タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 そのうち攻略wikiみたいな感じのキャラ紹介でも差し込んでみようかな、などと企つつ初投稿です。



イケメンくんと一緒に過ごしたヒロインちゃんが微笑んでるよ♪ 可愛いね☆

 本来であれば転科して寮生活となった際にルームメイトとなった更紗に連れられて始まる迷宮探索のチュートリアル、そちらは春休みの特訓期間ですでに済ませている。

 と、いうことで原作シナリオよりちょいと前倒しになる形となった攻略対象とのダンジョンデート。巫女装束に身を包んだ鈴音は道着に袴姿の蔵人の案内により【天同の迷宮】の攻略を開始した。

 

 迷宮のテーマは参拝道、とでも言い表すのが適当だろうか。初期から同行者アリでの攻略が可能ということで、ある程度余裕を持って武器を振り回せるようにほどほどに道幅が確保された山道を進むことになる。

 

 その途中にはやや大型で攻撃力の高い牛頭の鬼などが配置された広い空間が点在しており、分岐点はあるものの上に登っていけば自然とゴールに辿り着けるため迷うこともないだろう。

 もちろんそれだけでは面白くないので、ルート選びによっては建物の上から奇襲されたり前後を牛頭と馬頭の鬼に挟まれたりとプレイヤーに楽しんでもらうための工夫も忘れていない。

 

 但し、ゲームとは違い天同の迷宮を闊歩する鬼たちのステータスはそれなりに高い。原作には存在しなかった中等部の侍や巫女たちが利用する迷宮に押し上げられる形で難易度が上昇しているのだ。

 

 もっとも、それは鈴音たちも同じだが。

 

 プリズムダストの特攻(ブッコミ)担当として結界戦でヤンチャしていた下地。そこに棗に徹底的に可愛がられながら更紗と凪菜より学んだスキルが加わり、足手まといを自覚しつつも意地で食らいつき覚えた迷宮の歩き方がエッセンスとなり、それなりの強さで天同の迷宮に立っているのだ。

 

 当然、ゲームではほぼほぼ初期値のプレイヤー側に合わせたレベルとステータスに設定されていた蔵人も、この世界では1年分以上のアドバンテージに見合うだけの強化がされているような状態だ。

 己の賢さを低いものと信じている彼は、あれこれ目移りすれば強くなれないと割り切った。槍による刺突属性、拳と蹴りによる打撃属性、そして水属性の基本的な魔法スキルだけを愚直に鍛え続けている。ステータスの振り分けや熟練度を決め打ちで絞った育成は死にゲーのお作法としては大正解と言って良い。

 

 敵も強いが味方も強い。

 

 丁寧な攻略指針もあっていまのところ苦戦もない。

 

 

 ……のだが。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

「ブッフォッ!」

 

「甘いッ!」

 

 

 中継地点の広間のひとつにて、ボロボロの武者鎧を身に着けた牛頭の鬼による大段平の振り下ろし。

 遅いながらも直撃すれば生命力を大きく削られるその一撃を、槍をしならせて器用に受け流す蔵人。

 

 これも経験による強化のひとつ。蔵人は自分の賢さを低めに見積もっているとは言ったが、よくいる「俺はバカだから難しいことはわからねぇッ!」と言って頭の悪さを免罪符にして考え無しに突撃するタイプではない。

 頭の回転が遅いからこそ、まずは立ち止まって正面をしっかり観察してから動く。これを徹底していた。先手必勝という言葉もあるが、蔵人に言わせればそれは“ここで先手を取れば勝てる”という判断を即座にできる頭の良い人間でなければ使えない高等技術なのだ。

 

 以上、証明終了。

 では実際に待ちの戦法を試してみよう。

 

 

 戦闘開始→冷静に待つ→相手に動かれる。

 

 相手の攻撃→それをどうにか捌く→これチャンスじゃね? 

 

 

 ソウルライク系を遊んだことがある人は試しに想像してみてほしい。敵がいるからとバカみたいに殴りに行くことはなく、適度に距離を保ち、回避とパリィで相手の攻撃を丁寧に処理する立ち回りのNPCの姿を。しかもヘイトコントロールもできる! しかもパリィからのカウンターで致命傷も狙える仲間を連れ歩くなど、初心者でも攻略が楽になるというものだ! 

