タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。 作:はめるん用
歴史ネタは初投稿です。
環境が変われば生活スタイルも変わるように、世界が変われば文化も大きく変わるもの。
文化が違えば政治も違う。
政治が違えば軍事も違う。
鬼切姫の世界にて歴史に残された人間同士の戦争は基本的に真実を歪めたモノばかりである。鬼による被害などない、愚か者たちが欲望をコントロールできなかったせいで民衆が被害を受けただけ、でもそれを正すヒーローがいて良かったね! というご都合主義の物語がほとんどだ。
三國志をベースにした作品にて序盤の悪役として大活躍の董卓おじさんも鬼切姫の世界では混乱を避けるため自ら進んで汚名を引き受けて散っていった豪傑であった。政治の中枢に悪鬼が紛れ込んでいた、などと大衆に知れ渡ればあっという間に国が傾くのだから仕方ないと豪快に笑いながら逆賊として処刑されている。
西洋も東洋も今も昔も────鬼であったり悪魔であったりモンスターであったり悪神であったり邪神(某メスガキのことではない)であったり呼び名は様々だが────そうしたモノから人々を守護るため、名誉を返上して消えていった英雄たちは大勢いる。
まぁ、中には自由奔放に最前線で戦う聖女の後始末に奔走した結果ストレスで倒れ戦線離脱した青髭など斜め上方向にリタイアした者もいるのだが。
その姿を哀れに思った権力者の誰かが言った。なんか適当な理由で聖女を処刑したことにして、もうアイツのこと解放してやろうぜ。凄く頑張ったよ、だから許してやれよ……と。そしてさらなる自由を得てウキウキ気分の元聖女は野に放たれた。青髭は許される、だが悪魔は許されない。
と、そんな事情があっては戦の準備も趣が異なってくる。なにせ基本的には迷宮の存在が中心に置かれるのだから、どうしても少数精鋭での戦闘技能が優先されてしまい集団での戦い方は後回しにされてしまう。
迷宮内部では戦死者が出ないこともこれを後押ししていた。指揮官が部下の顔や名前も覚えられないような状況で誰が離脱したかもわからないまま戦い続けるよりも、数の不利を承知で肩を並べ信用を積み重ねるほうが結果的に上手くいく。
奥州藤原の誤算もそこにあったのだろうと義仲は考えた。如何に秀衡本人が武術法術ともに優れた単体戦力だとしても、奥州の地に東西南北それぞれから迫る鬼と同時に戦えるワケがない。それが北方は蝦夷の地より鬼の大軍迫るとあり防衛のため戦力をそちらに集中させていたとなれば尚のこと。
こうなると敗残兵と難民を率いながら無事に撤退戦を指揮してみせた義経と教経を連れて行きたくなるのが大将としてのサガなのだが、だからこそ源平連合の切り札となり得る彼らを囮相手に無駄遣いするワケにはいかないジレンマがあるワケで。
次も必ず大規模な侵攻となるのは確実だろう。既に鬼側には人間がチーム規模での戦闘には強くても、より大きな組織単位での戦闘では付け入る隙があると知られているのだから。1度、通用した戦法を2度、試すことは別に不思議でもなんでもない。
さて、どうする?
悩み悩んだ義仲は。
◇◆◇◆
「ハイ、つーことで皆から意見を募集したいと思いまーす。イイ感じの作戦を思いついた人はドンドン出すよーに」
ひとりで考えても良いアイディアが浮かばないなら、大勢で考えれば良い。自分たちの死に様を決定するための会議となれば、もちろん配下の将兵たちも参加を見送るような真似はしない。
「殿。ひとつ確認したいことがあるのですが」
「おぅ、なんだ?」
「此度の戦、なにをもって我らの勝ちと致すのですか?」
「勝ち。なるほど、勝利条件を決めにゃ作戦もクソもねぇわな」
「少なくとも平泉の奪還は不可能です。ありとあらゆるモノが足りませぬ」
「仮にそれを求めたらどうなるだろうな?」
「残念だが木曽兵だけではなぁ」
「辿り着く前に全滅する未来しか見えん」
「頼朝様からお預かりしている兵力は」
「それでも広いぞ、奥州は」
「そも、預かり物は返すが道理ぞ」
「然り。我ら木曽の兵は殿と死ぬも本望だが」
「それに義経殿や教経殿はどうする?」
「武蔵国の守りもあるからのぉ」
「心配すんな。最初からそんなもん目指してねぇ。オレらだけの責任で完結させられんならともかく、民衆の安全と引き換えにしてまで夢物語のために無駄死になんぞオレだってイヤだからな。それに頼朝から預かってる兵力は最初からアテにしてねぇよ」
「ならば、いくつか……段階的に目標を定めるというのはどうだろうか? 我らの制止を振り切って義仲様が鬼どもの軍勢に突撃したときに備えるべきだと思うのだが。指揮官不在でも動けるようにな」
「「「「賛成」」」」
「お前ら……」
これぞ部下の皆さんに信頼されている上司の図!
