タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

52 / 81

 実は五十話までに真白編を終わらせたかったので初投稿です。



エンディングNo.Ex『花は桜木、人は』

 二度と折れぬ。

 

 二度と曲がらぬ。

 

 二度と砕けぬ。

 

 二度と譲らぬ。

 

 

 ひとりの侍が命を預けて酷使した一振りの曲刀は、案の定なんかこう付喪神的なヤツが宿ったのか今度は負けないみたいな魂がガッツリ宿っていた。

 それを握り締めるはほかの誰でもないスーパーヒロインにして黄龍の巫女。当然の権利のように伝わってくるその想いを汲み取るついでに刻まれた多種多様なスキルも拝借し、襲い来る鬼塊の攻撃をバッサバッサと斬り捨てるッ! 

 

 

「斬刑に処す。その六銭、無用と思えッ!! ……六銭ってなんのことだろ?」

 

 

 意味はわからないけど必要なのでスキルを使う、ノリと気分でおそらく彼方が集中力を高めるために口にしていたであろう文言を借りつつソレに疑問を感じられる程度には真白も余裕を取り戻していた。

 特に防御系スキルによる恩恵が大きい。斬撃がやや特化しているものの、ありとあらゆる属性の攻撃に────それこそ無属性に分類され研究が途上のモノでさえどうやって身に付けたのか熟練度がなかなか高め。鬼塊による触手攻撃だったり肉片による射撃攻撃だったりも問題なく反応できる。

 

 だがそれは、暴食の本能に支配されていたはずの鬼塊が朝比奈真白という人間を排除すべき『敵』として認識した証拠でもある。

 

 ならば、その認識を与えた存在とは? 

 

 

「ニンゲンがぁぁぁぁッ!! その、エーテルうぉぉぉぉッ!! この朧がぁぁぁぁッ!!!!」

 

「おぉ……。さすがというかなんというか、鬼神だけあって結構しぶといんだね。まぁ、手応えから完全に消滅してはいないんだろうな〜とは思っていたけど……ねッ!!」

 

 

 飛来する物体、生々しい肉片から刃物のような鋭さを持つ金属に変化したそれを刀で弾く。この場面でこうした変化球を投げてくるということは、この“刃物、あるいは金属”という部分に朧という鬼の本質が関わっているのだろう。

 

 それに気付いたからといって真白のやること、と言うよりもやれることはあまり変わらない。様々なイベントをスキップした関係で選択肢が物理属性に偏っているからだ。

 たぶん鬼の瘴気に侵されて暴れ出した人間がいた場合、ノーマルヒロインがスキルや祈りによる解決を試みようとする隣でこれパワーボムやれば衝撃で口から飛び出るんじゃねぇのと試してみるのがスーパーヒロインであるッ!! 

 

 

(エーテル……流れが、変わった? そうか、生身の鬼から金属っぽい感じに変わったから停滞してるんだ! そういうことなら私にも敵は視えるッ!!)

 

 

 鎧で覆われたような巨大な腕が振り下ろされるッ! 

 

 が、打撃回避のスキルでその動きは完全に見切ることが可能ッ! ならばエーテルの流れを掴み利用できる真白であれば、繋ぎ目を切り離すが如く分割できるのも道理というものッ! 

 

 そこから先は真白と朧によるエーテルの奪い合いである。ステータスがどうだとか、スキルや熟練度はどんなものかだとか、そんな畏まった要素など求められていない。より原始的な本能、餓える者としてどれだけ貪欲にそれらを求めるかで全てが決まる。

 原作ゲームでは攻略対象と一緒にパワーアップしてキラキラした黄金の霊気を纏いながら強力なスキルを連発してゴリ押しするのがクライマックスの光景であった。しかしこの世界の真白はそれはもう真っ赤なオーラに包まれて片っ端から肥大化した朧を解体するのに夢中である。なんなら飛んできた刃物を噛んで止めてペッ! と吐き出すぐらいには勇ましい。

 

 

