タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

66 / 81

 普通は褒め言葉でもあるので初投稿です。



普通のヒロインによる普通のイケメンに対する普通の選択肢。

 通常学習コースから能力開発コースに転科したヤツがいるらしい。

 

 しかも高等部の2年生で。

 

 春休みの間に3年の暮間先輩から世話してもらってたとか。

 

 

 こうして無事にスリーアウト判定をくらった日比野鈴音の評価はもちろん高くない。1年生のころから、あるいは中等部のころから真面目にコツコツ鍛えてきた生徒たちからしてみれば面白くないのも当たり前だ。

 では義塾全体が彼女に否定的かと言えばそんなことはない。通常学習コース時代の友人知人は素直に応援してくれたりするのはもちろん、実は野良チームで結界戦やってました〜という事実を知らないので普通に心配してくれたりと温かく見送ってくれている。

 

 あと、暮間の関係者も概ね鈴音に対して同情的である。

 

 友好的、ではない。

 

 同情的、なのだ。

 

 最初の異変は棗が学園から戻ってきてからのトレーニング内容が変化したこと。通常の巫女としての鍛錬に加え、まるで侍でも目指すかのようにフィジカル面を鍛え始めたことに両親を含む周囲が何事かと興味を示したところから。

 もちろん素直に白状したら鬱陶しいことになると理解していた棗はすっとぼけた。万が一の備えとして身を護る手段を増やすためですと当たり障りのない返答を営業スマイルで繰り出せば、残る相手はこれをチャンスと見て仲良くなりたい男どものアプローチのみ。これはこれで鬱陶しいことこの上ないが。

 

 しかし残念。すでに棗の中で前衛に求められる能力の基準やらなにやらは義塾だけで生活していたときのモノではない。ゲームと違い好きなだけ潜れるということで毎日のように迷宮探索しまくっていた無銘彼方、の影響を受け過ぎてインターバルという概念が売り切れどころか入荷すらされなかった朝比奈真白に付き合っていたのだ。丁寧なスケジュール管理に甘えていた連中とは面構えが違う。

 

 結果? 

 

 もちろん男どもは置き去りにされましたとも。

 

 頼りになるところを見せて仲良くなろうとしたはずが、頼りない姿を晒すことになり気遣われるという屈辱。さらに追い打ちとなったのは、そんな有り様を見ていた女性陣からもアレはもう仕方ないといった優しい視線を向けられたこと。これがまた煽られたりバカにされたりするよりもプライドをガリガリと削られるのだ。

 

 そんなレベルでハードなトレーニングを続ける棗が、本人が希望したとはいえ徹底的に可愛がる光景というものは……誰だって同情する。しかも、表向きにはつい先日までは一般人ということになっているのだからなおさらだ。気合と根性でボロボロになりながら喰らいつくその姿を応援したくなるのも当然だろう。

 

 なんなら小学生らへんの子たちは鈴音を励ましながら一緒にトレーニングをしてたりする。そして、小学生と一緒にトレーニングが成立するということは、小学生と一緒にトレーニングして丁度いいレベルということである。

 これには鈴音のプライドも傷付いて────とはならなかった。短時間の殴り合いなら勝てそうな子どもたちでも、持久力では全く勝負にならない。霊力の使い方について基礎を知っているかそうでないかでここまで差が出るのだ。それを体験した鈴音は素直に面白ェッ! とワクワクしていたのだ。食事の時間までは。

 

 比較対象にプリズムダストのメンバーも含め、自分はかなり食べる方だと思っていた日比野鈴音さん。隣にちょこんと座るジュニアモデルでもできそうな可愛らしい小柄の女の子が昔話でしか見ないような大盛りのご飯をおかわりしながらぶ厚いトンカツを3枚、幅広いアジフライを5枚、握り拳よりデカい鶏の唐揚げを13個ほどペロリと食べ終えた姿を前に格の違いを思い知る。

 

 しかも。

 

 

