タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。 作:はめるん用
作者的にはカ◯オくんが一番常識人なのではと疑っていますが初投稿です。
鈴音が氷属性の更紗、水属性の蔵人、火属性の烈人という微妙にバランスの取れてないパーティーで巫女スタイルによる迷宮攻略を進めていたそのころ、交換学生に選ばれた凪菜は義塾エリアでの生活に向けて様々な準備を────主に、ネットカフェにて結界戦関連の情報を集めていた。
野良チームによる結界戦はグレーゾーンであり、
(明らかにデモンシードによる鬼人化……ゲームでは主人公に活躍させるためのご都合主義だから仕方ないとして、この世界で武功庁や霊験庁が動かない理由は……? 原作通りに学園に、というより黄龍の巫女である朝比奈真白の活躍に嫉妬したバカな義塾関係者が法具の横流しをしていたとして……ここまでハッキリ証拠が残っているモノを放置するとかあり得ないと思う、が……さて)
脳内言語故に口癖となっている語尾が消滅するほど真剣に、凪菜は“それなりに”犠牲者の少ない未来を掴むために必要なルート構築について考えていた。
できる範囲で、というスタンスは基本的に兄の彼方と変わらない。だが足掻いたところで救えない者はどうにもならないと割り切っている彼方とは違い、凪菜は────必要ならば意図的に見殺しにしても構わない、ぐらいには冷静で容赦の無い判断を下せる。
具体的には人間として、あるいは女として許容できないような
とはいえ、だ。
それはあくまで可能性の話である。だからこうして実態を確認していた。その内容は公的に放送されているプロ同士の戦いよりもグロ注意である以外はそこまで悪辣なものではない……が。チラホラと、身体の一部がわかりやすく変質している能力者たちが派手に戦っている姿も交ざっている。
(コレを意図的に放置する理由は? 金の動きが義塾関係者に流れているとして、それを嗅ぎ付けられたら信用なんてドン底だし、組織全体が疑われればトカゲの尻尾切りで済ませられるような損失で終わらないだろうに。もしくは、多少の不信感なんて問題なく処理できるだけの手札がある……と。例えば、弐の真ルートのラスボスのひとり、
人事を尽くした者に天命を。
努力して、努力して、目標実現のために努力を重ねて、それでもどうしても最後の一歩が届かないとき。その叡智の権能にて人間に閃きを与え少しだけ背中を押す。
それが鬼切姫の世界の
もちろん努力家大好き神霊の思兼神がそのまま人間に敵対するワケではない。別に凪菜が勝手に偽神であると決め付けたのではない、原作ゲームではその名の通り偽りの神霊がオモイカネを名乗り鈴音たちに敵対していた。
その正体は歴史の表舞台に未練を残す陰陽師たちの狂気が集い力を得てしまったモノ。なまじそれぞれが確かな実力者揃いであったが故に烏合の衆で終わらず、さまざまな情報に干渉できる怪異として誕生してしまったのだ。
その狂気に触れたもうひとりのラスボス枠、いわゆる黒幕の陰陽師が知識の集合体でもあるそれこそが伝承に残る神霊・思兼神であると奉り讃えた。
それを受けた狂気の塊は自分こそが思兼神であるならば神霊としての役目を果たさねばならないと、自らを定義付けた陰陽師に加護という名の呪詛を授けた。
(人類を導くための英雄を育てる、そのためには試練を用意しなければならない。だから、現世で未熟な能力者たちに鬼の力を利用した呪物を取り込ませて鬼人化させる必要があったんスねぇ〜。クッソはた迷惑ってレベルじゃねーぞ? しかも賢者気取りのクセに鬼たちに現世に常世を生み出すために利用されているのに気付いてないのがまたマヌケって感じで)
黒幕あるある。
利用しているつもりで利用されている。
狂気の陰陽師はデモンシードの実験さえ完了すれば協力関係にある鬼たちなど切り捨ててしまえばいいと考えていた。しかし鬼側はデモンシードが拡散して現世に瘴気の溜まり場が発生した時点で目的は達成となる。そこが現世と常世を繋ぐ“門”として機能するようになるからだ。
それこそが原作ゲームにおけるデモンシード事件の進行度に関わる部分である。妖力を宿した人間が後先考えずに妖気を使い好き放題して被害者の負の感情を増幅させ、瘴気の濃度が濃くなればなるほど力のある鬼が現世に転移できるようになる。そして、デモンシードに完全に“喰われた”人間はより強力な鬼が顕現するための依代となってしまう。
