Tales of ARISE 〜超生命体(異物)が壁を壊す様です〜   作:とんとなま

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キックだけで相手が爆散するわけないだろ

「鉄仮面殿はまだ戦っているのかあ?」

 

私だカナムだ。

モスガルの東側で一息付いている所だ。なお独りぼっちだ。

いやそうなる様に鉄仮面殿とシオン嬢を北側に向かわせたのだがね?別に寂しくないよ?

私の研ぎ澄まされまくった聴覚は北西側から剣戟の音やら怒号やら爆発音やらを鮮明に捉えている。どうやら鉄仮面殿達はまだ戦っているようだ。まだレベルが低いのだろう(メタ)。あれか?鉄仮面殿は序盤のエリアでレベル上げまくって無双したいタイプか?

まあ主人公補正があるだろうし救援に行く必要はあるまい。というか今駆け付けたら逆に不自然だろう。鉄仮面殿達は2人がかりで今に至るまで戦っている。対して私は単独でとっくに数十人を片付けている。

ここは鉄仮面殿達が合流するのを待ち、死闘で疲れ果てた演出をした方が怪しまれまい。何箇所か自傷して血を流し、服も幾らか傷付けておく。あとは鉄仮面殿が近づいて来るタイミングで五体投地して息も絶え絶えって感じでいれば完璧だろう。

コレで私が滅茶苦茶必死になって戦ってくれたと好感度は最高潮という算段よ。

 

「まあ結局陽動も何もなく普通にバトってしまったのはちょっと考えなしだったか。でも倒しとかないと後々面倒だしなぁ。逃げ切ってもどうせここに戻ってこなきゃだしな?」

 

あ、鉄仮面殿に渡されたナマクラの剣は一応使わずに保管している。もう見るからにボロいし。けど捨てるのも使い潰すのもなんか気が引けたのだ。あの鉄仮面殿が直接渡してくれた物だし、コイツはもしかすると思わぬ活躍をしてくれるかもしれないという予感があったのでそのままにしている。

 

さて、ざっくりながら何があったのか説明しておこう。

残念ながら逃げ遅れた奴隷達はもう手遅れだったので、とりあえず暗示かけた連中を私(厳密には額の石) のsuper powerで労働の義務から解放しておいた。

いきなり仲間が倒れ始め、新規投入された連中は慌てふためいていたのは傑作だ。

ふむ?額の石は物心ついた時から埋め込まれてる物だがほんとどういう仕組みなのだろうか。そういや疑問に思ったことすらなかったが、光の反射で網膜になんやかんやして脳に不思議作用起こしたりとか云々……?

まあそんなmystery powerも万能というわけではないし、謎の暗示とかエネルギーの貯蔵くらいしか出来ないからチートという訳ではあるまい。あ、なんか星霊力らしき発光体も問題なく吸収出来るみたいなので一応幾らか拝借している。使い道はまるでわからないが。

 

「まあ使わないなら使わないで良いしな。私はそもそも星霊術なんて使えんし原理も知らん。こんな得体の知れないエネルギーどうしろっていうんだ?なあ甲冑殿?」

 

地に伏した甲冑(新規投入)を声を掛けるが、起き上がる様子は無い。お昼寝にしてはいささか遅い時間だが、すやすやと寝息をたてる彼らも日頃の業務で疲労は溜まっていよう。勤勉な労働者に一時の安息を与えるのはまさしく善行、感謝し給え。

 

「はははは。流石は私、そこらじゅうに転がっている石を投げるだけで障害などあってないようなものよ」

 

私の卓越したセンスでこれをこう、上手い具合に兜に滑らせるイメージで当てると脳震盪とか起こして気絶するんじゃないかという希望的観測の……コホン。絶対的な確信をもって行ったが完璧な出来栄えではないか。

ただ1発で30人ほど昏倒させた謎の跳弾はちょっと私でもよくわからない。

小石を用いた人間ピンボールでは世界最高記録ではなかろうか。え?そんな競技無いって?なら私が最初なのだから結局私が最高記録保持者だ。

まあ多分使った石に偶々物理法則を無視した作用をする星霊力でも宿っていたんだろう。星霊力万能説?

とりあえず甲冑共は適当に縛り上げておく。

因みに数匹いたお供の犬型ズーグルは彼方の方へ投げ飛ばしておいた。犬嫌いだからな私は。

以前興味本位で観光した、変な病が蔓延するそこらじゅう血みどろ中世チックで何処となくコズミックな市街地で何匹ものクソ犬共に執拗に絡まれてからずっと嫌いだ。

 

「しかしまあ、短い付き合いとはいえ見知った顔が死んだのだ。鉄仮面殿の方が片付くまでは弔いでもしておくか?」

 

見渡せばズーグルに噛みちぎられた者、剣で斬り伏せられた者、炉に投げ入れられた者。老若男女問わず、無造作に転がるのはどれもここ1週間で見知った顔だ。

モブなんざに特別な情がある訳でもないが、不幸な生を送り、終えた者達。

あの世やら輪廻転生なんてものがあるのかはわからないが、合掌くらいはしておくべきだろう。

カラグリアは四六時中、そこらじゅうで火が上がる土地だ。その上での虐殺。血肉が焼け、焦げる臭いが充満しているがもう慣れたものだ。

なんでって?そりゃあ私も子供の頃から火達磨になったりしていたのだ。ついこの間大気圏にワイヤレスバンジーだってしたし、私の故郷では子供生まれたらとりあえず炉にぶち込むなんて事する連中がいるんだぞ?