 

 とはいえ、まだまだ戦闘経験のほうは年相応。一生懸命ではあるが周囲への警戒だったり視野の広さが足りていないのも仕方ないもので。

 

 

「ドゥルァァッ!!」

 

「あ、やべ」

 

 

 背後から馬頭の大斧が迫るッ! 

 

 だが蔵人はひとりで戦っているのではないッ! 

 

 

「────瑠璃光破弾ッ!!」

 

 

 ジャランッ! と鈴音が錫杖を振り抜けば、放たれた霊気の塊が馬頭の顔面を勢い良く跳ね上げるッ! 

 

 

「────ラァッ! 連牙脚ッ!!」

 

 

 槍を使い棒高跳びの要領で蔵人がしなやかに跳び上がり、高い位置にある馬頭の顎を蹴り穿つッ! 

 

 ゲームシステムで言うところの弱点攻撃による体勢崩し、そして怯み状態によるダメージボーナスが発生したのだろう。筋肉モリモリのマッチョな馬頭の生命力でも耐えきることはできなかったらしく、無事エーテル粒子化が始まり討伐完了となった。まぁ、コレ別に中ボスとかじゃなくて道中のただのザコ鬼なんだけど。

 

 それでも強敵を倒した喜びは別腹なので。

 

 

「助かったぜ日比野さん! いやぁ〜、気を付けているつもりではあるんだけどなかなか……どうしても仲間がいると、こう、攻める方向に意識を持っていかれちまうんだよなぁ。マジで悪い癖だからどうにかして治したいんだけど、どうにも……」

 

「水守くんの場合は、別に問題ない立ち回りだと思いますけど。迷宮での戦闘経験の浅い私が言っても説得力はないかもしれませんが、たぶん“普通は”後ろで誰がなにをやっているかなんて、それこそ背中にでも目がついているような人じゃなければわかりませんよ。ええ、本当に」

(その普通じゃない人をアタシは知ってるけど、アレと比べんのはさすがに酷ってもんだろ。凪菜のアニキらしいけど、妹のほうでさえバケモンみてぇに強いんだしよ。そりゃ()()()()()()と学生じゃあなぁ〜。アタシと水守くんの間にも壁あるけどさ、先生から見りゃどんぐりの背比べだろうし)

 

 

 お互いにいろいろと思うところはあれど、攻略そのものは順調であった。死にゲーとは理不尽だけを一方的に押し付けるモノではなく、だいたいの状況は落ち着いてゆっくり対処しても解決することが可能なものだ。能力に不足のない状態で、冷静に攻略するのであれば、そこに苦戦する道理は無い。

 

 それとは別に。

 

 

(日比野さん、一応、木刀でも最初は戦ってたけど……途中からは巫女として後ろに下がっちまったな? コレ、あれかな? 本当は巫女として普通の戦い方を試すつもりだったのに、俺が余計なことを言ったせいで気を遣わせたパターンだったりすんじゃねぇの? それとも、単純に俺と一緒だとやりにくかったとか。う〜ん、失敗したなぁ。いまは戦闘に集中するとして、迷宮出たらすぐに話をしねぇとな。失敗したと思ったら反省! ひとりで思い込みしないで相手の話をちゃんと聞く! ……よし、まずは気合入れて鬼退治すっか!)

 

(やっぱり足並み合わせんの大変だったなコレ。暮間先輩の世話になってたときは自分は足手まといだからって割り切って戦えたけど、こうして仲間として対等に扱ってもらうとまだまだ足りねぇってハッキリわかるモンだな。魔法スキルの使い方とか凪菜からしっかり教わってて助かったぜ。う〜ん、こりゃ迷宮から出たら迷惑かけんの覚悟の上で水守くんと話しとかねぇとダメだな。接近戦でも構わねぇって言ってくれた貴重な侍なんだから、率直な意見っつーか、ダメ出しっつーか。とにかく、暮間先輩や更紗や凪菜とは違う視点からの悪ィとこ教えてもらわねぇと成長に繋がらねぇもんな!)

