タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 久しぶりの出番で読者の皆さんから「初代ヒロインの戦い方ってこんなんだっけ?」と言われないかビクビクしながら初投稿です。



乙女の激情行進3本勝負☆ たいしょう・ましろ

 夏の足音が近付いてきたある日のこと。

 

 

「あ、その日はもう予定があるからゴメンね? それに、私、おごったりおごられたりっていうのあんまり好きじゃないんだ。ちょっとジュースぐらい、とかならともかく……さすがに、新しいマリンパークの入場券なんて高いものはちょっとね〜。それじゃあ大地くん、薙刀の練習に付き合ってくれてありがとうね!」

 

「……お、おう。またな、真白……」

 

 

 ひとりの若武者が討死した。

 

 

 ことの始まりは朝比奈真白が薙刀の扱いを学ぶために目白大地に相談したことから。

 

 基礎練大好きな大地はそれを快く了承し、巫女でありながら接近戦にも備えようとする真白のために真剣にトレーニングのメニューを考えて実践した。

 真白は薙刀を、大地は斧槍を、それぞれ構えてゆっくりとひとつひとつ動きを確認しながら打ち合わせたりと、大変健全な汗を流す放課後の交流を続けていた。

 

 あるとき。

 

 

「大地、女性を相手にトレーニングばかり……というのもどうかと思いますよ。その真面目さは僕も尊敬する部分ではありますが、たまにはお茶にお誘いするぐらいはしてもよいのでは?」

 

「あー、言われてみれば……そう、かも。でも本気で武器の扱い方を鍛えようってときに、余計なことを考えるのは危ないっつーか。そういうのは風魔、オマエだって思うだろ」

 

「それは当然ですね。鬼との戦いに不純な動機を持ち込むなど論外でしょう。常世の鬼は、そんな甘い相手ではないのですから。ですが、それはそれ、これはこれです。別に真白さんを魅力的だと思っているのは僕と大地だけとは限らないのですから、どんな些細なチャンスでも積極的に掴みにいかなければ。お互いに、ね」

 

「なるほど、それも一理あるか。たしかに目の前にチャンスがあんのに尻込みするなんてオレらしくもねぇ。トレーニングはマジでやる、真白のこともデートに誘う。まとめて成し遂げてやらなきゃ白虎の侍として甲斐性無しって言われちまうからな!」

 

「えぇ、それでこそ大地です。そして、その上で僕が真白さんの心を射止めてみせましょう。敵に塩を送るような真似をしたからといって、手加減などするつもりはありませんからね。しかし……それはそれとして、多少の情報の共有ぐらいはしておきましょうか。僕と大地で同じ場所に遊びに行ったのでは、真白さんもあまり楽しめないかもしれませんので」

 

「それもそうだな! ってなると、オレはどっちかってーとオシャレなカフェとかよりもアウトドアって感じの────」

 

「それなら僕は落ち着いた雰囲気の中でゆったりと過ごせるような場所を優先的に選んで────」

 

 

 計画は順調だった。

 

 但し、それはイケメンに限る。

 

 

 いくら本人たちが丁寧に相談しながら考えたデートプランだったとしてもそれは真白のスケジュールには関係ない。すでに予定が埋まっているところに遊びに誘われても困るだけ。

 せめて前もって真白の空いている日時を確認しておけばまた違った未来もあったのかもしれないが、男同士の気楽なお出かけしか知らなかった彼らでは経験不足によりそこに思い至らなかったのだ。単に浮かれていただけとも言う。

 

 

「……大地」

 

「風魔か……ハハ、見ての通りだ……」

 

「5月の連休もそれぞれ家の用事がありましたし、紅蓮と静流を誘って4人で遊びに行きますか……?」

 

「おぅ……そうだな……」

 

 

『さすがに、こればっかりは白虎の加護でも役に立たないねぇ』

 

『人の恋路は鬼の討伐よりも難儀だから仕方ないな』

 

 

 それはそれとして男4人で遊びに行った新規オープンのマリンパークは普通に満喫していたりする。

 

 途中、迷子になって困っている双子の姉妹を大地が肩に乗せて保護者を探しに奔走したり、スリ集団を派手に捕らえた紅蓮と風魔が子どもたちに大人気だったり、水に濡れるからと着替えが必要な場面で当たり前のように女性更衣室に案内されそうになった静流が若干面倒くさい感じにやさぐれたりしたものの、ほんのひととき戦士の休息として学生らしい休日を楽しめたようだ。

 

 さて。

 

 紆余曲折を経てイケメンたちがワイワイと能力者専用コースで海鮮焼きなどを楽しんでいたころ、ヒロインはなにをしていたかと言うと。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

