タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 たまに野良猫や野鳥のなかに「こいつイケメンだな……」ってなるときがあるので初投稿です。



出遅れてもイケメン、置き去りにされてもイケメン。

「……今回の戦いを無事に終えることができたら、多人数相手の立ち回りについてトレーニング方法を改めようと思います。もちろん彼方さんは強制的にご参加をお願いしましょうか」

 

「いいアイディアだ、黄泉戦の社まで死に戻らされたらさっそく奴に連絡を入れることにしよう。もっとも、彼方の性格からして素直に待機命令に従っているとは思えんがな」

 

 

 ボスキャラふたりを相手に足止めをしていた棗に負けず劣らずのボロボロになりながらもやはりイケメンの風格を保ちながら、多数の鬼たちに包囲された紅蓮と静流が力強い笑みを浮かべていた。

 

 個人の能力なら紅蓮と静流が上。

 

 数の暴力なら鬼たちの圧勝。

 

 単体戦力としての持久力に優れていても組織的抵抗力についてド素人のふたりでは、自分の命を粗末に扱うことに慣れきっている鬼士や鬼兵クラスの群れを相手に時間稼ぎはかなり難易度の高い戦闘である。

 

 目的に対して適切な手段を選べていないのも宜しくない。あくまで足止めが目的であれば結界を張るタイプのスキルを使うだけでも鬼たちの動きを鈍らせることができるのに、紅蓮も静流も“この先に進ませてはならない”という考えが先行して倒すことばかりに気を取られていた。

 極端な話、時間を稼ぐだけならふたりがひとつの場に留まる必要など無い。北辰の迷宮は日本の城をモチーフとした設計になっているのだから、通路を利用して移動しながら戦えば鬼側の動きを制限することだって可能なのだ。なまじステータスが高く体力を消耗しながらも戦力的に優位なまま立ち回れるせいで、こうした創意工夫という部分ではまだまだ甘いと言わざるを得ない。

 

 

 それじゃあ紅蓮と静流の耐久レースは無駄なのかと言えば、もちろんそんなことはない。ふたりがここでザコキャラ軍団相手に無双することで風魔と大地の負担は減っている。そして鬼どもの襲撃がこのまま分散され、四神の侍たちによる時間稼ぎが長続きするほど真白の勝率は上がるのも事実。

 食欲のまま暴走する、まさに暴食の権化と呼ぶに相応しい鬼塊のところに大量のエサがデリバリーされようものならさすがのスーパーヒロインでも敗北の可能性が一気に高まる。強力な妖力はそのままに油断も慢心も無ければ“喰う”以外の選択肢を持たないため判断ミスなどというモノも存在しない立派なラスボスなのだから当然だろう。

 

 目的のための手段の選び方が甘くても、結果は出ているのだから無駄ではない。仮に報告を聞いた大人たちが「素晴らしい戦働きだ、さすがは四神の加護を持つ侍だ!」と持て囃したとしても、当事者であるイケメンどもは今回の立ち回りを失敗として受け止め反省して次のために考え努力することができるのでご安心である。

 

 

 足止めは、成功している。

 

 だがそれはそれとして紅蓮も静流も霊力の消耗は激しく、朱雀と玄武も蓄えていた神気を吐き出すことになり、状況はあまり良くない方向に流れ始めていることを彼らは自覚していた。

 

 身の程知らずの鬼たちは、身の程知らずであるが故に攻勢を緩めない。自分の手番で四神の侍からエーテルを奪えれば儲け物、むしろここで日和ってご馳走を逃してしまうほうが惜しい。覚悟や信念を持たないからこそ折れること無く簡単に復活できるので斬り捨てられることも厭わない。

 これが無双ゲーの世界ならプレイヤーも納得のプロ意識であるが、キャラクターの体力が尽きない限り延々と武器を振り回せるようなシステムの保護など存在しないワケで。どれだけ精神力が優れていてもリソースは無限ではないのだから、剣を振るう腕からは徐々に力強さは失われていくし放たれる弓の精度も少しずつ狂い始める。

 

 

 と。

 

 いよいよ武器を捨てて噛み付くことも必要かもしれない、などという考えが頭に浮かんだあたりで。

 

 

 

 

 

 

「────なんだか楽しそうなパーティーしてるじゃない? ちょっとアタシもお邪魔しちゃおうかしら?」

 

 

 

 

 

 

「「「「ぐあぁぁぁぁッ?!?!」」」」

 

 