 

 

 余裕を持って移動する時間があるということは、余裕を持って思考する時間もあるということ。鬼のテリトリーに侵入しておいて油断するのはまったく褒められた行為ではないが、こうして分析と反省を行い次に活かそうとする姿勢そのものは別に悪いことではない。仮に不意打ちを受けて死に戻ることになったとしても、今度は“迷宮を歩いているときは考え事をしてはいけない”と学習することだろう。

 

 と、まぁ多少気の抜けた一コマがあったりしつつ。ゲーム的には初見となる天同の迷宮も、1年生のころから能力開発コースに在籍していた蔵人は既に攻略済みということもあり、ボス部屋手前までファーストアタックで無事到着した鈴音。あとは巫女らしくカチコミカチコミ申し上げるだけなのだが。

 

 

「水守くん、その……ちょっと、相談したいことがあるんですが」

 

「ん? なんだ、ボス鬼の情報か? それならちゃんと────」

 

「ストップッ! お願いというのはまさにそのことで、ここの迷宮の主である鬼の情報は教えないでもらっても良いでしょうか?」

 

「え……? なんでだよ、攻略に必要な情報なんて共有したほうが楽に戦えるし、日比野さんが弱いとは言わないけれど……ボスを相手にやられるかもしれないなら、準備なんていくらでも」

 

「効率だけを考えるなら水守くんの言う通りです。しかし、義塾が管理する迷宮は強くなるための訓練として探索するのですよね? なんでもかんでも知っているまま戦ったのでは経験にならないと思うんです。誰かが戦い方を教えてくれなければ戦えない……では、どれだけ迷宮を攻略したとしても、本当の意味で成長できたとは言えないのではないでしょうか?」

 

「なるほど……ッ! 確かに日比野さんの言う通りだ。宿題だって答えの丸写しじゃ勉強にならねぇし、迷宮攻略だって誰かの真似をするだけじゃ成長できねぇ。俺はもう天同の迷宮を攻略してるからともかく、これは日比野さんの鍛錬なんだもんな。わかった、そういうことなら俺はバッチリ黙っておくことにするぜ! もちろん聞きたいことがあったら遠慮なく質問してくれて大丈夫だからな!」

 

「ありがとうございます水守くん。それと、初心者のクセに生意気なことを言ってしまい申し訳ありません。1度の探索でここまでたどり着けたのは水守くんが手伝ってくれたから、ということはわかっているのですが……」

 

「あ〜、いいよいいよ。別に気にしてねぇし、俺自身も勉強になったっつーか、反省しないといけないことあったし。それじゃ、帰りはどうする? 道具使ってパパッと帰るか、それとも分岐点に残してきた鬼と戦ってもいいけど」

 

「そうですね……せっかくですので、戦いながら義塾に戻りましょうか。それで、もし水守くんさえ良ければ、また私も前に出て戦いたいのが……」

 

「おう! 任せな、俺だって味方を活かす立ち回りってのを勉強しないといけないし、むしろ俺のほうから頼みたいぐらいだぜッ!」

 

 

 常識的に考えれば巫女を前に出して侍が後方支援に回りたがるなど恥知らずと罵られても文句は言えない行為である。しかし蔵人は世間の常識よりも、目の前で対話している鈴音の意思を優先した。水守蔵人は勉強は得意でなくとも、相手の話を聞いてからして欲しいことがなにかを判断できるタイプのイケメンなのだ。

 

 ここまで噛み合うのであれば攻略対象のイケメンとして問題なくルート分岐の対象になりそうなものだが、残念ながら彼とて完璧超人ではないのだ。失言のひとつやふたつは避けられないもので。

 

 

「……そうでしたか。水守くんは次の模擬演武に備えていろいろと準備をしているんですね」

 

「まぁな。神霊どころか精霊の加護も無いけど、それは上を目指さない理由にはならないだろ? せっかくランキング戦みたいに順位争いあるんだからさ、こうして能力者として侍になったからには、自分がどこまで強くなれるか試してこそ男の生き様ってもんだろ! ま、こうやって格好つけたところで急に強くはなれねぇんだけどな! とにかく毎日コツコツ努力を続けるっきゃねぇワケだ! あっはっはッ!」

