タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

10 / 14
ネオロマンスについての感想が目から鱗が落ちる思いだったので初投稿です。


信用と信頼は小田原城とオダ○リジョーぐらい違う。

 ボスが1体だけ? そんなんじゃ甘いよ。

 

 

 巨門の迷宮をクリアするためには『双骨鬼』という巨大な曲刀を持つ鬼を倒さなければならないのだが、こちらのボスは1度の挑戦で2倍お得なダブルバトルとなっている。

 

 まだまだふたつめの迷宮攻略、ゲームでもこの世界でも弱点はハッキリしており“一撃は強いが動きは遅い”タイプのボスである。

 ただし、さすがは迷宮の支配者といったところかなかなかホネのある鬼であり耐久性が高いのだ。ゲームであればスタミナ管理とプレイヤーの集中力次第でサクッと倒せるボスかもしれないが、即死級の力で振り回される曲刀を避け続けるのは本来は精神をガリガリ削られる作業でしかない。

 

 

 中には「コイツで大型の鬼との戦い方を練習するついでに今後のイベント戦に備えて恐怖に折れない心を磨く訓練したろ」などと考え仁王立ちで真っ正面から袈裟斬りにされ仰向けに倒れる頭のヤベー兄妹もいないことはない。

 だが大抵の場合、とくにここまで順調に攻略を進めてきた巫女と侍ほど恐怖にのまれ巨門の迷宮で停滞することになる。例え心が折れなくても、諦め癖や逃げ癖が身に染み付いてしまうことだってあるのだ。

 

 

 もちろん純情で可憐なポジティブ不撓不屈系ヒロインである真白ちゃんはその程度でめげません! 双骨鬼と鍔迫り合いで火花を散らす私とかカッコいいかも? などと想像できるぐらいには逞し~い感じに育っています! これも全て殴り合いに挑む巫女を「何事も経験だからな」と引き留めなかったモブ侍が悪い。

 

 

「コッチはオレが引き受ける! 体力がすっからかんになる前にケリつけて助けてくれよッ!」

 

「大地さんはこの程度で息切れなどしないでしょう!」

 

「役割分担だよ、役割分担ッ! いまのオレは防御重視の囮役だからなッ! ──そらよッ!!」

 

『ギッ!?』

 

 双骨鬼の片割れが振り下ろした大曲刀を、大地は新しい武器として選んだ斧槍の石突きを使い器用に流してみせた。

 拳の強みが素早さを活かした先手からの連撃であるため、周囲からは強気の攻めこそが目白大地のスタイルだと思われているがそんなことはない。基礎の地道な積み重ねこそが最強へ至る道であると考える大地は防御の練習にも常に全力だ。慣れぬ武器とはいえ1度は討伐した相手、この程度の芸当など朝飯前の昨日の晩飯なのだ。

 

「たしかにアレならば心配は必要なさそうですね。朝比奈さん、援護をお願いしますッ!」

 

「わかった! 炎よ、喜多くんの武器に宿れッ!」

 

 真白が掲げた錫杖から放たれた炎が静流の装備した刺突剣に宿り、双骨鬼に有効な火属性となる。ちなみに使用した魔法スキルの名前は『魔法剣ファイア』である。どこかで聞いたことあるって? たぶん気のせいじゃないかな。

 

 新しい武器を試しながらの攻略といえ大地も静流もレベルが高く、そこに黄龍の加護の特徴である『侍の強化』が合わさることで適性もそこそこ成長している。真白がちゃんとサポート系の魔法スキルを覚えて使用していることも含め負ける要素はほぼ無いだろう。

 攻撃系の魔法スキルも試してみたい気持ちはあるが、誤射の可能性を考えてしまいボス部屋までの6階層でもまったく練習していない。錫杖で殴るのと同時に魔法スキルを発動すれば必中なのでは? とナイスなアイディアを閃いたものの、先輩である雅に相談したら笑みを浮かべたまま瞬速の拳骨を頭に落とされたため自重している。

 

 

 あとで彼方くんにお願いして練習を手伝ってもらおうそうしよう。大地も静流も練習と知った上でうっかり巻き込んだぐらいならマジギレするほど狭量ではないのだが、そこはやはり信頼度の差による評価が大きいので仕方ない。なにせ──。

 

 