「……ほっほぅ? こんなところに迷宮があったとは。うーん、なんだかこれぞ冒険! って感じでロマンの香りがしますなぁ〜♪」

 

 

 とある山奥の、武功庁も霊験庁も把握していない秘密の迷宮の入り口の前。そこで大太刀と大斧を背負ったチェストフォルム山ガール(ヒロインのすがた)朝比奈真白が顎を指で挟みキュピーン☆ とテンション上げていた。

 ここはいったい何処なのか? 本作の序盤で登場してからすっかりご無沙汰であったDLC迷宮【柳閃冥洞】の再登場である。おそらくこの世界で唯一品であろう謎のアイテム【色の無い鬼切丸の欠片】に導かれて日程を調整しつつ適当に周囲を誤魔化しながらひとりで探し当てたのだ! 

 

 ココがどういう場所なのか真白は知らない。

 

 だが欠片の記憶がなにがあったのかを教えてくれる。

 

 弟子として師匠の技を(勝手に)受け継いだからには、そこに至るまでの足跡を辿るのも孝行のひとつだろう。

 

 なにより、真白には高みを目指す理由がある。世間では常世にて鬼の頭目を討ち倒し現世侵攻を阻止した“勝利”として扱われているが、朧はなんか勝手に自滅したようなものだし自分はダメージの蓄積と切断した足からの出血で死に戻ることになった。

 痛み分けとも言う。あるいは相打ちとも言う。しかしそんなものは他人の価値観であり朝比奈真白の評価基準には関係ない。生き残ることができなかったのだから、自力で帰還することができなかったのだから、それは結局のところ敗北と変わらないのだ。

 

 再び強大なる強敵と相見えることがあれば、必ずその御首を頂戴して己の足で帰ってみせる。完璧に大太刀ブンブン丸としてのプライドを拗らせに拗らせまくっているが人類の守護者としては頼もしいのひと言なので大丈夫です! 

 

 で。

 

 迷宮に侵入して最初の1歩目。

 

 

 

 

 

 

 

 

「たぁぁぁぁのもぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ましろ の ハイパーボイス ! 

 

 ガーゴイルのおやだま の ぼうぎょりょくが

 がくっと さがった ! 

 

 

 ここしばらくでは珍しくモブキャラ兄妹から初代スーパーヒロインまで都合3人ほど人間がやってきたが、現在のところワケわからん率100パーセントなのだから呪石のガーゴイルだって「また変なのが来たのか……」と嫌な顔のひとつだってしたくなる。石像なので変化はよくわからないが。

 配下のガーゴイルたちは誰も動こうとしない。ただ気持ち頭の角度だけがいつもと違って群れのリーダーのほうを一体たりとも向いていない。いえいえ、アレは黄龍の霊気ですから自分たちのような下っ端じゃ相手になりません。頑張れリーダー、アナタがナンバーワンだ! ハハッ、お前ら後で覚えてろよコンチクショウ。

 

 それはそれとして強者との手合わせは呪石のガーゴイルも望むところ。それが黄龍の加護を持つ巫女? ならば尚のこと。さて、両手に携えた大太刀と大斧を如何様に使うて向かってくるのやら……と観察していれば、どういうことか黄龍の巫女? はそれらの武器を消し去ってしまう。

 まさか拳か? 拳で挑んでくるのか? 我この通り岩の肌だけど。それともあの若い男のように衝撃だけを内部に通すとかいう器用な真似をお前もするつもりか? 巫女なら普通に法術使えよ鎧を着込んで殴りかかってきたら侍の立場が無いだろ……などと訝しんでいると、強力な霊力を有する猿の精霊が光の粒となり一振りの薙刀へと変化したッ! 

 

 

「いろんなシチュエーションを想定して、いろんな戦い方ができるようにならないと、無銘我流の一番弟子なんて名乗れないからね! それに、石像の鬼さんの武器もハルバードってヤツっぽいから、特訓の成果を試すには持って来いだよ!」

 

 

 ……薙刀なら女の武器としておかしくないな、ヨシッ! 

