タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 しばらく説明っぽい話が続くかもしれないことを謝罪しつつ初投稿です。



イケメンたちの霊圧が……消え……るかどうかの瀬戸際かどうかは読者の皆さんの判断にお任せします。

 案の定彼方が巻き込まれることが確定したところで鬼切姫・弐の流れを確認しておこう。

 

 まず基本となる義塾の管理下にある迷宮攻略。こちらは最初に鈴音が挑んだ天同の迷宮から始まり【天相】【七殺】【天機】【天梁】【天府】という六つの迷宮が用意されている。七殺の迷宮までは順番通りに攻略し、最後の3箇所は自由に選んで攻略することになる。

 

 次に、学生同士の戦いとなるランキング戦。模擬演武と呼ばれる予選から始まり、序列戦を勝ち抜くことで甲乙丙丁のグループ分けがなされ、その中で数字が割り振られる。こちらは人型のボスラッシュのようなものであり、条件付きだがヒロインの特権として鈴音は対戦相手のスキルを学習することができる。

 

 そして迷宮攻略と序列戦とは別に日数経過でデモンシード絡みの結界戦関連のイベントが始まり、こちらは攻略を後回しにすればするほど敵が強化される仕様となっていた。つまり楽して攻略したいなら、あるいはプレイスキルに自信があるなら、寄り道を最低限にして野良チームどもがデモンシードを大量摂取する前に殴り飛ばせということだ。

 

 もちろん、それぞれのイベントに対応した攻略対象のイケメンが用意されている。

 

 基本的には迷宮攻略なら全ての迷宮のボスを倒して踏破する、序列戦であれば階級・甲の第一位まで勝ち上がる、など一定期間内に集中して攻略を進めれば必要なフラグを回収できる。特にデモンシード事件はメインシナリオであるため誰とも結ばれない友情ルートよりも簡単にエンディングを迎えることができた。

 逆に鈴音の母親である鈴鹿が鬼神であることがプレイヤーに判明する周回限定の真エンディングと、序盤で加入したときから好意的で初心者でも楽勝で攻略できそうな雰囲気を漂わせている蔵人ルートのエンディングに辿り着くためには、迷宮攻略と序列戦を最後まで攻略しながらデモンシード事件を解決しなければならないため難易度はとても高いのだ。

 

 

 と。

 

 こんな具合で物語が進む鬼切姫・弐の世界なワケだが。

 

 

 多少経緯は違えどすでに巻き込まれたデモンシード事件はともかく、迷宮攻略と序列戦にフラグを割り振られたイケメンたちは現状出会いの段階からすでに可能性が消えつつある。

 

 この世界の鈴音は彼方との出会いに加え、プリズムダストが解散済みでメンバーが棗の舎弟になったことで“自分が守護らねば”という拗らせ方をしていない。力を求める方向にモチベーションが振り切っていないのだから、迷宮攻略も序列戦も極端に入れ込んで取り組む理由がないのだ。

 そこに精霊・白南風の加護を得たことで力との向き合い方は原作と比べてどんどん離れていく。健康的真面目系不良少女の鈴音にとって結界戦を含め戦いの世界では欲しいモノは勝利して手にするものであった、しかし白南風天狗は勝敗と相手を認めることは別であるとして負け続けている鈴音に加護を与えた。

 

 別に原作でもこの世界でも力こそ全て、みたいな価値観をしていたワケではない。しかし人間の宿敵であるはずの鬼から心意気を認められるという出来事は鈴音にとってなかなかの衝撃であったらしい。

 鬼の脅威から人々を、せめて自分の周囲だけでも守れるように強くなろう。その気持ちは揺らがないものの、強くなろうとする意識に引っ張られ過ぎて対話が可能な鬼まで問答無用で喧嘩を売って敵を増やす真似はどうなのか? と考えた。

 

 普通ならここで、じゃあ侍や巫女の戦いってなんなんだッ!? と悩むシーンなのかもしれない。だが鈴音は切り替え上手な侍の先生をひとり知っている。大事なのは自分の中の芯を見失わないこと、その上で様々な価値観を一方的に否定しないように気をつければいい……と、結論を出した。

 

 それでどうなったかというと。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

「あの人が野良チームからスカウトされた銀城先輩な。並の侍が両手で扱う大剣を片手で軽々と扱う実力者で、加護も無いのにランキング戦で乙グループまで上り詰めたスゲェ人だよ」

 

「加護が無くても実力さえ証明すれば、義塾から様々な特典を受けることができるんですね。少し意外でした。勝負の世界、それもスポーツより何倍も危険な世界ですから実力主義の評価もそれはそれで正しいのでしょうね」

 

「まぁ見た目が完全にヤンキーだから良くないウワサ話とかもいろいろあんだけど。でも俺は銀城先輩が授業サボってるとこは見たことあっけど、それ以外は本当かどうか見たことないからなんとも言えねぇかな。正直、加護があるからって得意気になってるヤツらのほうが好きじゃねぇし。おっと、日比野さんは別だぜ? もちろん嫌味を言い始めたら付き合い方は改めさせてもらうがよ」