「ハッハァッ! 楽勝だったな! 補助系のスキルが便利なのは知ってるがよ、やっぱり巫女がサポートしてくれると別だな。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そうですね。四神の加護を持つ私たちは立場上あまり気安く巫女の皆さんとパーティーを組めませんでしたが……その点、()()()()()()()()()()()()()()()()()こうして気兼ねなく協力をお願いできるのも助かります」

 

 

 これである。

 

 大地と静流に悪気がないことぐらいは真白にもちゃんと伝わっているが、こうも『黄龍の』を強調されると褒め言葉でも少々モニョってしまうというものだ。

 

 如何せん彼方や凪菜は黄龍の加護についての前世知識があるため真白のことをそういう目で見ていない。ふたりにとって黄龍の加護そのものにいまさら興味を引かれるような情報など無く、彼方にとっては適性の幅が広いだけでほかの巫女と扱いは変わらない。どうやら脳筋因子についてはほぼ諦めたらしい。

 ルームメイトである雅はさすがに無関心とはいかないが、それでも先輩と後輩というただそれだけの関係を維持することを優先している。本人が望んだワケでもない肩書きで好き勝手好奇の視線を向けられるのは辟易するだろうからと、せめてもの配慮である。

 

 と。こんな具合で良い意味で雑な扱いをされて、そんな環境を好ましく思っている真白としては大地と静流の態度はどうしても素直に喜べない。

 

 ついでに言うなら、彼らが善人であり協力的であるからこそ「一緒のときぐらいふたりがイメージする巫女らしい振る舞いをしてあげたほうがいいかな……」という気持ちもあるから厄介なことになっている。

 期待されたら応えたくなるのも人情というもの。どうせあとからひとりで巨門の迷宮をじっくり散策することもできるし、新しい大太刀の感触はそのときに試せばいいだろう。

 

 

 まぁ、とにかく。

 

 攻略は成功したし、経験値増加のスキル効果は大地の斧槍レベルと静流の刺突剣レベルの上がりっぷりで確認できたし、褒めてくれているのは事実だし。

 

 

「ふたりとも、今日はありがとうね!」

 

 ましろ の ほほえみのばくだん! 

 

 

「おう! 次は『禄存の迷宮』の攻略だな! 鬼どもも手強くなるだろうし、腕がなるぜ!」

 

「あちらは私たちもまだ攻略の途中ですからね。今度こそ喜多の弓術をお見せしましょう」

 

 だいち と しずる は ゆうじょうとしんらいに ふたつ まるをつけた! 

 

 

 乙女ゲーの男たちが少し微笑んだぐらいでときめくと思ったら大間違いである。まずは友情ゲージを最大まで満たしてから、そこから新しいフラグを立てることでようやく愛情ゲージに切り替わるのだ。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「……と、いうことで巨門の迷宮は一応攻略できました。サポート系の魔法スキルもたくさん覚えましたよ! 『パワーエクステンション』とか、『マイトレインフォース』とか、『シャープネス』とか」

 

「相変わらず彼方頼り、というかものの見事に全部攻撃力を強化するスキルだねぇ。アンタ、アイツからはスキル習得を全部許可されてるんだろう? もっとほかにもあっただろうに」

 

「もちろん。彼方くん、属性適性のレベルが全部C以上なだけあって魔法スキルもたくさん持ってますからね。でも、これでも私なりにちゃんと考えて選んだんですよ?」

 

「彼方くん、ね。それで? いったいどんな考えでスキルを選んだのか言ってごらん?」

 

「先輩、私気が付いちゃったんです。鬼との戦いは──相手が攻撃してくる前に倒しちゃえば無傷で勝てるんだってッ!」

 

 

 あ、コレたぶん無自覚だけどストレスたまってるヤツだわ。

 

 

 普通に考えれば四神の加護を持つ特上Aクラスの侍をふたりも引き連れてのダンジョン攻略、大抵の巫女であれば友人知人に自慢したくなるほどの恵まれたシチュエーションだろう。

 だが朝比奈真白にとってはそうではなかったらしい。わからないなりに自分にできることを精一杯頑張ろう、そんな想いで出した答えが『斧』である彼女にとって後ろで見てるだけというのは物足りないのかもしれない。

 

(今後の迷宮攻略はほぼ確実に残りのふたりも合流するだろうし、そうなればますます真白の護りは鉄壁になるけれど……どうしたもんかねぇ……)




剣と刀と刺突剣と大剣と大太刀は別カテゴリーでいいんじゃないかな? (プレイヤー並感)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。