「──ッ!? 鬼たちを、影が斬り裂いて……貴方はッ!」

 

「ハァイ♪ 思ったよりも元気そうね? さてさて、言いたいことはイロイロあるかもしれないけれど……いまは向こうでガンバってる青龍と白虎のオトコの子たちのところへ急いだほうがいいかもしれないわよ?」

 

「風魔さんと、大地さんが……? ですが、彼らも不利は承知で殿を引き受けたのです。なら、ここはおふたりの覚悟を信じて見殺しにするのも信頼の形でしょう」

 

「あらま。玄武の侍ちゃんってば見た目に反してなかなか勇ましい判断しちゃうのね。だ・け・ど。お友だちを信じる心は美しいけれど、アッチが崩れてせっかく引き付けた朧の配下が散らばったら、黄龍の巫女ちゃんのところにだって流れて行っちゃうわよ?」

 

「それは……たしかに本末転倒というものですが……」

 

 

「アテルイ、だったか」

 

「なぁに? 朱雀のお侍ちゃん」

 

「図々しい頼み事なのは承知の上で言うが、黄龍の巫女……朝比奈のほうを手助けして貰えないだろうか? オレとしては、アンタがそうしてくれるなら心置きなく戦えるんだがな」

 

「あぁ、ソッチの心配ならいらないわよ? ちゃぁ〜んと、()()()()()()()安心なさいな」

 

 

 ヒラヒラと手を振るアテルイ。

 

 たったそれだけの動作であるが、あの光景を覚えている紅蓮と静流にはそれで充分だった。

 

 

「なんというか、器用なんですね?」

 

「まぁね〜♪ アタシ、自分で言うのもなんだけど好奇心が旺盛なのよ。鬼として常世にいる時間よりも、人間のフリして現世で暮らしてた時間のほうが長いのよね〜。……いま、喋ってて思ったんだけど。アタシ、人間と戦うより鬼と戦っている時間のほうが長いかも。あらヤダ、テヘペロ☆」

 

「それは……ありがとう、でいいのか? むぅ、ヤツのように空気を読むのはオレには難しいな。まぁいい。朝比奈さえ無事なら目的は果たせる。この借りは必ず返す。たとえ、それで朱雀の侍としての誉れを否定されたとしてもな」

 

「んもぉ〜、お硬いわねぇ! 誰も不幸になってないんですもの、結果オーライでいいのよ、そういうときは! ホラ、駆け足ッ!」

 

 

 パチンッ! とアテルイが指を鳴らすと、鬼たちの集団を蹴散らすように六角の黒い柱が立ち上がる。もちろんイケメンたちはそれの意図を瞬時に把握、その柱を足場にして迷いなく風魔と大地の援護に向かった。

 

 

「ん〜。唆しておいてなんだけど、あのコたち、鬼であるアタシの言うことゼンゼン疑わなかったわねぇ〜。柔軟な対応ができるのは褒めるべきところなんだろうけど、侍としてそれでいいのかしら?」

 

 

 アテルイの疑問もそれはそうなのだが、紅蓮と静流とて無条件で信じたワケではない。信じても構わないと判断できるだけの下地があるからこそ振り返ること無く後ろに下がれたのだ。

 これは学園上層部を含めた大人たちの対応に不満を感じたからこその成長でもある。盲目的に誰かの唱える正義を信じることに疑問を抱いたからこそ、自分自身の価値観から信じるべき相手、信じるべき言葉を選べるようにならなければただの暴力装置として生きることになると危機感を覚えることができたのだろう。

 

 それを真白との初対面にできていればもう少しロマンスなアレの雰囲気になれたはずなのだが……増永の家でも数少ない心を許せる相手であるおばあちゃんからの「学校で家とは関係のない友だちはできたのかい?」という質問に対して、気恥ずかしそうに明後日の方向を向きながらやたらと気安い悪友と並んでクレープなど持っている写真が表示されたタブレット端末を渡す紅蓮にとってはそれほど悪くない分岐だったのかもしれない。

 

 

 そして、紆余曲折の果てに鬼仙であるアテルイと戦うことになりながらも“人間如きに手を貸す鬼の下種”として侮る雑魚どもにとっては最悪の分岐なのは間違いない。

 

 

 身の程知らずの烏合の衆。

 

 能力差も理解できない程度の実力。

 

 

 お世辞にも楽しめる戦いなど望める相手とは言えないが……それは、それ。雑魚を始末するだけの簡単なお仕事でも、それに挑む気分が上等ならばそれなりに面白くはある。

 