 この攻めに徹した姿勢は決して真白の本意というワケでも……いや、そう。100%趣味でやってるのではなく、そうしなければならない理由がある。

 

 エーテルを奪うことで霊力はどんどん回復して表面的な肉体の損傷も治癒されるものの、体力と精神力にはいずれ限界が訪れるからだ。

 テンションの上昇によりアドレナリンが大盤振る舞いされているとはいえ、HPとスタミナゲージの最大値がリアルタイムで減少しているようなものでは、短期決戦を選ばざるを得ない。

 

 

 刀を振るい、一歩前に。

 

 触手を斬り捨て、一歩前に! 

 

 鋼の弾幕を恐れること無く、一歩前にッ!! 

 

 

 僅か1ミリだろうと退くことを拒否し、これだけ肉体がしっちゃかめっちゃかになりながらも美形を保っている脳天を全力の一撃でカチ割るために朝比奈真白がさらに一歩、前に出るッ!! 

 

 だが。

 

 

 

 

「────ッ?!?! な、なんだこの空間はッ!? か、身体が引き摺り込まれ……キサマぁ、なにをするつもりだぁぁぁぁッ!!!!」

 

「いや私も知らないですけどッ!? なに、なんなのッ!? なんか知らない新しい鬼の仕業ッ!?」

 

 

 

 

 突如として朧の背後に現れた謎の空間が触手やらなにやらを片っ端から吸い込み始めるのを見せられたのでは、さすがの真白も勢いを殺して急ブレーキを全力で踏むしかない。

 

 この場面で第三者の介入かッ! と危険を承知で朧から視線を外して周囲を警戒する真白だが、残念ながらこれは常世でグダグダしている十把一絡げの鬼が扱えるような力ではない。

 これは朧が体内に取り込んでいた大量の鬼たちを、真白が短時間で豪快に成仏させたことによって生じたもの。限定された空間に大量の怨嗟が一斉に解き放たれたことで、それに呼び寄せられた亡者の大群が生と死の境界線にヒビを入れたのだ。

 

 もちろん亡者たちが最初に選んだ標的は朧である。それは完全なる自業自得、これまで朧が喰い殺して消化した鬼たちが今度は自分たちがお前を貪ってやると集まっている。

 

 その力は凄まじく、如何に鬼神の格を持つ朧であろうとも振り解くことなど不可能。

 

 

「ふ、ふざけ────黄龍の巫女ぉぉぉぉッ!!」

 

「ひゃッ!?」

 

「キサマにも、この朧を虚仮にした報いを受けてもらうぞニンゲンッ!!」

 

「そんな……勝手な、ことをッ! こっちは……事情なんて、なんにもッ! 知らないっていうのにさッ!」

 

 

 現在進行系で死者の国に連行されそうになっている朧の反応は速かった。

 

 状況判断のために周囲に意識を飛ばしていた真白は反応が遅れてしまった。

 

 

 片足を触手で絡め取られ引き倒される。同時に焼き付くような痛みに襲われたのは、触手の一部を刃物に変化させて逃げられないように食い込ませたのだろう。

 

 ちなみに、このまま死者の国に引き摺り込まれた場合だが。朧に関しては亡者たちによる報復が待っているが真白の場合はそうではない。

 死者の国を満たすエーテルは一瞬で心臓まで凍り付かせると錯覚するほど恐ろしいものではあるが、その先で出迎えてくれるのはファ◯タグレープを片手にたけ◯この里をポリポリ食べている女王の驚く顔だ。相当気まずいだろうが無事に現世に帰還できるのは確かである。

 

 だがそんなことを知る由もない真白には、暗黒空間の向こう側から漂ってくるエーテルが致命的に危険な代物であるということぐらいしかわからない。

 

 

 なので。

 

 

 

 

 

 

「────ゴメンね?」

 

 

 

 

 

 

 心の底から申し訳無さそうに刀に向けて謝罪をすると、そのまま躊躇うことなく自分の足を切り飛ばしたッ!! 