こうして簡単にストーリーを整理してみると狂気の陰陽師側は最初からダメダメなように見えるかもしれないが、実際に最初から最後まで利用されっぱなしなのでその通りとしか言いようがない。
なんなら鈴音たちの活躍を知ったことで自分たちの英雄育成計画は完璧だと思い込んでますます余計なやる気を発揮したりする。そうでなければゲーム的にシナリオが続かないから仕方ないといえばそうなのたが。
そんなとても残念な陰陽師と偽神オモイカネ。その活躍ぶりは一部のプレイヤーたちから『知恵者ではなく痴れ者』『邪悪なラクガキモノ』『暗躍できないゼーレ』『役立たずの太極図』『ガバシカネェ』『汚いヌヌザック』など雑な愛称で適度に親しまれていた。なおボスキャラとしてはイベント戦とはいえバステとデバフの雨あられにより無事害悪認定されている。
と、まぁこんな具合にデモンシード事件は時間経過でどんどん被害者が増えることになるワケで。
ならば早めに手を打たなければならないが、なにせ権力と財力が後ろ盾になっているものだから前世の知識があっても学生の身分でできることなど無にも等しいもので。
「まさか、仮にも学園の看板を背負ってお世話になりに行くウチが野良犬相手にトラブル起こすワケにもいかないッスからね。一緒に行くほかの交換学生メンバーにも迷惑かけちゃうし、そもそも自分だけで尻拭いできないし。少しでもスズっちの負担を減らすよう友だちとして協力するくらいッスかね? あくまで友だちとして、スズっちが選ぶ未来には口出ししないよう気をつけて……ッス」
『もしも誰かとラブラブになりそうなら?』
「そんなもん全力で応援するに決まってるッスよッ! 異世界転生も、鬼との戦いも、誰かを守るのもッ! そしてぇ〜ッ! 推し活もォッ!! 全部欲張って楽しまずしてなにがゲーマーかッ!! なんだかんだ真白先輩もアオハルしてるっぽいッスからね。マリンパークに誘われたっていう話は聞いてるッスから。もちろんマナー違反になるから詳細を探るようなマネはしてないけれど、いつかの日曜日にウキウキで出かけたってことは……ムフー♪ いったいどっちを選ぶのか楽しみッスねぇ〜」
『……そだねー』
神霊・雷蛇は思う。
普段は勉強の成績も含め決してアホではないのに、どうして原作とやらの恋愛事情になると凪菜はここまでポンコツになるのだろう? と。シナリオ面では原作知識に頼るのは危険だと自らを戒めているはずなのに。
「ま、原作知識のアドバンテージは活かせない前提のほうが良さそうなのはともかくとして。ほかに気をつけたほうがよさそうなことは……そう言えば、仮に偽神オモイカネがいたとするじゃないッスか? その場合、日本神話の神霊たちとか、思兼神ご本人とか、そのへんって行動起こしたりするんスかね?」
『う〜ん、思兼神様はお寝坊さんだからあまり動かないって
「わぁお。ほぼ原作通りッスねぇ……。もしかしなくても月読様はかなりお労しや案件だったり」
そんな日本神話の神霊たちから絶対的な信頼と崇拝を向けられている太陽聖母・天照だが、他国の神話から見れば洒落にならないレベルの危険な権能持ちとして恐れられていた。
何故なら彼女は気分次第で太陽の恩恵そのものを世界から消し去ることができるからだ。いわゆる、天岩戸の引きこもり事件のことなのだが……世界中で太陽神として信仰されている神霊は少なくないが、弟の素行不良にキレてのサボタージュを理由に世界を闇で覆った女神はちょいと珍しい部類だろう。民衆から「どうか救いをッ!!」と祈りを捧げられたアポロンやミトラたちがストレスによる胃痛で倒れたのは神々の間では有名な話である。
ちなみに。
過激な思想の神霊や、それに感化された能力者が日本そのものを危険だとして行動を起こしたこともある。世界各地の神話で邪神や悪魔として追いやったモノどもまで崇め祀る民族とかそりゃあ排除したほうが良くね? とか言われても反論し辛いことこの上ない。
だがそこは八百万の神霊が集う日本神話、その懐の深さから他所の神話で悪事を働いていようとも日本で心を入れ替えたのであればちょっとやそっと文句を言われたぐらいで見捨てるような真似はしない。それが余計に危機感を煽っているような気もするが、だからこそ嘗ての邪神や悪魔たちも日本を守護るため本気を出す。
『おい、なんか西洋神話の下っ端どもが貨物船に偽装した船で日本に乗り込んで暴れようとしてるっぽいぞ』
『じゃあオレ、とりま暴風でめっちゃ揺らしてやるわ』
『だったらついでにアタシも波で遊んでやるか』
『せっかくだし雨も降らそうぜ、雨』
『ククク……濡れ鼠も哀れだからな、肌がひび割れるほどの熱風もくれてやろう』
