タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 第二部が50話ぐらいで終わるのか不安になりつつも初投稿です。



ヒロインの下拵えが進むほどに出遅れるヤツがいることを彼女たちはまだ知らない。(転生者を除く)

 前回までのあらすぢ。

 

 →本編開始前に主人公ちゃんを鍛えるゾイ☆

 

 

 それじゃあ迷宮探索に行きましょうと言われた鈴音はもちろん話が違うと不満タラタラだった。だが組織的に活動しているであろう悪い大人に目を付けられたかもしれないのだから身を護るためにも、まずは自分の精神の未熟さを自覚しろと言われればグゥの音を飲み込む形で黙るしかない。

 純粋に鬼との戦いに興味を惹かれたという部分もある。自分はそれなりに強いという自信を風祭神社で管理人のアルバイトをしているモブキャラにへし折られ、ライバルチームのボスとのタイマンでは先手を取りつつも翻弄されながらワンパン決着という形で勝利し、その後の乱入者を成長を噛み締めるように撃退できたが、義塾の先輩から圧倒的な実力の違いを分からされた……と、情緒が労基法違反だとキレ散らかすほど忙しかった鈴音は実際のところ自分がどの程度強くなっているのか確かめてみたかったのだ。

 

 プロ御用達の迷宮で通用したからといって、自分もプロと同レベルの実力アリという証明にはならない。

 

 しかし本物の戦いの空気に触れることで感じ方が変われば、プリズムダストという枠内だけで完結していた価値観も広がるだろう。

 

 誰かに相談しようとは思わなかった。何故なら、自分のことを良く知る仲間たちであればせっかくの機会なんだからトコトン自分を試してこいと背中を押してくれると確信していたから。誰かに選択を委ねるのはカッコ悪い、という見栄もちょっとある。

 

 

 ファンタジー的にもアオハル的にもちょっとだけ物語が動き始めて不安と期待が入り交ざった複雑な高揚感を鈴音が抱いているころ、棗はというと獲物を逃さないための包囲を確実にするべく頼れる後輩である祁答院更紗と無銘凪菜にスケジュール調整をお願いしていた。

 特別なにかをしてもらう必要はない。巫女だって接近戦を中心とした立ち回りをしてもいいんだ! と意識を変えて転科に前向きになってくれればそれで良し。真面目で真っ直ぐな性格をしている鈴音に対しては、下手にアレコレと小細工をするよりも一回パーティーを組んで鬼と戦うという体験をしてもらうほうが効果的だと判断したらしい。

 

 と、そんなこんなで。

 

 原作知識などなんにも知らない更紗は新しく殴り巫女の友だちができると喜んで了承した。

 

 原作知識を持つ凪菜はコレ下手しなくても最初のイケメンとのイベント消えるんじゃね? と思いつつ面白そうなので喜んで了承した。

 

 世界の根幹に関わるようなシステムの部分はともかく、シナリオは転生者というイレギュラーの影響を受けることは証明された。事実、原作ではテキストで表現された犠牲者は出なかったのだから。決して正義や使命感ではない、自分の望む未来を掴み取ったことを喜ぶ兄の姿を凪菜はきっと忘れない。

 

 故に、本来であれば転科してから悪戦苦闘しているところに手を差し伸べてくれる2作目のチョロメンとの出会いが潰れる可能性は高い。でも、面白そうだから2作目の主人公と会ってみたい。前世で楽しんでいた原作シナリオよりも、凪菜はいまこの瞬間の好奇心を満たすことを選んだのだ。

 どうせ交換学生として義塾に通えば顔を合わせることになるのだし、既に兄のほうからチュートリアルを改変するためのテコ入れをしたと教えられている。1度へし折ったフラグをさらに折り曲げたところで誤差だよ誤差。たぶん戦国時代を代表するベンチャー大名ノッブ社長も『シナリオは 壊してしまえ ホトトギス』とか詠ったり詠わなかったりしてるはず。

 

 オマケにもう一つ。

 

 学園のイケメン担当である風魔と大地が、真白に対してアプローチを頑張っているらしい……みたいな噂話を耳にしていることからも、どうせ何処かで世界が辻褄を合わせてくれるだろうと考えていた。なお、真白からふたりへの連絡手段はメッセージアプリに昇格したものの内容はほぼ業務連絡である。

 

 彼方とのやり取り? 鯖の味噌煮の骨って食べたら防御力上がりそうだよね〜。どちらかと言えば攻撃力じゃね? だってあいつ油断してると刺してくるし。←みたいな他愛のないメッセージが日に何度か往復してますがなにか問題でも? 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 挑発されたことも忘れて、初めての迷宮探索をパーティー組んで行うということでワクワクしている日比野鈴音。

 

 接近戦の実力を試して云々と言ったはずが、危機感を覚えたことで後衛としての立ち回りの見直しをしたい暮間棗。

 

 新しい友だちゲットにテンアゲな祁答院更紗。 

 

 面白半分どころか全部な無銘凪菜。

 

 

 だいぶ目的とか……なんかこう、全体的にフワッとしている感じがするが、それでも実力だけなら大学生にだって負けていない四人組。まして挑むのは暮間が管理している迷宮なのだから余裕を持って探索できるはず────と、思いきや。

 

 

「はーい、スズッち〜。ゆっくり息を吐くッスよ〜」

 

「あぁぁぁぁ〜」

 

「そうだよねー。結界戦と迷宮の探索は別バラっていうか? 使う筋肉が違うんだもん、慣れなきゃバテるのも仕方ないっつーか」

 

 

 ヒロイン鈴音、筋肉痛に沈むッ! 

