タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

56 / 81

 アウトロー系の女性ヒロインといえば特攻天女ですが、たぶん令和では誰にも通じそうにないので初投稿です。



世界観をまだまだねりねり。

 幸福とはなにか? それは平凡な日常こそが尊いものであると気付くことにある。たぶん。

 

 ネタバレとメタ視点からトラブルを想定して身構えていたが、ここ数日は実に穏やかに時間が進んでいる。おかげでレベルアップと慣らしのトレーニングも順調でジワジワと実力が高まるのを実感していた。

 あー、残念だわー。俺がチート転生者なら最初の犠牲者が出る前に、ほのぼのしたシナリオ進行の間にいろんなこと決着してやれたのに残念だわー。朝比奈の初動を手伝うのとはワケが違うからな。さすがに組織単位の活動には手も足も出ないよ。家族を含めた多方面に飛び火したら責任なんて取れんもの。

 

 そもそも事件の始まりはタイムライン的に変死体の報道から、タイミングは日比野鈴音が結界戦でボロ負けしたあと。原作通りの展開になるとすれば、能力者として学科を変更してからいくつかイベントを消化してからになるの忘れてたわ。

 どっちかっていうと凪菜のほうが巻き込まれる可能性が高いんじゃないか? なにも収穫無かったら役立たずな兄貴でゴメンってメッセージでも送っておくか。適当にご当地スイーツでも食ってるところの写真でも添付して。

 

 でもそうだよね、ゲーム的な都合が無くなれば平和な時間は増えるよねって話だ。なんならポケットモンスター世界の登場人物のほうが通行人も含めて赤テープ巻いた不良しかいねぇ修羅の世界みたいなものだし。

 視線が合わなくても視界に入ったらバトルでしょを大人から子どもまで当たり前にやってんもんな。そして合法的に現金を巻き上げるっていう。ポケモンは表現がマイルドなだけのグラセフなのかもしれねぇ。

 

 

「オンラインの……SNSなどでは彼方さんが言っていた一般人によるチーム同士の対抗戦についての情報はそこそこの頻度で見かけますね。簡易結界、それも擬似的な伽藍堂を作れるだけの法具の取り締まりが緩いのは大問題だと思うのですが……」

 

 

 大丈夫だ。それは単に取り締まる側が横流しをしているからばら撒かれているというだけであって、ちゃんと行政側にも問題視している真面目なお役人も大勢いるから。うん、大問題だね! なんでそんなこと知ってんだ、ってなるからなにも言えんけど。

 公的な発表としては、不良たちをただ厳しく取り締まって罰則を与えるだけでは解決にならないとしている。充分な能力があるのなら、それを活かして社会の一員として活動できるよう支援することも必要だとして義塾でスカウトしたりしてるらしい。美談による論点すり替えは基本だって、それ一番言われてるから。

 

 もちろん全部が全部ウソの誤魔化しというワケでもない。

 

 なんなら攻略対象のイケメンのうちひとりがそれのパターンだし。

 

 力こそ全てなオレ様系、だけど実は義理人情を大事にする一面も。行き場の無いヤンキーたちをまとめるカリスマってやつだ。なら最初から真面目にしてろ、とは言うまい。思春期ってそういうものじゃん? 

 実は病弱な妹のためにお金が必要で〜、みたいな設定を追加するかスタッフの間で話し合いもあったそうだが、そんなキャラ付けのアウトローなんてユーザーも飽きてるだろうからと却下されたそうな。よかった、病気の女の子なんていなかったんだね。

 

 

 平和だっていいさ、別にスリルとサスペンスを求めているとかじゃないし。ただ俺はこの世界を楽しみたいだけなんだ。まだまだ再現してみたい技や魔法はたくさんある。それに、画面の向こう側にいた強敵たちとの後腐れない殴り合いもしてみたいし。

 だからこそ、何処かのタイミングで裏ダンジョンにも潜ってみたいところなんだが……静流をどうしよう? いっそのこと適当な言い訳して偶然ってフリして叩き込んでみようか? 露骨に胡散臭いでっち上げで押し切ってもワンチャンいけるかもしれん。

 

 男は度胸、なんでもやってみるもんさッ! 

 

 

 ……うん? 

 

 

「……世間的には夕食も済ませているでしょうこの時間帯に訪問客、ですか。それも、意図的に気配を潜めるかのように境内に侵入してきましたね。あまりにも未熟過ぎてバレバレですけど。どうします?」

 

 

 警戒が必要なほどの戦闘力は感じないが、風祭神社の管理人(仮)としては見過ごすのも如何なものか。俺の顔を立てて問答無用で叩きのめせと言わないのがさすがの静流クオリティだねぇ。

 

 よし。

 

 とりあえず覗き見してみんべ。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 はい。

 

 現れたのは、メインヒロインの日比野鈴音さんでした! 

 

 

 気合いの入った特攻服姿で、原作にも登場していたプリズムダストのチームメイトも一緒にいる。確か名前は武蔵(たけくら)、伊勢、そして双子ちゃんの佐藤姉妹だったかな。

 相棒ポジションになる祁答院と比べると能力では劣るものの、普通プレイでもラスボス戦まで連れて行けるぐらいには優秀な仲間キャラだったからちゃんと覚えている。

 

 そんで? YOUはナニしに神社に? 

 

 コソコソしてるわりに声のボリュームがデカいことだし、このまま隠れてしばらく聞き耳チャレンジしてみるか。立場上、顔を合わせたら武力制圧しなきゃならん可能性もあるし。

 

 

 ほんで? 

 

 ふむ……ふむ、ふむ……? 