『船旅ならお腹も空くよね〜。食べ物ぜぇ〜んぶ増やしてあげるよ〜。船全体に根を張って蝕むほどにさ〜』
『それでも一応、少ないメシでも満足できるようにしてやるか。豆一粒で脂肪がブクブクに膨れ上がって歩けなくなるほどな』
『それで食料を余らせて腐らせたのでは勿体ない。吾輩がイナゴを放ち処理を手伝ってやろう』
『ダイエットなら妾も協力してやってもよいぞ。飲水全てが苦ヨモギとなれば食事どころではあるまい?』
『死者が出ては後始末に困るやもしれん……どれほど餓えようと、どれほど血を流そうと、決して狂気に沈まぬ精神力もくれてやる……喜ぶがいい……』
生存者は語る。日本には手を出すな。
鬼切姫の世界では、裏社会の鉄の掟である。
そんな愉快な自宅警備員たちの話はともかく、凪菜としては神霊が動くのであれば自分は余計なことをしないほうが邪魔にならないだろうと考えていた。せっかく丁寧に段取りを整えたのに、気を利かせたつもりのバカに台無しにされたときほど腹立たしいことはないからだ。
だが雷蛇の語りから察するに、やはり日本神話の神霊たちは人の未来は人の手に委ねる方針らしい……と、なれば。あまり深く考えずに学園からの交換学生として、そして日比野鈴音の友人として、素直に義塾での生活を楽しみつつ事件に巻き込まれたら解決のために全力を尽くすぐらいの気持ちで充分なのかもしれない。
「やっぱりラノベの主人公みたいに上手いことなんていかないッスねぇ。情報を持ってても活用しきれないから手が出ない。結局、地道にコツコツ頑張るしかないっていう。いきなりこう、都合良く最強チートに目覚めでもすれば義塾に潜入してもいいんスけど。こちらスネーク、潜入に成功した。指示を頼む……ッ! みたいな」
『そーゆー蛇さんが前世の日本にはいたのー?』
「ウチらの業界ではトップクラスに有名な蛇さんッスよ。栄養補助食品とコラボするぐらいには。基本は物陰に隠れたり麻酔銃で眠らせて行動するんスけど、光学迷彩っていって周囲の景色に溶け込んだり────そうか、光学迷彩。アレも電気の力みたいなモンだし、もしかしたら」
『うん? またなにか思いついちゃった感じ?』
「やってみる価値はありますぜ! あ、でも義塾に潜入はしないッスよ? ちゃんとした訓練を受けてもいないのにスニーキングミッションなんてできるワケないッスから。ご都合主義に愛された主人公なら素人の思いつきでもいきなり重要な証拠も見つかるかもしれないッスけど、普通は情報収集から始めて綿密な計画を練ってからやるモンなんだし。幸運のステータスが振り切ってたらワンチャンあるかもしれないッスかねー?」
『…………そだねー』
神霊・雷蛇は思う。
少なくともひとり、心当たりがある。間違いなく幸運の類ではないが、余計なモノを見付けさせられてしまうという意味ではどんな能力者よりも潜入向きの人材に。しばらくは平穏無事な空気が続いていたが、アレが帰還したからには確実に彼は────無銘彼方はトラブルの中心に引き込まれることだろう。
それでも思うだけなあたり、雷蛇もなんだかんだ冥界童女を信用し……無銘彼方のポジティブさと臨機応変な判断力を信頼していた。なんなら、冥界童女の加護に耐えられるだけの器の持ち主であることを証明した彼方であれば、もしかしたら思兼神の加護を受け入れることもできるかもしれない。ならば、きっと悪い結末にはならないはずだ。
イケメンたちとのロマンスが消失するのは悪い結末じゃないのかって? 男性向けでも女性向けでも世界平和の観点から見れば異性の攻略なんて案外ただの努力目標だったりするから大丈夫なんじゃない?
思兼神
『転生者、我、認識。我、転生者、認識。我、愉快。転生者、愉快。……偽神、不愉快。転生者、始動。我、補助、義務。我、加護、付与。我、起動』
武御雷
『気持ちは理解できるが落ち着かれよ思兼神殿。人が自ら良き夢を掴まんと努力しているのであれば、余程のことが無ければそれを見守るが我ら日本神話の役目であろう』
思兼神
『(`・ω・´)』
武御雷
『いやシャキーンじゃねぇんだよテメェの加護は普通の人間にはキャパいんだから転生者相手だからって迂闊にホイホイ与えようとすんじゃねぇってだから動くなっつってんだろおいコラ待て止まれこの全身顔文字野郎ッ!!』
建御名方
『オィィィィッ!? 思兼神が起動しやがったぞ手の空いてるヤツは止めんの手伝えぇぇぇぇッ!! 誰かッ! ミッチーたち呼んでこいッ!!』
※学問の神たちが全身真っ白に燃え尽きてシワシワになるほどの問答を繰り返すことで渋々ながら納得させました。