タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 会話で進行するのもゲームのアドベンチャーパートっぽくて良いかもしれないと表現方法の可能性を探りつつ初投稿です。



※ネタバレ 今回の水属性と火属性は2代目ヒロインと一緒に行動します。(ロマンスがあるとは言ってない)

 山、とくれば次は川。

 

 きっと古事記にもそう書いてある。

 

 

 義塾で2番目に挑戦することが推奨されている天相の迷宮は川の流れが情緒を感じさせる、あるいは落下だの水没だの河童だの表現方法はいろいろあるが特定のゲームを好んで遊んでいたプレイヤーからは初見で厄介な造りだと気付いてしまうエリアであった。

 もちろん原作ゲームの鬼切姫でもそれは例外ではないし、この世界でも油断すれば簡単に死に戻りすることになるだろう。巫女はまだ軽装備なので水に落ちても助かる可能性があるが、重装備の侍は確実に終わる。溺れてる最中に冷静な判断で防具をインベントリに戻すのはプロでも難しいのだ。

 

 

 そんな不慮の落下事故に悩む皆さんに朗報です! 

 

 鬼切姫では落下対策として有効なパッシブスキルをご用意しております! 

 

 

 どうしてそんなことになってしまったのかサッパリこれっぽちも全然なんでなのか一切わからないが、どういうワケか2代目ヒロインの日比野鈴音さんはイケメンたちとのロマンスを匂わせるようなイベントどころかフラグすら全く踏んでいないのに鬼神の血が微妙に漏れ出している。

 その影響で本来なら精霊として木枯らし天狗の加護を得るはずが上位種の白南風がお供に加わった雰囲気になっていたり、ボス討伐を成し遂げないまま迷宮を踏破したみたいな空気になっていたりと中途半端な状態になっているが、それでも空中にわずかな時間だけ足場が生成される【天狗渡り】というスキルは使えるので攻略的には問題ない。

 

 効果はせいぜい1秒か2秒。

 

 それでも、本来なら即死判定を喰らう場面を咄嗟に回避行動で陸地に戻ってリカバリーできるなら上等な長さだろう。そして神霊の付け替えを忘れて手遅れになってから気付くまでが様式美というワケだ。

 

 

「へぇ……こりゃ面白いな」

 

 

 風の足場を作る。

 

 飛び跳ねる。

 

 風の足場を作る。

 

 飛び跳ねる。

 

 ゲームでは落下を防止するだけのスキルでも、システムの壁があったりなかったりするこの世界であれば自由に発動条件を設定できる。もちろん巧いこと霊気を操れば似たようなことも可能だが、風遊びの専門家である天狗に比べてどの程度の出来栄えになるかはお察しであろう。

 

 

『大した適応力ではあるが……消耗する霊力は微々たるものだが、それでも使い過ぎれば息ぎれを起こすかもしれんぞ』

 

「それの確認も含めての練習だろ? どんだけ連続で使えるのか、どれぐらい使い続ければ影響がでるのか、ついでに疲れてるときでもちゃんと足場は作れるのか。いつでも準備万端でケンカが始まるとは限らねぇんだ、いろんなシチュエーションを想定しておいてムダにはなんねぇさ」

 

『ふむ。もっともな考え方だな。迷宮の攻略を急がねばならんような理由もないのだし、鈴音殿にとって塩梅の良い具合に攻略するのが、結局のところ最適か』

 

「そもそも迷宮攻略についてはまだまだ初心者だし。体当たりでの実践が許されている間にいろいろ試しておかないと、そのうち悠長なコト言ってらんねぇような状況に出くわすかもしれないからな! ……と、楽しい実験の時間はここまでみてぇだな?」

 

 

 水辺の迷宮らしく足軽のような野盗のような戦支度のカエルらしき鬼たちが武器を構えてゆっくりと鈴音に近付いてくる。

 義塾の格付けにしても原作ゲームにしても序盤の敵ということで、鬼蝦蟇たちの得物はお世辞にも上等とは言えない代物だが……。

 

 