「すずねちゃん、それしか食べないの? ダメだよ、ちゃんと食べないと強くなれないんだよ? あ、そういえばすずねちゃんはシメのラーメンは何が好き? わたしはねぇ〜、きょうはとんこつラーメンに焼きハムと角煮とスパムをトッピングしようかな! そうだ! すずねちゃんのぶんも注文してあげるね!」

 

 

 何故かトレーニングで後れを取るより敗北感が凄かった鈴音。なんとなく気持ちはわからなくもない。あと、暮間家の台所からの奢りということで凪菜と更紗はメッチャ食った。名門の金で食うメシは美味いか? そんなもん美味しいに決まってる。だってよ、名門なんだぜ。

 しかし小学生たちの仲間意識からの好意というキラキラに彩られた年下の先輩からの強制食育トレーニングのおかげで持久力だけは迷宮探索に適応できた。持久力だけは。精霊チャレンジは失敗した。原作シナリオの崩壊を危惧する世界の理さんもこれにはホッとひと息だろう。

 

 

 そんなこんなで始まる新生活、原作と比べて能力的には底上げされた状態でのスタートではあるものの人間関係については良好とは言えないまま過ごすことしばらく。

 

 授業については特に問題ない。テストの点数こそ平均よりギリ上ぐらいの鈴音だが、授業態度は真面目であるし宿題などの提出物もしっかり片付けるタイプなので教師側から見て勿体ないとは思うものの安心できる生徒であった。

 では問題があるのはどの部分かと言えば、もちろん迷宮探索の部分である。普段は経験値システムの不平等を常識の一部として当たり前のように受け入れている男子たちも、鬼を倒したときに得られるエーテルを無情にもネコソギする殴り巫女の存在はあまり好ましく思っていない。

 

 例外があるとすれば、まずはプライドよりも下心を優先した猛者たち。公式設定でご立派な胸部装甲をしている更紗とお近付きになりたい紳士諸君は三節棍でバリバリ前衛をこなす彼女にカッコいいところを見せてたわわな果実を収穫してみせると切磋琢磨の日々である。

 

 柔らかい石を求める錬金術師の如く柔らかい乳を求めて見果てぬ夢を掴むため手を伸ばし続ける漢たち。もちろん周囲からの評価はストップ安だが、実際のところ彼らの実力は3年生と比べても見劣りしないぐらい普通に強い。

 それもそのはず、祁答院更紗は2代目ヒロインである日比野鈴音の相棒としてラスボス戦まで活躍することを世界の理から期待されているメインキャラクター(例外)なのだ。そんな彼女を惚れさせるために驕らず腐らず諦めず切磋琢磨を続けている侍たちが弱いワケがない。エロの一念鬼をも砕く。甘くたわわな果実の感触を確かめるその日のために、武器が壊れても両の拳で戦闘を継続する気概を持った彼らは今日もオッパイ星人を自称しながら無自覚に強者の道を歩んでいた。

 

 そして、そのほかの例外とはもちろん。

 

 

「ようッ! 日比野さん、今度初めての迷宮に潜るんだろう? もし良かったら俺と一緒にパーティー組んで探索しようぜ! 武器で戦う巫女、実は興味あって組んでみたかったんだよ。日比野さん、木刀で素振りしてただろ? 俺、槍の扱いが得意……ってほどでもないけど慣れてるからさ。結構イイ感じに戦えると思うんだけど……どうよ?」

 

「こんにちは、水守くん。えっと、一緒にパーティーを組んでくれるのは助かりますけど、いいんですか? その、得られるエーテルの量が減ってしまうことだってありますよね」

 

「そこは心配いらねぇよ。これでも1年のときから迷宮で鬼と戦ってんだぜ? エーテル結晶の蓄えぐらいちゃんとあるから気にするなって! それに、さっきも言ったけど俺が殴り巫女ってヤツに興味があるってだけだし。……祁答院さんも頼めばオッケーしてくれそうだけど、忙しそうだしな。つーか、普通に用事があって話し掛けるだけでも女子から白い目で見られそうでおっかねぇんだわ」

 

「あはは……。風評被害、ってヤツですね。転科したばっかりの私でも、周囲の男子たちの熱意と言うかなんというか、凄いなって思いますから。こう、いろいろと……大変そうだなって」

(いや、マジで同じ女のアタシから見ても更紗のヤツどうなってんだってレベルでボリュームがイカれてんもんな。湯船に浮くしよ。あんなん三節棍振り回してるときだってジャマにしかなんねぇだろ)

 

 

 迷宮探索のときは胸の部分に鎧を身に着けているので大丈夫だ! 

