タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 ビル群を地下に引っ込めたエヴァは偉い……いや、全然表に出たまま戦ってたな……ともかく初投稿です。



ヒーローの戦いは事後処理のほうが大変だと柳田理科雄先生も仰っている。

 涼蘭姫は喜多家の管理する結界内部の出来事。

 

 炎翁は結界など無い繁華街での出来事。

 

 

 場所が違えば被害も違うのは当然であるが、とりあえず巫女ふたりに関してはそこまで深刻な事態にはならなかった。

 

 普通のヒロインであれば目の前で親しい男の子が命を落としたかもしれない、となれば慌てふためくこともあるだろう。しかしスーパーヒロイン真白ちゃんは「彼方くんはなんの考えも無しに自爆はしないよね……だって彼方くんだし……」と生存を疑ってはいなかった。

 そして感情の落差で忙しい侍や巫女たちと違い、蒼鬼とその背後にいるという朧なる鬼に対する敵意以外はある程度冷静さを保っている棗も「エーテル粒子化……あれは復活の? だけど、それならいったい何処へ?」と彼方の無事を確信しつつもその不思議について考えていた。

 

 鍵となるのは背後に現れた謎の神霊。彼方本人は加護など無いと、だから神霊も精霊も全く姿が見えないと言っていたが。

 

 もちろん鵺は黄泉戦のことを知っている。そしてソレに纏わる厄介事についても。生命力を活性化させる治癒の力と、生命力を与える復活の力では希少性がまるで違う。強欲な権力者同士の、つまりは人間同士の争いに発展した過去を知る者として迂闊に語ることはできない。

 だが、黄泉戦自身が無銘彼方に肩入れをしたのであれば話は別だろう。復活地点に心当たりがあると伝え、移動の時間を利用して真白と棗に黄泉戦について説明することにした。神社に続く石段を登り神域に踏み込めば、やはりと言うべきか魂揺蛍たちがふたりの巫女を歓迎する……いや、違ェな。コレは久し振りの客に興味津々なだけか。なんにせよ好意的な出迎えということで鵺は気にせず奥に進むよう促した。

 

 

 そこには、シャドウレッドから私服に戻ってゴロンと横になっている目的の人物が。 

 

 

「……クッソ疲れた。もう2度とやりたくない。次、同じようなことあったら俺は逃げるね……」

 

 

 それは「大丈夫だ、心配いらない、みんなのためだ」などと言って女の子に泣きながら怒られるというテンプレをぶった斬る情けないひと言であった。

 見栄を張る必要がないのだから本音でブチまけてなにが悪い、こっちは本当にやりたくないんだ文句あるか、といったところだろう。実際に彼方には英雄願望が無いので嘘ではない。同じことをしない保証はないが。

 

 ともかく。

 

 必要だからやった、必要でなければやらなかった。というか必要だとしても次はやりたくない、むしろ次があるならお前らがなんとかしろよ。

 全て嘘偽りのない本音であるが、そんな感情を見栄もへったくれも無しに向けられれば真白も棗も笑うしかない。情けない、男らしくないなどとは思わなかった。ただ、無銘彼方らしいのだからそれで良いのだ。

 

 

 と、こうした具合に彼方と巫女ふたりについては平和的に落ち着いた。どうにも魂揺蛍の姿が見えていないことから黄泉戦から正式に加護を与えられたワケではないようだと誤解した鵺の説明から、真白と棗を含めて周囲に転生者の存在が知られることもないだろう。

 一応、人の身には過ぎたる力の使い方をしたペナルティがあるにはあるのだが……レベルダウンとそれに伴うステータスの低下であれば、もともとスキル構築ばかりにエーテルを割り振っていた彼方にとってはさほど問題にはならない。今後は魂揺蛍の加護により死に戻りでも何割か手元に残るということで、レベル上げも少しは楽になるだろう。

 

 ちなみに蒼鬼を倒したぶんのエーテルは復活のためのコストとして全て消費した。なので彼方が自分で蒼鬼を討伐したことに気が付く日は永遠にこない。それを知るのは覗き見をしていた涼蘭姫くらいなものだろう。

 

 

 

 

 で、その涼蘭姫の居住地である文曲の迷宮・奥の院ではラスダン前のそれぞれの迷宮のボスが集まり今後についての話し合いが開催されていた。

 

 破軍の炎翁はもちろんのこと、廉貞の迷宮からはショタ枠の『幽幻童子(ゆうげんどうじ)』という鬼神が、武曲の迷宮からは美形枠の『泰山(たいざん)』という鬼神が参加している。