「ゲロッ」

「ゲロッ」

「ゲロゲロッ」

「「「「ゲロロ、ゲロッ!!」」」」

 

 

「うーん、チームワークを知ってるタイプのカエルか〜。一応確認しておきたいんだけど白南風さん、アレ、話とか通じるタイプ?」

 

『通じないこともないだろうが、連中にとって人間は縄張りを荒らす外敵でしかないからな。少なくとも鈴音殿という個人の信用を得ないことには難しいかもしれん』

 

 

 段平や手斧を持った鬼蝦蟇が前衛を、槍や鉄鎖や泥玉などを抱えた鬼蝦蟇が後衛を。遠距離攻撃や行動範囲の差による釣り出しによる各個撃破であればパリィからのクリティカルで簡単に倒せる相手であった。

 

 それもまた対話。

 

 たぶん有効。終わったあとにお互い一発ビンタの応酬をしてからリーダー格の鬼蝦蟇と握手することもできるだろう。

 

 だが、敢えて。

 

 シャラン、と錫杖を構えた鈴音は。

 

 

「────ウィンドダートッ!!」

 

 

 敢えて不慣れな法術戦による討伐に挑むッ! 

 

 

 ひとつ。

 

 ふたつ。

 

 風の刃を振り払おうと棍棒を振り回していた鬼蝦蟇が、武器を失い腕を負傷しこれはたまらんと後方に飛び退く。それを控えの鬼蝦蟇が泥団子でペタペタと傷口を塞ぐ。投擲物ではなく応急処置のため持ち歩いていたか? あるいは兼用なのか。

 少なくとも人間にとって無害な物体である保証はないと、風の刃を繰り出しながら鈴音もまた距離を稼ぐため後退する。一通り暮間家での特訓で法術も学んでいたが、自分ひとりではどうしても接近戦に気分を持っていかれてしまうため白南風の加護を含めても威力はいまひとつ。

 

 だからこそ、試す。

 

 未知のエリア、未知の敵。なれど敗北しても次が確実にあるという実験にはもってこいの環境。頭も使う、体当たりもする。両方やらなくちゃならないのが死にゲー乙女の辛いところなのだ。その表情は新しいオモチャで遊ぶ男子小学生ようにキラキラしている。

 

 

「来るか。まぁ来るよな。数の有利はそっちにあるんだし。ところで、よ? 人ひとり足場にして飛び跳ねることができるぐらい丈夫な風なら……こんな、使い方も、できるよなぁッ!」

 

「ゲゴッ?!」

「ペギャ?!」

 

『よく思い付く! 我が風を壁として鬼蝦蟇どもの脚力を逆手に取るとはな!』

 

「カエルは急に止まれない、ってね! さぁて、悪いがトコトン嫌らしい戦い方で相手させてもらうから覚悟しとけよ〜? 暮間先輩はもちろん、ナギやサラからもスキル教わってんだ。少しでも使いこなせるようにならねぇとアタシに使ってくれた時間がムダになっちまうんでなァ!」

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

「……で、チョーシこいて動き回りながら魔法スキルを気持ちよくブッパしてたら川にドボンッ! ってコト? あーしだってもうちょい周り見て動くケド? 多節棍は障害物とかマジのガチで弱いかんね〜」

 

「うぐ……ッ!? はい……それに、ついては、その。なにも、言い返せません……はい。加護の力により強化された風属性スキル、それを使うことに夢中になってしまったのは事実なので」

 

 

 死にゲーあるある。

 

 華麗なステップで命もスキップ。

 

 

 なお白南風は一切の手助けをせず沈む鈴音を静かに見守っていた。経験に勝る学習無し、こうして取り返しのつく失敗であれば下手に干渉するよりも放置したほうが本人のためになるのだから。

 幸いにして長く苦しむことなく迷宮から吐き出されたので精神的なダメージも少ない。詳しく語るまでもなく鬼蝦蟇たちの潜水能力は人間とは比較にならないほど優れている。装備の重さなど苦にすることなくスイスイ泳いで刺突属性の武器でグサリ、これで鈴音の初見攻略は終了となった。

 