 

 暮間家での鍛錬ではジャージやシャツ姿だったので小学生を中心に健全な男子たちの価値観に爪痕を残したかもしれないが本編には関係ないので大丈夫だ! 

 

 それはともかく。

 

 

 周囲の評判などなんのその、といった態度で気さくに話しかけてきたこの男子生徒こそ鬼切姫・弐の攻略対象であるイケメンがひとり【水守蔵人(みもり くらんど)】であるッ!! 

 

 

 選択肢をひとつかふたつ正解しただけで女の子がデレデレになるハーレム系ギャルゲーと違い丁寧に丁寧に攻略対象の心のスキマに牙を突き立てじっくりねっとり照れ顔を引き出すのがロマンスの醍醐味ではあるが、それはそれとしてベースが死にゲーというプレイヤーにリアル努力を求めるのだからひとりぐらいは初期から友好的でも許されるんじゃね? という開発スタッフの心遣いから生まれたイケメン、それが蔵人だ。

 もちろん難易度調整もバッチリである。本編開始後にストーリー進行でサクッと仲間になるお手軽さとは裏腹に、キッチリ恋愛フラグを消化していかなければ個別ルートに入ることができないためコミュニケーションが楽だからと甘く見ていると別のイケメンがしゃしゃり出てきてプレイヤーは思考停止を食らうことになるのだ。それはそれとして水属性を得意とすることから攻撃も回復も補助もだいたいこなせるので、攻略するつもりがなくても死にゲー初心者なら同行者に選んでおけば間違いない頼れる相棒でもある。

 

 

(水守くん、殴り巫女に興味あるとか珍しいな? あんまり歓迎されないって話はアタシも聞かされてたから、それなりに覚悟決めてたつもりなんだけど。コレ、気ぃ遣われてんよな? 申し訳ないってのもあるけど、せっかくの申し出を断るのも水守くんのメンツを潰すよな……実際のところ、慣れてるヤツが手伝ってくれんのは助かるし)

 

 

 日比野鈴音は水守蔵人の提案を────。

 ①喜んで受け入れる。

 ②丁重にお断りする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 →①喜んで受け入れる。

 ②丁重にお断りする。

 

 

「それじゃあ……お言葉に甘えて。迷宮探索のお手伝い、よろしくお願いします! 水守くん!」

 

「おう! 任せなッ! あ、でもアレだぜ? 一応、俺のほうが迷宮探索の時間は長いけどさ……失敗するときは失敗するだろうから、そんときは助けてくれよ? ここで堂々と護ってみせるッ! みたいに言い切れたほうがカッコいいんだろうけど、余計な見栄張って日比野さんに迷惑かけるほうがイヤだからさ」

 

「はい、わかりました! そのときは私も役に立てるよう頑張りますね!」

(なんなら、そうやって素直に助けてくれって言えるのはある意味カッコいいけどな。アタシも意地になって北条さんに迷惑かけたっけ。反省しねぇとなぁ〜)

 

 

 多少の誤差はあれど、蔵人の協力を得て概ね原作シナリオ通りに迷宮探索開始であるッ! これには世界の理もニッコリだろうッ! あとは何処かの原作知識持ちのアホがしばらく大人しくするらしいからと、暇つぶしに2代目ヒロインの様子を見るため遊びに来てニコォ……♪ リ♡ としている名状したくない変態が余計なことをしないよう祈るだけの簡単なお仕事だッ!




 次回予告ッ!!

【チャンスは2本しかない。フラグは2度死ぬ】

 誰もが予想できない驚愕の結末に、アナタはきっと「だいたい知ってた」と呟くことになる……ッ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。