 

「そういう正直なところは好ましいですよ水守くん。それで……銀城先輩については水守くんの言うとおり、人は見かけによらないとも言いますからね。目立つ人はそれだけでも嫉妬の対象になりますし、本人と話してもみないうちにウワサ話だけで判断するのは良くないですよね」

(つーか、あの人メタルウルブスでアタマ張ってた銀城海斗サンじゃん。あそこのチーム、不良のメンツにかけて半端なマネは御法度だって言ってたよな? ケンカの邪魔になるってんでタバコすら吸わねー連中のリーダーがそんな狡いイキり方なんてやるかね? 十中八九、加護持ちで負けた連中が裏でコソコソ言いふらしてんだろうなぁ〜)

 

 

 序列戦を勝ち進めることで攻略フラグが立つアウトロー系男子【銀城海斗(ぎんじょう かいと)】は力による成り上がりを目的とする男であり、義塾に入学してからも野良チームで結界戦を続けている生粋のバトルマニアだ。

 個別シナリオの流れは同じく序列戦で注目され始めた鈴音に興味を持ち、正々堂々とした喧嘩を信念とするチーム同士ということで良きライバルとして認め合い、そして事件を追いかける途中で鬼にボッコボコに敗北し「戦い一色で染まっているお前の器は空虚と変わらない退屈な器だ」みたいなことを言われ憐れみの視線を向けられることになる。

 

 それが切っ掛けとなり、鈴音と海斗は力の使い方について考え始め、一緒に過ごす時間が増えてお互いを徐々に意識するようになり……と、いった流れで仲を深めるはずだった。

 

 が。

 

 

(序列戦……天辺を目指して駆け抜けるってのもたしかに燃えるんだけどよ、それに夢中になっちまったら戦えない誰かのために戦ってこそ力は力であるって考え方がブレそうな気がするな……。自分で言うのもなんだけど、アタシ彼方先生に一発ヤられただけで染まっちまうぐらいチョロいし。そもそも2年の途中から転科したアタシが序列戦なんてまともに戦えるワケねーよな……暮間先輩んトコの小学生のガキどもと一緒にトレーニングするレベルだぜ? ……うん、序列戦はよっぽど自信が出てくるまで選択肢としてねーわ)

 

 

 日比野鈴音、序列戦不参加決定ッ!! 

 

 小学生たちと和気あいあいトレーニングをしている自分が高校生の試合に出られるはずがないのだ。それは客観的な評価という意味では実に冷静で的確な判断である。もちろん現役学生の中で裏界迷宮の中ボスである白南風天狗を真っ向勝負で倒せる侍や巫女はいない。

 しかし割合としては精神的な影響を危惧したという部分が大きい。自分自身の心の在り方を見定めることなど簡単ではないし、もしかしたら一生悩み続けるかもしれないと覚悟もしている。だからこそ、いまはただ憧れを追いかけ続けたいと願っているのだ。

 

 それに、能力者の中でもビッグネームである朱雀の侍と玄武の侍、そのふたりの()()でもある無銘彼方に認めてもらうことのほうが……誰もが知る表向きの栄光よりも、誰も知らない自分だけの勲章といった特別感がある。

 

 

「序列戦についてはなんとなくですけど理解できた、と思います。ただ、まだまだ駆け出しの私が参加するには少しハードルが高いかもしれませんね」

 

「そうか? 日比野さんならそれなりに上を目指せると思うけどな。せっかく加護を貰えたんだろ? 試さないともったいないとか、そういうのは考えないタイプだったりすんの?」

 

「上ばかり見ていて足元を疎かにするほうがダメかな、と。それに、加護の力を試すのなら迷宮でも試せますよ? エーテル結晶や素材なんかも回収すれば、明日のお昼ご飯もちょっとだけ奮発できて一石二鳥! でしょう?」

 

「ハハッ! そりゃ確かに、昼メシを増やすほうが大事だよなッ! よし、そうと決まれば天相の迷宮に乗り込むための準備でも進めっかッ! ……そういやネタバレはどうすんだ? ボス戦はともかく、道中はよ」

 

「そう、ですね……なんでもかんでも体当たりで挑めば良いというものでもないですし、予め備えるのもトレーニングですよね……。うん、迷宮の攻略に関しては素直にアドバイスを参考にさせてもらうことにしましょうか」

 

「あ〜、それならよ……だったら、迷宮の情報だけササッと教えておいて、最初はひとりだけで行ってみっか? ほかの巫女なら止めるけど、日比野さんは接近戦もできるんだし」

 

「なるほど、状況を想像してどんな道具や装備が必要になるかを考えるトレーニングにもなりますね。それではお言葉に甘えて、簡単な方向性なんかを教えてもらえれば────」

 

「おう! まず入り口からすぐ目の前がよ────」

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

『切磋琢磨を楽しめる良き友、実に得難い宝であろう。良縁である、鈴音殿も是非とも大切になさることだ』

 