 

 

 ちなみに真白のステータス割り振りは大太刀【薄緑】の装備条件を満たすために精神を多少鍛えているのでサポートはできるが、魔法スキルの攻撃力に関わる知性はほぼ初期値なので法術戦闘の腕前は中等部の訓練生より期待できない有り様だったりする。

 それはステータスや熟練度はもちろんのこと、エーテルの使い方を覚えて霊力と霊気の扱いを鍛えている間、あまりにも接近戦のための経験を積み過ぎたことで朝比奈真白という存在が物理側に偏ってしまっているのだ。いま大真面目に霊気の矢を放ったところで、かつて漫画版ストリートファイターのリュウが使用した必殺技・波動ボンバーのようにペチッと音が鳴って終わることだろう。

 

 

 互いに長柄モノを構える。

 

 ガーゴイルは動かない。真白の重心と霊力の流れから、真っ向勝負を仕掛けてくると判断して受けて立つことにしたのだ。黄龍の加護などそう味わえるものではない、ならばバカ正直に打ち合うのもまた一興。

 

 

「……しッ!!」

 

 

 踏み込み、速い。

 

 衝突。 

 

 音が破裂する。

 

 

「ふぬぉぉぉぉッ!!」

 

「────、────ッ!!」

 

 

 現在、精霊【猿天哮】は精霊や神霊の加護を武器として実体化する【霊気兵装】という状態にあり、真白はステータス強化の恩恵を一時的に失っている状態であった。

 それでも人間の倍以上の体躯を持つ鬼を相手に押し合いが成立しているのだから腕力にどれだけエーテルを注ぎ込んだのかわかるというもの。大太刀と大斧で二刀流をしたかったからね、しょうがないね。

 

 やはり腕力、腕力は全てを解決する。死にゲーに限らず相手の弱点を把握しているにも関わらず面倒だからと物理でゴリ押し戦法に身に覚えのない者だけが朝比奈真白に石を投げなさい。超加速で打ち返されても責任は持たないが。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

「……ふぅ〜。まさに、強敵と書いて()()と呼べる相手だった……。でも大太刀と大斧のコンビネーションに加えて薙刀の使い方も慣れてきたし、だいぶ攻撃のバリエーションは増えたよねッ!」

 

 

 大太刀→正面から叩き斬る。

 

 大斧→正面から叩き斬る。

 

 薙刀→正面から叩き斬る。

 

 世の中には天丼とカツ丼と釜飯がトリオを組んで活動することもあるのだからギリギリセーフと言えなくもない。少なくとも黄龍の爺さまはいまごろウイスキーをコーラで割って飲みながらゲラゲラ笑っていることだろう。日本神話にどっぷり染まっているだけあって、基本的に人間ダイスキで加護を与えた巫女の行動を全肯定する愉快なジジイなのだ。

 一応、呪石のガーゴイルを退けることには成功している。さすがはDLC迷宮の中ボスだけあって技量もなかなかのモノを持っており、鍛え上げた力で押し切ろうとする真白の薙刀をハルバードで器用に絡め取って反撃を繰り出したりしていた。それを真白は欠片からコピーした斬撃防御のスキルを使い鎧で受けてから膝蹴り→石突き→縦一閃の持ち味を活かしたコンボで押し返す。

 

 だいたいそんな感じで攻防を繰り広げること十度と数手。この巫女(仮)ならば奥に通しても悪いことにはならないだろうと呪石のガーゴイルは道を譲ることにしたのだ。

 最奥で待つ男は特殊な成り立ちの迷宮主ではあるが、ガーゴイルたちにしてもボチボチ長い付き合いである。純粋に腕試しに来た者であるなら、ヤツとて手合わせを喜ぶに違いない。

 

 

 単にナメられたのならともかく意図があって譲られたのであれば真白ちゃんだってお行儀よく武器を下ろすぐらいのことはする。エーテルの感触と濁りのない妖気から騙し討ちの可能性は無いとして、ズンズン迷宮を進んで行けば────これまで1度も経験したことの無い、不思議な妖気を放つ鬼がいた。

 

 

「……貴方は」

 

「ほぅ……これは、また。私の知らぬ霊気の波動を感じる。不思議な……そう、まるで……童の落書きのように楽しげで自由な霊気を」

 

「それはきっと、私が今代の黄龍の巫女だからだと思います。過去に黄龍の加護を与えられた人たちがどうだったのかまでは知りませんが、私はあらゆる属性に適性を持っていますので……そう、感じられるのかと思います」

 

「そうか、そうか……。だが、それだけでは無いな。僅かにだが彼の姿が見える。まったく性質は異なるのに、面白いものだ」

 

 

 神霊たちに祝福された鬼【椿落としの咎人】が刀に手を添える。

 

 対する真白もまた、愛用の大太刀・薄緑を下段に構えた。

 

 

 勝利だけを望むのなら、あるいは……召喚術式で猿天哮を参戦させれば多少は実力の差を埋めることができるかもしれない。

 

 だが、敢えて真白は大太刀による勝負に拘った。

 

 

 

 何故なら。

 

 

 

 

 

 

 ────そのほうが、カッコいいからだッ!! 