 議題はもちろん朧との関わり方を今後どのようにするのか。具体的には、人間たちに朧を滅してもらうためにどのようなフォローをするかという方向で話し合おうじゃないかと集まった形だ。

 

 

「……ほぅ? かすていらの親戚のようなものかと思えば、なかなか食いごたえのある菓子だな。うむ、美味い。ワシのような年寄りでも美味いと感じるとはな」

 

「そんなこと言ってるけど、昔からおじーちゃん新しいモノわりと受け入れるほうじゃん。今度一緒にラーメンでも食べに行く? ボクが案内してあげるから」

 

「ふむ、らうめん。それはどんな食い物だ?」

 

「大陸から渡ってきた麺料理だよ。うどんやそばよりも獣肉や脂を使ったお腹の膨れるヤツ。おじーちゃんの好きな辛い系もあるよ? 辛味の強さを地獄の何丁目、って表現してるのは面白かったね〜」

 

「ほぅ! 食い物の冠に地獄と名付けるのか! それは是非とも試してみなければならんだろう!」

 

 

「気持ちの切り替えが巧いのは爺様の美点だな。己が同じように水を差す真似をされたら数日は怒りが治まらんよ。……それで、朧を人間たちに始末してもらうという話だが」

 

「なぁに、別に我らが誘導せんでも自然とそういう流れになるだろうとも。朧一派は上から下まで、ほれ、そういう手合いばかりだからのぅ。なんと自称していたか……その、なんだ? 4大バカ鬼の一匹が死滅しただろう? アレを受けて余計に欲が出るのが連中だ」

 

「フン……。仮にも仲間が敗北したというのに、それを自分の名を挙げる好機と見るか。連中の実力差など、それこそどんぐりの背丈比べでもして遊んでいるほうが有意義な程度しか違いなど無かろうに」

 

「仕方あるまい? 本気で己等を鬼神に迫る実力者と思い込んでおるのだからな。だからこそ、人間たちにも充分に勝ち目がある。贋作狂いを独力で討ち取った黄龍の巫女であれば……朧との決戦についてはなんとも言えんが、少なくとも残りの3バカ鬼仙ぐらいはどうにでもなろう」

 

 

 鬼の格付けは大雑把な括りはあるがその定義はかなりフワッとしている。あまりガチガチに設定するとプレイヤーが想像を楽しむ余地が無くなるし、なにより制作陣がその設定に苦しめられることになるからだ。解釈の自由度があるからこそ、あとからアレやコレやと付け足すことができるというもの。

 それでもある程度の目安は必要ということで、鬼神としての格を得るためには眷属の存在が重要となってくる。神という存在が人々の信仰心によって形作られるように、鬼神もまた眷属を従えることで上位の鬼として存在を高めるのである。逆に言えば、眷属を従えるだけの器を示さなければ、どれだけ高い妖力の持ち主であろうと鬼神としての格を得ることはないのだ。

 

 

 蜂眼坊は「未だ修行中の未熟な身でありながら、偉そうに眷属を従えるなどあり得ない」として鬼神の格を求めず。

 

 アテルイは「集団行動も悪くないんだけど、やっぱりアタシは基本的に自由気ままにいたいのよね〜」と単独行動を好む。

 

 

 と、こんな具合に自分の流儀を優先する鬼仙たちは鬼としての格付けにそれほど興味を示さない。そして鬼神の肩書きよりも自分の価値観を第一に考える鬼たちは人間を“人間だから”という理由で舐めたりはしないので、ときには素直に敗北を受け入れることができるし、そこから向上心へと繋がりより高みに……というワケだ。

 まぁ、つまり。同じ鬼仙だからといって強さまで同じではないということで。巫女プのヒロイン真白と一緒に過ごす時間が長くて強化イベントが流れてしまった風魔と大地には少々厳しい相手となるが、本筋から外れてモブキャラと交流していた紅蓮と静流ならふたりで残りの3バカをまとめて倒せる程度の実力である。なにか順序がおかしい? 違和感なんてピザをコーラで流し込めば気にならないさ! 