ちなみに私は父上と母上の手で愛情たっぷり込めて塩水に浸された後、これまた愛情たっぷり込めて24時間避雷針に括り付けられたそうだ。その日は記録的な落雷数だったとかで話題になったとか云々。

 

 

……。

…………。

………………。

……………………。

 

いや全然鉄仮面殿達戻ってこないが?

え、戦闘音といい鉄仮面殿の声といいまだ戦ってんの?え、ほんとにレベリングしてんの?あのモブ甲冑とズーグルって量産型な上に無限湧きなの?

 

「陽動とは……?」

 

果たして手が足りないというのはなんだったのか?私が頑張って打ちのめした連中はなんだったのだ?

まあいい、このまま待ってても埒があかない。なんと言っても暇だ。

 

「小生もう我慢できない」

 

天を仰いでいた身体を起こし、常人よりもちょっと速めの速度で駆け出す。向かう先は勿論鉄仮面殿の方である。

 

「ほんとにまだ戦っていたのか……(困惑)」

 

視界に入ったのはそりゃあもう縦横無尽に駆け回って敵を斬り伏せる鉄仮面殿と、まだ知り合って間もないだろうに的確に彼を援護するシオン嬢だった。理想的な前衛後衛の関係とかやっぱこいつら既に()()()()のでは?あ、敵の数は思ったよりも多くはなかった。どいつもこいつも無駄にタフなだけらしい。

あれか?なんか難易度的なのがあって敵のステータスにボーナスが入ってるのか?

ていうかシオン嬢、そのでかいライフルはどっから出てきたのだ。さっき持ってなかっただろう?しかも変な火球とかぶっ放してるし……。ん?火球?

 

「え、シオン嬢ってレナ人なのか?」

 

モスガルには不釣り合いな格好からして予感はしていたが、アレが話に聞いた星霊術ならばそういう事なのだろう。ほら、なんか目も光ってたし?星霊術は使う時目が光るそうなので間違い無いだろう。にしても「石付き」とか「光り眼」とかこの世界の連中ネーミングが直球過ぎやしないか?いや、だからと言って別の名前が浮かんでくるわけでもないが。

 

「にしてもダナとレナが手を組むとはなぁ。アレか?禁断の関係ってやつか?いや流石にまだ気が早いか」

 

王道な展開ではあるがちょっと場所も時期も悪すぎる気がする。

レナ人も一枚岩ではなかろうが、散々虐げられたダナ人が救ってくれたとは言えレナ人をそう受け入れられるとは考えにくい。

今は戦闘中だからいいとして事が済んだらシオン嬢と鉄仮面殿は苦労しそうだ。…………仲裁役とかやった方がいい?

ほら、曲がりなりにもシオン嬢はヒロイン枠(暫定)だし?

 

「む。あれはまずいか」

 

さっきから無駄にタフネスを発揮している甲冑の1人が鉄仮面殿の背後をとった。鉄仮面殿は大振りの一撃を叩き込んだばかりで隙が生まれ、シオン嬢は自分に向かってきたクソ犬の対応に回ってしまった。まあ所詮雑魚甲冑だし、鉄仮面殿の屈強かつ痛覚がないとかいう謎体質を持ってすれば一撃くらいどうって事なさそうだがこれは――恩を売って好感度稼ぐチャンスでは?

とりあえず走る勢いのまま地を蹴り上げ跳躍、件の甲冑に跳び蹴りをかます。自分でももう惚れ惚れしちゃうくらい素晴らしい身体能力を活用し、無駄に錐揉み回転も混ぜたが、うん。会心の出来だろう。勿論私の卓越したセンスで持って加減はしている。

 

「ラ◯◯ーキック!」

 

ハッキリ言うとなんか各方面から怒られそうな気がしたので、発声は一部不明瞭にしておく。何がラ〇〇ーなのかはツッコまないようにな。

昔観光した所で偶々見かけた昆虫みたいな頭した怪人物を真似てみたが、流石に対象が爆発四散するような事にはならなかった。そりゃただの跳び蹴りだからな。ちょっと物足りなさはあるがフォームは完璧だ。一回やってみたかったんだコレ。

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

気持ちいい位吹っ飛んでいった甲冑を尻目に鉄仮面殿をみやれば、彼は仮面越しでもわかるくらい驚いている。

 

「か、カナム!?」

 

「犠牲は出たが向こうは何とかなった。あまりにも遅いんで駆け付けてみれば……とりあえず怪我はないかね」

 

「あぁ、何ともない。それと、助かった」

 

一瞬の風切りと共に、私と鉄仮面殿の間を縫うようにすり抜けた弾丸がこちらに走ってきていたズーグルを射抜いた。

 

「話してないで身体動かして貰える?」

 

危ないなおい。鉄仮面殿に当たったらどうするというのか。

いやあんな犬っころ余裕で対処出来るからそんな怖い顔して睨まないでほしい。シオン嬢、私は君の未来の理解ある彼クン(暫定)を助けてやったのだぞ。そこは全身全霊を込めて感謝するべきではないかね?

 

「カナム、怪我してるとこ悪いが……頼めるか?」

 

「こんなのかすり傷だ。さっさと片付けよう。あとまあ、シオン嬢の事はちゃんと説明してもらうぞ」

 

「……あぁ」

 

敵が増えたからか、甲冑共が少し後ずさった。メンタルまで雑魚じゃないか……。

とりあえず鉄仮面殿と肩を並べてそれっぽくファイティングポーズをとるが、鉄仮面殿は何か後ろめたさがあるのか若干身体が強張っている。

まあダナ人がレナ人と手を組んでるとか、今回の襲撃が自分のせいなんじゃないかとかそんなどうしようもないことで思い詰めているのだろう。

そういうとこだぞお前。




今日からどこぞのお空の方でイベント始まるので投稿遅れるかもしれません。
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