撃墜王のクリプター   作:岬サナ

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2話目です!
本格的にプランダラの世界を書くのは次辺りになる予定です。


クリプター会議

そこはキリシュタリア・ヴォーダイムが担当する星間都市山脈オリュンポスの軌道大神殿・オリュンピア・ドドーナ内部の会議フロアに8名の人影があった。

 

円卓をイメージいたテーブルに座るのは、リーダー、キリシュタリア・ヴォーダイムを始めとした、カドック・ゼムルプス、オフェリア・ファムルソローネ、芥ヒナコ、スカンジナビア・ペペロンチーノ、ベリル・ガット、デイビッド・ゼム・ヴォイド、そして、四季湊の8名

 

「今回は全員参加してくれたみたいだね」

 

この場で唯一ホログラムでなく生身の存在であるギリシャ異聞帯を担当するクリプター、キリシュタリア・ヴォータイムが最初に口を開く。

 

「………」

 

「あらあら」

 

キリシュタリアの言ったことに自覚があるのか無言を貫く湊にペペロンチーノはヤンチャな弟を見るような目で湊を見る。

 

「それより用件を言え、キリシュタリア」

 

「そうだね。空想樹の発芽から90日………約3ヶ月の時が経過した。濾過(ろか)異聞史現象───異聞帯(ロストベルト)の書き換えは無事、終了した」

 

キリシュタリアはクリプター達を見渡しながら言葉を続ける。

 

「まずは第一段階の終了に祝おう。これも諸君らの尽力によるものだ、と」

 

「うん? そいつは大げさだ、キリシュタリア。オレたちはまだ誰も、労われる様なコトはしちゃあいない。一番肝心な事はぜーんぶ、異星の神さまの偉業だからな」

 

キリシュタリアの言葉にベリルが首を横に振った。これを見てオフェリアが顔をしかめる。

 

「……貴方は分かっていないのね。異聞帯の安定と樹の成長は同義よ。なら、異聞帯のサーヴァントの契約と継続。それに全力を注ぐのは道理でしょう。貴方のような、遊び気分が抜けてないマスターは特に」

 

「おっと。睨むのは勘弁だぜ、オフェリア。お前さんの場合、シャレになってないだろう」

 

わざとらしくおどけて見せるベリル。しかし、次に話す時は真剣な面持ちへと変わる。

 

「それに一度死んでんのに遊び気分でいられる程大物じゃない。こうして蘇生に成功したものの、異星の神の恩情も二度もあるとも思わないしな!」

 

「いつ神の気紛れに殺されるかも分からない身の上になってるしな」

 

「ハハハッ。その通りだぜ湊♪」

 

大袈裟に笑いながらベリルは尚も言葉を続ける。

 

「なら、生きている内にやりたい事はやっておきたい。殺すのも奪うのも生きていてこその喜びだ。__なぁ、アンタもそう思うだろ? デイビット」

 

「同感だ。 作業の様な殺傷行為は、コフィンの中では体験できない感触だった。オレの担当地区とお前の担当地区は原始的だからな。必然、その機会に恵まれる」

 

「そうとも。オレたちにその気が無くても向こうから殺されに来る。遊んでなんかいられねぇよなぁ?」

 

「…………そう。 貴方たちの担当の異聞帯には同情するわ」

 

ベリルの楽しそうな表情にオフェリアは同情の気持ちを隠せずにいる。

 

「………………」

 

「あら、平常運行のベリルに比べて、少し元気無いんじゃないカドック?目の隈とか最悪よ?寝不足?それともストレスかしらね?」

 

「……その両方だ」

 

ペペロンチーノは自分の視界に入っていたカドックの顔色の悪さから気遣いげに聞く。カドックも疲れが隠せずに表に出ているからか言葉から力がないように見えた。

 

「僕の事は放っておいてくれ。仕事はきっちりこなしてるんだから」

 

「それはちょっと無理ね。 凄く無理。放っておいて欲しいなら、せめて笑顔でいなさいな。友人が暗い顔をしてたら、私だって暗くなる。当たり前の事でしょ?」

 

「………」

 

