スターと復讐者 改訂版   作:官隆

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外伝 残された者達

〜天馬家〜

 

広いリビングの机の上の携帯の前で、天馬夫婦は両手を握り、何かを祈るようかのように、電話を待っていた。

 

プルルルルルル

 

『!!』

 

電話がなった瞬間、天馬父は急ぎ電話を取る

 

「はい、天馬です!息子のことでなにかわかりましたか!?」

「――はい、はい…そう…ですか…分かりました…何か進展がありましたらお願いします…」ピッ

 

「…駄目だった?」

 

「…あぁ、更に人数を増員して探してくれているらしいが手掛かりが何も見つからないそうだ」

 

「…そう」

 

その言葉に天馬母は顔を俯かせ、天馬父は拳を痛いほど握る。

どうしてこうなったんだろう。そんな後悔とも言える感情が心を締め付ける。

こうなったのは彼らにとっての大切な息子、天馬司が居なくなってからだった。

 

話は2日前に遡る

 

〜2日前〜

 

深夜1時

 

「…随分と遅くなっちゃったわね」

 

車に乗り、家に帰っている最中、天馬母はそう呟く。

娘の咲希の容態は峠を超え、命に別状も無いところまで回復した。

 

「本当に良かったな…」

 

「えぇ、ただ司にはこんな時間まで一人にしたことを謝らないとね」

 

「そうだな――あれ?」

 

すると突然、天馬父は車を停める。

 

「?…どうしたの貴方?」

 

「嫌、あれ――」

 

そう天馬父が指差す方向には、無数の人集りが出来ていた。

今は深夜の1時、人集りができているのは不自然だ。

しかもそれが自分の家の近くなら尚更に

 

「…何かあったのかしら」

 

「さぁ?ただ、あそこにいられるのも邪魔だな…」

 

人集りのせいで、家の中に車を入れることができない。

注意をしようと車のクラクションを鳴らそうとした時――

 

「あの〜すいません」

 

一人の警察官が車の窓をコンコンとノックした。

 

「はい」

 

「この辺りを在宅の方ですか?」

 

「えぇ、あの家に住んでいまして」

 

指差す方向はあの人集りを超えた先、それを見た警察官は申し訳無さそうに語る。

 

「すいません。実はここで死体が発見されまして、今その調査を行っております。」

 

「し、死体!?」

 

「えぇ、犯人もまだ捕まっておらず…何か目撃などはしていませんか?」

 

「いえ、私達も今帰ってきたばかりでして…何も…」

 

「そうですか…お話ありがとうございました。まだ犯人も捕まっていないので戸締まりもをしっかり行ってください。」

 

警察官はそう言うと、人混みの方に行く。

 

「物騒だな…ここはそういうこと無いと思ってたよ。」

 

「…えぇ、私も…」

 

何処か他人事のように話す天馬父に対し、天馬母の顔は少し強張っている。

何か嫌な予感がする。

それが勘違いであると思っても

 

「…ごめんなさい、司が心配だから先に家に戻ってるわね。そんなことが家の近くであったから心配で」

 

「…わかった。俺も車を閉まったらすぐ行くよ」

 

天馬母は車から降りるとすぐさま家の方に走り出す。

そして扉を開けようと鍵を回すと、逆に鍵が閉まってしまった。

 

「ッ!?」

 

その事実に天馬母は動揺する。

自分は家を出る際、鍵をちゃんと締めたはずだ

開いてるいるはずがないと。

冷や汗が、身体中から溢れていく。

急いで家の中に入ると、司の部屋の前に行き扉を叩きながら司の名前を叫ぶ。

 

「司、寝てるの!?いたら返事をして!?」

 

…暫く待っても反応はない

司の部屋に天馬母は突入する。

しかし、そこには――

 

「誰も…いない…?」

 

大切な息子の姿は影も形もなかった。

そこから少し呆然するが、直ぐに意識を戻す。

 

「司!?何処かにいるの、いたら返事して!?」

 

司の部屋を始め、家の至る所を探す。

しかし、司の姿は見つからない。

逆に衣類や歯ブラシといった司の私物がなくなっていることに気づく。

しかも一見以上のなさそうな家だが、よく見ると何時もと家具の場所が違っている。

その事実に天馬母は膝から崩れ、顔を両手で覆う。

そこから少しすると天馬父が家に入る。

そして、崩れ落ちた妻の姿を見て、慌てて駆け寄る。

 

「母さん?!どうした!何があった!?」

 

「司が…司がぁ――!?」

 

「司?司になにかあったのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――いないの、家の何処にも

 


