Tales of ARISE 〜超生命体(異物)が壁を壊す様です〜 作:とんとなま
「嗚呼大いなる御主よお願いいたしますおうちに帰してくだされ」
神頼みなどなんともらしくない。
愛しき我が故郷は最早……そりゃあもう考えるのもアホらしく信じられないくらい遠く彼方である。
現在私は漂流中だ。あのクッソどうしょうもない上司のせいで宇宙基地が大爆発して生身のまま星々の海に放り投げられた。
なお遠目に見た感じ放り出されたのは私だけで、件の上司と他の同僚達は母星に戻る形で吹き飛ばされたようだった。
いやなんで私だけ反対方向に吹き飛ばされてるの?
多分漂流を開始してから年単位経っている気がするがいやもうほんと超生命体で良かった。
聴くところによれば、私達以外の生命体のほとんどはこの宇宙空間において生存ができないそうだ。
なんともだらしねえ身体構造である。そんな脆弱ぶりで恥ずかしくないのか。
とはいえ、私も別に生身で快適宇宙ライフが出来る訳ではない。
単に死なないだけである。ぶっちゃけ息出来なくて苦しい。
え?なんで喋れるのかって?超生命体だからだよ(意味不明)。
さて、爆発の勢いのままぶっ飛ばされてる状態なので身動きとってもどうにもならない。時々
おうち帰りたい。肉体は兎も角、このままでは心が死んでしまう。
「そういえば、どこぞの世界線に私と似た様な境遇のラスボス枠がいたらしいな。私もいずれ考えるのをやめるのか……」
今頃どっかで生命体と鉱物の中間になってそうな奴を思い浮かべる。あ、あれは火山の噴火で吹っ飛ばされたんだっけ?どうあれ爆発で吹っ飛ばされて母星から追放された境遇は同じだ。
「否ぁ!!そんなバッドエンディングは断じて御免被る!!」
駄々をこねるがどうにもならないのは理解している。だが、何かしらアホみたいな事考えてないと本当に心が死にそうである。
誰だよ宇宙とかいう超範囲領域創ったやつ。
無限の可能性とかそういうのいいから……。
「――あ?」
ふと視線を彼方に向ければ、いつのまにか人工物らしきもの。
彼方といっても結構近い。いつの間にここまで近づいていたのか。
いや、それにしてもでかい。惑星らしきでかい星が2つとその中間になんかコロニーみたいなのがある。星なんてうんざりするほど見てきたのでどうでも良いが、あの中間で浮かんでるコロニーは嫌でも関心がある。
「明らかな人工物……とすれば人類種がいるのか?なにかの偶然で見つけてもらえないものか」
ちょっと奇跡的な救出展開を期待したがこの身は先程述べた通り、爆発の勢いに乗りに乗ってブチ飛ばされている状況である。
あと数分も保たずこの地点から遠ざかってしまうだろう。そもそもこちらの速度が速過ぎて、救出しようにも彼方が追いつけないか。
やはり私はこのまま、某究極生命体の様に永劫に彷徨う運命なのだろうか。
――などと、思っていた矢先である。
一瞬の閃光と共にコロニーが、爆発した。
そりゃあもう気持ちいいくらい派手にドカンとである。
人がいたらまず助からない状況なので、とりあえず種族も形も知らぬ彼らに哀悼の意を示しておく。
……で、だ。
私は今爆発したコロニーと二つの未知の惑星くんの片割れ、その間にいる訳であり当然爆発の衝撃をもろに喰らう。いかに私でも物理法則から逃れることはできないのだ。
「うなぁぁぁぁぁぁぁ!?」
結果私はその衝撃によって青褪めてる方じゃなくてめっちゃ自然豊かな惑星くんに向かって飛ばされる訳だ。
身体は美味しそうには思えないであろう挽肉になったがすぐに元通りになるので問題ない。ほんのちょっぴりだけお腹が空くだけだ。
問題はこの後だ。
恐らくあのコロニーを造った人類種の母星であろうあの星は、恐らく大気がある。
そんな星に超高速で突っ込んでみろ。後はわかるだろう。
人によってはあったまるのに丁度いいかもしれないからやってみるといい。私もやったんだからさ。というか今からやるんだからさ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
わぁーとっても暑い。いやとっても熱い。死にそ……。
超速で突っ込んでいる上既に重力圏に入っているため、あとはこのまま地面か水面に着弾するだけだ。
なんてことだ、もう助からないゾ♡
――おっと申し遅れた。私はカナム。
(私の母星では)何処にでもいるしがない超生命体だ。
絶賛未知の惑星に向けてコズミックダイビングやってるところである。
俺には記憶がない。素性は勿論のこと、顔も名前さえも思い出せない。