 本人の気質からそこに含まれた負の感情はなんとも薄い色合いであっただろうが、それでも鬼神の血族たる巫女のエーテルである。鬼蝦蟇たちにとっても望外の馳走であっただろうし、もしもそれで進化してパワーアップした鬼蝦蟇が出たとしても犯人探しは迷宮入りするので問題ない。

 

 

「で、どーすんの? まだ1回やらかしただけだし、このままソロ攻略を進めるのも全然アリっちゃアリだと思うけどさ。あーしの手伝いが必要ならいつでもオッケーだけど?」

 

「失敗を経験したいまなら更紗さんのアドバイスをしっかりと聞くことができるかもしれない……でも、失敗したからこそ開き直って試行錯誤するのもアリと言えばアリだったりして……くっそ、どっちも両取りできりゃあ悩まなくていいってのによぉ〜」

 

「スズっち、ネコにゃんモードめくれてる」

 

「ん゛ん゛ッ。……更紗さん、申し訳ないのですが天相の迷宮攻略、お手伝いをお願いしても?」

 

「ホッホゥ? その心は?」

 

「連中の頭はアタシがソロでブッ飛ばす。勝ち目がなかったとしてもそこは譲れねぇ。得意なタイマンを鍛えるのも立派なトレーニングだろう? だからこそ、よ。逆にパーティー組んでの迷宮探索はまだまだヒヨコだからこそ……保護者に甘えてでもしっかりお勉強しねぇとよ? 暮間先輩のところでお世話になった小さな仲間たちをガッカリさせるワケにはいきませんから」

 

「あはっ♪ ホントそれな? 小学生から見た中学生とか高校生って、ヘタしなくても大人よりオトナに見えっからね。そりゃ〜情けないトコなんて見せてらんねーし、気持ちはわかるわ」

 

「いまはまだまだ未熟ですが、それでも子どもたちの手本になれるよう、私自身がしっかり学ぶ姿勢を示してみせないと。なので、ですね? パーティー組むのをお願いしておいてこんなこと言うのもなんですが、攻略のほうは多少、見せ場を譲ってくれたりすると……」

 

「いやいや、あーしも試したいコトあるから。そこは平等に速いモノ勝ちっしょ常識で考えて。ま、どーしてもって言うなら? なにか甘いモノでもゴチになるしかないってゆーか? ……うん?」

 

「それぐらいなら別に……あら」

 

 

「お、日比野さんに祁答院さん。購買部で迷宮攻略の準備か、それとも戦闘前の腹拵えかい? 腹が減っては戦はできぬ、ってのは男も女も関係ないからな!」

 

「こんにちは、水守くん。そういう水守くんもなにか買い物ですか?」

 

「おぅ! ちょっと1年の面倒を見てやることになってさ。俺も先輩たちには良くしてもらったからよ、こういうのは次に繋げていかないと勿体ないだろう? ほら、穂村。このふたりがさっきも話した殴り巫女の日比野さんと祁答院さんだ」

 

「はじめまして! オレ、1年の【穂村烈人(ほむら れっど)】って言います! 加護はありませんが、火属性と、打撃属性のハンマー系が得意です! よろしくお願いします先輩ッ!」

 

 

 元気いっぱい1年生の男子生徒。

 

 初対面でも犬型新人だとわかる素直さ。

 

 これが転生者により本来歩むべき運命を狂わされた、原作ゲームでは「鬼どもはオレの家族を奪ったッ! だからオレは命ある限り、鬼どもを一匹でも多く殺すッ! 邪魔をするなら人間だろうとオレの敵だッ!!」みたいなセリフから攻略難度が高そうに見えて実はわかりやすく寄り添うだけでフラグを全部踏めるチョロメンの成れの果てである。




フロストポルカ
『すなおだねー』
『かわいいねー』
『げんきだねー』
『わかいよねー』
『『『『でもきっと、いいひとどまりでれんあいたいしょーとしてはびみょうだねー』』』』

白南風
『まぁ……古来よりの雄の役目を考えればそういう評価もやむ無しではあるかもしれんが……』
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