 

…そこからの展開は早かった。

司が消えたことを知ると天馬父は直ぐ様に警察に通報した。

すぐ近くで死体も発見されたことから、殺人犯に誘拐された線で警察は調査を開始した。

しかし、この2日間、警察がどれだけ調べても

犯人は見つからないばかりか、手がかりすら見つからない。

 

「…あの時、私があの子を一人にしなければ―ッ」

 

この2日間、天馬母はあの日のことをずっと後悔していた。

あの日、『自分だけでも残っていたら』、『あの子も一緒に連れていけば』、こんな事にはならなかったと、

そんな『if』を考えるが現実はそう甘くはない。

そんな天馬母を見て、天馬父はかける言葉が見つからなかった。

 

「…母さん…少し休んだほうがいい。2日間まともに寝てないだろ?司が帰ってきた時、そんな状態じゃ、逆に心配かけちゃうだろ?」

 

「…そうね。少し寝てくるわ」

 

天馬母が寝室に向けて、歩き出すがその足取りはふらついている。

そして進路にあった本棚に肩を少しぶつけると一冊の本が落ちる。

 

「あっ…」

 

「!…大丈夫か?」

 

慌てて天馬母に駆け寄る、天馬父だが

天馬母は落ちた本を拾う。

 

「これ…アルバムだわ」

 

「!…本当だな」

 

「…少し見てもいいかしら。あの子の姿を見ないと落ち着かなくて」

 

そんな天馬母の言葉に天馬父は頷く。

彼自身、息子の顔を写真でも何でもいいから、見たかったのだ。

二人はアルバムをパラパラとめくる。

 

「これは司の生まれた時の写真か…懐かしいな」

 

「えぇ…あの時は中々出てくれなくて、苦しかったなぁ…」

 

「お、これは…司の始めて歩いた写真だな!」

 

「これは司のお風呂の写真ね…可愛いなぁ」

 

パラパラと昔の司を見ていき、思い出を語り合う。

しかし――

 

「お、これは"咲希が生まれた時の写真だな"!」

 

「えぇ…中々泣き止んでくれなかったのよねぇ。あの子」

 

アルバムをめくる。

そこには咲希の写真が並んでいた。

その次もその次も

そのまた次も、何ページ進んだって

司の写真が見当たらなかった。

その事実は二人を驚愕させた。

そしてそんなはずはないと、司の写真を探し始めた。

めくる [咲希の写真]

めくる [咲希達の遊園地の写真]

めくる [咲希の小学校入学式の写真]

そんな風に、どんなページをめくろうとも、そこに司の姿はなかった。

 

「ぁ、あぁ……!?」

 

「そ、そんなはず!?違うアルバムかもしれない、探して持ってくる!?」

 

そこから何冊ものアルバムを持ってくるが、そのどれにも司の写真はなかった。

どれもどれも、全てが咲希のものだった。

 

「嘘…だろ」

 

「………ぁ」

 

そこで天馬母は思う。

今まで、自分は司のことを構ってきたのかを。

思い返せば、司の入学式や授業参観にも、咲希の医療費を稼ぐため行くことができなかった。

何処かに連れて行くこともできなかったし、連れて行くとしても咲希の病室。

更に一人で過ごす夜も、一度や二度ではなかったはずだ。

 

『…大丈夫だ!いつもやってることだしそんな言わなくてもわかるよ、母さん。それより早く咲希の所に行ってあげてくれ!俺は、大丈夫だから!』

 

「ぁ…あぁ…」

 

あの時、司が言ったことが脳裏をよぎる。

『言わなくてもわかる』

今までなんの不思議にも思っていなかった言葉が、それだけあの子に一人で寂しい思いをさせていたのだと気づく。気づいてしまった。

 

ピキリ

 

「…あっ」

 

その時、彼女の中の何かが壊れてしまった。

 

『あああああああああああぁぁぁぁ!!?!??!』

 

「司…ごめんなさい、ごめんなさい!?」

 

ひたすらに涙を流しながら、司に謝り続ける天馬母の背を擦りながら、彼も涙を流す。

しかしどんなに後悔しても現実は変わらない。

この日から、天馬家から笑顔が消えた。

たった一つの太陽(大切な息子)を失って

 

 

 

 

 

 

 




おまけ

シャル「………」私は物を治すとき下手した馬鹿です

司「………」私は死人が出たことを言っていなかった馬鹿です

悠人「…何あれ」

カレン「報連相を怠った罰です」
「貴方も報連相は怠らないでください。ああなりたくなければ」

悠人「…了解」



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