 

「なるほど……上を目指す向上心が男の生き様、ですか」

 

「加護が無いならどうせ、って諦めちまうのも気持ちはわかるけどな。そこはホラ、俺の考え方を押し付けるのは違うし。諦めんな、って言うのは簡単だけど、それ、言ってて気持ちいいのは俺だけで、相手側にしてみりゃ普通にムカつくだろうし」

 

「そうですね、その考え方は良いことだと私も思います。価値観は人それぞれなんですから」

 

「だろ? ……っと、そろそろ食い残しのエリアだな。せっかくボス前まで何事もなく行けた帰り道なんだ、こんなところでしくじらないように戦闘に集中しないとな」

 

 

 パンッ! と頬を叩いて気持ちを切り替える蔵人。

 

 その後ろで錫杖と木刀を入れ替えて戦いに備える鈴音。

 

 油断も慢心もなければ苦戦するような相手ではない。行きの道で何度も倒した鬼ばかりということもあり、入り口に戻るまで問題など起きるはずもない。気持ちを切り替えるための彼なりの儀式なのか、1度だけゆっくりと深呼吸をして蔵人は義塾への転移を開始した。

 

 それに鈴音が続く────その前に。

 

 

「価値観は人それぞれ。それはそうだ。戦うからにはテッペン目指してぇ。それもわかる。でも、アレだな。なんつーか、うん。やっぱり学生だけあって()()()()()()()()()()()()()()()、みたいな感覚はあんまし無ェのかもな。先生にブチ殺されなかったら、アタシも水守くんと同じ考え方しかできなかったんだろうなぁ〜」

 

 

 水守蔵人に侍としての使命感は芽生えていない。本来ならばそれは、日比野鈴音との関わりの中で成長するものであり……敗北の屈辱からただ力を求め転科した鈴音もまた、蔵人と共に巫女としての役目に向き合うことになるはずだった。

 

 しかしこの世界ではそうはならない。英雄幻想よりもささやかなる良き夢を求めるアホによって鈴音の価値観は更新されているからだ。

 しかもどんな運命のいたずらか、関係者全員がそのアホがまだ学生だという説明がスッポ抜けていた。新たな友人である無銘凪菜の兄だという情報は得ているが、鈴音の中では無銘彼方は表舞台に姿を見せないプロの侍という位置付けのままである。

 

 求めるは称賛や栄達ではなく斬邪滅悪。

 

 我は人を守護るべく鬼を喰らう悪鬼也。

 

 それ以外を知らない鈴音は、ソレこそが例外であることを知らない。現世襲撃と常世の鬼との戦闘で意識が強制的に切り替えられた学園側の侍や巫女たちはともかく、義塾側は学生もプロも危機感が足りているとは言い難い。なんでそんな有り様かって? そうじゃなきゃデモンシード関係の事件で2代目ヒロインが活躍できないからだよ。

 

 朝比奈真白に続くスーパーヒロインとして歩み始めた代償にイケメンとのイベントフラグが折れかけている日比野鈴音。

 並行してランキング戦に対する興味も薄いことで別のイケメンとの縁も消えつつある彼女は果たして乙女らしいアオハルの道を歩めるのだろうか? 

 

 それはそれとして。

 

 

「……場所は、わかった。向こうはこの迷宮の頭……挑戦者はアタシ……アタシが逃げねぇ限り、鬼も逃げねぇ……焦ることはない……ゆっくりやりゃいい……タイマンか? それともリンチか? なにより……テメェは先生より強ェのか? ハハッ、いいねぇ……この全身の血が冷たく凍る感覚、ゾクゾクすんぜ……焦ることはねぇ……ゆっくり、やりゃあいい……ッ!!」

 

 

 困難を前にしても笑いながら立ち向かう。これは正しく乙女ゲーのヒロインらしい姿ですね間違いない。なにか問題でも?




世界の理
『主人公の巫女と主役の侍が共に迷宮にッ! コミュニケーションも良好ッ! 今度こそ勝ったな、別の侍の様子も見ておこう……クックック……ッ!!』

冥界童女
『せやな、友情は育つんちゃいます?』
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