 

 あー、そういう。

 

 

 プレイヤーが最初に行う戦闘チュートリアル、それは結界戦にて『ブラッドファング』というチームと戦うところから始まる。仲間と協力しながら基本的な操作を学び、そのままボスキャラのブラッドファングのリーダー・佐々木と戦うことで完了となる。

 負けてもイベントが進む親切設計、そして勝ってもブラッドファングと同盟関係にあるチーム『スカルクリスタル』のリーダー・宮本が現れてデモンシードでパワーアップ、問答無用でブッ飛ばされてイベントが進むという心折設計だ。つまり偉大なる始祖、デモンズソウルのリスペクトです。

 

 で、その結界戦に備えて特訓しなきゃならんという話になって、そんで薫風の庭に無断侵入してレベルアップしようぜ! みたいな話になったと。

 ふむ、そんな話は原作には無かったけど別に不自然な流れではないな。聞こえてきた単語から推測するに、プリズムダストのリーダーが佐々木の部下に不意打ちされて怪我したって流れは同じみたいだし、リーダー不在だからこそなんとしても結界戦には勝ちたいはず。

 

 心情的には見逃してやりたい。

 

 俺の知る通りの日比野鈴音なら、たぶん神社に迷惑をかけるのを嫌って余計なことはしない。

 

 だがそれは俺の責任を放棄するのと同じことだ。コソコソ隠れて迷宮でレベルアップは俺もやってることだけど、それと管理人としての役目は別の話だ。少なくともお役所側にしてみれば“お前の都合なんてこっちには関係無い”となるだろう。

 

 ……いや、まて。

 

 そうだよ。俺の知る通りの日比野鈴音なら神社に迷惑をかけるのを嫌うって、たったいま予測したばっかりじゃん。

 

 それなら。

 

 

「……なぁ、みんな。やっぱり勝手にダンジョンに行くのは止めよう」

 

「なんだよ鈴音、ここまできて怖気付いた……ってワケでもなさそうだな? いいよ、言いたいことがあるならハッキリと言ってくれ」

 

「こんなコソコソ隠れてレベル上げて、それでブラッドファングの連中をブチのめして、本当に勝ちを誇れるのかって思ってさ。プリズムダストの流儀に従うってんなら、神社の人にアタマ下げてダンジョン使わせてもらうのが筋ってモンじゃないか?」

 

「それは……」

「そうかもしれないけど……」

 

「そっか、うん……そうだね、確かに鈴音っちの言うとおりかも。っていうか、たぶん、コレさ。リーダーにバレたら佐々木たちに勝ててもリーダーに殺されるんじゃない?」

 

「ハハッ、そりゃあり得るな! ……そうだな、ちょっと弱気になってテメェがなにやってんのか見えてなかったぜ。ワリィ、みんな。スマネェ、鈴音。アタシが余計なこと言ったせいで手間ァかけちまったな」

 

 

 お、話し合いは終わったようだな? 

 

 うんうん、さすがはメインヒロインだけあって人間性も立派なもんだ。バレなきゃイカサマじゃねぇ理論であっちこっちのDLCエリアに無断侵入してスキル強化していたどっかの転生者に聞かせてやりたいね! 単純な戦闘力では俺が上だけどメンタルは逆だぁ。汚れつちまつた悲しみに。

 

 

「……彼方さん。アレ、素直に帰ったのは良いのですが、今度は正面から来ると思いますよ。霊気の波長がそう言っていましたから。どうするつもりですか?」

 

 

 そうねぇ……。俺がこっそり迷宮を悪用するだけならいくらでも証拠隠滅できるけど、さすがにプリズムダストのメンバーを共犯者にはできんよなぁ。だって問い詰められたら正直に話して謝罪しそうだもん。

 だからといって強敵に挑むために強くなりたい、って意気込んでいる奴を放置するのも“面白くない”だろう。大変そうだからと朝比奈真白の手助けをしておいて、同じように苦労する予定の日比野鈴音を見捨てるのは“納得できない”もんなぁ? 

 

 

 うむ。

 

 静流さんや。キミ、常世に乗り込むときに黄泉戦なるなんだか強力な力を持つ神霊の加護を受けて死に戻りの条件が強化されたんだよな? ほんなら、風祭神社の結界にチョイチョイっと干渉して模擬戦ができるように改造したりとかっていうのは。

 

 

「必要最低限の法具は揃っていますし、私の封水結界を応用すれば可能ではありますが……彼方さんが、彼女たちを、鍛える……のですか? 直接?」

 

 

 俺の権限で勝手に迷宮を使わせることはできないけれど、境内で稽古をつけるだけなら誰にも迷惑をかけることもないからな。巻き込まれるお前さん以外には。

 それに、未遂とはいえこんな夜中に忍び込もうなんて考えるくらいだ。あの子たちも本気で強くなりたいって思ってるだろうし、それならこっちも本気で相手してやらないと失礼だろう? 

 

 

「あー、はい。そうですね、本気で……彼方さんのやり方で、本気で。えぇ、その。そこは全然疑ってませんけどね。そこに関しては。いいですよ、私も一般人による結界戦は気になりますので協力しましょう。仮にも喜多家の跡取りですから、法具の流出について見て見ぬふりなどできませんからね」

 

 

 よすよす。

 

 ま、あくまで本当にもう1度ここに来たらの話だけどね。原作知識を持つ転生者だからといって、必ずしも原作キャラクターとの縁が生まれるとは限らんし。

 なんなら原作通りの展開になったあとに、交換学生として義塾に行く凪菜のほうが苦労するパターンなんじゃないの? メインシナリオにガッツリ絡まれたら「学園はとても平和ですよお疲れちゃんwww」って煽ったろ。




 ちなみに静流くんは紅蓮からアホとの果たし合いについて聞いています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。