タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。 作:はめるん用
これぞ転生者のご都合主義なので初投稿です。
2代目ヒロインが裏ボス相手に戦士としての産声をあげ。
モブキャラ妹が存分に己の才覚を死合の中で楽しみ。
イケメンたちが青春を満喫し。
初代ヒロインが100秒にも満たない死闘を繰り広げる。
そんな中、地道にステータスを鍛え始めた世界のバグこと無銘彼方はチートの有無に関わらず近代パラレル日本の転生者であれば必ず向き合わなければならない恐るべき現実を突き付けられていた。
その名は────。
進ッ!!
路ッ!!
指ッ!!
導ッ!!
……である。
なんとも悩ましい問題といえばそうなのだが、考えようによっては悩めるのも贅沢というか幸せなことなのかもしれない。なにせ真白を含むメインキャラクターたちのように高いステータス、あるいは強力な加護を持つ能力者たちは進学以外の選択肢が無いのだから。
「……お前の学力なら余裕で進学も狙えるんだが。夏休み、ヒマなら夏期講習に参加してみないか?」
「実は夏休みには傷心旅行に出かける予定がありまして」
「なんだ、なにか辛いことでもあったのか?」
「それについては夏休みが終わるまでに考えておきます」
「お前のその全く相手を欺く気のない誤魔化しは嫌いじゃないが、さすがに進路指導のときぐらいは勘弁してくれ。それともアレか? 朝比奈や暮間のことで手間をかけさせた意趣返しのつもりとか」
「お世話になっている先生を相手にそんなことはしませんよ。意趣返しのつもりならもっと陰湿で効果的な手段を選びます」
「もう少し安心できる言い訳してくんねぇ?」
「実際、ふたりのことで面倒だなんて思ってませんよ。それに、進学よりもフリーの能力者として気楽な生活をしたいって夢もありますしね。大学、自分みたいに加護も無ければ後ろ盾も無い人間にとっては居心地が悪そうですし」
「そこはまぁ……否定できんが。侍や巫女と無関係の大学でも、放送とか配信とか、まぁ常日頃から色々見てるワケだし。学園の卒業生ってだけでなぁ」
「能力があって、迷宮があれば、取り敢えず食いっぱぐれることはない。優しい世の中に産まれたことに感謝ですね」
どうせ2度目の人生ならば。
中世ファンタジー系異世界のように衛生面を含めた文化的生活について心配する必要がなく、それでいて異能力バトルも楽しめる。職業として公的に認められているので社会的な立場も保障されている。
もちろん税金やら保険やらの手続きは全て自前でやらなければいけないが、その程度の書類仕事であれば慣れたもの。むしろ、平日の昼間に自由に役場などに足を運べるのだから前世よりも気楽だろう。
「しかしひとつだけ反論させてもらおうか。加護、手に入れてるじゃないか。ずいぶんと可愛らしい妖精さんだが、精霊の加護には違いないだろう?」
「姿を消すこともできないガチクソザコのあたしに期待するとか、この人間アタマ腐ってません? 彼方さんより偉いんでしょ?」
「他人の精霊にケチ付けんのもアレだけど自分の弱さに絶対的な自信あるのに口悪いのスゲェなお前」
精霊・夢喰い改め睡蓮。
彼方の精霊として馴染んだら、何故か姿を消すことが出来なくなるという不具合が発生した。もちろん原作ゲームにはそのような描写もフレーバーテキストも存在しないが、彼方はモブキャラが身の丈に合わないことをしたバグみたいなものだろうと受け入れることにした。
事実、彼方的には特に困ることは起きていない。睡蓮の霊気が貧弱であることから同学年どころか2年生からも、ときには1年生からもナメた視線を向けられることはあるが、当然そんなものを気にする彼方ではない。一緒にカフェなどで甘い物を食べているときに周囲の好奇心に満ちた視線がムズムズしてちょこっと気まずいぐらいか。
ちなみに衣装は巫女装束をベースに袴の色だけ紫色に染めてある。妹の凪菜ほど装備錬成を習熟していないが、フリー活動を見越して技量にもそれなりにステータスを割り振り錬成の精度を高めたことで簡単な衣装ぐらいは作れるようになっている。なおデザインは睡蓮本人の希望だ。
「ステータス補正も雀の涙、適性も熟練度をBまで上げてる自分にとってはあまり関係ないですが……まぁ、案外いいものですよ。気楽に話せる相手がいつでもいるってのは」
「ま、お前が満足してんならそれでいいが。それはそれとして、夏期講習や進学についてはこれ以上グチグチ言わないが夏休みの時間に余裕があるなら私の手伝いを頼まれてくれよ。そしたらフリー活動するときにも少しは手伝ってやれるからさ」
「バイトですか? それなら喜んで引き受けますが」
「即答だな。助かるが本当にいいのか?」
「それはもちろん。自分の平和な学園生活のために
「……なにを、いや、なんでそう思った?」
「政府が公的に配布しているアプリの情報が完全に個人向けに隔離され管理されているワケがない。そして自分のアプリには文字化けした神霊らしき存在の情報がある。それで学園側からなにも言われないとすれば、誰かが手を回してくれたと考えるのが自然でしょう。ねぇ? 生徒想いの茅宮先生?」
「そういうところだよ。私がお前にバイトを頼むのはな」
コレは彼方も春休みに風祭神社のアルバイトを引き受けるまで気が付いていなかった。フリー活動に備えて様々な手続きを勉強する良い機会だと色々見聞きして教わっているうちに辿り着いた事実である。
学園側のステータス管理が自己申告に重きを置いていることから“そういうもの”と思い込んでいたが、冷静に考えてみれば未成年である学生に一歩間違えれば事故や犯罪に繋がる能力関係の管理を全て丸投げするはずがない。
では誰がそんな面倒なことを?