 

 

 真白を道連れにすることだけを考えていた朧は、負け惜しみも断末魔もなにも無く。ただ切り離された足を見て呆然とした表情で暗黒空間に消えていった。

 亡者たちの目的はあくまで朧に対する復讐である。望みの獲物以外にはそこまで興味を惹かれないのか、全ての鬼塊を飲み込むと死者の国へ通じる道はアッサリと消え去ってしまう。

 

 

「……うん、そうだよね。鬼を切るための誓いなのに、人を切っちゃえば……もう、無理だよね。助けてくれて、ありがとう。それと……彼方くんのところに戻してあげられなくてホントーに申し訳ないと言うかなんというか」

 

 

 鬼を斬るという誓いにより魂を宿した刀が、その誓いに背くような真似をすればどうなるか。まるで化学実験のテレビ番組やネット動画の倍速再生のように、あっという間に朽ち果ててバラバラになってしまうのだろう。

 

 勿体無い、とも思う。

 

 自分が未熟だから、とも思う。

 

 勝手に壊してどうしよう、とも思う。

 

 しかし、それ以上に。他人に話して共感を得られるかも怪しい、本当につまらないことではあるのだが。ちょっとだけ、優越感のようなものが残っている。

 黄龍の巫女が愛用した武器として歴史の表舞台に立つことはない、ただ朝比奈真白という個人だけが知る伝説。決して語り継がれることのない無銘の刀。力尽きて倒れた少女の小さな掌にスッポリ収まる欠片だけがその証明となるのだ。ヒロインなんだから少女の小さな掌に決まってんだろなんか文句あるんですか? 

 

 

 ともかく。

 

 自分たちに喧嘩を売ってきた鬼の背景についてはよくわからないままであるものの、それを高く買って叩きのめしてやったのだから勝利は勝利なのである。

 

 

「……もしもし? 棗ちゃん?」

 

『……真白さん!? こうして普通に連絡をくれるということは、朧は片付いたということかしら?』

 

「うん、まぁ、どうにかね……。ただ、私もボチボチ限界なものでして。お迎えとかは別にいいんだけど、たぶん黄泉戦さんのお社まで戻っちゃうから、説明とか……そういうアレをね……」

 

『あぁ、なるほど。わかりました、それぐらいのことであれば私が引き受けてみせます。疲れているところに無神経な質問責めなどされたくはないでしょうから』

 

「ハハ……たぶん、今回ばかりは私もイライラを我慢できないかも……。ま、そういうことだからさ……また、あとでね……」

 

『えぇ。……真白さん。貴女の勝ちですよ』

 

「違うよ……みんなの、勝ち……だから。そこは間違えないように、頼んだ……からねぇ……」

 

『……はい、間違いなく』

 

 

 ピッ。

 

 

「……つぁ〜〜〜〜ッ! お、終わったぁ……のかな? ま、鬼は朧だけじゃないだろうし、まだまだトラブルは続くんだろうけど……あ、もういいや。意識落ちるわ。もう足から物理的に血の気が引いて……あぁ……ふっかつ、した、ら……とくもり、で、かつ……どんでも……たべようか、な……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄泉戦の社にて。

 

 季節外れどころではない、現世の理屈から大きく外れた蒼い桜が満開のその領域を、アロハシャツにサングラスというファンキーな格好をしたひとりのジジイが────黄龍が歩いている。

 

 

『『これはこれは、黄龍様。このようなところまで御足労頂きまことに以下省略でございます』』

 

「おぅ。相変わらずおもろい双子じゃなお主らは」

 

 

 出迎えたのはふたりの着物美人な神霊。ひとりは顔の下半分を草花で編まれたマスクのようなもので隠し、ひとりは顔の上半分を鉱石から削られたマスクのようなもので隠していた。

 

 

『『いえいえ。遊び心という点に関しましては黄龍様には遠く及びませぬ故に。えぇ、えぇ。加護を受け入れる器たる巫女を見出しておきながら転生者に導き手を丸投げした無責任なクソジジイの高みになど我々姉妹如きではとてもとても』』

