴェンジャー「あの子供とのだ。はっきり言ってまだ無事かもわからん。無事でなかった場合、傷つくのはお前だぞ?」

 

なんだ、その事か…

というか、地味に心配してくれてるんだな…

…理由か、そんなの決まってる…

 

司「…似てたんだよ、俺に」

 

アヴェンジャー「何?」

 

司「俺の妹はな、病弱で時々本当に死にそうな程の病気にかかることもあったんだ。その時は本当に怖かったし、もしもを考えただけで恐ろしかった…」

 

アヴェンジャー「……」

 

司「だから放っておけなくてさ、あいつの不安な気持ちを少しでもなくしてやりたかったんだ…」

「それに俺はスターになる男だからな!約束は絶対に守る!いわば俺にとって約束とは"誓い"のようなものだ!」

 

そう、誓いだ。咲希との約束も、

あの日"父さんと母さん"とした約束も全部!

だからこそ、絶対に破るわけにいかん!

 

アヴェンジャー「…ククク、クハハハハ!!誓い、誓いか!!面白い!ならばその誓い果たして見せろ!証明してみせろ!言葉だけの男でないとな!!」

 

司「当たり前だ!!」

 

プルルルルルル、プルルルルルル

 

司「あっ、もしもし!」

 

『司、見つけたよ!今、ライダーと一緒に追ってるところ!』

 

司「!…わかった!直ぐに合流する!行くぞ、アヴェンジャー!」

 

アヴェンジャー「わかっている!掴まれ、我がマスターよ!」

 

待ってろよ、俺が絶対に倒してやる!

 

アヴェンジャーは司を抱え走りだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが、"彼"以外のマスターか…」

 

それを見ている影に気づかずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

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