 

「さて! それじゃあアタシも始めるとしましょうかッ! ────その影すら追い付けぬ真似は出来ぬと言われた無拍子の技、逃げられるなんて思わないことね?」

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 一方そのころ。

 

 

「……おぉッ! スゲェな、傷がすっかり治っちまったッ! これでまだまだ朝比奈のために戦えるってモンだッ! 助かったぜッ!」

 

「ウキッ!」

 

 

 大地は猿天哮の眷属である鬼猿から桃による治療を施されていた。

 

 自分たちの上司の本気モードの雄叫びが聞こえた、そしてそれは自分たちのボスが大事な決闘に挑む合図でもあった。それで迷宮に大人しく引きこもっているほど鬼猿たちの結束は弱くない。

 となると、どのように動くかであるが……鬼猿たちは風魔と大地のことをしっかりと覚えている。鬼畜であるからこそ上下関係を蔑ろにしない鬼猿たちは、ふたりのことを自分たちより先にボスの配下となった先輩だと思っているのだ。

 

 ならば、義によって助太刀するはボスである猿(黄龍)の巫女に仕える部下として当然の務め。

 

 

「よぉしッ! これでも4人の中では壁役として常に戦闘で殴り合いを続けてきたんだ、瘴気で満たされた常世での戦闘だろうと根性見せてやるぜェッ!! ありがとよ、今度時間をみつけて迷宮までフルーツでも差し入れに行くぜッ!」

 

「ワキャ!」

 

 

 ちなみにこれは社交辞令ではない。稼いだエーテル結晶を換金したら昔話の登場人物の如くデカい籠を果物で満たし、大地は本気で迷宮まで届けるつもりである。

 

 その姿を目撃されただけで悪意のある噂を流されることもあるだろう。もしもなにかの切っ掛けで事の次第を説明しろと言われれば大地の性格からして嘘や誤魔化しを押し通すのは難しく、確実に目白の家を含む大人たちからの評価は下がることになる。

 そうなる可能性に気付いた上で実行するのが目白大地という男であった。白虎の侍として求められている振舞いも、その重要性についても知っている。だが、それと同じように大地は恩義と仁義を知る男なのだ。窮地を助けてくれた恩を知られることが恥だと言うのなら、正面から指をさして存分に己を恥知らずだと罵るが良い。そう啖呵を切るのが大地という男なのだ。

 

 

 そしてそれは、風魔も同様。

 

 

「歴史と伝統ある青龍の侍が、望国家の長男が鬼と共闘……ですか。フフッ、この事実が露見したときに周囲がどんな反応をするのか……少しだけ、ワクワクしている僕は救いようのない親不孝者かもしれませんねッ! ────荒れ狂え、封嵐結界ッ!! さぁ、準備は良いですかッ!!」

 

「「「「ルッキャァァァァッ!!」」」」

 

 

 結界内部に吹き荒れる風を器用に乗りこなし、簡素な武器を手にした鬼猿たちが朧の配下に襲い掛かるッ! 

 

 本来ならば鬼の動きを問答無用で制限する霊気の風も、鬼猿たちの妖気だけを味方として選別すればこの程度は容易いこと。実力不足を痛感してから連携を意識して霊気操作を磨き上げた風魔だからこそ可能な応用であった。

 

 真白に対する淡い恋心を自覚したはずなのにラスダンではヒロインと離れ離れになって猿と友情を育みながら鬼と戦う時間に充実を感じている様にはどうしてこうなった? と言いたくなるかもしれないが、ヒロインに対して「オレにとってはお前だけがなによりも大切なんだ」とかほざいて優先順位を間違え周囲に迷惑を押し付けるよりはマシということにしておこう。

 

 

 出遅れたイケメン4人。

 

 なんだかんだでラスダンにて大暴れであるッ!




おばあちゃん
「おじいさん、どうやら孫に神霊とは関係無い友だちができたようですよ。貴方が生きてるときに見せられなかったことだけが残念ですが、そっちに行くときまでにお土産話が沢山増えそうで楽しみですねぇ……。で、それはそれとして、ですよ? 紅蓮も、ほかの子たちも、周囲に理解者が増えたのですから、身内の一族で蠱毒紛いのことをしている神霊狂いの糞餓鬼どもはそろそろ【自主規制】しても許されると思いませんか?」


 蜂眼坊とアテルイに関するタイムラインは自由に想像してください。癖になってるんだ、情報が不足している部分を想像と独自解釈で楽しむのが。
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