 

「へッ。ずいぶん口がまわるじゃねぇか傍観者気取りの世話焼きモヤシっ子どもがよ。人事を尽くして天命を待つという言葉の通り、人間だけで解決できそうなモンに口出しする必要なんてねーんだよボケ」

 

『『存じておりますとも黄龍様。えぇ、えぇ。黄龍様の仰有る通り、己に与えられた加護が不確かであれば、神霊が頼りにならぬと悟ったのであれば、人の子は自らの力で自らを助くるよう努力をするのでしょう。幸いにして朝比奈真白には無銘彼方がおりました故に。なればこそ、我らも久方振りに花を咲かせてみようと思ったのですから』』

 

「イッヒッヒッ! ま、異界からの転生者なんてイレギュラーにちょっかい出したくなる気持ちは理解できるがの。言うてワシも龍玉を託しとるし。それで真白ちゃんの前にだけ姿を見せないことに文句を言われんのは……そりゃ理由がどうであろうともワシが悪いからな〜んも言えんわな」

 

『黄龍様は』

『無銘彼方が』

『あるいは』

『無銘凪菜が』

 

『『前世の知識なるもの、原作知識なるものを識るふたりが、まだまだ日ノ本の新たなる英雄たちを導く役目を果たすと思われているのですか?』』

 

「なるんじゃねぇの? 少なくとも転生者ふたりが前世で遊んでたっちゅー原作シリーズのシナリオを消化するまでは、な。人は危機が迫らねば英雄を求めん。そして彼方のボウズも凪菜ちゃんも犠牲から成り立つ英雄譚なぞ認めやせん。なら、次の……黄龍の巫女に代わる主人公とやらがどんなのになるのかは知らんが、必ず縁は結ばれるだろ。トラブル大好きメスガキちゃんもおるし」

 

『黄龍様』

『重ね重ね』

 

『『ひとつ、質問をしても宜しいでしょうか?』』

 

「構わんよ」

 

『『そこまで人間たちの未来を想いながら、何故に朝比奈真白の前に姿を現さなかったのでしょうか? 神霊の加護を過信しなければ絶対視もしない朝比奈真白は黄龍様の琴線に触れる巫女であると感じましたが』』

 

「そりゃお前ら、アレよ。ひとつ、朝比奈真白が心から黄龍の力を頼ろうとせず自らの努力で前に進み続けたこと。ふたつ、無銘彼方が原作知識に固執せず個人として朝比奈真白の在り方を肯定したこと。そして、コイツが一番大事な理由なんだがな……ほれ、アレ」

 

『『はい?』』

 

「みっつ。お互いにそうした感情は持っていないのは知っているがよ? だとしても────男と女が互いに信じ合って未来を創ろうとしてんのに、間に年寄りが割り込むとか空気の読めなさが馬に蹴られろってレベルじゃねぇと思わん?」

 

『なるほど』

『それは確かに』

 

『『以下省略でございます』』

 

「いや、そこはワシのセリフに対してなにかそれらしいこと返して結んでくれよ……」

 

 

 蒼穹の花吹雪の中で、人の身では触れることすら許されないはずの大木に背中を預けて安らかに眠る侍がひとり。

 

 その侍の胡座を枕替わりにして、幸せそうに何事かを呟きながらヨダレを垂らして安らかに眠る巫女がひとり。

 

 

 

 北辰の迷宮攻略、そして鬼神・朧の討伐。

 

 これにて完了であるッ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ、一区切りとなったのはあくまで朝比奈真白の物語であって無銘彼方はこれから次のスーパーヒロインと関わる、というか流れ次第ではチュートリアルのボスの代わりに全力でグーパンする役目が待っているのだが……ともかく、その日まで束の間の平穏を楽しめる可能性もゼロではないから頑張ろうッ!!




 次回は神霊だったり黒幕っぽい人たちだったりのお茶会で鬼切姫・弐の世界観をちょこっと説明する感じの話になるかと。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。