 

 

 

 

 

 

 モチベーションは実際大事、アホみたいな縛りプレイでも何度も何度も強敵に挑戦しているうちに変な笑い声が漏れ始めて楽しくなってくるアノ感覚もまた死にゲーの醍醐味のひとつなのだから。

 もちろん初代スーパーヒロインである朝比奈真白が戦いの最中に巫山戯るような真似をするはずがない。数多の選択肢を与えられた黄龍の巫女だからこそ、それらを使いこなすためには自分の中に一本の芯を通すべきだと考えた。それがたまたま大太刀だった、それだけのこと。

 

 

 沈黙。

 

 

 数瞬。

 

 

 静寂。

 

 

 先に動いたのは咎人、神速の居合抜きにて黄龍の巫女がどれほどの反応をするのか試してみようと斬撃を放つ────その、1歩手前。まだ鞘の中を刀身が滑る途中、()()()()()()()()()()()()()()()ッ! 

 

 斬撃が大太刀の刃を削る火花と金切音。反応の速度に身のこなしがついていかないらしいが、それでもこれほどまでに完璧に防がれてしまえば霊気のガードを掠めることすら敵わない。

 事実、真白は攻撃の予備動作としてエーテルの流れが見えていたので不可視の居合いだろうとタイミングを掴むことは難しくなかった。だがそれに対応する斬撃見切りのスキルに不慣れであることから、どうしても肉体の反応が一瞬だけ遅れてしまう。

 

 

 しかし、だからこそ『価値』があるのだッ!! 

 

 

 圧倒的戦闘センスを持つ相手と戦うことに意味がある、勝ち目の薄い相手に勝つために試行錯誤を繰り返してこそ人は武人として成長できる。

 もちろん地道なトレーニングこそがなによりも大事であるという考え方に異論は無いが、道場名人という言葉があるように実戦の場に立たねば学べないことは沢山ある。

 

 

 なにはともあれ挨拶代わりと放たれた開幕の一撃は凌いだ。

 

 相手は格上、長引けば不利。

 

 

 相手の動きはエーテルの流れを読むことで予測できる、あとは足りないステータスを勇気で補えばいい。次の一閃を恐れることなく大胆に踏み込んで、大太刀の横薙ぎで咎人の首を狙う真白であったが────その刃が咎人の首にいまにも触れるというその瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!! 

 

 

 仮定。

 

 初動を盗まれている。

 

 

 いつかの少年のような桁外れの超反射とは違う、黄龍の巫女は確かに居合いの出々しを眼で追っていた。

 

 何故? は無意味。

 

 必要なのは対応。

 

 ならば、と。咎人は確実に剣撃を叩き込むため、黄龍の巫女の動きを封じるために待ちに徹する。いくら読み上手であろうとも攻撃の瞬間であれば必ずその動きは固定される。大太刀の切っ先が首の薄皮に触れた瞬間に、その刃が食い込むより先に斬り捨てれば良いだけのこと。

 

 あとは予備の武器を取り出すまでの合間に巫女の首を落とすだけで終わる。

 

 次に備えて再び居合の構えに入り始め。

 

 

 

 

 ────何物かで顔面を打ち据えられたッ!! 

 

 

 

 

(……ッ!? 大太刀の鞘とはなッ!!)

 

 

 身体に染み付いた反射でソレを斬れば、刀に伝わってきた感触とカラリコロリとモノが転がる音で視認するより先に鞘で殴られたことに気付く。

 巫女とは思えぬほどの格闘戦の判断力。なるほど実体化している大太刀の一部である鞘であれば瞬きほどの間も置かずに武器として使えるのも道理であった。

 

 

 これはマズい。

 

 咎人が身構える。

 

 

 これはイケる。

 

 真白が身構えた。

 

 

 咎人が刀を振り抜いた姿勢から戻るより先に、切断されたことで鋭さを得た鞘を固く握り手のひらで全身で押し込むように真白が懐に飛び込んだッ!! 

 

 

「つぇいッ!!」

 

「ぐ、ぬぅッ!?」

 

 

 倒れ込む。

 

 同時。

 

 

 敵は下、自分は上。

 

 追撃のチャンス! 

 

 

 拳を振り上げるのも頭を起こすのも遅いと判断した真白が咎人の顎を肘で打ち上げるッ! 