 

 と。

 

 こんな感じでメインストーリーで迷宮を守護ってる4人の鬼神は朧一派が現世まで出張ってきたことについてそこまで深刻に考えていない。むしろ、黄龍の巫女の出現と同時期であることを好都合とさえ思っている。

 大事なのは大枠の認識をしっかりと共有すること。現場を、戦場を知る鬼神たちはどれだけ入念に準備をしたところで予定通りに事が運ぶことなど稀であると知っている。全体方針さえ共有できていれば、多少の誤差は各自の判断でどうにでもなるのだ。

 

 

 

 

 それじゃあフリーの鬼たちとの接触をどうしようか? などとラーメン雑誌を広げながら和気藹々と話し合いを続ける鬼神たちとは打って変わって、現世では武功庁と霊験庁のお役人たちが集まる会議室は阿鼻叫喚となったりお通夜の如く静まったりと忙しい状態にあった。

 

 鬼の出現について再発防止に全力を尽くすと宣言した矢先の出来事、しかも入院・通院が必要となった被害者は数千人となれば世間もメディアも大騒ぎとなるのは当然の流れだろう。

 幸いにして死者は出なかった。が、炎翁の妖気を浴びて一般人が無事で済むはずがなかった。シャドウレッドの活躍を見ていた者たちは妖気に蝕まれるより先に灼熱の霊気によって穢れを祓われたが、離れた位置にいた者たちはガッツリ精神を汚染されてしまったのだ。

 

 誰が悪いかと言えば炎翁が悪いのだが、鬼側に1割でも理を認めるとすれば結界を軽んじていた政府が悪いと言えなくもない。この世界では豊臣さんと徳川さんが協力して織田さんが隠居したあとの日本を統治していたが、徳川泰平の世が何代か続いた辺りで「現世に出てくる鬼の数も減ってきたし、結界のぶんの予算で違うことしようぜ!」みたいなことを言い出した歴史がある。

 

 

 かつて賀茂さんがリーダーとして音頭を取って安倍さんやら蘆屋さんやらも協力して力無き民衆を守護るため各地に結界を張り巡らせ、それを維持するためのノウハウやら万が一のときの修復や強化のために必要になる術式やらを遺してくれた。

 それが現代では権力者たちの集う場所ばかりに形だけでもやっとくかぐらいの感覚で設置されているだけ。喉元過ぎれば熱さを忘れる、平和が続けば安全を切り崩して金を選ぶ。お陰様で世界が選んだ主役たちが活躍するための舞台が整うという寸法なのだろう。

 

 なので、当然そうした結界の話も取り上げられる。それらの話題の矛先を逸らすためにシャドウレッドを演じていた侍を探そうとするが、もちろん彼方が名乗り出るはずもないので見つからない。

 つまり武功庁が管理している侍ではなくフリーで活動している能力者の可能性が高いという話になるが、今度は政府がそうしたフリーの能力者を犯罪者予備軍のように扱っていたことがマイナス要素となってくる。

 

 

 事実としてスキルを悪用しようとする者はいるので決して間違いではないのだが、加護の有る無しによる差別に嫌気が差して個人で迷宮資源を集めて生計を立てている者たちだっている。そうした能力者たちにしてみれば政府による風評のそれはもちろん面白くない。

 それでも所詮は加護持たず、そんな連中が仮に騒ぎ立てたところで鎧袖一触と慢心していたところに堂々と神霊の姿を、それも一般人も見えるレベルで顕現できる強力な神霊を背負った侍がそちら側にいるとなれば話が変わる。しかも、行政に所属する公務員的な侍や巫女が一般人と一緒に守られる側のまま事態を解決されたのだから面目も丸潰れだ。

 

 唯一の手掛かりである神霊について、武功庁や霊験庁のお役人に加護を与えている神霊たちに聞いてみても知らぬ存ぜぬという返答だけ。いよいよ手詰まりとなった政府はともかく世間が納得するナニかを早急に示す必要がある。

 ここで引っ張っても文字数が増えるだけ手間なので結論を出してしまうが、どうやら鬼側のボスは朧とかいう鬼らしいから黄龍の巫女と四神の侍をどうにかして常世に送り込んで討伐させるべという方向で話がまとまることになる。ちなみに必要になるだろう各種情報の提供は朧を嫌っている鬼の皆さんから。

 

 

 こうなってくると、じゃあ役人たちと一緒にいるらしい神霊たちは何やってんのよ? と思うかもしれない。それらは何もしていない、というよりも何もできないという方が正しい。つまりどちらにせよ役に立たねぇということだ。

 

 

 その存在から人間同士の争いにまで発展した黄泉戦の存在を政の中枢を担う人間たちと共にあった神霊が知らないはずがない。だが、黄泉戦の存在そのものが新しい火種になる可能性があるのだから教えたくても教えられない。そもそも個人に肩入れするような神霊ではないと思い込んでいるので彼方の存在にたどり着けるワケがない。