木曽兵はアットホームな職場なのだ!
「まぁ、殿が頭イノシシなのはともかく」
「テメェらあとで覚えとけよ」
「数の不利を思えば戦力の分断、あるいは此方側としても必要に応じて分散させることもありましょう。ならば、個々の部隊が指示待ちにならぬよう予め意識の置きどころを揃えておくべきかと」
「最低限の目標、コレはまぁ、武蔵国の防衛だな。最悪、牛若と国盛に後始末を任せるとしても……なるべく鬼の戦力は削ぎ落としてやりたいところだ」
「では、最良の目標はどのように?」
「南下してくる鬼の軍勢を叩き返す。常世まで押し返せれば万々歳だが、現実問題として迷宮までブッ込むための戦力なんぞ無い。秀衡のジジィには申し訳ないが、本命であろう京の都狙いの連中を、頼朝たちが撃退するまで平泉の観光でもしててもらうさ」
「ならば……そうですな。妥協点は時間稼ぎというところに落ち着きましょうか。鬼どもに、我ら人の世を歩くは割に合わぬと思わせれば充分でございましょう」
「よし、ならばここは老い先短い」
「年寄りが若者の出番を奪うのは」
「お主らはこれから手柄の機会など」
「こっちは年明けにはボケるかも」
「だからって獲物を独り占めなんて」
「久し振りのデカい喧嘩なのに」
和気あいあいと軍議は進む。それで事態が好転するワケではないが、陰鬱とした空気の中で毒にも薬にもならない慰め合いをするよりは建設的な話し合いだろう。
あるいは、決戦前夜と思えば映画のワンシーンのように見えるかもしれない。外敵の脅威から人々を守るために、命懸けの戦いに挑む前の戦士たちの集いとして受け止めるなら感動的ですらあるが……そうした場面の登場人物たちとはひとつ、決定的に違うことがある。
彼らの中に“潔く戦って散る”などという発想はない。
名誉は知っている。勝利ではなく誇りを求める戦いも否定しない。ただ、それは、優先順位の問題であった。自分たちがしくじれば自衛手段に乏しい民が犠牲になるかもしれないのに、自己満足を優先して簡単に死を受け入れるなどあり得ないのだ。
この時代の侍にとって正々堂々という言葉は盤上遊戯や札遊びなどの娯楽で使うか、そうでなければ神霊に捧げる奉納武闘ぐらいのもの。木刀の握り方を覚えたばかりの子ども相手ならば手心も加えるが、そうでなければ訓練でさえ卑怯者とは負け犬の常套句として扱われる。
目的のためならば手段など選ばない、どころか命のやり取りをする戰場で手段を選ぶ意味がわからない。
その上で、全体の勝利のためなら自分の命も消耗品として扱うことを躊躇わない。
なんなら味方をひとり犠牲にすることになったとしても、それで鬼を2体以上斬れるなら足し引きしてこっちの勝ちだろとか本気で考える始末。
そもそも奥州兵の殿軍だってタダでは全滅していない。鬼だって水ぐらいは口にするだろうとアチコチの水源に毒を仕込んでいる最中に誰かがポツリと「コレ飲んでおいたら罠になるんじゃね?」とか言い出して実行している。
そして結成される、推しの散り様を見届けるため封印上等で現地参戦していた水・薬効・呪毒などを司る神霊や精霊に協力してもらいご機嫌な水盃をキメた地雷系首狩りモッシュダイバー集団。彼らの執念は戯れに血肉を喰らった鬼の腸を内側からドロドロに焼け爛れさせることに成功していた。
未来のために死地へ赴く侍たち。そこだけ切り抜けば実に感動的な言葉かもしれない。
その実態はどうせ自分たちの命で対価を支払うのだからと道徳も人道も投げ捨てた一騎当千のゲリラ兵団。
刀が折れ矢が尽きたらそのへんの石でもなんでもブン投げて殴りかかればいいし、瀕死の重傷を受けて命乞いをする仲間を囮に木の上や土の中から奇襲を仕掛け諸共斬り捨てるぐらいは普通にやる。