 

 

 腹の傷は肉を大きく抉るようなものではなく、鬼の頑健さであれば女の細腕による肘打ちなど大したことも……ほんの少し涙が滲む程度でしかない。

 

 だが馬乗りからのコレは大変よろしくない。

 

 黄龍の巫女は手にした鞘を咎人の眼球に突き立てるつもりであった。

 

 咄嗟。

 

 もはやこれは剣士の闘いではなく野生の生存競争である。ならばあらゆる手段を用いて抵抗しなければいとも容易く食い殺される。ならば、砂のひと掴みほどを相手の顔面に叩き付けることを躊躇う理由もない。

 もちろん乙女ゲーのメインヒロインがいまさら目潰し程度で止まるワケがないが、それでも一直線に迷いなく迫り来る鞘を受けるだけの時間は稼げた。そこに誤算があるとすれば、いくら鬼の身体に変じたとしても技に特化している咎人では真白の膂力を相手するには不足ということぐらいか。

 

 

 じり、

 

 じり、

 

 と。

 

 

 このままでは抵抗虚しく脳髄まで貫かれる。

 

 このままなら抵抗を押し切って頭蓋骨までブチ抜ける。

 

 

 互いに必殺を確信する中、先に動いたのは……咎人であったッ!! 

 

 

 このままでは敗北は必至。ならば賭けに出たとしても損はない。咎人は押し返す力を反転させ自ら鞘を引き込むことで、眼球よりは何倍も防御力に期待できる額でそれを受け止めたッ! 

 

 

「────ぐぉッ?!」

 

 

 響く。黄龍の霊気かッ!? 

 

 まるで一撃で脳髄を泥の有様まで砕かれたかのように視界が歪む。

 

 だが1度でも勢いを殺せたのであればこの状況、戦果としては上等であるッ!! 

 

 

「────いぎぃッ?!」

 

 

 ぞぶり、と激痛が走る。

 

 それぞれの思惑が逆転し、咎人の親指が真白の眼球を潰してそのまま頭をがしりと掴んだのだッ! 

 

 もちろんスーパーヒロインは眼球ひとつ引き換えにした程度では止まらない。ここからは技術を必要としない、気合と根性による精神力の勝負なのだ。いまさら鬼を相手に朝比奈真白がタフさで後れを取るなど解釈違いにも程があるッ! 

 

 このまま押し通るッ! と力を込め直す真白。

 

 なれど相手は旧時代の戦乱を生きていた本物の猛者である。初対面であろうと真白であればそれぐらいはしてみせると想定済みなのだ。

 

 

 眼球を潰し、

 

 

 頭を掴んだそれとは逆の手で、

 

 

 真白の髪を鷲掴みにし、

 

 

 

 

 そのまま抱き寄せるようにして細い首を反転よりさらに先まで捻り折るッ!! 

 

 

 

 

「ゔぁ……えぺ…………?」

 

 

 

 

 人体の構造としての限界を超えてしまえば、そこに精神論が挟まる余地など無い。主人公だから、黄龍の巫女だから、などという理由で例外を認めてくれるほど甘くもない。

 あと1歩、あと数センチでも先んじることができれば結果は逆転していたのかもしれないが、朝比奈真白は最後の読み合いに敗れ椿落としの咎人が勝利したという事実だけが残る。

 

 エーテル粒子化が始まった肉の塊が覆い被さってくるのを横に流し、いまだ顔中の穴から頭の中身が垂れ流しになっていると錯覚するほどの不快感に抗いながら、どうにか壁際まで這いずり上体を起こす咎人。

 ふと、弾き飛ばした大太刀に視線を向ける。迷宮に取り込まれることなく使い手を追い掛けるように光の粒となるところを見るに、一朝一夕で拵えたものではなく幾多の修羅場を乗り越えてきた相棒なのだろう。

 

 

「……ぐ、ふぅ……ッ! それに、しても……苦し紛れ、に、砂を投げつけるなど……ふふ、木の枝を喜び勇んで……振り回していたころを思い出すな……だが、卑怯とは……言ってくれるなよ? 私も……負けず、嫌い、なの……でな……ッ! ……まぁ、姫様との飲み比べには生涯で1度たりとも……勝てなかったが……。うむ……いつかの酒盛りの、とき……の、頭痛よりは……まだ、楽なほうか……」

 

 

 黄龍の巫女、未だ未熟なりッ!! 

 

 なれどそれは、さらなる成長の可能性を証明するモノであるッ!!




  ♡♡りざると♡♡

 ✕すずね VS しらはえてんぐ◯
 ✕なぎな VS てんめいこんごう◯
 ✕ましろ VS つばきおとしのとがびと◯

伊邪那美
『コレもしかしなくてもそのうち3作目の主人公までアタシのトコで気軽に反復横跳び始める流れ? 奪衣婆なんとかしてよ、役目でしょ』

奪衣婆
『知らん。文句はあの小僧に言え』
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