ペペロンチーノの語気が強くなり、ペペロンチーノ相手に隠せるのは無理だと悟ったのかカドックもそれ以上言わない。

 

「私は私の為にアナタの心配をしちゃうのよ。アナタの事情とか気持ちとか関係なくね。分かる?独りで居たかったら、それに相応しい強さを身に付けないと。ストレスが顔に出ているようじゃまだまだよ。何か楽しいことで緩和しないと───そうねぇ、お茶会なんてどう?」

 

優しげな顔をしたペペロンチーノがカドックにお茶会の提案をする。

 

「こっちの異聞帯で良いお茶の葉を見つけたの。アナタの所にも分けてあげるわ。皇女様もきっと喜ぶわよ?」

 

「……余計なお世話だ。僕の心配してる余裕があるとは、流石だな」

 

「きゃー、褒められちゃったわー!いいわ、殺し文句としては中々よカドック!」

 

「違う、呆れてるんだ。……ここにも特大のがいるぞオフェリア」

 

「彼の場合はこれがデフォルトでしょ」

 

そしてペペロンチーノは湊の方に顔を向けて。

 

「湊もどう?貴方もカドックと同じかそれ以上に心労を抱えてそうよ」

 

「そうだな。茶葉だけは貰っておく」

 

「そう。でも辛くなる前に言うのよ」

 

「あぁ。……それでキリシュタリア、さっさと用件を言え。これでも俺は忙しい中で時間を作っているんだからな」

 

「それには私も同意見よ。キリシュタリア。要件は何?」

 

湊の意見にそれまで無言で眺めていたヒナコも話を切り上げるようにキリシュタリアへ問いかける。

 

「こちらの異聞帯の報告は済ませたはず。私の異聞帯は領地拡大に向いてない。私は貴方たちとは争わない。この星の覇権とやらは貴方たちで競えばいい。そう伝えたわよね、私?」

 

「……そんな言葉が信用できるものか。閉じ篭っていても争いは避けられないぞ、(あくた)。最終的に、僕たちは一つの異聞帯を選ばなければならない。アンタが異聞帯の領地拡大を放棄しても、その内他の異聞帯に侵略される。それでいいのか? 座して敗者になってもいいと?」

 

「……別に。私の異聞帯が消えるなら、それもいい。私はただ、今度こそ最後まであそこに居たいだけ。納得の問題よ。それが出来るなら他のクリプターに従うわ」

 

「異聞帯間の勢力争いには興味無い、か。まぁ、これはほとんど結果が見えてるゲームだからな、このレースは。オレ達は束になってもキリシュタリアには敵わない。地球の王様決めレースは結果が決まってる出来レースだ」

 

ヒナコの言葉にベリルが共感しながらも呆れた様子で言う。

 

「オレとデイビットの所なんざ酷いもんだしな?あれのどこがあり得たかもしれない(・・・・・・・・・・)人類史(・・・)なんだよ……その点、キリシュタリアの異聞帯は文句無しだ。下手すりゃ汎人類史より栄えてる!ずるいよな、最初から依怙贔屓されてるときた!やっぱり生まれつきの勝者側の奴ってのは居るもんだ」

 

オフェリアは先程のキリシュタリアに対してのベリルの発言に対して意見する。

 

「言葉を慎みなさいベリル。キリシュタリア様は自力で自身の異聞帯を攻略なされたのよ。それにキリシュタリア様には3体の神霊が──」

 

「いや、黙るのは君もだオフェリア。ベリルの言うことも的外れではない。最終的に私が勝利することは自明の理だ。その事実だけは、どう言葉を使おうが変わることはない」

 

キリシュタリアの絶対的な自信が垣間見えるのを感じた。湊はそれに対してどうでもよく感じていた。

 

「だが、私はここにいる全員に可能性があると信じている。私達の異聞帯にはないものが、諸君の異聞帯にあるように、私は君達にも世界の覇者になれる素質があると思っている。油断したらひっくり返される。それくらいの事はしてのけると思っている」

 

キリシュタリアのその言葉に、嘘は無い。本気でそう言っていることが伝わってくる。

 