◇◆◇◆
楽しい作戦会議からしばらく。
年功序列を持ち出して年寄りを敬えとウザいぐらいに騒ぐことで先陣を切る役目を獲得した老兵たちを見送っていたが、ついに義仲たち本隊が出陣する日がやってきた。
武蔵国の国の人々が彼らに向ける視線には希望が込められている。鬼が迷宮を抜け出して攻めてきたと聞かされれば、それを撃退して自分たちを守ってくれる木曽兵たちに期待と感謝を抱くのは当然であろう。
だが、奥州から避難してきた者たちはそうではない。彼らの眼の色は完全に死んでいる。木曽兵たちの勝利も生還も信じていない、全てを諦めた色合いだった。
2度と故郷に戻れなくても構わない、あの地獄から離れられるなら帰る場所など逃げても捨てても構わない。鬼たちの糧となる恐怖が芯の部分に深く刻み込まれている証拠だった。
完全にやられた、と。鬼を相手に後手に回る厄介さを実感した義仲は南方でも同じようなことが起きるだろうと確信していた。恐怖を抱いた人間を京の都まで押し流すことで、鬼たちは護国の要に直接攻め込めるよう段取りを整えるつもりだ……と。
くつくつ、と。
義仲から堪えきれぬと笑みが逃げ出す。
悪ガキたちのお山の大将で充分だった。源氏の棟梁としてお行儀よく育てられた頼朝には出来ない部分をフォローしてやれれば充分だった。それが日ノ本の未来を考えるようになった。なんとも奇妙な立身出世もあったものだと、心の底からおかしくてたまらない。
「義高!」
「は、はい!」
「大姫とは上手くやれよ」
「は……はい?」
「しっかりと育てられてんのは良いことなんだろうが、男に尽くすことを熱心に教えられたせいで自分の意見を後回しにする女だぞアレは。だから、お前がちゃ〜んと大姫の話を聞いてやるんだぞ?」
「……ご心配には及びません父上。武芸ではまだまだ足元にも及びませんが、女性への気遣いでしたら父上などに負けませんので」
「カカッ! 言ってくれんじゃねぇの! そして否定できねぇのが父親として、うん。ちと情けない気もするのがまた……はぁ〜」
「自分で言ってて落ち込まないで下さい。みっともない。ホラ、家臣の皆さんも笑うどころか呆れてますよ?」
「くそ、普段から余計な遠慮はいらねぇって言い続けてきたツケがこんなときに回ってくるとは。まぁ、いい。義高」
「はい」
「んじゃ、行ってくるぜ」
「はい。どうか御武運を」
「義仲様」
「義仲……様」
「おぅ、牛若に国盛か。武蔵国の守りは任せたぞ? くれぐれも無茶はしないようにな。テメェらが守らにゃならんのは民衆の安全と生活が最優先だって、忘れんなよ」
返事が遅れている。
そして双眸に宿る輝き。
これは良くないと悟った義仲だが、そこは集団を束ねる立場としての貫禄と実績がある。仕方ない、と弟分たちを黙らせるため最期の縛りを重ねることにした。
「この大戦はしばらく続く。そんで、万にひとつでも京の都が落とされるようなことになれば人の世が終わるかもしれねぇ。まさか遠く遠くのご先祖様から託された国を安々と滅ぼされるワケにもいかねぇだろ? だから────
「はい。────え?」
「うん。────は?」
「後のことは
知っている、つもりであった。
覚悟とは。力無き無辜の民のために、必要であれば死を厭わず戦い続けることが侍の役目であると。
だが、そうではなかった。
だが、それだけでは足りなかった。
産まれて。
生きて。
死んで。
託す。