 それでも何かしらヒントぐらい与えてもよさそうなものだが、下手な真似をして伊邪那美の逆鱗に触れることを神霊たちは恐れていた。人間を導くのが自分たち神霊の役目であり、ときには大多数の秩序を維持するために少数を切り捨てることも必要なのだと偉そうなことを言っていても、その切り捨てる側に自分たちを含める度胸など俗世に染まった神霊たちは持ち合わせていなかった。

 

 百年単位で戦場の空気を知らない神霊如きでは伊邪那美の権能に抗うことなど不可能だ。勝ち目が薄いとか、非常に困難とかいうレベルの話ではなく、完全なゼロである。

 

 もしも伊邪那美と事を構えるのであれば。

 

 

『なに? アタシと戦うつもり? そう、なら手始めにまずはアンタが死になさい』

 

 

 これで決着となる。

 

 スキルどころか指一本すら動かす必要がない。伊邪那美から死ねと命じられれば神霊たちは死ななければならないのだ。死者の国を統括する女王より賜る即死付与の強制力は謎の食通を名乗るトロンベ兄さんの専用BGMの優先度よりもすごくすごい。

 そしてそんな女王・伊邪那美をキレさせた闘神・黄泉戦はニコニコ笑顔の月光神姫・月読の許可のもと右ストレートで豪快にブッ飛ばされた。兄の伊邪那岐が日に千と五百の命を祝福するのを手伝うために、日に千の穢れた魂を浄化し続けてきた妹の拳は下手な神器よりすごくすごい。

 

 

 んで、結局のところ。

 

 

 彼方の無事を確認した真白と棗だが、このあと政府から朧討伐のための主力として戦うよう頼まれることになる。言いたいことは多少あるものの、友人を嬲り殺しにしようとした鬼の上司を堂々と斬る口実が得られたと思えばそれほど悪くない。

 そうなれば真白に矢印を向け始めた風魔と大地も反対する理由はない。ラスダンで「ここは自分たちに任せて先に行け!」をやって真白と朧の戦いを目にすることなく後から紅蓮と静流に保護される未来など知らぬまま、今度こそ最後まで護り通してみせると意気込んでいる。

 

 消極的な姿勢よりは、反撃に打って出ると宣言するほうがまだ頼もしい。それの先陣を切るのが学生であることに物申す者はいない。そこは神霊の加護はそれだけ特別なのだとイメージ戦略を続けてきた賜物だろう。

 

 若干……かなり? 本来のメインストーリーと比べて歪ではあるが、ともかくヒロインの朝比奈真白が鬼の世界である常世にブッ込みする理由付けは成された。

 あとはラスボスの自称魔王を相手に、師匠の戦いぶりから気合と根性さえあれば体力が尽きてエーテル粒子化が始まっても戦闘を続行できることを学んだスーパーヒロイン真白ちゃんの真・女子力がどこまで通じるかの勝負となる。

 

 

 

 

 一方その頃、シノビ戦隊シャドーマンの関係者たちはどうしているかと言うと……彼方が演じていた偽シャドウレッドと、その背後に現れた炎の武神っぽい神霊と、どっちを初代・赤影とするかでメッチャ揉めていた。

 この会議には変身前のシャドーマンたちを演じている役者さんやアイドルはもちろん、スタントマンや広報担当者、さらにはスポンサーの各企業の偉い人まで参加して白熱した議論が交わされたとか。政府からの横槍もあったりしたが「ヒーローを政治利用なんてさせるものか!」と一致団結して断固拒否したという。




【神霊・伊邪那美】

・神霊との感応率が上昇すると物理属性を含んでいる全ての攻撃に防御無視を付与(最大30%)
・瘴気の効果範囲内で連続で攻撃を当てると攻撃力・与ダメージそれぞれに強化付与(一撃につき1%、最大で10%まで)
・常世の迷宮での戦闘時、常時HPを自動回復(7秒毎に3%)
・呪殺属性による固定ダメージを無効化
・現世の迷宮でも呪い装備をドロップ
・現世の迷宮でも穢れたエーテル結晶をドロップ

・回復スキル弱体化(マイナス80%)
・回復アイテムの効果減少(マイナス80%)
・バッドステータスが自然治癒しない
・復活系のスキルが無効化


 マラソンで使うかボス戦で使うが好みが別れるところ。自動回復が赤涙調整の邪魔になりますが、瀕死で強化を使うのが苦手なプレイヤー向けと思えばアリのような気もする。
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