心当たりがあるとすれば? それは担任でもある目の前の女性教師【
「バレたもんは仕方ない。むしろ好都合だ。私はこれでもそれなりに関係各所に顔が利くんだ、損はさせないよ」
それなりに顔が利く。
(最高権力者)
(まぁ、学園の先生をやってて黄龍の巫女や交換学生の鵺の巫女を任されるぐらいだし、気さくな雰囲気と違ってそこそこ偉いんだろうなって気はしてたけど)
そこそこ偉い。
(最高権力者)
能力者たちの頂点にいる何者かの存在については原作知識で知っている。
だがそれが具体的にどんな人物なのかはゲーム中で語られていないため、彼方は茅宮女史とそれを結び付けるところまでは想像できていなかった。
そんな謎に包まれた超重要人物ッ! 武器の扱いはからっきしだが法術戦において全属性の適性と熟練度【S】を誇り、神霊【
鬼切姫の世界では八岐大蛇は信仰の対象であり人間たちの守り神として自然と共にあり続けた。草薙の剣に纏わる伝承も、この世界では現世の瘴気を祓うために戦う武人【
そして草薙の剣は現在学園に封印されており、神霊として迎えられた日本武尊も学生たちのことを見守っているのだが……それを知れば欲深い者たちが必ず利用するだろうと、それらの事実は秘匿されている。学園でこのことを知るのは大蛇の巫女である茅宮女史のほか、神霊【
おそらく。
いや確実に。
この事実に気付いていれば彼方は茅宮女史のアルバイトを引き受けることはしなかっただろう。
モブキャラを自称する彼が能力者の天辺にいるような巫女と積極的に関わりたがるワケがない。
だが残念ながらそうはならなかった。
どの勢力にも、どの派閥にも属さない。それでいて頭の回転も速く機転が利く。
黄龍の巫女と四神の侍、そして鵺の巫女の協力によりアプリが更新されたことで黄泉戦と魂揺蛍の加護を持つことが判明。
それでもなお正体不明の神霊から加護を与えられており、さらには自力で鬼を精霊に変じさせて迎え入れている。
しかもあらゆる武器と法術を扱え、熟練度も充分で、蓄えているスキルはプロの能力者も顔負けのラインナップ。
それらを使いこなすことで、学園の購買部で販売されている学生が錬成した武器を使用して鬼仙・蜂眼坊を退ける実力。
これだけ価値を示せば茅宮女史の立場としては手駒として是非とも引き入れたいに決まっている。彼女は教育者である以上に日本の守護役なのだから。
仮に無銘彼方という個人を犠牲にすることで大勢の人間を救えるのであれば、迷わずそれを実行する冷徹さも持ち合わせている。それこそ、妹である無銘凪菜から憎悪と殺意を向けられることになったとしても。
もっとも、そんな未来は始まる前から可能性を潰されているのだが。
茅宮女史としては危険物であるデモンシードの調査に彼方を向かわせるつもりである。そのために風祭神社のアルバイトを布石とした。そして、彼方であれば最悪の事態で命を落とすことになったとしてもデモンシードに魅入られることはないと信用していた。
だが原作知識を持つ彼方はデモンシード絡みのトラブルに巻き込まれることを警戒して準備を整えている。睡蓮のスカウトがそうであるように、すでに彼方は人間の能力者を仮想敵として設定し備えているのだ。当然、咄嗟の場面で迷わないよう“いろんな意味で”優先順位の振り分けも完了している。
なので、ぶっちゃけ彼方に危険なアルバイトを任せた時点で茅宮女史の覚悟は空振りすることが確定しているのだ。むしろ物事が順調に進んでいるはずなのに胃痛に悩まされる未来も確定していた。
現状でそれを予測できる者はいない。強いて勘づきそうなのは誰かと問えば、2代目ヒロインの様子を見るため出張中の冥界童女の代わりに離れたところから彼方を見守る神霊【
この大役、無銘彼方は死ぬと思うか?
あの冥界童女に取り憑かれた侍がか?
たかが人間相手に、いまさら命を落とすワケなかろう。
その程度であればあの疫病神にとうの昔に取り殺されておるだろうに。
然り。天照が月読に咎められることなく一年が終わるほどには有り得んだろうな。
阿呆が。そのような珍事が起きれば日ノ本の終わりぞ。
なぁに、無銘彼方がいよいよのときは根の国の女王である伊邪那美がどうにかするだろう。
以上。八岐会議、終了。己が加護を与えた巫女である茅宮女史とは違い、無銘彼方の品質保証を担う3人の神霊が見えている八岐大蛇は一切の心配をしていなかった。
確かに黄泉戦の加護があろうとも完全に心が折れればその限りではないのだが、冥界童女の加護を押し付けられていながら正気で戦場に立ち続けるような規格外が心折れる姿を全く想像できないからだ。
つまりどういうことかというと────無銘彼方、弐のシナリオに裏方として本格参戦おめでとうッ! ということだッ!
座敷童
『私は基本、見る専なんで。応援はしてるしコラボ商品も買うけどチャンネル登録や投げ銭はしないみたいなアレよ。黄龍の巫女? ちょっとなんのこと言ってるかわかんないですね』