秀衡が子らと共に殿軍を引き受け、心折れた兵たちを任され逃げるように促されたとき。義経と教経はそれが自分たちが半人前だから逃がされたのだと思い込んでいた。それでも民衆の命を優先するべきだからと己を納得させることで不満を飲み込んでいた。
だが、そうではなかった。半人前だから逃がされたのではない、ひとりの武人として認められていたからこそ任されたのだ。お前たちであれば家族も同然の護るべき人々を、必ず鬼どもの追撃を振り切って安全なところまで逃がしてくれるハズだと。だからこそ、生命尽き果てるまで戦えると。
ふたりの若武者が静かに膝をつき、拳に手を重ね、頭を垂れて了承の返答とする。
声は出せない。顔も見せられない。恩人である兄貴分の出陣前に余計な心配事を抱えさせるワケにはいかない。
これもまた武士の情けというものだろう、義仲はなにも言わず視線を外して……ふと、頭を下げたままの我が子の姿が視界に入る。
固く、硬く、強く握り締められた拳が僅かに震えているのは親子として未練がましい別れの言葉が飛び出さないよう堪えているからか。
終わりを迎えるには……悪くない、気分だった。
◇◆◇◆
意気軒昂が過ぎるのか「義仲様たち本隊の到着前に、別に我ら老兵たちで百鬼百軍の尽くを斬り捨ててしまっても構わぬのでしょう?」と軽口を叩いていた先発隊との合流を目指す道中にて。
「義仲様? わたくしの顔に、なにか?」
「いや、まぁ」
いつものように、隣に。
軽装の鎧と、薙刀が。
巫女として生きる道など知らぬ存ぜぬと言わんばかりに武芸を磨き共に鬼と戦い続けてきた愛しい相棒。後の世にまで勇名を残す女傑【巴御前】の横顔を、どうやらずいぶん長々と眺めていたと気付かされた義仲が言葉を濁す。
生きて欲しい、という想いはある。
だが巴の性格を誰よりも知る義仲だからこそ、それを口にするのは憚られた。それは巴の決意を、生き方を否定するも同然の物言いとなるだろう。もしも自分がそれを、逆の立場で「死んで欲しくないから逃げてくれ」などと誰かに言われたら確実にキレる自信があった。
それならそれで、ここで、なにか。気の利いた台詞のひとつでも出てくれば格好がつくのだが、情けないことに息子である義高に揶揄われた通りであった。どうにも上手い言い回しが思いつかない。
仕方なく。
「相変わらず、良い女だと思ってよ」
義仲が数秒ほど迷ってそう伝えると。
「なにを当たり前のことを。義仲様が選んだのですよ? 当然です」
巴は数瞬の迷いもなく言い切った。
「さぁ、常世の鬼どもよ。辞世の句は間違えることなく詠んできたか? ならば、この木曽義仲が生涯の最期に斬殺したという誉れを頂戴したくば、死に物狂いでかかってこい」
文字で綴られた歴史の中で、木曽義仲は“武勇と統率に優れた侍でありながら身の丈に合わぬ欲に溺れた愚かな男”として扱われることになる。
同族である源頼朝の不在を狙い挙兵し、京の都から平家を西へと追い出して自ら大将軍を名乗り日ノ本を我が物にしようとした。それを藤原秀衡から兵を借り、佐藤継信・忠信の両雄を従えた源義経が撃退し、敗走の中で名も無き雑兵に討たれたと記された。
せめて真実を知る者たちだけでも彼の活躍を後世に伝えるべきと主張する声もあったが、それらは全て子・義高により一蹴。大姫の説得も「千年先まで続く悪評こそが我が父にとっての誉れとなる」と頑なに拒否。
木曽義仲という侍がなにを想い、託し、散っていったのか。その真実は誰にも知られることなく葬られる────ハズだったのだが、遥か遠い未来で
文章スタイルを思い出すまであと2話しか猶予がないと思うと恐ろしくて侍道3ぐらいしか遊ぶ気にならない……もう100%キャッシュバックでしか買い物する気にならない……(腐れ外道)