「もちろん! ダチを大切にできねぇヤツは必ずいつかしっぺ返しを食らうって北条さんも言ってたからな。にしても……なぁ、白南風さん。アタシ結局一回も勝ってねぇんだし、そんな丁寧に喋らなくてもよくないか?」

 

『これもまた修行の内だ。言葉とは呪いでもあり祝いでもある。戦場の駆け引きとしての挑発であればともかく、あまり乱暴な言葉遣いに慣れてしまえば精神の安定性に影響を及ぼす……かもしれない。受け売りだがな』

 

「じゃあ、アタシが猫被ってんのと似たようなモンかな……。精神の安定、うん、やっぱ平常心ってヤツは大事だもんな! 普段はこう、テキトーな感じだけどケンカのときは鋭い刃物のように……フフン、アタシも先生みたいにクールな戦い方ってヤツを心がけるようにしてっからな……ッ!」

 

 

 アレで? とは言わない。

 

 精霊・白南風は風の加護を持つ者。空気だって読める。

 

 

 蔵人から天相の迷宮について大雑把な情報だけを教えてもらった鈴音は授業で教わった知識をベースに必要になりそうな道具などを購入して部屋で並べていた。

 アプリを使えば簡単にインベントリに収納できるとはいえ、その前に1度はちゃんと手に持ってひとつひとつ確認しながら作業を進めることにしたらしい。例えば投擲系の武器をぶっつけ本番で試すのは度胸ではなく無謀だと、そう判断できる程度には冷静であった。

 

 攻略だけを目的とするなら、こんな回りくどい真似をせずとも蔵人に協力してもらったほうが効率的なのは理解している。

 しかし鈴音の目的は迷宮を踏破することではなく鬼との戦いを学ぶことにあるのだ。目指すべき場所が違うのだから、そこに至るまでの道のりがほかの学生たちと違って当然だろう。

 

 そもそも義塾の管理下にある迷宮とは言ってしまえば学生のための“学びの場所”であり、中で何事かあろうとも安全に帰って来ることができるように配慮されているのだから遠慮する必要などないのだ。

 少なくとも鈴音は転科してからそういう印象を受けた。だったら効率だけを重視して勝利するよりも自力で試行錯誤を繰り返して敗北するほうが経験値としては美味いはず。社会人の、プロとは違い学生なんだから成功より成長を優先したとして何か問題でも? 

 

 

 そう。

 

 日比野鈴音が迷宮に挑む理由は『踏破』ではない。

 

 日比野鈴音が迷宮に求めるのは『学習』である。

 

 

 大事なことなのでもう一度繰り返すが、鈴音は迷宮踏破による義塾からの褒賞やら周囲からの名声やらには全く欠片ほども興味がない。どれぐらい興味がないかと言えば、あとで迷宮攻略で活躍しているもうひとりのメインキャラクターについて知ることになっても薄いリアクションしか出てこないぐらいには興味がない。

 なんなら白南風天狗のように攻略難度が低いと評価されている前半の迷宮のボス格の鬼たちが鈴音の中に流れる鬼神の血に反応して面白半分に鍛えてやろうとかやり出したらそれこそ後半の迷宮に挑戦する理由が無くなり……いや、この言い方は適切ではない。裏仕様のボス鬼との手合わせに夢中になっている間にデモンシード事件の進行度が上昇して迷宮攻略どころでは無くなる、が正しい。

 

 

 などとゴチャゴチャ解説らしきものを語ってはみたが、結局のところこれらも可能性のひとつでしかない。あくまで仮定の話であって、たとえば偶然夏休みにフラフラしていたときに偶然アルバイトでデモンシード事件のことを探るためにやってきた彼方と偶然顔を合わせることになって偶然ストーリーに関係ある鬼仙に襲われて偶然彼方の窮地生命燃焼火力極限戦法を目の当たりにして偶然先生役を引き受けてくれていたボス鬼たちの計らいで偶然義塾の管理下に無い迷宮に出入りするみたいなことでも起きない限りは世界が望む主人公として活躍してくれることだろう。

 

 ちなみに、彼方が義塾方面に来るときには茅宮女史から専用の身分証明証を持たされるのでプロの能力者であるという鈴音の誤解は継続することになるのだが……どうせ今回もイケメンたちとヒロインとのロマンスは無いままストーリーが進むので今後の展開には特に影響することはない。




白南風
『しかし、やはりと言うべきか……鈴音殿の師に当たりそうな人物は見当たらんな。つまり、無銘彼方なる御仁は義塾とは関係ない部外者ということか。機会さえあれば、是非ともお手合わせ願いたいものだな』

冥界童女
『……キュピーン☆ いま、良縁を結ぶ神霊としての私が求められている気配がした気がする! はー、やれやれ。仕事のできるオンナは忙しいねぇ〜! 義塾のアホどもの不正を眺めてるのも飽きたしそろそろ帰るか』
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