「とはいえ、負けるつもりも無い。全力でかかってくると良い。こちらも全力で対応しよう……さて、遠隔通信とは言え、私が諸君らを報告後も引き止めたのは、他でも無い。一時間程前、私のサーヴァントの一騎が霊基グラフと召喚武装の出現を予言した」

 

キリシュタリアのその報告に、クリプター達の空気が一変し、各々が様々な反応をする。

 

「霊基グラフはカルデアのもの。召喚サークルはマシュ・キリエライトの持つ円卓だろう。南極で虚数空間に潜航し、姿を晦ましていた彼らが、いよいよ浮上する、という事だ」

 

「死亡していなかったのですね。3ヶ月もの間、虚数空間に漂っていたというのに……」

 

「折角コヤンスカヤちゃんが色々と手回ししてくれたのに。人選ミスじゃないヴォーダイム?私のサーヴァントだったら基地ごと壊せていたわよ」

 

ペペロンチーノの発言にキリシュタリアはいつも通りの雰囲気で返答をする。

 

「──あの方法と人選は最適解だった。カルデアの護りは強固では無いが、万全だ。新スタッフとして館内から手引きしてもらわなければレイシフトで対応されていただろう」

 

「確かにレイシフトで逃げられるのが一番困るな」

 

「その通りだ。制圧にはまず内側から潜入し、カルデアスを停止させる必要があった。コヤンスカヤの計画は良く出来ていた。唯一、我々側に問題があるとすれば……サーヴァントが余り積極的に働かなかった事だ」

 

そう発言するキリシュタリアだが、これも今までの人理焼却を生き残ったきたカルデアには、藤丸立香にはあるのだろう。天運というものが。

 

「とはいえ、コヤンスカヤと神父は我々のサーヴァントでは無く、カドックの送り込んだ皇女もカドックの責任ではない」

 

「……それで、連中が何処に現れるのか判明しているのか?」

 

「そこまでは予言されてはいない。あと数時間でこちらに出現する、という事だけだ」

 

「なんだいそりゃ。じゃあ各自、自分の持ち場で警戒しろって──」

 

「出現場所はロシアだ。ロシア異聞帯の中に浮上する」

 

ベリルが文句を言いかけた時、デイビットが断言する。

 

「……それは、何故?」

 

「何故?彼らが今の地球で知り得る事象はカルデアを襲ったサーヴァントだけだ。虚数空間から現実に出るための縁はそれしか無い。オプリチニキは彼らにとっての座標でもある」

 

ヒナコの疑問をディビットは何を当たり前の事を聞くんだというように言葉を返す。話を聞いた湊も出現するのはロシアだと真っ先に理解していた。

 

「それならカルデアの対応はカドックがするって事で話しは終わりだな」

 

「そうだね」

 

「それなら俺は、もう戻らせてもらう」

 

「待ちなさい湊!」

 

話しは終わりだと通信を切る湊。オフェリアの叱責も聞く前にプツンと湊の姿のホログラムは消える。

 

「あいつも大分変わったね~♪着てる服もどっかの軍服みたいだしよ!」

 

「それだけ何かがあったんでしょうね」

 

湊が退席した後に喋り出したのはベリルだった。ペペロンチーノは随分と変化した湊をフォローする。

 

「私もそろそろ戻るわ。こっちの王のご機嫌取りも大変だから」

 

湊に続いてヒナコも通信を切り、退席する。

 

「ちょっ!?……全くあの2人は」

 

「別にいいじゃねぇかよ。本人達の自由にやらしてやりゃいいじゃねの♪」

 

頭を抱えるオフェリアに楽しそうに言うベリルの姿には苦労人と遊び人のような違いが見える。

 

「さて、カドック。湊も言っていたがカルデアへの対処は君に任せる」

 

「因果応報で襲われるんだ。ちゃんと奴らを倒して証明するさ」

 

「確かにカルデアのことは無視できないが、それでも空想樹の根の成長に比べると雑事であることには変わりない。君の働きに期待しているよ」

 

「………ふん」

 

不貞腐れたように通信をカドックも切る。

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