 

 原因は持久力不足である。結界戦では個人を相手に単発の戦いが多く、鈴音の肉体と精神はタイマンに順応し過ぎていた。スタミナ配分だけでなく霊力の巡らせ方や霊気の使い方もそれらに引っ張られてしまい、鬼の攻撃によるダメージではなく自滅に近い形で迷宮から引き上げることになってしまったのだ。

 

 だったら一般家庭出身の真白はどうして平気だったのか? それは黄龍の加護によりエーテル粒子の扱いに高い適性を持っていたことで回復力が強化されていたからだ。さすがにゲームのように無尽蔵とはいかないが、それでも迷宮内であれば活動限界など無いに等しい。

 そして、本人が荒事の素人であることを自覚していたことも大きいだろう。無理せず、焦らず、取り敢えず授業などで学んだ基本に忠実に。無銘兄妹のアドバイスに素直に従い余裕のあるうちに帰還して、繰り返し迷宮に挑むことで丁寧に心身を適応させる。ニュートラルな状態からのスタートが良い方向に作用した結果なのだ。

 

 

「想定外だったわ……。そうよね、短距離走者に長距離走に出てみない? なんて誘ったようなものじゃない。どうしてそんな簡単なことを見落としていたのかしら。鵺、もしかして私が勧誘した時点で気が付いていましたか?」

 

『そんなモン己だってわかるかよ。御前試合とか、その手の勝負に慣れ親しんだ神霊なら別かもしれねェが、己は暮間の一族と迷宮で鬼狩りしてる時間のほうが長ェんだよ。アウトローではあるが、半ば競技者でもある……か。コイツは全くの素人を鍛えるより、ちと厄介だぞ?』

 

「かも、しれませんね。日比野さん、その様子からしてどうやら貴女にも鵺の声は聞こえていたようですが、どうしますか? 人には向き不向きというものがあります。貴女が短期決戦を好むのであれば、無理に迷宮探索を続ける必要も」

 

「いいえ、暮間先輩。このまま私を迷宮に連れて行ってください!」

 

「厳しい戦いになりますよ? 貴女の場合は肉体ではなく、心が。しばらくは、まるで足手まといにでもなったような感覚が纏わりつくことになるかもしれません」

 

「それは少し違います。まるで、なんてことはありません。実際に、いまの私は足手まといなんです。だからこそ、学ばなければいけない、鍛えなければいけないんですッ! ……正直に、言っちゃいますけど。私、戦えるつもりでいたんです。学園側の地域で起きたように、鬼が現世にやってきても。仲間や家族ぐらいなら、私だけでも守れるって、自惚れていたんです。だから」

 

「それ以上は必要ないわ。大丈夫。やる気があるなら、貴女が諦めないのであれば、私がちゃんと鍛えてあげるから」

 

「暮間先輩……ッ!」

 

 

 言葉遣いが変わった。

 

 表情が変わった。

 

 お客様扱いから、一緒に鬼と戦う仲間として。まだまだ未熟者扱いだが、それでも、確かに認めて貰えたのだ。

 

 ようやく1歩目、だが前に進んだ。それだけでも鈴音の胸にはこれまで感じたことのない奇妙な充実感が溢れていた……といったところで終わっていれば良い話ダナーで次の話に移れたのだが。

 

 

「それなら早速、いまから走り込みに行くわよッ! 消耗しているときこそ、全身から無駄な動きを削ぎ落とすチャンスなの。呼吸法と、霊力を巡らせるコツも掴めるから必ず貴女の糧になるわ。手始めに軽く90分ぐらい走りながら感覚を覚えてもらって、そこから2時間ぐらい走ればウォーミングアップとしては充分かしら?」

 

「…………押忍ッ! ヨロシクお願いしますッ!!」

 

 

 ちなみに凪菜と更紗にとっては4時間程度のランニングなど超余裕である。もう何歩前に出てたら倒れるか、ぐらいヘトヘトになりながらふたりの背中を見送ることになった鈴音はちょっとだけ泣きそうになった。




フロストポルカ
『きんにくつーは?』
『ひやせー』
『ふくつのこころは?』
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『よけーなきづかいは?』
『うるせー』
『あしたのおやつは?』
『おてせー』
『かねのもーじゃは?』
『けちくせー』


『さてはコイツら祁答院更紗と違って1ミリも日比野鈴音に興味ねぇな? いや、別にいいけどよ』
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