思い出そうとすると何か壁の様なものに遮られて……そこまでだ。
時折誰かの声が聞こえる気がするけど、酷くあやふやで要領を得ないものだ。
このオルブス・カラグリアに来て1年。俺は何者でもないまま
「おい鉄仮面、今日の仕事はもう終わったんだろう。早く休め」
ぼぅっと空を見上げていると1人の老人が声を掛けてくる。多分1番聴き慣れた声だ。
鉄仮面。それが此処での俺の名前だ。
由来はそのまま、いつからかずっと被っているこの黒い仮面だ。
視界は確保されているけど、どうやっても外れないし、飯も上手く食えない。とても不便な代物だ。
「ドク……。すまない、少し考え事してたんだ。すぐ寝床に戻るよ」
「また自分の過去についてか?難儀なものだと思うが、いつも言っとるだろう」
「時節を待て、だろう?」
「あぁ」
300年前、当時平穏だったダナの大地は大きな転機を迎えた。悪い意味で。
遙か上空の彼方にある、かつて楽園とさえ言われていたレナ。
そのレナの侵攻によって、ダナは壊滅的な打撃を受けた。
奪われた大陸は5つに分けられ国となり、レナ人の
敗残者であるダナ人達は例外なく性を、故郷を、意思を、自由を奪われ、
ここカラグリアでは老若男女問わず、毎日の様に人が死んで燃やされる。他の国でも、きっとそうなのだろう。
「さぁ、兵士どもが騒ぐ前にさっさと戻れ。寝不足で殴られても治療してやれるかわからんからな」
「わかってるよ。じゃあまた」
――また世話になっちゃうかもな。
俺には記憶以外にも持っていないものがある。
そんな身体を使って何度も何度も他の奴隷を庇って殴られては、ドクの世話になっている。その度に文句を言われるが、とてもじゃないが言い返せるものじゃない。
けれど、理不尽な仕打ちを見るとどうしても身体が動いてしまう。こればっかりは直しようがない。
「止まれ、鉄仮面!」
後少しで寝床に着くところで呼び止められる。
低くくぐもった、それでいて嫌に響く声。
レナの兵士だ。
「……なんだ?」
「
それだけ言うと兵士はいってしまった。
新入り、と言うことは何処からか連れてこられたのか。
どうあれ哀れな事だ。彼か彼女かはわからないが、出来る限り傷付かない様に教えないといけないな。
「え、えーと。君が例の新入りかな?」
「そうらしいな
寝床に戻るなり視界に入ったのはなんというか……とても目立つ男だった。
ボロ布に包まれた浅黒い肌と鋭く光る金の眼光。腰まで無造作に伸ばされた金髪。細身ではあるががっしりとした身体付きの男だ。
そして一際目を引くのが……
「なにかな?私の顔になにか?」
「あーいや。その、なんて言うか」
彼の額には純白の小さな宝石が埋め込まれていた。奴隷の証である
「ふむ、もしや額のコレの事かね?気にする必要はない。単なる飾りだ。くれと言っても譲らんよ?この宝石にはそれはもう深く深く滅茶苦茶どうしょうもない由来があってな?あれはそう、かつて我が故郷が平穏を享受していた頃……。偉大なる我らが父祖達が大いなる御主に喧嘩売ってドンパチしてそりゃあもうドン引きするレベルで辱めて掻っ払ってきたとか云々」
「え!?いやいやいやちょっと待ってくれ!話が全く見えないんだが!」
突然男が饒舌になった。なお言ってる内容はさっぱりだ。
「それはそれはもう酷い有様だったそうでな……。大いなる御主はそれきり引きこもって偉大なる我らが父祖達が宝石をばら撒き、縁起物として生まれてきた子に埋め込む様になったのだよ。つまりこの宝石は偉大なる我らが父祖達の武功と大いなる御主の羞恥の塊と言える代物であり……」
「だから待ってくれって!」
「……ふむ?」
ようやく止まった。一体何なんだこいつは。
経緯は不明だが、このカラグリアで奴隷という立場になったのにまるで動じていない。
こんな奇人は覚えている限り1人も会ったことがない。
付き合っていけるのかコレは?
「あぁ、そうだ。私としたことが何たる失態。申し遅れたが私はカナム。一昨日近くの火山で目が覚めて彷徨ってたらあの甲冑の輩に捕まってね?何もわからぬまま此処に連行された。とはいえ奴隷業など初体験なのだ。正直凄く、そりゃあもう心沸き立っているのだよ。さあ鉄仮面殿。我が親愛なる同輩殿。明日と明後日、明明後日、さらにさらにその果ての朝を拝む為に……共に励もうではないか」
「……ア、ハイ」
ごめんドク。明日は世話になりそうだ。主に胃の不調で。
過去のストックがあるのでしばらくは高頻度で投稿になりそうですが、基本多忙なのでどっかで止まるかもしれません。ツッコミでも評価でも何でもしてください。